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In Partnership

ATTESA HAKUTO-R 5th Edition 宇宙に行った素材を纏う腕時計

日本における民間初の月面着陸を目指すHAKUTO-Rと、シチズン・アテッサのコラボレーションモデルは、今回2024年11月にいよいよ第5弾に突入する。「HAKUTO-Rが挑む宇宙空間に広がる闇と、僅かな光」をデザインのテーマにしたという漆黒の3本。その背景にあるストーリーとは何なのだろう。 #PR

HAKUTO-Rプログラムとアテッサのコラボレーション。その第5弾となる3モデルが2024年秋に登場することとなった。HAKUTO-Rとは宇宙スタートアップ企業「ispace(アイスペース)」が進める、民間月面探査プログラムであり、シチズンは2019年以来そのコーポレートパートナーの1社に名を連ねている。なぜ国産時計メーカーの1社であるシチズンが宇宙産業に関わることになったのか、その発端はアテッサをはじめ、時計のために開発してきたスーパーチタニウム™︎のポテンシャルが、ispaceの担当者の目に留まったことにあったという。ランダーの着陸脚、つまり月面に実際に降り立つ重要なパーツの一部をシチズンがスーパーチタニウム™︎で製造・納品する形で協業が始まったのだ。

ATTESA HAKUTO-R 第5弾コラボレーションの3モデル。

 2019年当時、HAKUTO-Rがシチズンのスーパーチタニウム™︎に着目、採用した理由についてispace でCRO(チーフ・レヴェニュー・オフィサー)を務める斉木敦史氏は次のように語っている。「私たちが着陸脚部のパーツに求めていた要件は、大きく分けて強さ、軽さ、そして滑らかさでした。宇宙空間に飛ばす以上、軽量化が必須となる一方で、地球上とは異なる振動や重力の負荷に耐えなくてはなりません。宇宙空間で無重力にさらされることもあれば、月面では重力は6分の1。気温に関していえば夜は−170℃で昼は100~110℃にもなり、放射線も絶えず降り注ぎます。そんな環境に耐えうる素材は何かと考えていたところ、社内メンバーが持っていたシチズンのスーパーチタニウム™︎製の時計に目が留まりました。彼は他社のチタニウムウォッチも所有していたのですが、特にシチズンの時計には傷がつきにくいと話していたのです」。ispaceのエンジニアが初めて実験した際、その耐久性、耐傷性はもちろん、DLCコーティング技術による表面の摩擦係数の低さに驚いたという。「ランダーの機体の大部分はアルミですが、脚の可動部には高い耐久性とスムーズな駆動が求められます。さまざまな検証の結果、スーパーチタニウム™︎が最適だという結論に至りました」

スーパーチタニウム™︎を使用したアテッサのフラッグシップモデル、CC4055-65Eとシチズンによるランダー着陸脚部パーツ。

 かくしてスーパーチタニウム™︎製のパーツを搭載したHAKUTO-Rランダー。2022年末から2023年春に行われたミッション1では、着陸寸前に通信が途絶えてしまった。そのため悲願の月面着陸はミッション2に引き継がれる形になったが、斉木氏はこう続ける。「ロケットの打ち上げ後、宇宙空間でランダーが切り離される映像をじっと見ていました。宇宙に放たれたランダーのたたんだ脚が、ぽんと開いて伸びる。その動きは非常に滑らかで、その瞬間にはそれこそ映画のように管制室で皆が抱き合って喜びました」。4本の脚すべてがスムーズに展開し、ランダーがシステム上で機能していることを目で確認できたこと自体が、ミッション1における大きな成果だったという。

 2024年12月に再び予定されているミッション2では、月面着陸の最終フェイズまで実現すべく、現在も万難を排しての準備が続く。月着陸船「シリーズ1ランダー」は「RESILIENCEランダー(レジリエンスは‘しなやかな回復’の意)」へ、搭載される小型月面探査車は「TENACIOUSローバー(テネシアスは‘粘り強い’の意)」に改められ、リベンジに期する関係者たちの執念がうかがえる。

 「前回(ミッション1)はハードウェアではなく、着陸姿勢を作動させるソフトウェア制御の問題でした。そのため、ランダーの着陸脚部に変更はありません。もちろん剛性や吸収力が不足していたら着陸失敗も考えられますから、ミッションの成否を左右する重要なコンポーネントです。第1段階を突破してスーパーチタニウム™︎製のパーツがきちんと作動してくれたから、その先に続く長い旅に向き合えています」


