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科学の力で人類が時間を制せるようになるのは、きっと随分先のことだろう。しかしデザインやものづくりの世界では、私たちは常に過去と現在、そして未来を自由に行き来してきた。伝統や技法を受け継ぎ、革新の土壌とする。歴史に学び、いまの感性で新しい姿を紡ぎ出す。そんなものづくりが、いつも私たちの心を惹きつけてきたのである。
スーツ7万8650円〈オーダー価格〉、モックネックニット2万900円、チーフ3850円/以上すべて麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム☎︎03-6426-5142)、ナビタイマー オートマチック 41 80万3000円/ブライトリング(House of Brands Japan株式会社☎0120-105-707)
四半世紀にわたってビジネスマンのためのスタイルを提案し、進化させ続けてきた麻布テーラーもまた、時の地平を往来しながら温故知新のパーソナルオーダーを体現してきた存在。毎シーズン欠かさずコレクションテーマを設けながら、移り変わる時代の先端を明確に表現し続けてきたのだ。2026年の秋冬は、「FIELD of ELEGANCE」というテーマを掲げ、いまのムードを鮮やかに描き出してみせた。イギリスの自然と文化によって育まれ、現在においてもテーラリングの大定番とされるフランネルやツイード。ジェントルマンの知性と礼節を託す、グレンチェックやハウンドトゥース(千鳥格子)などの伝統柄。これら歴史に裏打ちされた生地のエレガンスを紐解きながら、大きく変容する現在のライフスタイルに寄り添って再構築したコレクションである。たとえば、見た目は正統派のクラシックスーツなのに、スウェットのように伸縮するドレスジャージースーツ。曖昧になりつつある季節の境界をまたぎ、通年愛用できるトランスシーズナルスーツ。オーセンティックな佇まいでありながら、羽衣のようにひらりと羽織れるクラシックライトコート……これらは、世紀を越えて継承されてきたエレガンスを、現代生活の多様なフィールドで表現するための提案だ。イギリス、イタリア、フランスなど海外のトップメーカー、そして日本が誇る毛織物の聖地・尾州の老舗に別注した限定ファブリックも豊富に揃え、クオリティ面も一頭地を抜いている。そしてもちろんオーダーメイドゆえ、フィッティングやデザインのカスタマイズも自由自在だ。
そんな麻布テーラーのアルチザンシップは、時計を軸としたライフスタイルメディア、HODINKEE Japanが追求するウオッチメイキングの世界とも大いに通じる。伝統の美学と技術を磨きながら、広い視野をもっていまを歩み続ける。その繰り返しが、遥かな未来へと通じる時の糸として紡がれていくのである。ドレスウェアと本格時計の調和が映す、モダンな紳士像。その姿をここにご紹介しよう。
JAPAN MADE SUIT - 素材が持つ“本質”を現代的な仕立てで引き出す
スーツ7万8650円〈オーダー価格〉、モックネックニット2万900円、チーフ3850円/以上すべて麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム☎︎03-6426-5142)
近年、日本のクラフツマンシップが世界中で脚光を浴びている。その精緻で実直なものづくりが、今かつてないほど輝いているのだ。麻布テーラーは創業以来、日本国内に自社工場を構えてスーツを製作してきた。加えて日本屈指の生地メーカーと長年パートナーシップを結び、原料選びから仕上げまで深く入り込んでオリジナル生地の開発を行ってきた。その最たるものが「グランドマーキー」コレクションである。
写真スーツは、3プライウールという生地で仕立てたもの。3本の糸を1本に撚り合わせてから織ることで、仕立て映え抜群のハリコシを生んでいるのが特徴だ。品格にあふれたスリーピースを仕立てるには絶好の選択である。無地に見えて細かいチェック柄が配されているため、さりげない洒落心も演出可能だ。
ゴールドフェザーU.T.D. GBBY980 407万円/クレドール(セイコーウオッチ株式会社 お客様相談室☎0120-302-617)
合わせた時計は、端正な魅力に満ちたスリーピースに共鳴するクレドールの「ゴールドフェザーU.T.D.」。1960年に誕生した極薄ドレススタイルを継承しつつ、日本の感性で性能や美観を進化させた1本だ。グランドマーキー同様、実直な職人技の賜物である。羽根をモチーフとした優美なダイヤルは、ハリのあるエレガントなスーツに華を添える。
このほかにも同コレクションでは、1本の経糸が緯糸を3本ずつまたぎながら交差するツイル地や秋冬の定番・フランネルを用いたスーツも用意。いずれにも共通するのは、素材の本質を生かした作り込みだ。生地の特性を知り尽くした麻布テーラーだからこそ叶うクオリティなのである。
