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Capture the Moment: ライカの哲学を体現するZMコレクション

今年はライカ初の量産35mmカメラであるライカⅠ誕生から100周年を迎えた。この記念すべき年に登場した新作はなんとカメラではなく、時計だ。なぜいまライカが時計を手がけるのか。その両者にはライカの理念とクラフトマンシップ、独自の世界観が貫かれている。

ライカは言わずとも知られる最高峰のカメラブランドだ。いまから100年前に発表されたライカIは、機動性と実用性に優れ、写真表現に革命をもたらした。一方、時計においては、近年ライカネームを冠した時計はあったが、既存ムーブメントとカメラのデザインをモチーフにしたに過ぎなかった。そこで、突如として本格的なウォッチメイキングに取り組み、2022年にオリジナルコレクションを発表したのだった。


ライカ創業前に遡る時計製造のルーツ

ライカと時計とのつながりは、創業者エルンスト・ライツⅠ世がかつてスイスの時計工房で機械工学や精密技術を学んだことに始まる。そこで触れたのは、時計ムーブメントの緻密な構造やハンドメイドによる高精度であり、母国ドイツのウェッツラーに戻ると、その知見を生かし、顕微鏡やカメラを作るようになったのである。

オスカー・バルナックがウル・ライカで撮影した創業者エルンスト・ライツ1世のポートレート。Leica Photo Archive © Oskar Barnack

ライカの原点ウル・ライカは1914年にバルナックが発明し、ライカⅠからⅢはバルナック型と呼ばれる。

 1914年にウルライカを開発。映画の2コマ分を1画面として使う24×36mmのフィルムサイズを採用し、これは後にライカ判と呼ばれるようになる。さらなる改良と開発が進められ、1925年に市販されたのがライカⅠだ。コンパクトなサイズは扱いやすく、撮影のフィールドを広げた。そしてドイツのプロダクツならではの高性能と質実剛健が存分に注がれ、いまも受け継がれている。

 

ライカの哲学を体現する腕時計

初の本格オリジナルコレクションとして登場したライカウォッチは、カメラばかりでなく、時計の愛好家も魅了しつつある。新たに設計した専用ムーブメントを搭載し、ハイエンドモデルでは独自の複雑機構も開発するなど、まさにライカウォッチと呼ぶにふさわしい内容だったのである。今年発表されたライカZM 12は、この時発表されたライカZM 11のシリーズラインになる。

ライカZM 11(写真左)とライカZM 12.。デザインコードを統一しつつ、ケースサイズや3針とスモールセコンドの違いなどで印象は異なる。

 ライカZM 11が41mm径のケースだったのに対し、39mm径にダウンサイジングし、センターセコンドからスモールセコンドにする。さらにカレンダーを省くことでより引き締まった印象を与える。ミニマルなダイヤルデザインに個性を演出するのが、光と影の表現という写真の原点からの発想による、中央と上下でピッチを変えた横ストライプのパターンだ。非常に薄い2層構造からなり、見る角度によってブラインドの隙間から光が差し込むような視覚効果をもたらす。エッチング、グライディング、ポリッシュ、ハンドラッカーといった30工程を約3週間かけて製作する凝った文字盤だ。

文字盤はスモールセコンドにすることで、2層構造によるグリーンとブラックのカラーコーディネートを効果的に演出する。

 搭載するムーブメント、ライカLA-3002は、スイスの開発メーカーであるクロノード社と共同開発した。同社は、ジュネーブウオッチグランプリで最優秀独立時計師にも輝いたジャン・フランソワ・モジョン氏が率いており、ライカカメラのプロジェクトにも強く賛同し、パートナーシップを結ぶ。

ケースバック下に設けたレッドドットのプッシュボタンで、ブレスレットやストラップが容易に交換できる。

レッドドットは、カメラのレンズのリリースボタンやマウント指標、ロゴなどにも用いられるシンボルだ。

 さらにストラップにはイージーチェンジシステムを搭載する。カメラのレンズリリースボタンでお馴染のレッドドットを模したプッシュボタンで、工具を使わず容易に交換できる。ラバーやファブリックのストラップのほか、SSとチタンのブレスレットが用意され、用途や自分好みのコーディネートや、パートナーとシェアするにもいいだろう。

 ショートタイプのラグレスケースはフィット感に優れ、程よいサイズはシーンを選ばず、デイリーユースに応える。アクティブかつミニマルな機能美は、ライカカメラの伝統にも通じるのだ。

 

瞬間を切り取る

フィルム式カメラと機械式時計は構造的にも共通点がある。カメラはフィルムを巻き上げ、シャッターを切ると歯車が駆動し、シャッタースピードのコンマ数秒という精細な時間を正確に計る。それはゼンマイから歯車、調速脱進機を介し、高精度で刻む時計にも共通し、いずれも時を制することが求められるのだ。

 そうした両者の親和性を探りながら、ライカは独自のウォッチメイキングを歩む。現在のラインナップには、ZM1/2という複雑機構を備えたハイエンドと、ZM11/12のベーシックを揃える。だがそれはランクというよりも、カメラにおいてSL、M、Qを揃えるように、あくまでも用途や嗜好の選択肢に過ぎない。

 そしてカメラが普遍的なデザインや操作性を継承するように、時計も同じ価値観を共有し、ブランドの哲学を貫く。たとえカメラがデジタルになってもライカであり続けるように、時計もタイムレスを追求し、そこには時という深遠なるテーゼがあるのだ。

 
時計本体
交換用ストラップ・ブレスレット

本記事の掲載写真はすべてライカを使用して撮影しております。

 

Words:Mitsuru Shibata Photos:Yuji Kawata Styling:Eiji Ishikawa(TRS)