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Historical Perspectives ロレックス初のサブマリーナー正史から学んだ5つのこと

表紙の現行リファレンスに惑わされないで欲しい。この新しい本にはヴィンテージの逸品がたくさん詰まっている。

これは単なる高級なコーヒーテーブルブックではない。ニコラス・フォークス(Nicholas Foulkes)氏による『Oyster Perpetual Submariner – The Watch That Unlocked The Deep(オイスター パーペチュアル サブマリーナー – 深海を切り開いた時計)』は、これまでで最も詳細にロレックスのアーカイブに迫った1冊である。正直に言うと、この本の話を最初に聞いたとき、私は懐疑的だった。スイス時計製造の象徴ともいえるロレックスは、その秘密を決して明かさない。アーカイブ情報を厳重に守ることで知られる同社が、なぜ急にそれを一般公開する決断をしたのだろうか?

 今や情報の霧は晴れた。ロレックスは一挙にヴィンテージサブマリーナーに関する研究を訂正し、裏付け、さらに拡充したのである。特に注目すべきは(すでにヴィンテージロレックスのIGコミュニティで“報告”されているとおり)、これまでに製造された各ロレックス サブマリーナー リファレンスの製造推定量がこの本の索引に記載されている点だ。これは通常、ヴィンテージ製品について肯定も否定もしないロレックスにとって、まさに180度の方針転換と言えるが、これはオイスター パーペチュアル サブマリーナーの氷山の一角に過ぎない。

Rolex Submariner book

 これまでの研究は、ヴィンテージコレクターたちのあいだで長い時間をかけて築かれてきたものである。既知のオリジナルウォッチのデータを集め、過去のロレックス通たちから伝えられた古い話を付け加え、常識と推測を組み合わせて結論に至っていたのだ。そしてその結論は、“コレクターコミュニティの知る限りでは…”といった但し書き付きでしか提示できなかった。

 ロレックスから正式に認可されたサブマリーナーに関する確かな情報が公開されたことで、今後ロレックスのモデル(およびその秘密)に関するさらなる公式書籍が出版されることが期待される。本書はWallpaper*とロレックスが提携して出版するシリーズの第1弾であり、ニコラス・フォークス氏がすべて執筆している。サブマリーナー正史は252ページにわたるが、この記事ですべての秘密を明かすつもりはない。ここではHODINKEEの“ヴィンテージ通”が、本をめくりながら学んだ5つのことを紹介しよう。

1. サブマリーナーはエクスプローラーから生まれた

 HODINKEEのReference Points: ロレックス サブマリーナー 歴代モデルを徹底解説では、“サブマリーナーの起源”に関するセクションを設けている。サブマリーナー、エクスプローラー、ターノグラフが1954年5月に、市場に同時に登場したというアイデアは、これまで“受け入れられた”ストーリーの一部であった。この文章は、過去のHODINKEEの記事を批判したり否定したりするものではなく、時計コミュニティがかつて正しいと思っていたことを示すものである。

Rolex Explorer Ref. 6150

ロレックス エクスプローラー Ref.6150

 オイスター パーペチュアル サブマリーナーの最初の章では、ロレックスのアーカイブを通じて多くの一次資料が引用され、まったく異なる物語が語られている。この本によると、サブマリーナーはエクスプローラー Ref.6150から発展したという。ロレックスのディレクターであったレネ=ポール・ジャンヌレ(René-Paul Jeanneret)とロレックス ロンドン支社とのあいだで交わされた手紙には、1952年に始まった英国海軍ダイバーからの具体的なリクエストやテストに関する詳細が記されていた。また、1953年9月の日付が入ったロレックスの出荷伝票には、初期のRef.6150のモデルが、英国海軍に納入されたことが記載されている。

 1954年、ダイバーからのフィードバックをもとに、ロレックス ロンドンは“海軍省との協力により製造された”特別なバージョンのRef.6150について説明している。このモデルは、より大きなダイヤル径(確認済み)と回転ベゼル(こちらも確認済み)を備えていた。(この本によると)こうしてサブマリーナーが誕生したというわけだ。

Rolex Submariner Ref. 6204

ロレックス サブマリーナー Ref.6204

2. ピースレビコフ、ノーチラス、フロッグマン、サブアクアなど、ロレックス サブマリーナーのさまざまな名前

 サブマリーナー、あるいはシンプルに“サブ”と呼ばれるこの時計は、今日ではあまりにも広く知られているため、その一見不自然な言葉がどうやってロレックスのダイヤルに刻まれるようになったかについて深く考えることは少ない。これは、日付機能のみを備えた時計にデイトジャストと名付けたり、日付と曜日を表示する時計をデイデイトと呼ぶ想像力を持つ同じ会社が考え出した名前なのだ。

 フォークス氏とロレックスによれば、のちに“サブマリーナー”として知られることになったこのプロジェクトは、開発中にさまざまな名前が検討された。米国では発売後にちょっとした問題に直面したこともあったという。ハンス・ウィルスドルフ(Hans Wilsdorf)は本のなかで、“フロッグマンよりもディープシー スペシャルという名前のほうがいい”と語り、また時計業界の歴史を大きく変えたかもしれない興味深い考えとして、“ノーチラスはすでに登録されているはずだ”とも語っている。