シチズンが誇る先鋭技術、その象徴として生まれたアテッサ

1970年 エックスエイト クロノメーター

 スーパーチタニウム™︎に至るシチズンの技術開発の歴史は、1970年の世界初のチタニウム時計「エックスエイト クロノメーター」に遡る。それまで時計のケース外装といえば貴金属やステンレススティールが一般的だったが、シチズンは航空機や宇宙工学で用いられる当時の最先端をいち早く時計に落とし込んだ。チタニウムの特長としては軽くて強度が高く、金属アレルギーを起こしにくいうえに錆びにくいことが挙げられる。しかし同時に、加工の上で“打てない・削れない・磨けない”の3重苦が揃った金属でもあった。つまり、プレス成型から切削、研磨に至るまでとにかく加工が難しい素材だったのだ。しかしシチズンは長年かけてチタニウムと向き合い、独自の加工技術を確立させていった。

 「1987年の初代アテッサは、ケースもブレスもすべてチタニウムで作られた時計でした。ブレスのコマのような細かなパーツまでチタニウムにできたのは、1970年以来17年にわたり磨き続けてきた加工技術のおかげでした」と、アテッサの商品企画を担当する宮原氏は胸を張る。

1987年にシチズン初のフルチタニウムウォッチとして登場した初代アテッサ。

 以降、歴史的にシチズンのコアとなるテクノロジーと先進性を象徴するシリーズであり続けている。1度のフル充電で半年以上動き続ける光発電エコ・ドライブや、正確な時刻を衛星から自動修正するサテライト ウェーブ GPS、原子時計から送信される標準電波受信機能、さらに電波時計の情報に基づいてその日の月齢を表示するルナプログラムなど、アテッサはシチズンの先端技術のなかでも親和性の高いものをいち早く搭載してきた。シチズンにはプロマスターのように、エクスプローラー領域に属する高機能シリーズもある。しかしアテッサは先鋭的な技術を搭載しながらそれを強調しすぎることなく、現代的なライフスタイルに落とし込めるルックスを意識してきた。鋭い稜線、シャープなフォルムから生まれるスタイリッシュな高級感を評価する声は昨今高まっており、顧客のなかには先進的な機能以上にデザインを評価し、リピートする人も増えているのだという。

 そのアテッサがケースやブレスレットの外装技術として採用してきたのが、表面にデュラテクト(表面硬化技術)を施したスーパーチタニウム™︎だ。

 チタニウムは軽量・高強度ながらそのままでは表面に傷がつきやすく、加えて独特の質感や暗めのトーンゆえに高級時計に求められるような艶や輝きを出しにくかった。そこで日常使いでの耐スクラッチ性を高め、外装色をコントロールでき、綺麗な状態を長く保てるデュラテクトという加工を編み出すに至った。その開発には世界で初めてチタニウムを時計に落とし込んだ企業であるという矜持と、そこから生まれる挑戦心もあったという。なお、HAKUTO-Rコラボレーションの第5弾の各モデルに使われている結晶チタニウムも、熱処理を施すことで表面に結晶パターンを出現させる、チタニウムという素材の表情を切り取ったノウハウの一部だ。

「当時チタニウムを扱ううえで競合となったりベンチマークとなったりするような企業があったわけではなく、時計とチタニウムの親和性を高めるという目的を追求するなかでスーパーチタニウム™︎は生み出されたといえます」(宮原氏)

 そうして誕生したスーパーチタニウム™︎はシチズン内のさまざまなブランドで使用されているが、アテッサでは現在全ラインナップの製品に採用している。そこには、シチズンの光発電エコ・ドライブ電波系ブランドのなかでも最上位に位置するという自負があるという。

スーパーチタニウム™︎を使用したアテッサのフラッグシップモデルであるCC4055-65E。

 なおスーパーチタニウム™︎でHAKUTO-Rのランダーパーツを製造するにあたって、時計とはサイズが異なるために治具の見直しなどがあったり使用される傘下の工場が限定されたりはしたものの、工程自体に大きな変更はなかったという。数回にわたって行われたispaceとのパーツの調整も、ミクロン単位で寸法を詰めていく作業が主であった。これはシチズンが保有する技術が、すでに宇宙事業に進出する水準に達していたことの証左にほかならない。

宇宙の“闇”を表した、HAKUTO-R コラボレーション第5弾

CC4067-66E

 これまでのHAKUTO-Rコラボモデルも、カラーやデザインを変えながら漆黒の宇宙とHAKUTO-Rが向かうべき月の輝きを表現してきた。だが新たな第5弾モデルは、「HAKTO-Rが挑む宇宙空間に広がる闇と、僅かな光」をデザインテーマに全体を漆黒のモノトーンでまとめることで、ブラックチタンや結晶チタニウムの素材感を味わえる時計としている。

