ADVERTISEMENT
我々が知っていること
ブランドは周年記念の年を好む。5で割り切れる節目の年なら、ほぼ間違いなく限定モデルを発表する絶好の機会となる。ヴァシュロン・コンスタンタンは、今年で創業270周年を祝して、ブランドを代表する複雑機構にオマージュを捧げるプラチナ製の限定モデル3種、各370本を発表した。
最初に登場するのはトラディショナル・パーぺチュアルカレンダー・レトログラード・デイト・オープンフェイス、Ref.4030T/000P-H054である。モデル名が示すように、ブランドの新たな自社製ムーブメントであるCal.460 QPR31/270により、ふたつの複雑機構を組み合わせたモデルだ。オープンワークダイヤルからは複雑機構を構成するレバーや歯車の愉快な配列がのぞく。曜日、月、うるう年表示はサファイア製ディスクにより構成され、現在の表示部分は濃紺で強調。そして6時位置上部には、ムーンフェイズが配される。ダイヤルのソリッドな半分には、レトログラード式デイト表示のスケールが濃紺でプリントされ、先端が中空になったブルー仕上げの18Kゴールド製の矢印針が日付を指し示す。月末には針が瞬時に始点へと戻り、シーシュポス(終わりなき行為)的に再び月末に向かって歩みを繰り返す。新キャリバーは厚さ5.45mm、パワーリザーブは約40時間で、41mm径、ケース全体の厚さは10.94mmに収められている。大振りな永久カレンダーモデルでありながら比較的つけやすくなっている。
続いてはトラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイス、Ref.6010T/000P-H055だ。ダイヤル側には、60秒で1回転するトゥールビヨンがスモールセコンドの役割を果たし、そのケージにはマルタ十字が大きく配され、秒表示の先端はブルー仕上げとなっている。上部にはレトログラード式デイト表示が配され、こちらも永久カレンダー同様、先端が中空になったブルー仕上げの18Kゴールド針を採用する。ふたつの複雑機構のみで構成されているためオープンワーク部分にはやや余裕がある。ネガティブスペースが生まれ、縦方向に施されたサテン仕上げの美しさをより一層楽しめる構成だ。搭載されるCal.2162 R31/270は約72時間パワーリザーブを備え、41mm径、厚さ11.07mmのプラチナ製ケースに収められている。
最後に紹介するのはトラディショナル・コンプリートカレンダー・オープンフェイス、Ref.4020T/000P-H038である。個人的に、これはヴァシュロンにおける最も象徴的な複雑機構のひとつであり、そのレイアウトは現代的にアレンジされつつもブランドの歴史との強い結びつきを感じさせるものとなっている。トリプルカレンダーは、曜日と月をサファイア製のディスクで表示し、日付は先端が弧を描く月形のポインターによって示され、ダイヤル外周に青色でプリントされた日付表示を指し示す。ムーンフェイズは6時位置上部に配置され、その下半分は半透明のサファイア製カバーによって覆われている。Cal.2460 QCL/270は41mm径、厚さ11.05mmのケースに収められ、約40時間のパワーリザーブを確保する。
では、これら3つの異なる複雑機構モデルに共通する特徴について触れていこう。いずれの新作もシースルーバック仕様で、搭載される3種のキャリバーはいずれもジュネーブ・シールの刻印がある。ヴァシュロンの時計に多く見られるこの証が、ムーブメントのブリッジにブランド独自のコート・ユニーク(côte unique)仕上げとともに輝く。すべてのモデルに、濃紺のアリゲーターストラップとプラチナ製フォールディングバックルが組み合わされる。18K製のダイヤルはすべて手彫りによるギヨシェ装飾が施され、270周年記念のモチーフがあしらわれる。このモチーフは今後発表されるほかのモデルにも採用される予定だ。モデルごとに異なるダイヤルのソリッド部分に合わせ、マルタ十字のモチーフはそれぞれ異なる位置に配されており、各バリエーションに個性を与えている。
我々の考え
