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ジン、U-ボート・スチール製ダイバーズと新作ダイブクロノグラフを発表[U15、U16、U18、613St/UTC]

バブルダイヤルのダイバーズが深海から浮上。ジンの2025年の幕開けを飾る。

ドイツの機能美を体現するブランドといえば、ジンをおいてほかにない。フランクフルトに拠点を構えるこのブランドは流行に流されず、堅実なウォッチメイキングを貫いてきた。これは容易なことではない。しかしブランドの哲学は揺るがず、今回も明確な方向性を示す6つの新作を発表した。なかでも意外性のある(あるいは、真っ当に予想どおりの?)素材を採用したUシリーズのダイバーズ3モデル、そしてジンの真骨頂を示す2本のダイブクロノグラフが目を引いた。


ジン 613Stおよび613St UTC ダイビングクロノグラフ

 今年の新作のなかでもまず注目すべきは、新たなダイブクロノグラフのふたつのバージョン、613Stと613St UTCだろう。ダイバーズウォッチは大小さまざまなブランドから展開されているが、ダイブクロノグラフとなるとそれは限られた熱心な愛好家向けのニッチな領域であり、まさにジンの得意分野だ。

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 新作613Stのプレスリリースはまるで水中溶接工の作業リストを読んでいるかのように、無駄な美辞麗句が一切ない。華やかな言葉に慣れた目には新鮮で、ジンがいかに実用性を重視しているかがよく伝わってくる。このモデルはジン独自の技術を駆使しつつ、ダイブクロノグラフのコレクションを拡充するものだ。

 206シリーズと比較すると、ケース径は43mmから41mmへと小型化されている。その姿は、ユニークな左リューズモデルEZM 13.1のデザインを反転させたようにも見える。EZM 13.1は知る人ぞ知るマニアックなツールウォッチだが、613Stも同じケースサイズを踏襲。ただしEZMシリーズで使用されていたジン SZ02キャリバーではなく、コストパフォーマンスに優れたセリタのSW 515を採用している。これによりコンパクトなサイズ感を保ちつつ、価格を抑えることに成功した。価格はシリコンストラップ仕様で62万7000円、ブレスレット仕様では71万5000円(ともに税込予価)。DIN 8310および8306規格に準拠する防水性能とダイビング適性を備え、機能性とスポーティな魅力を兼ね備えたモデルとなっている。

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 ジン 613Stは、ブランド独自のArドライテクノロジー(内部の湿気を防ぐ機構)を備えており、100ミリテスラ(8万A/m)の耐磁性能を誇る。これはDIN 8309規格に準拠した従来のガウス単位とは異なる尺度であり、一見過剰とも思えるが、ロレックス ミルガウスの1000ガウスに相当する磁気誘導耐性を持つ。ビーズブラスト加工が施されたスティールケースとブレスレットは、ひと目でジンとわかるデザインだ。実際に104 Stを着用した経験から言えば、41mmのケースはコンパクトに感じられる。

 サファイアクリスタルの内外には反射防止コーティングが採用されており、視認性は抜群だ。マットブラックのダイヤルはジン独自のラチェット式特殊結合のベゼルによって縁取られ、60分積算計が備わる。このベゼルは操作感がしっかりしており、夜光が塗布されたインデックスが視認性を高めている。しかしシンプルなデザインのEZM 13.1とは異なりクロノグラフの60分積算計は逆パンダ配色(白地に黒のインデックス)となっており、赤い先端の針がアクセントとして機能する。これにより夜光が施された時・分針と差別化され、判読性が向上している。

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 ダイヤルには3時位置にデイデイト表示も搭載。デイト表示の有無について議論が尽きないが、ジンの哲学は視認性と機能性を追求することであり、装飾としての意図はない。また613Stの別バージョンとして、613St UTCも展開されており、ヘアライン仕上げのHリンクブレスレットかシリコンストラップが付属。こちらは第2時間帯を表示する機能も備える。ムーブメントにはセリタ SW535をジンでアレンジしたものを搭載し、グレーでプリントされた24時間計とグレーのUTC針によって異なるタイムゾーンを示す。価格はブレスレットで84万1500円、ストラップで75万3500円(ともに税込予価)となっている。500m防水のダイブクロノグラフにGMT機能を搭載したモデルで、この価格帯のものはほぼ皆無だ。

 ジン 613に対抗できるビッグブランドのモデルはあるだろうか? たとえばオメガ シーマスター プラネットオーシャンは600m防水を誇り、ブレスレット仕様で提供されている。しかしケースサイズは45.5mm径に厚さ18.9mmと巨大だ。価格も200万円前後とジンとは比較にならない。もちろんジンが手を加えたSW515ムーブメントは、オメガのコーアクシャル9900キャリバーには及ばない。しかし価格を考えれば十分な選択肢だ。もし613Stまたは613St UTCの機能と耐久性を80万円以下で実現したモデルを見つけたら、ぜひコメントで教えて欲しい。

