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グランドセイコー2025年の新作を会場から実機でご紹介
クイック解説
グランドセイコー初の機械式クロノグラフウォッチとしてテンタグラフが登場したのは、2023年のことだ。2022年にコンスタントフォース・トゥールビヨン搭載の“Kodo”がジュネーブ ウォッチ グランプリにてクロノメトリー賞を受賞していたこともあり、Watches & Wondersの会場でお披露目されたテンタグラフにも強い関心が寄せられていた。グランドセイコーらしい堅牢かつ合理的な設計と、その名前に端的に示された高いスペック(TEN beats per second=10振動、Three days=3日間のパワーリザーブ、Automatic=自動巻き、chronoGRAPH=クロノグラフ)もあり、同モデルは各メディアから高い評価を受けていたようだ。
それから2年が経過した2025年、テンタグラフが再びWatches & Wondersに帰ってきた。そろそろ2作目が出てもいいころだと思っていたが、そのデザインは僕の予想から大きくかけ離れたものだった。大胆なカッティングが施された無骨なブリリアントハードチタン製のケース、有機的で躍動感のあるダイヤルは、ともに“獅子(ライオン)”をイメージしたものであるという。
獅子は1960年に誕生した初代グランドセイコー以来、ブランドの象徴として裏蓋に刻まれ続けてきたモチーフだ。百獣の王の刻印には、“最高峰の腕時計を目指す”というグランドセイコーの揺るぎない意志が込められており、本作では“トーキョー ライオン テンタグラフ(Tokyo Lion Tentagraph)”というモデル名にもその精神が投影されている。
なかでも目を引くのが2023年の前作テンタグラフとは大きく印象を異にする、金属の塊を削り出したような荒々しい造形のケースだ。ヘアラインを基調としつつポリッシュとの巧みな磨き分けが施されたその表面仕上げは、素材の質感と重厚さを際立たせている。よく見るとベゼルとケースは2体構造となっており、この設計によって鋭角的なエッジの立った磨き分けが可能になっている。
さらに、獅子のたてがみが風になびく様子から着想を得たというユニークなダイヤルも印象的である。水平方向にランダムな幅で走る有機的なパターンの上に、多面カットが施されたアプライドインデックスが整然と配置され、ダイヤル全体に引き締まった力強さを与えている。各インデックスは凹型に切削され、その内部にはたっぷりとルミブライトが充填されている。極太の針とあいまって、暗所での視認性にも大いに期待が持てそうだ。
クロノグラフのプッシャーはケース同様に大振りで直線的な造形となった。大きく入れられた刻みは指へのかかりがいいだけでなく、SLGC001でも好評を得ていた優れた押し心地も踏襲されている。また、プッシャーの下部から裏蓋に向けてグッと内側に絞られていることにより、サイドビューにはそこまでの重厚さを感じない。また、ここにもポリッシュが施されており、サテン仕上げとのコントラストによって立体感を強調している。
ムーブメントにはもちろん、グランドセイコー初の機械式クロノグラフムーブメントであるCal.9SC5ことテンタグラフを搭載。これはベースとなるCal.9SA5の薄さを生かしたモジュール式のムーブメントであり、曲線を生かしたパーツの造形や美しい仕上げを、シースルーバックから眺めることができる。
なお、この時計の裏側には獅子をイメージした遊び心あるディテールが潜んでいる。以下の写真を見てわかった人もいるかもしれないが、ラバーストラップの取り付け部分近くに4つ指の“肉球”のようなデザインが施されているのだ。このあしらいはただユニークなだけでなく、手首への設置面を抑えてつけ心地を向上させる役割もある。ちなみにこのラバーストラップはトーキョー ライオン テンタグラフのために新たに開発されたもので、シリコンストラップの2倍以上の引っ張り強度を誇るという。
トーキョー ライオン テンタグラフことSLGC009の価格は231万円(税込)。8月8日(金)より全国のグランドセイコーブティックおよびグランドセイコーサロンにて発売予定だ。
なお同じタイミングで、E9(Evolution 9)コレクションにもテンタグラフの新作SLGC007が登場している。黒いサブダイヤルをスノーブルーの岩手山パターンが取り囲んだ、パンダ風ダイヤルが特徴的だ。前作のダークブルーダイヤルと比較して、コントラストが効いたスポーティな顔立ちとなっている。ケースサイズは直径43.2mmで、厚さが15.3mm。価格は198万円(税込)で、5月10日(土)からの販売を予定している。
Photo by Mark Kauzlarich
ファースト・インプレッション
2年の歳月を経て、テンタグラフがこれほど大胆な変貌を遂げるとは誰が予想しただろうか。前作は、日本的な“光と陰の中間の美の豊かさ”を志向するE9のデザインコードを踏襲していたが、今回はスポーツコレクションとしての発表となったためか、一転してメリハリの効いたワイルドな雰囲気が前面に打ち出されている。ダイヤルのゴールドと見返しおよび6時・9時のブラウンの取り合わせも、どこかサファリを思わせる。モチーフとされた獅子の力強さが、視覚的にわかりやすい形でデザインに落とし込まれている。なおセイコーいわく、本作はテンタグラフをスポーツウォッチにするという発想から生まれたものではなく、新たなデザインスポーツウォッチを模索した結果として、グランドセイコーのメカニカルクロノグラフを象徴するテンタグラフこそがふさわしいと考えたそうだ。
