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クラシックカーラリーイベント、ジロ・デッリゾラ沖縄 2023(GIRO DELL'ISOLA OKINAWA 2023)が、去る3⽉4⽇と5⽇の2⽇間にわたり開催された。イベントタイトルにもなっているジロ・デッリゾラ(GIRO DELL’ISOLA )とは、イタリア語で“島巡り”を意味する。その言葉どおり、本イベントは沖縄を巡るようにコース設定がされているが、そこには美しい海と豊かな自然、琉球王国時代からアジアの中心として独自の歴史や文化を育んできた沖縄の魅力を伝えたいという思いが込められている。
こうしたイベントにはスポンサーの存在が不可欠だが、もちろんジロ・デッリゾラ沖縄でも多くの企業が協賛。なかでもジロ・デッリゾラ沖縄ではスイスのラグジュアリーウォッチ&ジュエリーメゾン、ショパールがスペシャルスポンサーとなりイベントの開催を支えている。そして今回、HODINKEE Japanはショパールから招待を受け、ジロ・デッリゾラ沖縄 2023の取材が実現した。
ジロ・デッリゾラ沖縄 ルートマップ
2日間とも沖縄本島がコースであることに変わりはないが、Day 1とDay 2ではルートや走行距離など、その性格は大きく異なる。Day 1は参加者が滞在するホテル、ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄をスタートし、沖縄本島中部を1日じっくり時間をかけて巡り同ホテルまで戻ってくるというルート。走行距離は97.2kmと比較的短い。Day 2も同じくホテルからスタートするが、Day 1とは打って変わって沖縄本島北部を巡りながら、ゴールとなるヒルトン北谷沖縄リゾート芝生広場を目指す走行距離220.9kmの長距離ルートとなっている。
ラリーはドライバーとコ・ドライバー(ナビゲーター)の二人一組で行う競技だ。ドライバーはコ・ドライバーの指示に従って走行し、 いかに早く、いかに正確に走ることができるかを競う。両日ともルート上に設定された地点でチェックポイント認証を受けるスタンプラリー、そして100分の1秒で計測するタイムトライアル⾛⾏(PC競技)が組み込まれた競技構成となっており、これらの競技でポイントを獲得し、最終的に獲得ポイントが最も多いペアが優勝となる。もちろん競技である以上、参加者は皆優勝を目指して競うわけだが、ジロ・デッリゾラ沖縄では沖縄の名所を巡るようにルートが組まれているため、美しい景観のなかを愛車で走るだけでも存分に楽しむことができる。
では、さっそくたくさんの写真とともに、2日間にわたるイベントの様子をお届けしよう。
Day 1
走行ルート
7:40 Start ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄
8:10~8:40 赤間総合運動公園駐車場
9:00~10:00 モータースポーツマルチフィールド沖縄
10:30~11:20 中城(なかぐすく)城跡
12:35~13:30 ヒルトン北谷沖縄リゾート芝生広場
14:30~15:10 Gala青い海 / さんご畑(Sea Seed)
15:40~16:15 万座毛
16:30~17:00 ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄
Day 2
走行ルート
7:30 Start ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄
7:45~8:15 赤間総合運動公園駐車場
9:00~9:30 又吉コーヒー園
9:15~9:45 東村文化・スポーツ記念館
11:00~11:30 辺戸岬
12:00~12:50 オクマプライベートビーチ&リゾート
13:00~13:40 道の駅おおぎみ
14:30~16:20 ヒルトン北谷沖縄リゾート芝生広場
最終的にジロ・デッリゾラ沖縄 2023にエントリーしたのは13台(公式サイトにエントリーリストが掲載されているので、気になる方はこちらをご覧いただきたい)。途中、実はクルマの不調で棄権が危ぶまれた車両があったものの、無事全車両が最後まで走り抜き1台も欠けることなくゴールした。
優勝したのはエントリー No.8 1961年式のアルファロメオ・ジュリエッタスパイダーでエントリーし、合計10335ポイントを獲得した瀧川弘幸氏(ドライバー)と山本清彦氏(コ・ドライバー)のペア。聞けば、瀧川氏はラリーイベントの本場とも言えるミッレ ミリアに何度も参加し、その日本版であるラフェスタ ミッレミリアの運営にも携わるベテランのラリー経験者だ。そしてコ・ドライバーの山本氏は、そんな彼の愛車を長年担当するメカニック。優勝に際してコメントを求めると、瀧川氏は愛車を完璧な状態にしてくれる山本氏の存在があったからこその優勝だったと全幅の信頼を寄せていた。開始前のブリーフィングで、ラリー攻略のポイントはドライバーとコ・ドライバーの信頼関係が大切なのだと指導を受けていたのだが、瀧川氏のコメントを聞き、なるほど、優勝も当然だと思わず納得した。
