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In Partnership

継承、その先へ——松重豊、ヴィルレに見るブランパンの矜持

創業地の名を冠したブランパンのヴィルレは、291年にわたる時計づくりの哲学を今に伝えるコレクションだ。その時計を手にした松重豊さんは、ブランドが守り続けてきた信念と、自らの仕事観との共通点を語った。

1980年代、多くのスイス時計ブランドは、高精度のクォーツウォッチに苦境に立たされていた。しかしその中でも、人間の手が生み出す価値を信じていたのが、ブランパンだった。同社は機械式時計だけを作り続けることを宣言し、その思想を「シックス・マスターピース」と呼ばれる6本の時計に託した。

 その思いを現代に継承するのが、創業地の名を冠したドレスウォッチ「ヴィルレ」。この時計をまとう俳優・松重豊さんは、理想を貫き、機械式時計の文化を守り継承してきたブランパンの姿勢を、自分自身の俳優活動に重ねる。


ブランパン、機械式時計の未来を信じたブランド

 ジャン-ジャック・ブランパンがジュラ地方の小さな村ヴィルレにて立ち上げた時計工房をルーツとする「ブランパン」。その始まりは1735年とされ、現存する最古のスイス時計ブランドとして、昨年創業290周年を迎えた。

 この名門の歴史を紐解くと、時計業界に大きな影響を与えたふたつの転換期がある。ひとつは1950年代で、モダンダイバーズウォッチの原点である「フィフティ ファゾムス」の誕生。そしてもうひとつが1980年代の「シックス・マスターピース」である。

 特に後者は、クォーツ革命によって苦境にあえいでいたスイスの伝統的な時計産業に光りを与えた傑作コレクションとして、今でも語り継がれている。それはなぜか?

 1983年からブランドの再興を指揮したジャン-クロード・ビバーは、「機械式時計しか製作しない」と宣言。盟友のジャック・ピゲ(フレデリック・ピゲ社CEO)と共に、消えゆく機械式時計文化を守るため、コンプリートカレンダー ムーンフェイズ、ウルトラスリム、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター、スプリットセコンドクロノグラフ、フライングトゥールビヨンという機構で構成される6本のハイエンドな機械式複雑時計シリーズ「シックス・マスターピース」を製作したのだ。

 6本はいずれもクォーツウォッチにはない深みと味わいがあり、多くの時計愛好家が機械式時計の魅力を再認識した。そしてスイスの時計産業の復活にも大きな影響を与えたのだった。

シックス・マスターピース

 そんなブランパンと機械式時計の復活劇に俳優・松重豊さんは感銘を受け、自身の仕事を重ね合わせる。「自動車業界が、内燃式エンジンと電気モーターという岐路で揺れてますよね。音楽に関しても、レコードからCDになって、配信になった。CDの未来はまだ不透明ですが、レコードは価値が再評価され始めています。翻って僕らの仕事にも、生成AIが凄まじいスピードで押し寄せてきており、俳優という存在そのものも脅かされるような時代になっている。どの分野でも、新しい技術が古いものを置き換えていく時代ですよね」

 一方で、時計だけは違うと松重さんは言う。「クォーツウォッチの性能に触れてもなお、その後を追わないとブランパンが判断をしたことは相当難しかったでしょう。しかし時計に関しては、全てが一方向に進化すればいいとは思えない。人間の心臓の鼓動にも似たチクタクという動きを、ゼンマイや歯車、バネの動きで作り出すというのは、神秘的でもあります。だから人間は、機械式時計というものを手放せなかったんじゃないかな。」

 ブランパンはクォーツという圧倒的な合理性を前にしても、機械式時計だけを作り続けるという決断を下した。

ブランパンが機械式時計だけを作り続けると決断したのは、現存する最古のスイス時計ブランドとしての矜持をしっかりと守ったということなのでしょう

– 松重 豊

創業地の名を冠したヴィルレコレクション

 創業地ヴィルレの名を冠したドレスウォッチ「ヴィルレ」は、「シックス・マスターピース」で完成したデザインコードを継承。薄型のラウンドケース、ダブルステップのベゼル、リーフ型の針、そしてヨーロッパの時計塔から着想を得たIIII 表記の4時インデックスなどで、センターセコンドの端正な時計に伝統を受け継ぐブランパンらしい控えめな存在感と個性を加えている。

 普段は気兼ねなく着けられるメタルブレスレットの時計を好むという松重さん。しかしレザーストラップの時計には、フォーマルな場だからこその楽しみがあるという。「例えばドレスコードがブラックタイであったとしても、メガネと時計、靴は、自分が主張できる部分として楽しみたい。どういう塩梅で選ぶかを、いつも考えていますね」

