2018年に登場したステンレススティール製のGMW-B5000を足がかりとして以降、躍進を続けるフルメタルG-SHOCK。チタン製モデルや独創的な加飾を取り入れたモデルを展開するのみならず、2022年には近年の新たな柱である2100シリーズもラインナップに加えるなど、そのバリエーションを着実に拡げてきた。その新バージョンとして今年新たに加わったのが、ステンレススティールの外装にブルーのアクセントカラーを組み合わせたGM-B2100AD-2AJF とGMW-B5000D-2JFだ。G-SHOCKが樹脂モデルで培ってきたCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザインをフルメタルに応用しつつ、これまでG-SHOCKを手にしたことのない人々に対しても広くアプローチしていきたいという思いから企画されたモデルとなっている。
そもそもこれまでのフルメタルG-SHOCKは、限定モデルを含めてもブラックを基調としたものが多かった。しかし、ブランドは2023年秋にリリースされたGMW-B5000、GM-B2000で、マルチカラーやグラデーションカラーの採用によって従来のラインナップとは一風異なるテイストに挑戦。現在のG-SHOCKにおける中心的存在であるふたつのシリーズ(5000および2100)に共通のカラーリングを用いることで、ユーザーのパーソナリティに合わせて選べるようにとデザインがなされていた。そして、今作では特に若年層にアピールする狙いや日本国内での人気の高さを考慮した結果、色鮮やかなブルーが選ばれたのだという。
その色調は、シルバーのフルメタル外装に自然と調和するメタリックブルー。GMW-B5000Dでは、文字盤上のアイコニックなレンガパターンを生かすために外周の狭い面積にのみブルーの蒸着を施した。しかし、従来のステンレススティール製モデルではあまり見られなかった白黒反転のネガ液晶の採用によってブルーの挿し色がいっそう際立つデザインとなっており、時計全体の印象もグッと引き締まっている。その一方で、より繊細な試行錯誤を重ねながら製作されているのがGM-B2100ADの文字盤だ。こちらも文字盤全体に蒸着を施すことでメタリックなブルーを表現しているが、GMW-B5000Dの色合いに近づけつつタフソーラーの受光効率も確保するために、カシオは蒸着に使う物質の選定や色の濃淡の微調整に取り組む必要があった。
このデリケートなカラーを具現化しているのが、山形カシオをはじめとした製造拠点だ。山形カシオではG-SHOCKのレギュラーコレクションの製造ラインはもちろんのこと、工場内にはMR-Gやオシアナスといった高価格帯モデルの生産を担うプレミアムプロダクションライン(PPL)も設置されており、国内外においてその品質は高く評価されている。もちろん新作のGM-B2100AD とGMW-B5000Dも山形カシオを中心に生産されており、特にGM-B2100ADのメインダイヤルは、金型の作成と成形を山形カシオで行ったのちにブルーの蒸着技術に定評のある工場にアウトソーシングすることで、質感と機能性の両立を図っているのだという。
一方、文字盤の9時位置にレイアウトされた半円状のインダイアルパーツは山形カシオで一貫して製造されている。まず、樹脂製のリングパーツにスパッタリングでシルバーカラーを成膜する。そこにブルーの 薄膜塗装を重ねることで、フルメタルG-SHOCKが持つ高級感とソリッドな表情にふさわしい深みと輝きを実現しているのだ。小指の先ほどの小さなパーツだが、この存在がGM-B2100ADの奥行きあるダイヤル表現に大きく貢献している。
着色されたリングパーツは、熱処理によってメインダイアルに固定。万が一時計を落としてもパーツが脱落しないよう、G-SHOCKの高い品質基準に則ってしっかりと溶着されている。その後、カシオの技術者の手によって寸分狂わぬ位置に“G-SHOCK”のメタルロゴが取り付けられ、ダイヤルは完成となる。今作GM-B2100ADにおいては、ダイヤル1枚に社内、社外を問わずさまざまなプロフェッショナルの技術が投入された。これもまた、カシオのCMFデザインを追求する妥協なき姿勢を示すものである。
もちろん、性能や機能面は従来のGM-B2100シリーズおよびGMW-B5000シリーズを踏襲。アウターベゼルとケースとのあいだにファインレジン製の緩衝材を挟み込んだ耐衝撃構造が取り入れられているのはもちろん、Bluetoothによるスマートフォン連携機能を備え、時刻の修正や各国の現地時間の確認も容易にしている。また、GM-B2100ADでは高輝度なダブルLEDライトを、GMW-B5000DではフルオートLEDバックライトを装備して暗所での視認性も確保するなど、実用性への配慮も抜かりない。
ふたつの新作はステンレススティールを採用したフルメタルG-SHOCKのカラーバリエーションではあるものの、ブルーのアクセントカラーを用いたことで、これまでにないソリッドな佇まいと軽快感を併せ持つルックスに仕上がっている。カシオでは今後も、幅広い趣味嗜好に向けたセットでの提案を継続していく予定だという。フルメタルG-SHOCKにおける色の表現力は、今作でさらなる向上を見せた。そう遠くない未来、メタル外装ならではの質感とCMFデザインを掛け合わせたより魅力的なモデルをひっさげて、G-SHOCKはまた新たな角度からユーザーのパーソナリティを刺激してくれることだろう。