ヴァシュロンは、創業270周年を大きな節目として位置づけ、これに合わせて数多くの新作を発表している。今回のオープンフェイスコンセプトによる2モデルは必ずしも目新しいものではなく、過去にも異なる金属素材やダークグレーのダイヤル仕上げで展開されてきた。しかしパーペチュアルカレンダーとレトログラードデイトの組み合わせはブランドにとって新たな試みであり、今回の3モデルのなかでも間違いなく主役と呼ぶにふさわしいだろう。搭載されたキャリバーも秀逸で、レトログラードデイトがダイヤル下半分に広がる複雑な機構とのバランスを巧みに取っている点が印象的である。個人的にヴァシュロンのオープンフェイスコンセプトで最も気に入っているのは、これがスケルトンムーブメントではないという点だ。そのため視線がすべて、複雑に重なり合うディスクや歯車の層に集中し、たとえば誰かの毛むくじゃらな手首などに目が行くことがないのである。
マルタ十字をモチーフにしたギヨシェパターンのダイヤルについては、実機に触れるまでは判断を保留したい。職人技は確かに見事であり、それぞれのダイヤルが各複雑機構によって生まれる空間に合わせて巧みに調整されている点も好ましく感じている。一方で、モデルによってはマルタ十字がロゴにかなり接近して配置されているため、やや強調されすぎているのではないかとも思う。とはいえ私は、モダンなオーヴァーシーズのブレスレットに見られるマルタ十字モチーフについても、やや過剰だと感じているくらいなので、単に控えめなブランディングを好む個人的な趣味によるものかもしれない。実際多くのヴァシュロンコレクターたちと話すなかで、この点を気にしている様子はまったくなく、私自身の感覚に過ぎないのだろう。さらに実際に手に取ったときには、視線は常にオープンワーク部分に自然と引き寄せられ、結果的にマルタ十字は思ったよりも控えめに映るかもしれない。いずれにせよ、このデザインコンセプトをブランドが今後も継続し、伝統的なコレクションに対する魅力的なウルトラモダンな対極として発展させていくことを楽しみにしている。
今後数日にわたってお届けするWatches & Wondersの最新情報もどうぞお楽しみに。ショーで発表されるすべての新作は、こちらで随時ご覧いただける。
基本情報
ブランド: ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)
モデル名: トラディショナル(Traditionelle)
型番: 4030T/000P-H054(パーぺチュアルカレンダー・レトログラード・デイト・オープンフェイス)/6010T/000P-H055(トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイス)/4020T/000P-H038(コンプリートカレンダー・オープンフェイス)
直径: 41mm
厚さ: 10.94mm(パーペチュアルカレンダー)/11.07mm(トゥールビヨン)/11.05mm(コンプリートカレンダー)
ケース素材: プラチナ
文字盤: シルバー
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブルーアリゲーターレザーストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: 2460 QPR31/270(パーペチュアルカレンダー)/2162 R31/270(レトログラード・トゥールビヨン)/2460 QCL/270(コンプリートカレンダー)
機能: 時・分表示、日付・曜日・月表示、永久カレンダー、ムーンフェイズ(パーペチュアルカレンダー)/時・分表示、日付表示、トゥールビヨン(レトログラード・トゥールビヨン)/時・分表示、日付・曜日・月表示、ムーンフェイズ(コンプリートカレンダー)
パワーリザーブ: 約40時間(パーペチュアルカレンダーおよびコンプリートカレンダー)/約72時間(レトログラード・トゥールビヨン)
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時(パーペチュアルカレンダーおよびコンプリートカレンダー)/1万8800振動/時(レトログラード・トゥールビヨン)
価格 & 発売時期
価格: トラディショナル・パーぺチュアルカレンダー・レトログラード・デイト・オープンフェイスは1733万6000円、トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスは3036万円で、共に2025年7月発売予定/トラディショナル・コンプリートカレンダー・オープンフェイスは1038万4000円で2025年4月発売予定(すべて税込)
発売: ヴァシュロン・コンスタンタン ブティック限定
限定: あり、世界限定各370本
詳しくはこちらをご覧ください。