  今回用意されたヴィルレ ウルトラスリムのなかでは、サーモンダイヤルのモデルが印象に残ったそうだ。「時計の場合、ホワイトゴールドのケースに白いダイヤル、ブラックエナメルのレザーストラップというのが王道。その点、このサーモンダイヤルのモデルは面白いですね。個性はあるけど、いろんなものに合わせやすい色じゃないでしょうか。ストラップは、僕の好きなグレー。そのコントラストも美しい。インデックスや針はゴールドですよね。華やかなんですけども、ギラついてないところも好みです」


伝統を、日常に

「眼鏡と時計、靴は、自分なりのポイントをきちんと抑えてないと、なんだかしまりのない人間に見えるんじゃないかって脅迫観念があるんです。僕自身も人に会うと、持ち物のバランスとかこだわりを見てしまうので、この3点は抜かりがないようにしたい」という松重さんは、新作のヴィルレ ウルトラスリムの中で、カーキストラップのブティック限定モデルに注目した。

 「グリーンとゴールドを組み合わせたメガネを愛用しているので、このヴィルレなら、眼鏡と時計とのコーディネートが楽しめそう。乳白がかったダイヤルカラーも絶妙ですね。そして、この38mm径というサイズ感も理想的だなぁ。僕は大柄な方ですが、それでもこのケースサイズはジャストに近いかな。夏場はシャツの袖をまくることも多いけど、そういう時にちょうどいいバランス。一番オールマイティに使えるサイズですし、最近は女性もこのぐらいのサイズ感を楽しむ人も増えていますよね。老舗ブランドのドレスウォッチというと、ゴールドケースが定番ですが、僕はステンレススティールの輝きが好きなんです」


アップデートすることの意義

 291年にわたるブランパンの歴史と伝統を継承するヴィルレだが、ムーブメントは進化を遂げている。搭載する自社製ムーブメントのCal.1150は、100時間パワーリザーブを備え、シリコン製のひげゼンマイを使用して耐磁性も高めている。「耐磁性が高いというのも現代人のニーズに合っていますね。何の意識もせず、スマホの近くにパッと置いてしまうこともありますから。見た目はクラシックですけども、非常に現代的に進化しているというのは信頼できます」

 どれだけ歴史と伝統を重ねても、時代に合わせて進化していく。そんなブランパンの姿勢は、松重さんの仕事との向き合い方にも通じる。昨年に映画監督としてデビューを果たしたが、また新たに映像作品を制作。それは俳優としてキャリアを積んできた松重さんにとって、ひとつの進化となる。「自分が俳優としてドラマや映画に関わる中で、こうやったら面白いのにという思いが澱のように溜まってきた。そのアイデアを形にすることが、残り時間の使い方として最適なんじゃないかと思ったんです」。

 生成AIの登場によって、俳優という仕事のあり方も大きく変わろうとしている。だからこそ、次の世代とともに未来を模索する場をつくりたいと話す。「自分がいい環境に置かれた時にいい芝居ができたという経験をフィードバックしながら、環境作りに一生懸命、知恵を絞ってる最中ですね。だからこそ、若い人たちと未来を模索する時間を作りたかった」

 腕時計は自分らしさを表現するもの。それはシンプルで端正な時計であっても、個性を表現するアクセントとなる。ブランパン ヴィルレは、ここにカラーリングという個性が加わることで、より強くこだわりを反映できる。

 291年に及ぶブランパンの歴史を継承しつつ、現代の時計に求められるニーズにも対応するヴィルレは、進化を求め続ける人の腕元にこそ似合うのだ。

松重 豊
1963年生まれ、福岡県出身。大学卒業と同時に蜷川幸雄主宰のGEKISYA NINAGAWA STUDIOに入団し、演劇活動を始める。30代後半からは映画やドラマへの出演も増え、“名バイプレーヤー”として知られるようになる。2012年から始まったドラマ『孤独のグルメ』が大ヒットし。2026年には3年半ぶりとなる待望の新作『孤独のグルメ Season11』が放映された。

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黒ジャケット¥68200 黒パンツ¥40700 バンドカラーシャツ¥46200 suzuki takayuki(03-6419-7680) メガネ(参考商品)武田メガネ(092-781-6111) 白シャツ(参考商品)/Django Atour(092-523-6745) デニムパンツ¥ 49500 / suzuki takayuki メガネ(参考商品)武田メガネ

Photos:Yuji Kawata Styling:Yoshie Masui Hair&Make:Ikumi Takahashi Model:Yutaka Matsushige Words:Tetsuo Shinoda