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我々が知っていること
デザインデュオのフィル・トレダノ氏とアルフレッド・チャン氏が、この春、彼らの初作であるB/1の後継モデと名付けられた新作は、タヒチ産マザーオブパールの文字盤を採用し、新たにデザインされた非対称のサファイアクリスタルを通して、その美しさが際立つ仕上がりとなっている。
昨年、大胆なデザインとして話題を集めたB/1に続く新作B/1.2は、初作の単なる繰り返しではなく、同じアイデアを新しい形で表現したモデルだ。トレダノ氏はこう語る。「特にアーティストとして、同じことをまたやるのは意味がないと思っていす。それよりも新しい表現をしたかったんです」。デザインの観点から見ると、B/1のデザインをどこまで変えるべきか、そしてその変化が行き過ぎないようにするのは難しい課題だったという。既存のユーザーを引きつけつつ、進化を感じさせるにはどうすればいいのか? ブレスレットとケースの基本構造はほぼそのままだが、文字盤とクリスタルに手を加えたことで、時計全体が一段と洗練された印象に仕上げられている。
トレダノはミッドセンチュリーの無骨なコンクリート建築の憂鬱なイメージに魅了されるかもしれないが、ブルータリズムはその冷たさが特徴のデザインスタイルだ。そんな無機質なデザインに、宝石のように輝く巨大なサファイア風防を組み込むことで、直線的でアシンメトリーな美しさを保ちながら、マザーオブパールが持つ表情を柔らかく歪ませて屈折させた光が繊細に輝く。これによって、前作B/1のやや硬質な印象が和らぎ、より柔らかく洗練された雰囲気を生み出している。
時計のサファイアクリスタルのデザインを巧みに操る手法は、まさにグリマ(編集注:イギリスのジュエリーデザイナー)を彷彿とさせるものだ。トレダノ氏は、オメガのために手がけられたグリマのデザインや、1990年代にジェンタが自身のブランドで発表した多面体ダイヤルを大きなインスピレーションの源だと語っている。私自身は、1940年代のパテック フィリップの独特なクリスタルを思い出さずにはいられない。特にトップハット Ref.1450やアワーグラス Ref.1593のように、厚みのある曲線的な風防がケースの印象を一変させ、文字盤をわずかに歪ませるものだ。
とはいえ、トレダノ氏とチャン氏は独自のアイデンティティを持つ時計デザイナーだ。ジェンタやグリマといった巨匠たちの彫刻的なデザインから強い影響を受けつつも、B/1.2のデザインは彼ら自身の建築的な感性によるものでもある。トレダノ氏はこう語る。「ケースにはまだ手を加えられる余白があって、予想外のアプローチでデザインを続ける余地がありました。その空間はまるでビルの空中権のようなものです。そこに新しいデザインを築く余地が残されている、そんな感覚でした。」
B/1.2のインスピレーションとなったのは、アンドリュー・グリマがオメガのためにデザインしたアバウト・タイムコレクションの18Kイエローゴールドウォッチだ。この時計は、長方形のスモーキークォーツ越しに時刻を見るというユニークなデザインが特徴で、1970年に発表された。
B/1から引き継がれた角ばった時針と分針は、ケースの不規則でシャープな形状を反映したデザインとなっている。マーカーを持たない点からトレダノが「曖昧な時計("ish" watch)」とユーモアを交えて呼び続けるB/1.2では、クリスタルによって針がわずかに歪んで見える。彼は「針が特定の時間帯に屈折のちょっとしたニュアンスを加えるんです。それがとても素敵なんですよ」と語る。
文字盤の変更だけにとどまらないいくつかの改良により、価格はやや上がり5700ドル(約89万円)となる。この新作時計は、3月に注文受付および配送が開始される予定である。
我々の考え
2024年はデザイン主導の時計が大いに注目を集めた年だった。時計愛好家全体を代表して断言するつもりはないが、オークション会場、店舗、そしてソーシャルメディアの至るところで、個性的な形状を持つ時計が溢れていたのは間違いない。実際、B/1の発売からわずか2週間後には、オーデマ ピゲのリマスター02が登場し、1970年代を意識したシェイプウォッチのテーマを前面に押し出したモデルとなった。これについてトレダノは、「なんて素晴らしい賛辞だろう。オーデマ ピゲと同じ会話のなかで名前が挙がるだけでも光栄ですよ」とコメントしている。
時計批評はしばしば、傍観者たちが一方的に語るようなものに感じられることがある。しかし、何か新しいものを創り出すことが、見た目以上にはるかに困難であることを忘れてはならない。ブルータリズムを時計デザインに落とし込むという挑戦的なコンセプトは確かに大胆だが、既存の価値観に真っ向から向き合い、完全に新しいアイデアを私たちの手首に収まる形で具現化したその姿勢には称賛を送りたい。
もちろん、「完全に新しい」ものは存在しないかもしれない。しかし、個々の要素の組み合わせや、デザインの各層に込められた思考プロセス、そして1970年代のキッチュ、ブルータリズム、モダニズムといった芸術的な流れをミックスし、2025年の市場向けにパッケージ化したその成果には、少なくとも興奮を覚えずにはいられない。
B/1を用いた実験的な試みとして、2024年には2つのユニークなモデルがオークションで販売された。左:「B/1」――ケース、文字盤、ラグが主に隕石素材で作られた非対称デザインの腕時計。ストラップにはダチョウの脚の皮革が用いられている。スイス・インスティテュートの支援を目的とした一点物。右:「B/1」――銅を含むカーボンファイバーを素材とした非対称デザインの腕時計で、ブレスレット仕様。サザビーズのために制作されたユニークピース。
トレダノ氏も、私が感じているシェイプウォッチやストーンダイヤルが少し飽和状態になってきた感覚に共感するかもしれない(実際トレダノ氏自身も「ストーンダイヤルはオーバードーズ気味」と語っている)。しかし、逆張りの傾向を脇に置いておくとしても、製品が進化し、時間とともに良くなっていくのを見るのは満足感を覚えるものだ。
B/1.2は、今ではよりエレガントで洗練された印象を与える。これはまさに望まれるべき進化であり、いわゆる2作目のジンクスをうまく回避した好例と言えるだろう。デザインを変更し、改良し、調整し、形を整え、滑らかに仕上げ、全体を洗練させていくようなプロセスこそ、優れた第2作を形作る要素なのだ。B/1.2がそれを見事に実現したことに拍手を送りたい。
基本情報
ブランド: トレダノ&チャン(Toledano & Chan)
モデル名: B/1
直径: 33.5mm(横幅)
厚さ: 10.40 〜 9.10 mm厚(傾斜のかかったケース)
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: タヒチ産マザーオブパール
インデックス: なし
夜光: なし
防水性能: 5気圧
ストラップ/ブレスレット: 一体型ブレスレット
追加情報: B/1はデストロウォッチ仕様(リューズが左側に向くように装着する時計)。
ムーブメント情報
キャリバー: セリタ SW100
機能: 時・分表示
パワーリザーブ: 42時間
巻き上げ方式: 自動巻き
価格 & 発売時期
価格: 5700ドル(約89万円)
発売時期: B/1.2は2025年3月に発売予定。
限定: 200本(予定)
詳細は、トレダノ&チャン公式サイトへ。