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Hands-On H.モーザー エンデバー・トゥールビヨン スケルトンを実機レビュー

今年初めに発表された魅力的なスケルトンウォッチは、印象的なキャリバーと洗練されたエレガンスが見事に融合しており、じっくりと見てみる価値がある。

Photos by TanTan Wang

シャフハウゼンを拠点とするH.モーザーは今年のWatches & Wondersで、リーボックとの完全に予想外なコラボレーション、ストリームライナー “ポンプ”によって、かなり型破りな話題を呼んだ。時計とスニーカーが一体となったこのリリースは、このブランドだからこそ成立するのだろう。しかしその一方で、今年初めにやや注目の陰に隠れていた、H.モーザーの強みをひとつの時計に見事に集約させたようなモデルがある。そしてそれは詳しく見てみる価値があると感じている。

Endeavour Tourbillon Skeleton Wristshot

 私が話しているのは、1月末に発表されたエンデバー・トゥールビヨン スケルトンのことであり、発表以来、ずっと実物を見てみたいと思っていた。コンセプト自体は、きわめてシンプルに思える。2024年に一体型ブレスレットのストリームライナー用に登場したスケルトンのフライングトゥールビヨンムーブメント Cal.HMC-814 を、H.モーザーのよりクラシックで保守的なエンデバーのデザインと組み合わせるというものだ。私にとって、このスケルトン仕様のフライングトゥールビヨンムーブメントは、ブランドがこれまで手がけてきたムーブメントのなかで最も好きな構造のひとつであり、さらにエンデバーケースによってエレガントさが加わることで、本作は際立つモデルになっていると思う。

 40mmのエンデバーケースは5Nレッドゴールド製であり、H.モーザーのデザインを好む人にとってきわめてなじみ深いものに感じられるだろう。ドレッシーなシルエットにひねりを加えたデザインで、上から見るとシンプルに見えるが、それ以外の角度から見ると、コンケーブベゼルからケース側面の特徴的な造形まで、エンデバーには多くの興味深く細やかな意匠が凝らされている。例えばケースの仕上げを際立たせる工夫として、ケース側面の滑らかで丸みを帯びた凹み部分のポリッシュ仕上げと、それ以外のバーティカルサテン仕上げとのコントラストが際立っている。厚さは10.7mmで、特に分厚い時計ではないが、ケース側面のこうした工夫は、手首に着けた時のスリムさを視覚的に演出する効果もある。ここには平坦な面は一切ない。またH.モーザーは引き続きロゴ入りのリューズを採用しているが、リューズに刻まれた独特のセリフ体の“M”は、ダイヤル側にほとんどテキストが存在しないデザインとやや噛み合っていないようにも感じられる。これはいくつかのエンデバー・コンセプトシリーズで感じたことで、本作でも同様だ。しかし、それは確かにきわめて些細な指摘である。

Endeavour Tourbillon Skeleton Side on Table
Endeavour Tourbillon Skeleton Case Side
Endeavour Tourbillon Skeleton Clasp

 この時計で私を最も興奮させるのは、ダイヤル(というより、むしろダイヤルが存在しないこと)だ。これまでのH.モーザーのスケルトンモデルとは一線を画す、斬新な印象を与える。同ブランドがエンデバーのスケルトンモデルを発表したのは初めてではないが、リーフ型の針が中央に配置され、オフセットされたインダイヤルではないのはおそらく今回が初めてだろう。バーティカルサテン仕上げを施したアンスラサイトカラーのリングが、オープンワーク仕様のダイヤルを囲み、そこにレッドゴールド製のアプライドインデックスが配され、シンプルな2針デザインと見事に調和している。HMC-814は、6時位置に配置された1分間フライングトゥールビヨンを縁取る、細く流れるようなアンスラサイトのブリッジを際立たせている。

