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Hands-On F.P.ジュルヌ クロノメーター・スヴラン 20周年記念エディションをハンズオン

たったひとさじのブルーが、これほどまでに印象を変えるとは。

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Watches & Wondersの大規模な新作発表や、非加盟ブランドによる優れたプロダクトの数々に注目が集まるなかで、ひっそりと見逃されがちだったのがF.P.ジュルヌの手巻き薄型ドレスウォッチ、クロノメーター・スヴラン コレクションの誕生20周年を記念した新作2モデルのリリースである。今回発表された2本の新モデルは、美しいブルーのギヨシェ装飾を施したシルバーダイヤルに18Kホワイトゴールド製のアラビア数字と開口部を組み合わせたもので、ケース素材はプラチナまたは18K 6Nローズゴールドとなっている。

F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition

 トゥールビヨン・スヴラン、クロノメーター・レゾナンス、そしてオクタの20周年を祝したのち、いよいよクロノメーター・スヴランがその節目となる20周年のスポットライトを浴びる番となった。施されたアニバーサリー仕様は、ある程度予想の範疇だったかもしれないが、その美しさには一切の妥協がない。

 ブルーダイヤルの採用は、ジュルヌ・ソサエティの会員向けに製作された“ソサエティ・ウォッチ”や、オクタ・オートマチック・リュヌ フランス-チャイナ50などのモデルを通じて、コレクション・ブティックの象徴的な要素のひとつとなってきた。そして忘れてはならないのが、ブルーダイヤルの頂点とも言える「クロノメーター・ブルー」の存在である。しかし今回の新作は、それらとは一線を画すものであり、華やかさというよりも本質を重んじた仕上がりになっている。長く愛用できる、ほぼ完璧なドレスウォッチの理想形と言っていいだろう。

F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition

 この時計は、ジュルヌのクロノメーターの精度追求と歴史への敬意を象徴するCal.1304ムーブメントを搭載し、クラシックなドレスウォッチを現代的にアレンジしている。

 ケースサイズはいずれも40mm×厚さ8mmで、現代的なサイジングにマッチしている。また多くのドレッシーなモデルが、38mmや39mmに近い傾向にあるなか、ラグを短くすることでバランスを保っている(ラグ・トゥ・ラグが48mm)。その証拠に、今年発表されたパテック Ref.6196Pは38mm、9.33mmと厚めである。

F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition

 クロノメーター・スヴラン(CS)に恨みはないが、正直なところ、これまで特に引かれるモデルではなかった。ホワイトダイヤルのCSは悪くはなかったが心を動かされることもなかったし、ブラウンのハバナダイヤルにも何か物足りなさを感じていた。クロノメーター・ホーランド&ホーランドは確かにユニークで目を引く存在だったが、あれは2018年製の限定モデルであり、価格も高騰の一途をたどっている。それとCSの魅力のひとつであるパワーリザーブ表示などが省かれている点も気になる。ドバイ・ブティック限定のグリーンダイヤル仕様やクロノメーター・スヴラン・ナクレも、自分のベスト3には入らない。唯一、2005年に発表されたルテニウムダイヤルの東京・ブティック限定20本だけが、少なくとも自分の目には、新作である20周年記念CSに匹敵する魅力を持っていると感じられるモデルかもしれない。

F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition

 フランソワ-ポール・ジュルヌ(François-Paul Journe)はデザインの出発点をダイヤルにして、そこから内部へと構築していくスタイルを取っているが、クロノメーター・スヴランの長寿と成功の本質はそのムーブメントにあると言っていい。それは彼の多くのモデルに共通する特徴でもある。18Kローズゴールド製のCal.1304は、そのコンパクトさこそが大きな魅力である。ふたつの香箱を並列に配置することで、全体のムーブメント厚を4mmに抑えながらも約56時間のパワーリザーブを確保している。

 このムーブメントでもっとも興味深い点は、3時位置に配されたパワーリザーブ表示だ。本来であればこの位置には、リューズ操作のための巻き芯とキーレスワークが存在するため、パワーリザーブを配置するのは技術的に不可能とされてきた。それにもかかわらず、F.P.ジュルヌはそれを実現してみせたのである。

F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition
F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition
F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition

 ブランドから公式なテストデータは公表されていないものの、精度の追求はF.P.ジュルヌの哲学の核心である(何しろクロノメーターという名が付けられているのだから)。そして実際、クロノメーター・スヴランは、クロノメーター・オプティマムに次いで同ブランドでもっとも高精度な時計として広く認識されている。フランソワ-ポール氏はかつて、自身のトゥールビヨンウォッチをより正確にする唯一の方法こそトゥールビヨンを取り除くことだと語ったことで知られている。この言葉はCal.1304のようなシンプルなムーブメントにこそ、精度の本質が宿るということを如実に物語っている。ムーブメントの構造はまた、クロノメーター・オプティマム、アストロノミック・スヴラン、レペティション・スヴランといったモデルにもベースとして採用されており、F.P.ジュルヌの技術的な礎のひとつと言えるだろう。

 たしかに、最高峰の仕上げが施されていないという一般的な批判は存在する。十分にていねいな仕上げではあるが、F.P.ジュルヌが力を注ぐのはそこではない。その代わり非常に快適で薄型な構造のなかに、クロノメーターの精度の歴史に対する、創造的なアプローチが込められているのだ。

 20周年記念のクロノメーター・スヴランにほんの数分触れただけで、なぜこの時計が、一見するとやや異質でありながらもこれほどまでに魅力的なのかを再認識させられた。3時位置のパワーリザーブ表示と7時位置のスモールセコンド、これは決して伝統的な配置とは言えない。それでも4・7・8時の数字を小さくすることで、逆説的に文字盤全体のバランスが取れているのだ。18KWGまたはレッドゴールドのアラビア数字とギヨシェ装飾のセンターを組み合わせたこの時計は、装着感も見た目も実に美しい。実機に触れればF.P.ジュルヌのコレクターたち(私の友人たちも含めて)がこのブランドの熱狂的なコミュニティに引き込まれていく理由が分かる。

F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition
F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition
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 新作の20周年記念クロノメーター・スヴランは、プラチナモデルが3万9600CHF(日本円で約693万円)、ローズゴールドモデルが3万6600CHF(日本円で約640万円)だ(もし入手できれば)。これがF.P.ジュルヌにおける、そして一般的にもっとも魅力的な時計に共通するもどかしい点でもある。年間の総生産数は約1500本で、そのうち500本はクォーツ製エレガントであるため、需要は供給をはるかに上回っている。しかし、ブティックとのつながりを持つジュルヌコレクターにとっては、すでに所有しているクロノメーター・スヴランの代わりとして、あるいはそれを補完する1本として、このモデルはすぐにでもその座を射止める存在となるかもしれない。

F.P.Journe Chronomètre Souverain 20th Anniversary Edition

詳しくはF.P.ジュルヌ公式サイトをご覧ください。