Day 0 - 開催前夜 ジロ・デッリゾラ沖縄開催に寄せて
ジロ・デッリゾラ沖縄自体は3⽉4⽇と5⽇の2⽇間だが、開催前日の3⽇には前夜祭として参加者を交えたディナーが催された。そこで、ショパール ジャパン代表取締役 トーマス・ドベリ氏とジロ・デッリゾラ沖縄 実行委員長を務める矢口可南子氏に話を聞くことができた。筆者がどうしても聞きたかったことがふたつある。ふたりはこの疑問に快く答えてくれた。
まずひとつめの疑問だ。なぜクラシックカーラリーを沖縄で開催しようと思ったのか。そもそもクラシックカーラリーは沖縄でなくてもできる。沖縄で開催するには車両を本州から輸送してくる必要があり、主催側、参加側にとっても大きな手間だ。それを押してなぜ沖縄なのか? 矢口氏は次のように話す。
「自分のルーツを大切にしなさいと教えられてきました。それが私にとってクラシックカーラリーであり、出身地の沖縄だったのです。といっても、もともとクラシックカーが好きだった訳ではありません。たまたまクラシックカーラリーを見学する機会があって。当時はクラシックカーについて何も知りませんでしたが、モノクロ映画に出てくるような現代にはないクルマが、色とりどりに目の前に広がる様子に衝撃を受けたのです。そこからクラシックカーの虜になりました」
「クラシックカーラリーイベントの趣旨には自動車文化の継承があります。文化と技術、そして古いモノを大切にするという心意気を次世代へ繋いでいくことが最も重要です。そして自分のルーツでもある沖縄のことをもっと知って欲しい、沖縄の観光産業を支援したい。そんな思いから沖縄での開催にこだわりました。イベントタイトルを島巡りという意味を持つ“ジロ・デッリゾラ(GIRO DELL’ISOLA )”にしたのも、ルートに観光客向けの場所や施設ばかりではなく地元の人たちが行くところを設定したのも、本当の沖縄に触れて欲しいからです」
そしてふたつめの疑問。ショパールがなぜこのジロ・デッリゾラ沖縄をスポンサードしようと思ったのかということだ。ショパールは世界的にも知られるミッレ ミリアをずっとスポンサードしている。クラシックカーラリー=ショパールのイメージもブランドを知る人にはある程度浸透しているなかで、あえて日本の、しかも極めてローカルなクラシックカーラリーをスポンサードする理由がどこにあるのだろうか?
「理由はふたつあります。それはパッション、そして文化の継承です。先ほど矢口さんがジロ・デッリゾラ沖縄にかける思いを話してくださいましたが、自動車文化を継承していきたいという思いと、それをやり遂げたいというパッション。そんな矢口さんの思いに心を動かされたのです」
ショパールがF1ではなく、クラシックカーラリーのミッレ ミリアを支援してきた理由もそこにある。例えば広告的な効果や知名度を考えたらF1のほうがはるかに影響力は大きいだろう。だがF1の場合、ビジネス的側面が強まる印象がある。ショパールにとっては、パッションと文化の継承ということが何より重要なのだ。ドベリ氏はこう続ける。「それに長い目で見たとき、一緒に培っていくことに価値があるのではないかと思うのです。一緒に育てていくほうが夢があるでしょ?」 沖縄の方言で結(ゆい)という言葉がある。これは結合、共同、協働、そして人と人の結びつきを意味する言葉だが、ジロ・デッリゾラ沖縄をスポンサードすることは、まさにこの精神にもとづくものなのだ。
ショパールのミッレ ミリアへのスポンサードは今年で36年目となる。そしてカンヌ国際映画祭へのスポンサードも26年目を迎えた。今でこそどちらも世界的なイベントだが、長きにわたってスポンサードをするその根底には、文化の継承とそれをやり遂げたいという夢と情熱が共有できるからにほかならない。
これはショパールというブランドの姿勢ともリンクしている。ショパールは数あるスイスのブランドのなかでも、創業以来独立した家族経営であることを主張できる数少ないブランドのひとつだ。1963年にショパール本家からショイフレ家に引き継がれ、現在もショイフレ家が所有している。ショパールがそうしたブランドであるからこそ、伝統を受け継ぐこと、文化を継承することの大切さを知っているのだろう。
哲学者の天野貞祐(1884〜1980)は、こんな言葉を残している。「伝統なき創造は盲目的であり、創造なき伝統は空虚である」。ショパールというブランドの姿勢、そしてコレクションや時計づくりを見ていると、その根底には、そのような確信めいた思いがあるのではないかと筆者には思えてならない。
ショパールの詳細はショパール公式サイト、ジロ・デッリゾラ沖縄の詳細はジロ・デッリゾラ沖縄公式サイトへ。
※クレジット表記のない写真はすべて。photos:Kyosuke Sato(HODINKEE)