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Hands-On F.P.ジュルヌ エレガント “ジーノ ドリーム”は友人に捧げた明るく楽しい10周年記念のトリビュートモデル

ジュルヌの最初の出資者であるジーノ・キュクロヴィッチが亡くなってから3年後、ジュルヌは彼の大胆かつ色彩豊かな、そして非常に惜しまれる人柄にふさわしい時計を発表した。

Photos by Mark Kauzlarich

F.P.ジュルヌに関して、知るべきことがひとつあるとすれば、それは予期せぬことを期待すべきだということだ。多くのジュルヌコレクターに、フランソワ-ポールの頭脳にある新作に何を期待するか尋ねたところ、新しいクロノグラフや、Only Watch 2023で披露されたオールタンタル&ブレスのブルー フルティフをもとにした時計など、さまざまな回答が返ってきた。しかし私も含めて、この新作がWatches&Wonders会期中で最も楽しい(そして驚くべき)リリースだと感じる時計になると予想していた人は、誰ひとりとしていなかったように思う。

F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"

 いや、F.P.ジュルヌはWatches&Wondersには参加していなかった。長いあいだ、GPHGアワードの受賞を辞退し、それを避けることを選んだように、ブランドは ジュネーブ旧市街にあるモントル・ジュルヌ本社でイベントを開催するべく、主要な見本市のようなオフィシャルなものを見送っているのだ。今月初めに行ったファクトリーツアーの様子はまた後日お伝えするとして、本社は過去10年間で、時計業界における最大の伝統的な独立系大企業と言えるブランドに変貌を遂げたジュルヌ信者たちのたまり場と化している。F.P.ジュルヌの新作“ジーノ ドリーム”を観に連れて行ってもらう前に、本社にてThe Journe Guyを主宰するコレクター、オサマ・センディ(Osama Sendi)氏らに出くわした。

F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"

 いまにして思えば、“エレガント”(ブランド名に大文字を使わずに独自のスタイルで名前をデザインした)の選択は明らかであったはずだ。今年は同コレクションから誕生10周年である。F.P.ジュルヌの新しいエレガントは、核となる部分は過去に発表された48mm(ラグからラグまで)のクォーツウォッチと同じである。これにより、今年発表されたもうひとつの“トーチュ”型ウォッチとなった。ケースはチタンと、ブラックコーティングされたチタリット(Titalyt®)の2種類があり、防水性は30m。スペックについては後述するが、このモデルで最も目を引く重要な部分は、エモーショナルな要素のセラミックガラス製ベゼルだ。

 故ジーノ・キュクロヴィッチ(1959~2021)は、モントル・ジュルヌとなる前のブランドに最初に投資した人物であり、非常に個性的な彼はブランドの初期からフランソワ-ポールに対して非常に熱心な友人であった。1987年に小売店のジノッティ・ジュエラーズを設立し、瞬く間にインディーズ界の中心人物となった。キュクロヴィッチをジュルヌに紹介したのはダニエル・ロート(Daniel Roth)氏であった。1999年のトゥールビヨン・ルモントワール・デガリテ発表に先立ち、キュクロヴィッチはブランドの最初の投資家となった。

2003年、F.P.ジュルヌ ブティックのオープニングにてフランソワ-ポール・ジュルヌ(左)とジーノ・キュクロヴィッチ(右)。

 キュクロヴィッチはそのカラフルな人柄と服装で知られていた。フランソワ-ポールは、独創的なクォーツウォッチの10周年を記念して、レインボーベゼルウォッチをデザインした。プレスプレビュー中、ベゼルにはめ込まれたセラミックガラスのピースを見て、この時計を“ジーノの夢(Gino's Dream)”と呼んだ人がいた。それからその名前が定着した。

F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"

 エレガントは、F.P.ジュルヌのカタログのなかで最大の生産数を誇っている。このブランドは年間1000本以上の機械式時計を製造することはない(そして今後も製造する予定はない)が、技術的に驚異なクォーツウォッチ“エレガント”ではそのほぼ半分を製造している。ホワイトまたはブラックの夜光ダイヤル、レ・カドリア(Les Cadraniers)とレ・ボワティエ・ドゥ・ジュネーブ(Les Boîtiers de Genève)で自社生産されるシルバートーンのチタンまたはブラックチタリットでコーティングされたケースなどなど、主な特徴は変わらない。残念ながら、ホワイトダイヤルはチタリットケースのみとなり、ラインナップが少し減ってしまった。30mの防水性を備えたケースは、直径40mm、厚さ7.95mm、ラグからラグまでが48mmであり、ふたつあるケースサイズのうちより大きくスポーティな“エレガント 48”のほうとなっている。そのスポーティさは、多彩な色で提供されるラバーストラップとデプロワイヤントクラスプにも受け継がれている。