なお、この特徴的なケース形状は今回初めて登場したわけではない。グランドセイコーはスプリングドライブ誕生20周年の際に、“獅子”というモチーフを全面に押し出した3部作(SBGC230、SBGC231、SBGA403)をリリースしている。これらのモデルにはすでに、ブレスレットを左右から力強く掴む“獅子の爪”を思わせるラグが採用されていた。その後も、2020年のSBGC238、2023年のSBGC253とSBGA481、2024年のSBGE307と、ブランドは定期的にこのケースデザインを採用し続けている。これら“トーキョー ライオン”と名付けられたコレクションにおいて、グランドセイコーは獅子のたてがみをイメージしたパターンをダイヤルにあしらい、表現方法こそ異なるものの、獅子が持つむき出しの野生を時計全体で力強く表現してきたのだ。
2019年にリリースされたSBGC231。
そしてトーキョー ライオン テンタグラフでは、ケースにもうひと工夫を加えることでさらなる迫力が加味されている。その工夫とは、ケースと同様に直線的な構造を持つベゼルパーツの存在だ。右の写真は2019年に登場したSBGC231だが、ケースの基本形状は同じでありながら、ベゼルのデザインが異なるだけでグッとシャープな印象となる。今回の新作では大胆なパターンが施されたダイヤルに対し、ボリューム感のあるベゼルパーツが絶妙なバランスを保ち、互いに引き立て合いながらダイナミックなルックスを形作っている。セイコーは広報資料でこの時計について「獅子の持つ威厳や気高さに由来するスタイルをまとったスポーツウオッチ」と述べているが、まさにそのコンセプトに則ったデザインだ。
その一方で、着用感はいたって軽やかだ。ブリリアントハードチタン製ということもあるが、手首を掴むように緩やかにカーブしたケースバック、低く取られた重心によって長時間着用していても疲労はあまり感じなかった。それには、特徴的なラバーストラップの存在もひと役買っているかもしれない。少々きつめに手首に巻いても、上にも記載したストラップ裏の凹凸によって締め付けられるような感覚はなかった。
ケース径に対しラグトゥラグは控えめだ(50mm)。ご覧のとおり、成人男性において平均的な太さを持つ(17cm周)僕の手首からもはみ出すことなく収まっている。Photo by Kyosuke Sato
個人的には、この野生的なルックスを実現するために、随所に繊細な加工が施されているというギャップにも魅力を感じている。たとえばプッシャーは従来どおりの円柱形にすれば、はるかにコストを抑えられたはずだ。加えてスムーズな押し心地を追求するために、ケースとの調整には何度も手が加えられたのではないかと思う。また3時・6時・9時位置のサブダイヤルは、実はメインの文字盤とは別体で構成されている。わずかにくぼんだお椀型のフォルムと、ダイヤル表面から浮き立つようなエッジの効いた縁取りは、通常の型打ちでは表現が難しいだろう。だがそのこだわりがあるからこそ、ダイヤルにはグランドセイコーらしい上質さと高級感が宿っている。
この時計は、グランドセイコーによる上質なものづくりを理解していつつ、もう1歩踏み込んだ個性を求める人にこそすすめたい。過去数作に遡る“獅子”モチーフのモデルと比較しても、トーキョー ライオン テンタグラフはパッと見で異質とも言える存在感を持つモデルだ。しかし本作は、前作SLGC001ですでに評価の高いムーブメントと実績のあるケースをベースとしており、決してグランドセイコーのラインナップにおいて突飛なものではない。そして挑戦的なルックスを支えるのは、同ブランドらしい繊細なウォッチメイキングだ。グランドセイコーの美学に慣れ親しんだファンにも、新鮮な発見をもたらしてくれる新たなスポーツモデルである。
基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: スポーツコレクション トーキョー ライオン テンタグラフ
型番:SLGC009
直径: 43mm
厚さ: 15.6mm
ケース素材: ブリリアントハードチタン
文字盤色: ゴールド
インデックス: アプライド
夜光: 時・分針、3時側サブダイヤルの秒針、インデックスにルミブライト
防水性能: 20気圧防水
ストラップ/ブレスレット:ブライトチタン製のバックルが付属したラバーストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: 9SC5
機構: 時・分表示、センターセコンド、デイト表示、クロノグラフ機能
パワーリザーブ: 約72時間(クロノグラフ作動時)
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 3万6000振動/時
石数: 60石
追加情報:平均日差+5~-3 秒
価格 & 発売時期
価格: 231万円(税込)
発売時期: 8月8日(金)
限定: なし(グランドセイコーブティックおよびグランドセイコーサロンにて販売)
詳細は、こちらをクリック。
特に記載のないものはすべてPhotos by Yusuke Mutagami