阪急うめだ本店の時計売り場は、2026年3月に“HANKYU LUXURY”としてリニューアルされた。オープンなデザインのブースを回遊しながら、各ブランドの時計を見比べることができる。同じフロアにはラグジュアリーメゾンのブティックもあり、時計を装いの一部として考えるときに、関連するアイテムを合わせて見ることもできる。そんな阪急うめだ本店には数多くのブランドがあり、デザインもスタイルも多様だからこそ、先入観にとらわれず、ニュートラルな姿勢で時計と相対する。そんなときに、思わぬ出合いがあるものだ。
プレミアム ウォッチ エキスポ 2026と“Beyond Time and...”
阪急うめだ本店の時計売り場は、2026年3月に“HANKYU LUXURY”として生まれ変わった。
ゲートや灯ろうをモチーフにしたガラススクリーンと白い柱が、売り場同士をゆるやかにつないでいる。柱のあいだから先の景色が見え、次の時計を探しながらさらに進みたくなる。
HANKYU LUXURYの6階に設けられたウォッチラウンジ。今後は顧客を招き、アートや映画といったさまざまな文化と時計をテーマにしたイベントを開催していく予定だ。
HANKYU LUXURYを中心とした時計イベント、プレミアム ウォッチ エキスポ 2026は、11月4日(水)から24日(火)まで開催される。今回のテーマは“Beyond Time and...”。時間(Time)という概念の先に、あなたは何を見出すのか? それは時代を超える“伝統の継承”かもしれないし、常識を塗り替える“イノベーション”かもしれない。時を忘れて惹き込まれる“情熱”に心奪われるかもしれない。
阪急うめだ本店に数多くの時計が並ぶなか、今回はテーマである“Beyond Time and...”を手がかりに、HODINKEEが特徴ある魅力を備えた6モデルを厳選した。我々が注目したこれら6本の魅力について、阪急百貨店のジュエリー&ウォッチバイヤー、村田竜一氏とともにひも解いていこう。
ブランドの物語に、身に着ける人の感性が重なる
ベル&ロス BR-03 スケルトン スティール、Ref.BR03A-BL-SKST/SRB。86万9000円(税込)。
41mmのSS製スクエアケースに自動巻きCal.BR-CAL.328を搭載。このキャリバーはベゼルとムーブメントをX形の構造で結び、スケルトンダイヤル越しに機構の動きを見せる。パワーリザーブは約54時間。
ベル&ロスは、アイコニックなBRシリーズで小ぶりなサイズも展開し、ダイヤルの表現やスケルトン仕上げなど、手に取りやすい価格帯でおもしろいモデルを提案している。個性の強さに加え、意表を突くギミックもブランドの魅力だ。現在、阪急うめだ本店および阪急メンズ大阪ではポップアップを展開しており、村田氏は「同店ではそうした個性を備えたモデルを展開しています」と話す。時計好きだけでなく、ファッション感度の高い人にもベル&ロスを知ってもらいたいという。時計に詳しくない人にとっても、この個性的なデザインは関心を持つきっかけになるだろう。
ブルガリ オクト フィニッシモ、Ref.104120。753万5000円(税込)。
37mm径の18Kイエローゴールドケースと一体型ブレスレットを備える。プラチナ製マイクロローターを採用した自動巻きCal.BVF 100は厚さ2.35mmで、約72時間のパワーリザーブを確保する。
オクト フィニッシモに37mm径のケースが加わったことは、今年のハイライトのひとつだ。店頭では、マイクロローターを用いた40mm径の薄型モデルと見比べ、実際に着けてサイズ感を確かめることもできる。37mm径は日本人の手首にもなじみやすく、ゴールドモデルを選ぶ際にも検討しやすいサイズだ。またゴールドは膨張色でもあり、大型ケースでは手首での存在感がより強くなる。その点、37mm径なら華やかさと着用感のバランスを取りやすい。村田氏も「存在感と着用感のバランスに優れています」と話す。ファッションでも時計でもキーワードとなっているクワイエットラグジュアリーを意識するなら、ジュエラーとしての一面も持つブルガリで、小ぶりなゴールドモデルを選ぶのもおもしろい。「会期中の11月11日(水)から17日(火)には、5階コトコト51で“イタリアの美とスイスの技術の融合”と題したブルガリのイベントも開催されますので、ぜひお越しください」
ジェラルド・チャールズ マスターリンク パーペチュアルカレンダー、Ref.ML11.0-TNBR-TNSB-BR00SR-TNDP。1386万円(税込)。
マスターリンクの系譜は、ジェラルド・チャールズ・ジェンタが2007年に手がけた一体型ブレスレットウォッチにさかのぼる。自社製の超薄型自動巻きCal.GCA11000は、オフセットマイクロローターを備え、永久カレンダーとムーンフェイズを表示。