NEW DRESS JERSEY SUIT - 着心地と格式を兼備するジャージースーツ
スーツ13万7500円、シャツ1万7600円〈ともにオーダー価格〉、ネクタイ1万450円、チーフ1650円/以上すべて麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム☎︎03-6426-5142)
いまやビジネスウェアの主流になりつつある、ジャージー素材のスーツやジャケット。一日中着ても窮屈さを感じさせないストレッチ性と柔らかな着心地、シワになりにくいイージーケアな魅力を合わせもつ。とはいえ本格的なクラシックスーツに比べると、格式という面では一歩譲らざるを得ない。快適さは欲しいがエレガンスを犠牲にするのは……、と二の足を踏んでいた人も少なくないだろう。
そんなジレンマを解決するのが「ドレスジャージー」スーツ。イタリアのドンディ社に別注をかけ、ダブルジャカードという技法で編み立てたコンフォート素材である。ご覧のとおり、クラシックなスーツと見分けがつかないほど構築的な佇まい。それでいて着心地はジャージーそのものという画期的な一着なのだ。生地もさることながら、それを活かす仕立ての技術も見逃せない。今季はドレスジャージーに最適な新モデルも開発。軽快な着用感はそのままに、8.5cmのラペル幅と低めのゴージで品格を高めているのが特徴だ。これぞ、エグゼクティブのニュースタンダードである。
マスター・コントロール・クロノメーター・デイト 924万円/ジャガー・ルクルト(ジャガー・ルクルト☎0120-79-1833)
伸縮自在なジャージー素材ながらタイドアップも決まるスーツに合わせたのは、ジャガー・ルクルトの「マスター・コントロール・クロノメーター・デイト」。1950年代から続くドレススタイルの黄金比を守りつつ、現代的な実用性を兼ね備えた時計は、ドレスジャージーに通じるものがある。
TRANS SEASONAL SUIT - 季節もシーンも横断するスーツ
スーツ10万650円〈オーダー価格〉、Tシャツ9900円/ともに麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム☎︎03-6426-5142)
スーツ10万650円、シャツ1万7600円〈ともにオーダー価格〉、ネクタイ1万3200円、チーフ1650円/以上すべて麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム☎︎03-6426-5142)
気候変動や働き方の変化により、スーツには季節を問わず通年着回せる万能な一着が求められている。麻布テーラーではイタリアのマルラーネ社の革新素材を用い、時代の要求に応じる「トランスシーズナルスーツ」を展開。目付280gという絶妙なウェイトに加え、ウールにポリウレタンを巻きつけた特殊構造の緯糸によりストレッチ性と防シワ性も備えている。ラグジュアリーな光沢や、織組織により表情のある黒、80年代風のシックなベージュなど旬の色柄が装いを洗練させてくれる。
極薄の肩パッドと柔らかな芯地で軽快な着心地を追求し、パッチポケットの採用でカジュアルにも着こなせる一着を提案しているのが麻布テーラーらしい。品格と機能性を両立させたこの万能スーツには、「伝統と機能の融合」を体現する時計を合わせたい。
ポルトギーゼ・クロノグラフ140万5800円/IWC(IWC シャフハウゼン☎0120-05-1868)
手元にはIWCが誇るロングセラー「ポルトギーゼ・クロノグラフ」を。径42mmの大振りなケースにクロノグラフを搭載した時計は、30年近く驚くほどデザインを変えていない。その完成された個性は、シーンを軽々と飛び越えるトランスシーズナルスーツを腕元で力強く支える。
クラシックな意匠に現代の実用性を秘めた時計の精神性は、伝統仕立てと機能素材を掛け合わせたスーツの哲学と結びつく。
CLASSIC LIGHT COAT - たどり着いた軽さの再定義
コート8万4150円、スーツ9万7350円、シャツ1万8700円〈以上すべてオーダー価格〉、ネクタイ1万450円/以上すべて麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム☎︎03-6426-5142)、ナビタイマー オートマチック 41 80万3000円/ブライトリング(House of Brands Japan株式会社☎0120-105-707)
コート8万6350円、スーツ11万9350円〈ともにオーダー価格〉、モックネックニット2万900円、マフラー2万900円/以上すべて麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム☎︎03-6426-5142)、マスター・コントロール・クロノメーター・デイト 924万円/ジャガー・ルクルト(ジャガー・ルクルト☎0120-79-1833)