 また、1万8900ドル(日本円で約292万円)と、F.P.ジュルヌのカタログのなかで最も手頃な価格の時計でもある。クォーツウォッチはF.P.ジュルヌの機械式時計の専門知識を見落としていると指摘する否定的な人もいるが、この時計は彼自身がよく着用する時計なのだ。

F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"

 この時計は、ジュネーブで製造されるエレクトロメカニカルムーブメント、Cal.1210で動力を供給している(回路技術に関してより知名度の高い国にアウトソースするのではなく)。35分間何も操作しないとスタンバイモードになるが、時計を“起こす”と針が正しい時刻まで動き、文字盤4時30分位置にある小窓から見える小さなローターが回転する。日常的な使用で8~10年、スタンバイモードで約18年のパワーリザーブという、市場でも最長の部類に入る。繰り返しになるが、これらの仕様はすべて過去のモデルと同じだ。しかしそれは、非常に重要で話題にすべき特徴を無視しているに等しい。

F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"
F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"
F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"
F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"
F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"

 ジーノ ドリームの写真を初めて見たとき、サファイアをあしらったレインボーベゼルを見ているのかと思った。F.P.ジュルヌは大胆なデザインのために繊細さを省くようなことはしないため、そうしていても驚かなかっただろう。しかしブランドで最も手頃な価格の時計の生産量の一部が、必然的に非常に高価なものに割かれていると聞くと、失望したと感じるかもしれない。

 その代わりにベゼルにはセラミック製のサファイアストーンをセットされた。これはフランソワ-ポール・ジュルヌが、カラーバランスと効果を考慮して厳選し、さまざまな色調の段階的な変化を美しく表現したものだ。この合成された石は、サファイアを使用するよりもはるかに多くのジーノ ドリームを製造することができ、しかも4万ドル(日本円で約618万8000円)という低価格で実現。確かにベースモデルの2倍の価格だが、Watches&Wondersが始まって以来避けてきた言葉を使うなら、これは“斬新さ”を手に入れるために支払う価格であり、それは実際に斬新なものだ。

F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"
F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"

 また、石のセッティング自体にも多くのコストがかかっていることが予想される。チタンのような金属に石をセットするのは簡単なことではない。宝石のセッティングが通常、貴金属(または石や表面が十分に大きい場合はプラチナ)に限定されるには理由があるのだ。これらの柔らかい金属は、(ジェム)セッターがケースやブレスレットの素材を時計に適合させ、適切に仕上げることを可能にする。F.P.ジュルヌはどうやってこの偉業を成し遂げたのか正確には教えてくれなかったが、ベゼルをよく見るといくつかの答えが見えてくる。

F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"
F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"
F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"

 私が見たところ、石はダイヤル近くにあるベゼル内側の見返しリングの下に収まっているようだ。外側のエッジには、金属(おそらくチタン)でできた小さなリボンのようなものがあり、これを外側のベゼルと石のあいだで圧力をかけ、ポリッシュ仕上げされた小さな鋲で留めて固定している。これは、キャンバスをフレームに固定する際、背面に“キー”を打ち込んで固定する古典的なプロセスを思い出させる。思いがけないことをするための、ちょっとした工夫なのだ。

F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"

 もしあなたが、この時計の魅力について壮大な答えを求めているなら、残念ながらここはそのような解答が得られるハンズオンではない。レインボーセッティングの時計がどこにでもある世界で、このレインボーウォッチのどこが楽しいのか、私にはよく分からない。この時計の写真をほかのチームメンバーに見せたら、予期せぬリリースに私だけが魅了されたと思っていたが、実際にはほぼ全員が同じようにジーノ ドリームをただ楽しいと感じたようだ。もしかしたら、この1週間(W&W)の錯乱状態や、スイスの時計業界の多くが真剣に取り組んでいるという事実のせいかもしれないが、私には必要なリリースだった。それまで私は、48mmのチタリットモデルの(ウェイティング)リストに名前を残しておくが、ジーノが自分の夢が実現するのを見て誇りに思うことを知っているので、今後数カ月のあいだに出るであろう同モデルを実際に見るのは楽しいだろう。

F.P. Journe's élégante "Gino's Dream"

F.P.ジュルヌ エレガント 48mm “ジーノ ドリーム”。直径40mm、厚さ7.95mm、ラグからラグまで48mm、チタンまたはチタリットコーティングのチタン製ケース、30m防水。ホワイトまたはブラックの夜光ダイヤル、ブルーまたはシルバーの針。エレクトロメカニカルCal.1210ムーブメント搭載、時・分・スモールセコンド、“スタンバイモード”機能(35分間使用しないとスタンバイ状態になるが、“起こす”と正しい時刻に針が動く)。日常的な使用で8~10年、スタンバイモードで約18年のパワーリザーブ。フォールディングクラスプ付きラバーストラップ。価格は4万ドル(日本円で約618万8000円)