A Rolex Sub-Aqua

ロレックス サブアクア Ref.6204

 イギリス海軍によるテストと並行して、ロレックスは水中写真と新興のスキューバダイビングのパイオニアであるディミトリ・レビコフ(Dimitri Rebikoff)の協力を得ていた。レビコフのサブマリーナープロジェクトへの影響はきわめて大きく、社内ではこの時計を“ピースレビコフ”と呼んでいたほどである。最終的には、1953年5月28日のロレックスのテクニカルミーティングで、ジャン・ユグナン(Jean Huguenin)が、“この時計には『サブマリーナー』という名前を付ける”と決定したとされている。

 サブマリーナーが市場に出たあとも、その名称は確定していなかった。本書にはアメリカにおける知的財産権の問題が詳しく書かれており、その結果ごく短期間のみサブアクアという名前が使われた。これにより、ダイヤルにサブマリーナーではなくサブアクアと記された、非常に希少な初期モデルが存在する理由がはっきりした。

3. ベゼルから赤い三角マークが姿を消したのは、ディミトリ・レビコフのおかげである

 重要な話に入る前に、いくつかの興味深いポイントを簡単に紹介しておきたい。先ほどディミトリ・レビコフについて触れたが、本書には彼とロレックスの関係についての素晴らしい情報がたくさん詰まっている。彼は現在のサブマリーナーのデザインを決定づける上で、本当に重要な役割を果たした人物だ。たとえば、1953年4月にレビコフはベゼルの12時位置にある赤い三角形が実用的ではないと指摘し、“おそらく10m下ではすでに見えなくなるだろう…白い三角形に置き換えるほうがよい”と述べている。

Rolex Submariner

ロレックス サブマリーナー Ref.6536/1

 そこで“現在、ベゼルの三角形を赤ではなく真っ白に変更することを検討している”とレネ=ポール・ジャンヌレが応じた。そして比較的短期間で赤い三角形は姿を消した。

4. ターノグラフはバーゼルで大ヒットを狙っていた、忘れられた存在

 ロイヤルネイビー(王立海軍)やスキューバダイビングのパイオニアが開発を進めても、サブマリーナーに対する市場の期待は低かった。本書によると、サブマリーナーはもともとニッチなプロフェッショナル向け製品と見なされていた。しかし回転ベゼルの開発が商業的な救いとなったのである。このため、ロレックスはサブマリーナーと同時にターノグラフを開発し、回転ベゼルに特化したモデルとして市場に投入した。この時計は“無限の用途を持つ時計”として売り出される予定だった。ロレックスは1954年のバーゼルフェアにてターノグラフに全力を注いだが、最終的にはサブマリーナーが勝利を収めた。

Rolex 1954

 ヴィンテージ市場での経験から言えるのは、当時ターノグラフの販売数がとても少なく、そしてその希少性にもかかわらず、今日のヴィンテージロレックスコレクターにとっても売るのが難しい時計だということだ。サブマリーナーは大成功を収め、一方でターノグラフはスタートライン付近でほぼ忘れ去られてしまった。

5. 各サブマリーナーリファレンスの生産“推定数”

 この本の巻末に追加された情報は、書籍の初期版を手に入れて以来、ヴィンテージロレックス界で大きな話題となっている。ロレックスがこうした数字を公開するのはきわめて異例なことであり、その重要性を強調しても足りないほどだが、HODINKEEの読者なら理解してくれているだろう。ここですべての生産数を列挙するのは、Wallpaper*やフォークス氏、そしてこの本をつくり上げた多くの人々に対して不公平に感じるため、いくつかの“重要なポイント”に絞って紹介してみよう。最初に注目すべき点として、細かい注意書きには“生産数はロレックスアーカイブのデータに基づく推定値”とあるが、詳細を確認するとこれらの数字はかなり正確に感じられる。

Rolex Submariner Ref. 6200 "King Sub"

ロレックス サブマリーナー Ref.6200 “キング・サブ”

 まず最初に、ヴィンテージロレックスのコミュニティは予想がかなり的確だということだ。長年にわたり、約300本のRef.6200 “キング・サブ”が製造されたと広く信じられてきた。この数字はしばしば引き合いに出されたのは、Ref.6200が“最も希少な”モデルのひとつとされていたからだ。結果として、我々の予想は正しかった。この本によると、“推定”303本が製造されたとされている(推定といえど、303本という数字はほぼ的中している。300ではなく303本だ)。このリファレンスがすべてのなかで最も生産数が少なかったということも確認された。

 興味深いのは、Ref.5513とRef.5512の生産数の差だ。これらふたつはほとんどの製造期間において姉妹リファレンスとされており、その違いは、5512がクロノメーター認定ムーブメントを搭載しているのに対し、5513は非認定キャリバーを搭載している点だ(ここでは少し簡略化して説明している。ヴィンテージロレックスファンの方、怒らないでくれ)。いずれにせよ、ムーブメントの違いを除けば両者は基本的に同じ時計だ。しかし総生産数は5513が15万1449本に対し、5512は1万7338本と推定されている。今日のヴィンテージ市場では、5512には常に5513よりも若干高いプレミアムがついているが、その希少性が9倍も高いことを反映した価格差にはなっていないのだ。

Rolex Submariner Ref. 5512

ロレックス サブマリーナー Ref.5512

『Oyster Perpetual Submariner – The Watch That Unlocked The Deep(オイスター パーペチュアル サブマリーナー – 深海を切り開いた時計)』は、英語版とフランス語版で出版されています。ハードカバー版は2024年10月1日から購入可能で、販売店情報はACC Art Booksのサイトで確認できます。限定版のシルク装丁版は、9月16日から19日までの期間にWallpaperSTORE*でのみ先行予約販売され、そのあと通常の販売が開始される予定です。