ビジネススタイルにも軽快感が欠かせない現在。クラシックなコートも例外ではなく、裾を翻しながら颯爽と歩ける一着がモダンジェントルマンの必需品である。毎年、秋冬にはコートをひとつの柱に据える麻布テーラーもまた、そんな時流に即した新作のライトコートを発表。正統ドレスコートからカジュアルにも着られるバルマカーンコートまで多彩なデザインを展開しつつ、それぞれに最適なアプローチで軽快化を実現している。着心地が快適なのはもちろん、見た目にも大きく影響してくるところがポイントだ。たとえば、タイドアップしたスーツにチェスターフィールドコートという王道ビジネススタイル。端正さや品格は堅持しつつ、軽快感によって現代的にアップデートされた印象を演出できる。いっぽうバルマカーンコートを仕立てれば、持ち前の汎用性がさらに拡大。ジーンズでさらりと着流したカジュアルスタイルもいっそうサマになる。
オーセンティックなチェスターコートにはラペルにも毛芯を採用したり、スポーティーなラグランスリーブコートはライト裏地仕様にしたりと、細部の仕立てもデザインに応じて最適化。冬の装いをアップデートしたい人にとって理想的な一着となるだろう。
CLASSIC URBAN COAT - クラシックのなかにも時代に見合うゆとりを
コート16万3350円、シャツ2万3100円、パンツ3万7400円〈以上すべてオーダー価格〉、タートルネックニット2万2000円/以上すべて麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム☎︎03-6426-5142)、デ・ヴィル プレステージ77万円/オメガ(オメガ☎0570-000087)
暖冬が続く昨今、しかしいつの時代もコートは冬の主役である。麻布テーラーは今季、洗練されたカジュアルスタイルにもマッチする新型コート3型を開発。写真はアルスターコートで、下襟を柔らかく湾曲させたベリードラペルが印象的だ。生地はフランスの名門・ドーメル社のアルパカ素材を採用している。時計はデ・ヴィル プレステージを。歴史ある顔立ちに実用ムーブメントを乗せた堅実さが装いを引き締める。伝統を現代に落とし込む時計をスタイルに重ねつつ、こんな足し引きも楽しんでみたい。
TWEED JACKET - 伝統的な素材を日常で身に纏う
ジャケット8万4700円、シャツ、パンツともに1万7600円〈以上すべてオーダー価格〉、マフラー2万900円/以上すべて麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム☎︎03-6426-5142)、クロノマスター スポーツ165万6600円/ゼニス(LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス☎03-3575-5861)
1960〜70年代に隆盛したトラッドスタイルが近年、世代を超えたムーブメントとしてリバイバルしている。その象徴的なアイテムがツイードジャケットだ。大自然の風景が生んだ温もりある表情、貴族文化とも密接に結びつきながら受け継がれてきた由緒の正しさ。そんな歴史的背景を楽しめる服である。今季の麻布テーラーは、ツイードジャケットの伝統美にフォーカスした提案を展開。写真はともに英国のマラリウス社が手がけた生地を使用しているが、仕立ての妙でトラッドムードが一段と高められている。
こちらはサファリジャケットの意匠を取り入れた一着。特徴的な四つポケットを踏襲しつつ、テーラードジャケットのカッティングと融合することでタウンユースに仕上げている。巧みな解釈で蘇った伝統ジャケットに改めて注目したい。
背中には腕の可動域を高めるアクションプリーツを、袖にはエルボーパッチを採用。ともにクラシックなサファリジャケットから受け継いだ意匠だ。手元はゼニスの新たな定番「クロノマスター スポーツ」。本格的な機能を美観に昇華させた顔つきに、ジャケットとの密かな親和性を託したい。
Photographs : Kazuki Nagayama Styling : Masahide Takeuchi Hair & Make : Go Utsugi[PARKS] Model : Daisuke[donna] Words : Hiromitsu Kosone
※本特集はTHE NIKKEI MAGAZINE STYLE azabu tailor × HODINKEE Japan 2026-2027 Autumn/Winter CATALOGからの転載にあたり、一部を抜粋・編集したものです。
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