新しく生まれ変わった「クロノマット」は、一見して端正なルックスに魅了される。それを決定づけているのが、ベゼルに備わったライダータブと独創的なデザインのルーロー・ブレスレットだ。これらの特徴的な意匠が「クロノマット」に初めて採用されたのは1984年のこと。ライダータブは回転ベゼルに配された4つの突起で、これによって万が一時計がぶつかってもガラス面を衝撃から保護し、指掛かりも良いためグローブを装着したままでもベゼルの操作が容易になる。しかも「15」と「45」のタブは入れ替えが可能で、カウントアップとカウントダウンのどちらも行えるという画期的なディテールだ。
一方のルーロー・ブレスレットは、筒状のピースを連結させた独特のデザインが示すように、滑らかで快適な装着感を実現し、当時多くの支持を獲得した。新生「クロノマット」は、こうしたオリジナルのデザインを継承しつつ、各ディテールの作りを進化させたことで洗練されたルックスと使いやすさを両立。中でもブラックダイヤルにシルバーのインダイヤルをレイアウトし、クロノグラフ秒針もシルバーに整えたジャパンエディションは、「クロノマット」の特徴的ディテールを引き立たせながらも現代的な表情を携えた、まさにネオ・クラシックな1本に仕上がっている。
1984年の初代モデルで採用されたライダータブとルーロー・ブレスレットを復活させて取り入れた新生「クロノマット」。見た目からも装着感の良さがうかがえるルーロー・ブレスレットは、プッシュボタンで開閉するバタフライクラスプを採用し、使い勝手も向上。また、筒状のコマ間のクリアランスが初代に比べて詰まっており、汚れやゴミなどを入り込みずらくするという実用的なアップデートもなされている。連結部のポリッシュとベースのサテンの仕上げ分けが見事である。
搭載するのはブライトリングの自社製造ムーブメントで、2009年の発表以来、厚い信頼を得ているキャリバー01。各種フラッグシップモデルに採用されている自動巻きクロノグラフで、毎時2万8800振動で駆動する。元より頑強な作りで信頼性が高いが、自動巻きとクロノグラフ機構がモジュール化されており、それぞれにメンテナンスを行うことも可能だ。100%クロノメーター宣言を遵守するブライトリングなので、もちろん精度も折り紙付きである。
本機では、初代モデルより性能を格段にアップさせながらも、ライダータブをはじめとする各ディテールは初代モデルを継承し、新生「クロノマット」にふさわしい佇まいとなっている。
そもそも初代「クロノマット」、そしてライダータブとルーロー・ブレスレットが生まれた背景には、ブライトリングが1930年代より培ってきた航空界との深い結びつきが関係している。初代モデルの誕生から遡ること1年前の1983年、ブライトリングはイタリア空軍のエアロバティックチーム「フレッチェ・トリコローリ」のために、パイロットの意見を取り入れてクロノグラフを開発。ここで考案されたのが、グローブを装着したままでもベゼルの操作が行えるライダータブと、頑強な構造を持ち、装着感にも優れたルーロー・ブレスレットだった。
こうしたディテールを取り入れた「プロパイロットのための計器」の市販品として、1984年に登場したのが「クロノマット」である。この年のバーゼルフェア(当時)で発表された「クロノマット」は、ブライトリングの創業100周年という節目に誕生したモデルであると同時に、クォーツ全盛だったこの時代において、機械式時計の復活を高らかにアピールするタイムピースとなった。
もっとも、初めて市場に投入された「クロノマット」は、ライダータブとリューズに18金のメッキを施し、厚みのあるレザーストラップを組み合わせた仕様もあった。しかしこの仕様変更こそが、「クロノマット」をパイロットウォッチにとどめず、スポーティ&ラグジュアリーな雰囲気も備えたタイムピースへと昇華させたファクターと言えよう。その後も「クロノマット」は、インダイヤルやライダータブ、インデックスなどのディテールに改良を施し、デザインと実用の両面でアップデートを図り続けた。その完成形となるのが2004年発表の「クロノマット・エボリューション」。ケース径をそれまでの39mmから43.7mmへと拡大し、ダイヤルの視認性も向上。現代パイロットウォッチに求められる要素を盛り込みながら、精悍さと上品さも備えたマスターピースを作り上げたのだ。
こうした歴史的背景を顕彰し、新生「クロノマット」にはフレッチェ・トリコローリの限定モデルもラインナップされている。リデザインによって完成した流麗なフォルムと、往時のモデルを想起させるブルーダイヤルとのコンビネーションは実にエレガントで、パイロットウォッチのファンのみならず、多くの人々の琴線を刺激するまさにオールパーパスな1本となっている。優れた着用感と袖口にも収まりの良いプロポーションを携え、エレガンス・パイロットウォッチの新たな姿を提示している。
最新世代クロノマットB01 42ギャラリー
新クロノマットには既に紹介した2モデルの他に、以下の8モデルがラインナップされている。共通するSPECは、42mm径(厚さ15.10mm)、200m防水、逆回転防止ベゼル搭載、ドーム型両面無反射コーティング済サファイアクリスタル。
ここに掲載されているモデルはブライトリング・ブティックをはじめ、全国の正規販売店に入荷が始まっているという。特に、これまでのクロノマットの中でも珍しいカッパーやグリーンなどのダイヤルカラーは実物を見てみることをおすすめしたい。ルーロー・ブレスレットの質感も忘れずに味わって欲しい。
限定モデルをECで確実に手にする
新しい「クロノマット」をはじめ、ブライトリングの時計に興味を抱いたのであれば、やはり正規販売店に赴き、専門スタッフによるアドバイスを受けながら購入を決めるのがベストだ。しかし、生活圏内に正規販売店がなかったり、営業時間内に店舗に足を運べなかったりする人も多いだろう。そんな状況を踏まえ、2020年4月、ブライトリングは日本国内におけるオンラインブティックを始動させた。公式サイトの商品情報からシームレスにショッピングができるのはもちろん、現行ラインナップの全てが網羅されているので、カラーやケース素材の比較検討も容易。未入荷のモデルをプレオーダーできるのも嬉しいポイントだ。また一例として、先日発表された限定モデルの「トップタイム」などはウェブ先行で販売をスタートするなど、オンラインならではのメリットもしっかりと盛り込まれている。
しかも、ブライトリングのオンラインブティックの強みはウェブ限定のサービスだけではない。オンラインでありながら、実店舗と同様にきめ細かなサービスを受けられるのだ。ブレスレット付きモデルへの対応は、その一例。購入時に手首のサイズを入力すると、ブライトリング・ジャパン本社がサイズ調整を行ったうえで商品を送付してくれるのだが、サイト内にはユーザーがプリントできるサイズガイドが用意されているので、実店舗と同様に正しいサイズが計測できるというわけだ。ブライトリングが実践し続けるユーザー・エクスペリエンスは、オンラインブティックでも健在である。
Photos: Tetsuya Nikura (SIGNO) Words: Yuzo Takeishi Styling: Eiji Ishikawa(TRS)