 ケース同様にブラックを基調とするベゼルの上に記された世界各国の都市名も明瞭な白ではなくシルバーで、ごく抑えたダークトーンのなかに潜む微光と闇のコントラストがストイックに表されている。さらにインダイヤルまでがダークトーンで統一された文字盤は、よくよく覗いてみると結晶チタニウム独特の目地を模したパターンが縦横無尽に走っていることが分かる。

 しかし今回のコラボモデルにおけるハイライトは、熱処理によって表面に現れる結晶チタニウムをぜいたくに使用した中ゴマだ。過去にも結晶チタニウムを中ゴマに使用したコラボはあったが、3モデルすべてに落とし込んだのは今回が初となる。一見すると単なるパターン違いにも思えるが、それは間違いだ。これはまさに、チタニウムの加工技術に精通したシチズンならではの選択なのである。

 結晶チタニウムのパターンは熱処理によって現れるものだが、焼成後は元の形状から僅かに膨張する。これは研磨によって多少は調整できるのだが、それによって結晶チタニウムならではの凹凸のある独特な質感はなくなってしまう。そのためシチズンは同素材ならではの表情を生かすため、焼成後そのまま中ゴマとしてパーツを使用する道を選んだ。つまり仕上がりを予想して焼成前の寸法をやや小さく設定しなければならず、しかも焼成は一発勝負となる。

 しかしそこはチタニウムならびにスーパーチタニウム™︎を長年手がけてきたシチズンのこと。焼成の前後で数ミクロン単位でのデータを集めて解析したことで、現在では焼成して即座にブレスレットに組み付けられるほどの精度を誇るまでに至ったという。また、結晶チタニウムの模様はひとつひとつ異なる。同じ模様が別の個体に再び現れることは決してなく、宇宙探索という一期一会の機会を象徴するようなディテールといえる。

 今回リリースされるのは、2本のクロノグラフと1本の3針デイトからなる3モデルで、いずれのムーブメントも光発電エコ・ドライブにより駆動する。まずアテッサのフラッグシップモデルをベースとする世界限定2300本のCC4067-66Eは、横3つ目のクロノグラフにムーブメントはCal.F950を搭載し、GPS衛星電波受信機能を備える。44.6mm径の大振りなケースで、裏蓋には月面とHAKUTO-Rのロゴがあしらわれる。もう一方のクロノグラフ、縦目ダイヤルのAT8287-62EはムーブメントにCal.H800を搭載して日中米欧電波受信機能を積む。ケース径は42mmとややコンパクトで、裏蓋にはレーザー加工でHAKUTO-Rロゴが刻まれている。こちらは世界限定2900本となる。もっともシンプルなCB0285-63Eも同じく日中米欧で対応する電波受信機能を備え、裏蓋のHAKUTO-Rロゴは同様でムーブメントにはCal.H145を搭載している。こちらは世界限定1900本となる。

左はAT8287-62E、右はCB0285-63E。

 シチズンのスーパーチタニウム™︎の技術はそもそものルーツに宇宙を内包していたとはいえ、宇宙への進出を究極の目標として掲げていた訳ではない。ゆえに月に行ったほかの舶来時計のようにミッションツールとしてのストーリーを持たず、日々独自の切磋琢磨を重ねて時計としてのチタニウムを高度に究めることで、HAKUTO-Rとのプロジェクトを機に宇宙へ結果的に飛び立ったという稀有な背景を持つ時計となっている。しかもそのスペックは、令和における最先端技術をもって宇宙に挑戦しようとしている企業のお墨付きだ。ispaceの斉木氏はシチズンという企業について、次のように語っている。「時計製造という枠を超えた、洗練された匠の技術を持つ企業です。時計という精密なものを、一寸の狂いもなく大量生産し続けている。ものづくりに対する情熱や真摯な姿勢を、取り組みを通じて感じることができました」。そしてその最先端を象徴するのがアテッサというブランドなのである。先進素材を用いながら、シチズンは現代の日常に即したデザインに落とし込むことにも同等に力を入れている。HAKUTO-R コラボレーションモデルのように、遠い世界のできごとが自分の身の回りのことのように現実味を帯びてくる。アテッサはそんな側面も持ち合わせているのだ。


アテッサ HAKUTO-R コラボレーションモデル第5弾 コレクションギャラリー

Photos:Jun Udagawa Styled:​Eiji Ishikawa(TRS) Words:Kazuhiro Nanyo