 このスケルトナイズド処理は実に見事で、ブリッジデザインは不思議な対称性を保ちながらも、オーバーサイズでスケルトン仕様の香箱(その主ゼンマイは、視覚的なパワーリザーブインジケーターの役割も果たしている)から輪列を経て、最終的にトゥールビヨンへと伝わるエネルギーの流れを余すところなく見せてくれる。またこのトゥールビヨンには、独創的な円筒形のヒゲゼンマイこそ搭載されていないものの、ブランドを象徴するダブルヘアスプリングが採用されており、全体的にスリムな形状を実現している。

Endeavour Tourbillon Skeleton Tourbillon Cage
Endeavour Tourbillon Skeleton Barrel Macro
Endeavour Tourbillon Skeleton Caseback

 時計の前面からはムーブメントの構造が一目瞭然だが、背面も同様の体験を提供してくれる。今回は、スケルトン化されたゴールド製の巻き上げローターが揺れる。このローターは、双方向巻き上げ機構により、毎時2万1600振動で作動するトゥールビヨンに72時間のパワーリザーブを供給している。HMC-814のブリッジにはアングラージュがふんだんに施されているが、ムーブメントに採用されたアンスラサイトPVD仕上げの影響によって、アングラージュ部分のポリッシュ仕上げとそのほかのバーティカルサテン仕上げとのコントラストはやや控えめになっている。内角を期待する人にとっては物足りないかもしれないが、もしこれ以上仕上げの複雑さを加えれば、このエンデバー・トゥールビヨン スケルトンの9万9600ドル(日本円で約1500万円)という価格は間違いなくさらに高くなっただろう。

Endeavour Tourbillon Skeleton on table
Endeavour Tourbillon Skeleton Tourbillon Cage
Endeavour Tourbillon Skeleton Caseback Barrel

 しかしエンデバー・トゥールビヨン スケルトンが目指し、実際にそれが成功していると私が思うのは、ブランド最高の最新ムーブメントのひとつを、ストリームライナーよりもさらにエレガントで控えめなパッケージに収めることだ。レッドゴールド製であっても、ヌバックアリゲーターレザーストラップとの組み合わせは、ブレスレットが付いたスティール製のストリームライナー・トゥールビヨン スケルトンに比べてより穏やかな印象を与え、実際、レッドゴールドとアンスラサイトのコントラストが、オープンワークのダイヤルをより美しく引き立てていると思う。確かにこのエンデバーにホワイトメタル仕様が加われば、さらに控えめな印象になるだろうが、それはすでにブランドの計画のなかにあるのではないかと思っている。

 実際着用すると、本作は予想どおり目を引くが、さまざまな光の下でこれほど違って見えるとは思わなかった。結局のところ、アンスラサイトコーティングされたムーブメントがそこまで変化するとは思っていなかったが、ここでは本作の構造の奥行きが活きてきて、ダイヤルに当たる光の角度によって幾重にも重なる影を生み出している。そこに針とインデックスのさりげない温かみが加わることで、多くのスケルトン化された部品が持つ機械的な荒々しさを和らげ、きわめてバランスの取れた外観になっている。この時計を最初にレンダリング画像で見たとき、その構造が開きすぎているのではないかと少し心配していた。結局のところ、スケルトン化されたキャリバーであっても、時間を確認するたびにダイヤル越しに自分の手首が見えてしまうのは望ましくないからだ。確かに、まだ私の好みより少し開放的すぎる部分(特に輪列の左側の部分)があるが、これは完全に個人的な好みだ。おそらく手首の毛がもう少し濃い人はそれをより堂々と見せ、時計の外観に別の質感を加えることができるだろう。

Endeavour Tourbillon Skeleton on Wrist

 着用写真からもわかるように、本作は私の細い手首にも心地よくフィットする。これは間違いなく、エンデバーケースの短く下向きのラグのおかげだ。スケルトン化することによって、ムーブメントの工業的な魅力を際立たせるべく、シャープなラインや角度を強調するブランドもあるが、H.モーザーは優れた機械設計を妥協することなく、柔らかな印象を与えることに成功している。エンデバーケースの優雅さが加わった本作は、まさにH.モーザーらしいオート・オルロジュリーの傑作と言えるだろう。