My Grand Seiko: ビル・アドラー - Hodinkee Japan (ホディンキー 日本版) trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag
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My Grand Seiko: ビル・アドラー

アメリカで人気のベストセラー作家であるビル・アドラー氏。グランドセイコーを全く知らなかったところからわずか数年で、20本以上も収集したコレクターだ。同氏に自身のコレクションを交えながらグランドセイコーの魅力を語ってもらった。

ビル・アドラー(Bill Adler)とは?
1957年、アメリカ・ニューヨーク生まれ。東京を拠点に活動するアメリカ人作家。ニューヨークのアパートの庭に設置した鳥の餌箱にリスが侵入し餌を盗んでいるのを見て、その対策方法をまとめた『Outwitting Squirrels』を31歳で執筆。これがベストセラーとなり本格的に執筆活動をはじめる。同書のほかに20冊以上の著書がある。

 「今ではグランドセイコーだけで20本以上所有するまでになりましたが、もともとこのブランドのことは全く知りませんでした。今から5〜6年くらい前、当時ワシントンD.C.に住んでいた私には、東京に住むガールフレンドがいました。毎月のように10時間以上かけて2つの国を行ったり来たりする生活をしていたあるとき、帰国する前にふと何か日本にまつわる特別なものを持ち帰りたいと思ったのがきっかけでした。実は子供のころから腕時計は好きで、日付ディスクが切り替わる瞬間を見たくて夜中まで起きていたことがあったくらいです。20歳のころからは数年に一度腕時計を買っていたので、すぐ日本製の腕時計というアイデアを思いつきました。メイド イン ジャパンの腕時計を求めて新宿の時計店を訪れ、グランドセイコーと出会ったのです」


SBGW031: マイ ファースト グランドセイコー

 時差13時間の国際遠距離恋愛のなかでアメリカにいても日本とのつながりを感じたいと特別な品を求めたビル氏が手にとったのは、グランドセイコーの機械式腕時計だった。

 「その店には、スイスやドイツ製の腕時計から私のお目当ての日本ブランドの時計まで何でも揃っていました。数多く陳列された腕時計のなかでひと際目を引いたのがこの『SBGW031』でした。ラウンドケースにアイボリーダイヤルを備えたとてもシンプルな3針のタイムオンリーウォッチですが、なぜかとても目を奪われたのです。ショーケースから取り出してもらい針を回してみると、これまで私が触ったことのあるどの腕時計とも違う本当にスムーズな巻心地に感動しました」

 「手に入れたばかりのSBGW031を手首に巻いてアメリカに帰りました。ワシントンD.C.に到着して腕時計に目を落とすと、まぁこれは当たり前なのですが、まだ日本の時間を刻み続けていました。風防の中には日本の空気が閉じ込められているような、そんな不思議な感じがしたのを今でも覚えています」

コレクションにつながる1本: SBGW231

エレガンスコレクション SBGW231 49万5000円(税込)。

 『SBGW231』は、2017年のグランドセイコーのブランド独立化に伴って、同氏が手に入れたSBGW031の後継機として登場したモデルだ。SBGW231ではクラシックなデザインはそのままに、SBGW031で12時位置にあった"SEIKO"ロゴが取り払われ、かつて6時位置にあった"Grand Seiko"ロゴが12時位置に配された。内部のムーブメントもCal. 9S54から次世代のCal. 9S64へ置き換えられた。MEMS製法による脱進機の採用によって精度が向上。さらに約50時間だったパワーリザーブは約72時間へと向上している。

職人の手作業で施されたザラツ研磨によって、歪みのない鏡面が実現されている。

ソリッドケースバックからトランスパレントバック仕様となったことで、そのムーブメントを目で堪能することができる。

 「実はSBGW231も私の欲しい物リストのうちの1本なんですよ。グランドセイコーの腕時計には、家族的類似性が見られます。初代グランドセイコーから最新モデルに至るまで、デザインやスタイルに類似点や共通する部分がありますよね。まるで家系図のように脈々と紡がれてきている。これも私がグランドセイコーを好きな理由です」

 ビル・アドラー氏が語る「家族的類似性」は、グランドセイコーのデザイン文法である「セイコースタイル」からくるものだろう。1967年に誕生した44GSによって確立され、現在に至るまで全てのグランドセイコーに取り入れられている。

 「文字盤上の"SEIKO"ロゴの有無に関しては賛否あると思いますが、個人的には変更されてよかったと思います。幅広く多数の時計を作っているセイコーからブランドとして独立したことで、職人たちによる高級腕時計づくりというひとつの方向に集中していることがより伝わってきます」


SBGA421: 探し求めた"レッドフレーク"

 グランドセイコー愛好家たちの間で「雪白」や「スノーフレーク」の愛称で親しまれる独特な文字盤を備えたモデルがある。同氏がコレクションから取り出して見せてくれたのは、それらのなかでもAJHH(日本正規高級時計協会)が手掛けた希少な限定モデルだった。

 「スノーフレークは多くのグランドセイコー好きたちがそうであるように、ずっと私の憧れの腕時計のひとつでした。色違いも含めいくつかのバリエーションがありますが、個人的にずっと探していたのは一部のコレクターたちの間で、"レッドフレーク"と呼ばれる『SBGA129』。基本的には通常のベーシックな雪白モデルと同じですが、文字盤上のパワーリザーブインジケーター針と"SPRING DRIVE"の文字が紅色であるのが特徴です。AJHH限定モデルで、369本しか作られなかったため、あちこち探しても見つけられませんでした。もう手に入らないかもしれないと諦めていたときにこのSBGA421が発売されたのです」