阪急では通常取り扱いのないジェラルド・チャールズが、今回のイベントに合わせて11月6日(金)から8日(日)までの3日間限定で受注販売会を開催する。天才時計デザイナーであり、時計界のピカソとも称されたジェラルド・チャールズ・ジェンタの意匠を受け継ぐモデルは生産数が少ない。「特に永久カレンダーモデルは生産数が少なく、実際に手に取れる貴重な機会になるでしょう。こういった時計を手にしたい方には、きっとアーティスティックな嗜好があるはず。そこで今回は、映画『国宝』などで活躍した特殊メイクアップアーティストのAmazing JIROさんとのコラボレーションを企画しました」。展示スペースには、Amazing JIRO氏が今回の時計に合わせて特別に製作した、時計の什器も兼ねる腕型のオリジナル・リアルオブジェが飾られる。期間中は本人もブースに滞在する予定で、来場者が直接話を聞くこともできる。
グランドセイコー エボリューション9 コレクション、Ref.SLGH029。151万8000円(税込)。
搭載するメカニカルハイビートCal.9SA5は、3万6000振動/時で駆動し、最大巻上時には約80時間のパワーリザーブを確保する。デュアルインパルス脱進機とツインバレルにより、高振動でありながら長い駆動時間を実現。独自の水平輪列構造で薄型化も図っている。
「最近のグランドセイコーの勢いには驚いています。売り場に立っていると、この1年ほどで潮目が大きく変わったことを実感します。モデルによっては1~2年待ちの状況にもなっています。理由はやはり品質ですね」と村田氏は語る。グランドセイコーは元々北米で早くから支持されていたが、今ではヨーロッパやアジア諸国からの注目も高まっている。このSLGH029は、人気の高い“白樺ダイヤル”を新たに解釈したモデルだ。夜の白樺林の静かな光景をモチーフにした型打ちダイヤルを採用し、ケースとブレスレットには明るい色味のブライトチタンを用いる。バックルも改良され、使いやすさが高められた。「実際に手首に乗せて時計を見ると、顔つきがいい。デザインは洗練されていて、軽くて日常使いしやすいですし、日本のものづくりのよさがしっかり表現できています」と同氏は評価する。
ジャガー・ルクルト マスター・コントロール・クロノメーター・パーペチュアルカレンダー、Ref.Q4178180。800万8000円(税込)。
ケース径39mm、厚さ9.2mm。5気圧防水を備える。搭載する自動巻きCal.868は永久カレンダーとムーンフェイズを搭載し、約70時間のパワーリザーブを確保。
この新しいマスター・コントロールも、今年話題になったモデルのひとつ。近年の時計市場の主役は、間違いなくラグジュアリースポーツウォッチだったが、この新しいマスター・コントロールは、ラグジュアリースポーツウォッチよりもエレガントで、ドレスウォッチよりもスポーティという絶妙なポジションだ。「これからの時代のユーティリティプレイヤーとして注目しています」と村田氏も話す。ジャガー・ルクルト マスター・コントロール・クロノメーター・パーペチュアルカレンダーは5気圧防水を備え、日常使いにも不足がない。ケースサイズは39mmと控えめで、ブレスレットのつくりも素晴らしい。厚さ9.2mmのケースに永久カレンダー機構を搭載している点からも、複雑機構を薄型にまとめるジャガー・ルクルトの技術力がうかがえる。
チューダー ブラックベイ 68、Ref.m7943a1a0nu-0002。75万6800円(税込)。
直径43mmのSSケースに自社製Cal.MT5601-Uを搭載。METAS認定を受け、約70時間のパワーリザーブと200m防水を備える。
プレミアム ウォッチ エキスポ 2026の初日から1週間、1階のイベントスペースでは、チューダーとパートナーシップを結ぶ日本相撲協会の協力を得て、ポップアップストア “阪急うめだ場所”が開催される。このブラックベイ 68は、小型化という昨今のトレンドとは異なる、43mmという大型ケースのチャレンジングな提案だ。村田氏が「誰もが力士の方のような体格ではありませんが、それでもこの大きなケースを着用してみると、不思議としっくりきます」と語るように、日常的に使い込んで楽しめるブランドだからこそ、こうした大きな時計も似合うのだろう。しかもこの価格帯でありながら、高精度&高耐磁のMETAS認定を取得した自社製ムーブメントを搭載している点も魅力だ。「こういう挑戦を続ける姿勢も含めて、もっと深く知ってもらいたいブランドですね」と同氏は期待を寄せる。
今回紹介した6本には、機構の動きに目を向けたくなる時計もあれば、素材やデザイン、装着感にひかれる時計もある。ブランドが重ねてきた技術や物語に触れ、着用したときの印象を確かめると、スペックだけでは見えてこない個性も感じられる。
Beyond Time and...の先を探すことは、自分が時計のどこに惹かれるのかを知ることでもある。ブランドを横断して見比べ、気になるモデルを手首に乗せる。そうした体験を通して見えてくる自分なりの基準が、これから選ぶ1本の手がかりになるはずだ。
Photos:Akira Maeda(MAETTICO), Azusa Todoroki(Bowplus Kyoto) Styled:Eiji Ishikawa(TRS) Words:Tetsuo Shinoda