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我々が知っていること
ピーター・スピーク(Peter Speake)氏が自身の名を冠した前ブランド、スピークマリンから退いて8年、新ブランドであるPS オロロジー(PS Horology)を立ち上げてから3年が経過した。そして今、日本文化にインスパイアされたツバ ブルー(Tsuba Blue)と、日本およびベトナム文化にインスパイアされたツバ ドンソン(Tsuba Dong Son)という最初のモデルが発表された。ピーター・スピーク氏を知らないのであれば、この機会に知っておくべきだ。彼はスピークマリンの設立以前にル・ロックルにあるルノー・エ・パピで4年間勤務しており、その後自身のブランドを立ち上げた。また教育プラットフォーム“ネイキッド ウォッチメーカー(The Naked Watchmaker)”を手がけ(現在は同組織を離れている)、ハリー・ウィンストン、メートル・デュ・タン、MB&Fなどともコラボレーションを行ってきた。
そして今回、彼は再び新たなクリエイションを発揮し、新作を披露した。
ツバ ブルー
この時計のデザインは日本刀の鍔(つば)から着想を得ている。鍔は手が刀の柄から刃に滑らないように保護するパーツであり、重量のバランスを取る役割も果たす。鍔にはさまざまな形状があるが、今回のケースデザインは輪宝形と八角形の鍔を組み合わせた形状に基づいている。このアイデアをデザイナーのダレン・ジョーンズ(Darren Jones)氏が現実のデザインへと発展させ、最終的に316Lステンレススティール(SS)のケースが完成した。このケースは複雑な形状を実現するため、5段階の仕上げ工程を必要とする。ケースサイズは直径38.3mm、厚さは8.91mmで、防水性能は30mである。
ツバ ブルーは文字盤中央にサファイアクリスタルを使用しており、文字盤上に浮かぶように配置された陽極酸化処理のメタルフレームを特徴としている。ツバ ドンソンはベトナムの小売業者からのリクエストに基づき制作されたもので、青銅器時代のドンソン文化に由来する、当時の太鼓に描かれていた同心円状のシンボルが文字盤にあしらわれている。この模様は18Kゴールド製で、背景色としてスレートカラーまたはブルーが使用されている。また、針のデザインにはドンソン文化の槍や短剣の形状が取り入れられている。
ツバ ドンソン
ツバ ドンソン
これらの太鼓をはじめとしたモチーフはベトナムの広い地域で見られ、2000年前に起源を持つベトナム文化の象徴となっている。文字盤のデザインは現代のベトナム国家の建国80周年を記念したものであり、2024年はドンソン文明が再発見されてから100周年にあたる。
ツバ ドンソンの文字盤
両モデルにはヴォーシェ製の超薄型マイクロロータームーブメント、Cal.5401が搭載されており、パワーリザーブは48時間だ。ツバ ブルー(価格は1万9500スイスフラン、日本円で約340万円)はケース一体型のブレスレット仕様で提供され、ツバ ドンソン(価格未定)はストラップ仕様で発売される予定だが、のちにブレスレットも追加で用意される見込みである。ツバ ブルーは限定100本、一方のツバ ドンソンは限定80本の生産となる。
我々の考え
ピーター・スピーク氏の新作時計が2025年最初のリリースとして取り上げられることになるとは、正直、想定外だった。しかし新年の幕開けとともに、新ブランドをスタートさせたスピーク氏に祝意を表したい。ツバ(鍔)はさまざまなデザイン要素がひとつに凝縮された興味深いモデルだ。時計のインスピレーション元である日本刀の鍔を超えて、個人的にはジェラルド・チャールズの“マスターリンク”を思い起こさせる。そしてそのマスターリンクも、同じヴォーシェ製のマイクロロータームーブメント Cal.5401を偶然にも搭載している。ただしそちらはマットなダークグレー仕上げにゴールド製のマイクロローターを採用し、より高度な仕上げが施されている点で異なる。一方ツバ ブルーのケースバックは公開されておらず、プレスリリースにも詳細が記載がない。だがツバ ドンソンのほうを見ると、ムーブメントが覗ける小窓があることがわかる。しかしその仕上げは、マスターリンクのようなレベルに達しているようには見受けられない。
ベトナム的な要素を取り入れたツバ ドンソンは、日本とベトナムの文化的インスピレーションが融合した興味深いデザインだ。プレスリリースによるとこのモチーフはベトナムのリテーラーであるMiluxeの“リクエスト”に基づくものだという。ちなみにこのリテーラーは約2700ドル(日本円で約42万6000円)の“ドンソン”モチーフを採用した携帯電話も販売しており、今回の時計デザインは同社のマーケティングやデザイン戦略の一環である可能性が高い。もっともこのデザインコンセプトは私のような層に向けたものではないようで、詳細について語るには情報が足りない。そのためこの点については、ほかの人の意見を待ちたいと思う。ただ少なくともツバのケースサイドを見る限り、極めて薄く、快適な装着感を備えていそうだ。
ムーブメントの話に戻ると、ヴォーシェのCal.5401はライネやカール・スッキー&ゾーネのようにより小規模なブランドでも多く使用されている。たとえばライネのV38もこのムーブメントを搭載しており、価格は約8000スイスフラン(日本円で約140万円)ほど安く、ギヨシェ彫りの文字盤が特徴的だ。一方でツバはよりスポーティな雰囲気を持ち、ジェラルド・チャールズのマスターリンクに近い路線に属している。両者の価格差は約1000スイスフラン(日本円で約17万5000円)程度で、ジェラルド・チャールズのほうがやや高価だ。
基本情報
ブランド: PF オロロジー(PS Horology)
モデル名: ツバ ブルー(Tsuba Blue)/ツバ ドンソン(Tsuba Dong Son)
直径: 38.3mm
厚さ: 8.91mm
ケース素材: 316Lステンレススティール
文字盤色: 陽極酸化メタルフレーム付きサファイアダイヤル(ツバ ブルー)/18Kゴールド製ダイヤル、背景のアクセントにスレートまたはウルトラマリンカラー(ツバ ドンソン)
夜光: なし
防水性能: 3気圧
ストラップ/ブレスレット: ケース一体型ブレスレット(ツバ ブルー)/ストラップ付きで納品、後日ブレスレットを追加することも可能(ツバ ドンソン)
ムーブメント情報
キャリバー: ヴォーシュ製Cal.5401
機能: 時・分・秒表示
直径: 30mm
厚さ: 2.6mm
パワーリザーブ: 48時間
巻き上げ方式: 自動巻き(マイクロローター使用)
振動数: 2万1600振動/時
石数: 29
クロノメーター認定: なし
追加情報: フリースプラングバランス
価格 & 発売時期