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Uボート・スチール製の限定モデルU15、U16、U18

 ジンのUシリーズからリリースされた新作ダイバーズウォッチ3本は、それぞれ1000本限定。ジンがドイツ製潜水艦用のスティールを使用し始めて20周年を迎えることを記念し、これまでの設計をベースにしながらも意外性のあるダイヤルデザインを加えた特別仕様となっている。モデル名はドイツの退役潜水艦(Uボート)に由来し、それぞれのケースにはその艦体と同様のスティールが使用されている。今回注目すべきは、ブランドが光沢感のあるブルーまたはペトロールグリーンのダイヤルを採用した点だ。サテン仕上げのスティールケースと対照的でありながら、間近で見るとさらに奥行きを感じさせるデザインとなっている(潜水艦内部での生活を意識したわけではないだろうが、思わずそう感じさせる仕掛けだ)。

sinn u-series divers

 それぞれのダイヤルには中央に広がる気泡のパターンがデザインされており、メタリックブルーやグリーンのプリントによって立体的な表現が施されている。これは単なる装飾ではなく、それぞれの潜水艦がたどった冒険を象徴するものだ。またダイヤルには元の艦艇が運航中に航行した実際の海里(nautical miles)が記されており、ベゼルに施された青いラッカー仕上げの分刻みがバブルモチーフのブルーと調和している。

 この特別モデルの軸となるのが、Uボート・スチールという素材だ。これはドイツ海軍の212型非核潜水艦などに採用されるティッセンクルップ(ThyssenKrupp)社製の特殊合金であり、その強度は一般的な316Lスティールの155%以上に達する。今回使用されているスティールは退役した206型潜水艦のもの。ケース製造を担当するザクセン時計技術社 グラスヒュッテ(Sächsische Uhrentechnologie GmbH Glashütte)が潜水艦の湾曲した鋼材をまっすぐに矯正し、ケースの元となる鋼材、ケースバック、回転ベゼルへと加工している。

sinn u-series divers
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 41mm径ケースのU15は、500m防水という圧倒的な性能をわずか11.2mm厚のケースに収めたコンパクトなU50をベースにしている。このモデルのスティールは1974年製のU15潜水艦(20万海里以上の航行記録を持つ)から調達されている。ケースはジンならではのサテン仕上げで、4時位置のリューズ、DIN 8310準拠の防水性能、低圧耐性を備える。60分刻みのラチェット式特殊結合ベゼルは優れた操作感を提供し、ジンのテギメント処理による耐傷性を誇る。実際にU50を着用した経験から言えば、このシリーズの魅力はソフトな装着感と戦車のような堅牢性の絶妙なバランスにある。丸みを帯びたHリンクブレスレットは画期的とは言えないが細部までこだわり抜かれており、圧倒的な信頼感を与えてくれる。価格は75万9000円(税込)だ。

 U16は同価格ながらさらに多くを提供するモデルだ。44mm径ケースのU1をベースにしており、スティールは1973年製のU16潜水艦(38年の運用期間で20万7000海里を航行)から採取されている。特徴的な2本のオーバーサイズ針は、まるでマインクラフトの世界から飛び出したような角張ったデザインだが、極めて高い視認性を誇る。ブレスレットはU15の20mm幅に対し、U16は22mm幅となる。ケースサイズが44mmに拡大されたことで、手首には確かな重量感をもたらすはずだ。U15と同じくセリタ SW300-1ムーブメントを搭載し、14.7mm厚のケースに収められている。Uシリーズの本質は機能性重視の大型設計であり、“デスクダイバー”などという言葉は、フランクフルトでは一切耳にすることはない。1000m防水という驚異的なスペックを誇るが、これはさらに上位モデルU18の防水性能に次ぐものだ。U15と同じく、75万9000円(税込)で提供される。

sinn u-series divers
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 U18はパイロットウォッチのデザイン要素(UXラインにも通じる部分を持つ)と、深海ダイビングを思わせるバブルパターンを組み合わせたユニークなダイヤルを採用している。しかし細身のインデックスとシャープな針を備えたダイヤルの6時位置には特徴的なインジケーターが配されており、本作のハイスペックさを象徴している。ケースはさらに厚みを増し、44mm径に対して15.5mm厚となっているが、これは2000m防水を実現するためのものだ。またジン独自のArドライテクノロジーを搭載し、過酷な環境下でも性能を維持するよう設計されている。ムーブメントにはセリタ SW300-1を採用し、価格は82万5000円(税込予価)だ。このスペックでこの価格というのは驚異的であり、高耐久ダイバーズウォッチの市場では非常にコストパフォーマンスが高いモデルと言える。

 ここでムーブメントの選択についても触れておこう。今回のジンの新作3モデルはいずれも80万円前後で提供されており、この価格帯ではムーブメントの細かなスペックよりも道具としての信頼性が重要視される。ジンのダイバーズウォッチは実用性を重視するプロフェッショナル向けのツールであり、COSC認定の有無を気にする必要はない。セリタ SW300-1は実績のあるムーブメントでメンテナンスのしやすさと十分な精度を備えているため、この限定シリーズが価格に対して圧倒的な価値を持つことに変わりはない。また今回のUシリーズはベースとなった通常モデルとほぼ同じ価格設定でありながら、ユニークなダイヤルデザインと歴史的背景を持つUボート・スチールを採用している点が特に魅力的だ。

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 一方でもしU50のコンパクトな無骨さがお好みなら、ジンのもうひとつの新作も見逃せない。T50ゴールドブロンズBは価格が126万5000円(税込予価)とやや高額になるが、ジン独自のゴールドブロンズ125を採用した特別なモデルだ。このモデルは2023年に発売され即完売したT50の新バージョンであり、リッチなブロンズのビーズブラストケースに耐腐食性を備えた特殊合金を使用している。ケースサイズは41mm径、厚さ12.3mmで、500m防水を実現。見た目には華やかな印象を与えるが、その実力は本格的なダイバーズウォッチとして申し分ない。ブルーのマットダイヤルに合わせたブルーファブリックストラップが付属し、スポーティでありながらエレガントな印象を醸し出す。

詳細はジンの公式サイトでチェック。