 「SBGA421は、オリジナルのレッドフレークSBGA129と同様にパワーリザーブインジケーター針と"SPRING DRIVE"の文字が紅色です。またそれだけでなく、サファイアガラスの内側と秒針にも紅色が取り入れられています。12時位置のブランドロゴがゴールド色になっているのも特別ですし、ひと目見てこれだと思いました」

 「実は私はこの時計を5本購入しています。1本は自分自身のために、そしてあとの4本は、海外に住むグランドセイコー好きの私の友人たちに依頼されたものです。特定のシリアルナンバーのものが欲しいという友人もいたので、東京中の店舗を探しました。あとからまた別の3人に欲しいと言われましたが、ソールドアウトでした。実は私のクローゼットに今も友人の手に渡るのを待っている1本があるんです。彼の喜ぶ顔を見るのが待ち遠しいです」

コレクションにつながる1本: SBGA211

ヘリテージコレクション SBGA211 68万2000円(税込)。

 まるで新雪が積もった雪原を連想させる独特な文字盤を備えたSBGA211。独特な模様が型押しされたあと、コーティングが重ねられることで透明感が生み出される。内部に搭載されたスプリングドライブCal. 9R65によってブルースティールの秒針がその文字盤上を滑らかに這うように動いていく。機械式腕時計ともクォーツ腕時計とも異なる秒針の動きに魅了される愛好家は少なくない。

SBGA211が生産される信州の穂高連峰に降り積もる雪面をイメージした文字盤。

自動巻スプリングドライブムーブメント。

 「もちろん大好きな腕時計ですよ。ミディアム(Medium)というウェブサイト上に、スノーフレークと家族愛をテーマにしたストーリーを書いたくらいです。文字盤の美しさはもちろんですが、秒針の動きも魅力的ですね。スプリングドライブの秒針の動きを見ていると、実はこの技術はもっと先の未来、例えば2030年くらいから過去に持ち込まれたのではないかと思ってしまいますね」


SBGV243: 職人の魂を宿したクォーツモデル

 ビル・アドラー氏のコレクションのなかには、スポーティなモデルもあった。ブラックの文字盤にイエローのアクセントが施された「SBGV243」だ。クォーツムーブメントを搭載しているため11.8mmと薄型だが、切り立ったベゼルや縦方向に入った筋目がタフな印象を与えるモデルである。

 「時計愛好家のなかには、クォーツウォッチを軽視している人もいますよね。私もかつてはそうでした。前にグランドセイコーのクォーツウォッチを購入した友人になぜ買ったのか理由を聞いたことがありますが、そのときは彼もはっきりと答えられませんでした。それから2年くらいして、9Fクォーツは私のコレクションに必要だと感じたのです。グランドセイコーのクォーツムーブメントは、他の一般的なクォーツと違って職人がひとつひとつ手作りしていることはもちろん、デザインを含めたパッケージ全体が素晴らしいと思います」

 「クォーツを手にして気づいたのが、文字通り何も気にせずに使うことができるということ。例えば、急に出かけることになりパッと手にとって手首に巻いて家を飛び出ても、正確な時間を刻み続けていることは文字盤を見なくてもわかります。常に安心感があるんです」

 「イエローを選んだのは、自分のコレクションにこれまで無いものをと思ったからという理由もあるのですが、気分を明るくしてくれるカラーだから。エネルギッシュで、朝見たら元気をくれるそんな腕時計ですね」

コレクションにつながる3本: SBGN019、SBGN021、SBGN023

左からスポーツコレクション SBGN021 50万6000円(税込)、セイコー創業140周年記念限定モデルのSBGN023 60万5000円(税込)、SBGN019 50万6000円(税込)。

 グランドセイコーのクォーツGMTモデルに2021年新作として追加された3モデル。ブラックダイヤルにレッドのアクセントを備えたSBGN019、ブルーダイヤルとブルーのアクセントのSBGN021、そしてゴールド色とブラックの組み合わせで2021本限定のSBGN023だ。直径40mm、厚さ13.7mmのステンレススティールケースにセラミックベゼルを搭載。内部のクォーツムーブメントCal.9F86は、瞬間日送り機構、秒針を止めることなく時差修正ができ、その精度も年差±10秒を実現している。

文字盤に放射状のパターンが施されている。

エッジの効いたシャープなケースはタフさを主張するデザインだ。見た目のタフさは、20気圧の防水性能や1万6000A/mの強化耐磁性能の機能美を映し出している。

 「スポーティなルックでどれも本当にクールですね。どれか選ぶなら私はブルーがいいですね。ベゼル、文字盤、そしてGMT針に使われている異なる色調のブルーの組み合わせがとても美しい。文字盤は光の加減によって様々な表情を見せるのが素敵です。限定モデルのSBGN023も好きですが、自分が外に出てアクティブなシーンで使うことを考えると、空や海を連想させるブルーが一番合うと思います」


ビル・アドラー氏にとってグランドセイコーとは

 「グランドセイコーは、心地よさと刺激の両方を兼ね備えた存在です。長く使える信頼できる腕時計であり、いつ見ても何か新しさを感じさせてくれるのです。グランドセイコーの腕時計を見て、正直、これは欲しくないなと思ったことはないんですよ」

 「私にとってグランドセイコーは、例えるなら行きつけの大好きなレストランのような感覚です。好きなひと皿があるとか、そこのシェフが好きだとか行く理由がたくさんありますが、一番嬉しいのは、よいサプライズがあったとき。これからもそうしたサプライズがグランドセイコーからあったら嬉しいですね。とても楽しみです」

Photographs by Yoshinori Eto Styled by Hidetoshi Nakatou Words by Masaharu Wada

〇衣装協力
ブレザー5万9400円 パンツ1万8480円/ともにバーンストーマー シャツ1万9800円/キクス ドキュメント.(すべてHEMT PR☎︎03-6721-0882) その他スタイリスト私物