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コラボウォッチと聞くと、ロゴやキャラクターを前面に出したモデルを想像するかもしれない。だが、今回のシチズン アテッサは少し違う。
映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』の公開に合わせて登場したのが、シチズン アテッサ STAR WARS “The Mandalorian” Beskar Model、Ref.AT8385-55Eである。価格は19万2500円(税込)、世界限定1400本。シチズンウオッチ オフィシャルサイトなどで販売される。ケース径は42mm、厚さは10.8mm、重量は95g。ケースとブレスレットにはスーパーチタニウムを採用し、デュラテクトチタンカーバイドとデュラテクトDLCによるシルバーとブラックのツートンカラーに仕上げられている。
搭載するのはCal.H800。光発電エコ・ドライブ、日中欧米電波受信、ダイレクトフライト、ワールドタイム、パーペチュアルカレンダー、20分の1秒クロノグラフなどを備える。つまり、機能面ではしっかりアテッサらしい実用モデルなのだ。
本機のテーマは、劇中に登場する架空の合金、“ベスカー”だ。ベスカーとは、マンダロリアン(作中に登場するアーマーを身につけた戦士たち)の装甲などに使われる金属で、作中では非常に高い強度を持つ素材として描かれており、『マンダロリアン』主人公ディン・ジャリンも、ベスカー製のアーマーを身につけている。今回のモデルでは、このベスカーの強さだけでなく、無骨な質感や独特の縞模様もデザインに取り入れられている。
ただし、本モデルはベスカーを単なる意匠として取り入れただけの時計ではない。シチズンは、スーパーチタニウムや表面硬化技術を使い、素材や加工の面からもベスカーらしさを表現しようとしている。では、なぜベスカーというテーマをアテッサで展開することになったのか。企画を担当したシチズンの宮原太郎氏に話を聞いた。
シチズン アテッサだからできた、ベスカーという素材表現
「今回、『マンダロリアン』のベスカーをテーマに選んだ理由は、アテッサだからこそ実現できるマンダロリアンモデルを作り出せると確信したからです」
そもそもシチズン アテッサは、同社のなかでもチタニウムを軸にしたコレクションである。シチズンはチタニウムに表面硬化技術デュラテクトを施した独自素材、スーパーチタニウムを長く展開してきた。公式ページでも、スーパーチタニウムはステンレスに比べて約40%軽く、5倍以上の表面硬度を実現していると説明されている。宮原氏は、アテッサのチタニウム技術と架空の合金であるベスカーを結びつけることに、以前から可能性を感じていたという。
「マンダロリアンという作品のなかで、最強の合金ベスカーという存在に出合ったその瞬間から、私たちの技術を使ってこのベスカーに近いものを表現できるのではないかと、ひそかに感じていました」
これは単に『スター・ウォーズ』のデザインを時計に載せたわけではない。宮原氏はあくまでもベスカーという素材に着目しており、アテッサに用いる技術であればそれを見た目だけでなく、素材表現としても形にできるのではないか。その発想が企画のスタートになったという。
今回のモデルで特に重要なのが、表面硬化レーザーという技術だ。これはチタニウムの表面にレーザーで熱を与え、模様をつけると同時に表面を硬化させる技術である。公式ページでは、ブレスレットの中駒にこの技術を採用し、ベスカーの特徴的な縞模様を描いたうえで、上からデュラテクトDLCを重ねていると説明されている。レーザーを当てた部分は、従来のブラックのスーパーチタニウムを上回る硬度を実現しているという。宮原氏はこの技術との出合いが企画を具体化する大きなきっかけになったと話す。
「当社の技術部門へ相談に行ったところ、開発中の表面硬化レーザーという技術と出合いました。チタニウムの表面にレーザーで強い熱を与えることで、模様をつけつつ、表面を硬化させて強くする技術です」
宮原氏は、この技術によって「形だけベスカーをモチーフにしたモデルではなく、技術的な側面からもベスカーをオマージュしたモデルを作ることができる」と考えたという。見た目だけをベスカー風にするのではなく、硬さや加工方法の面からもそのイメージに近づけようとした点が、本機の大きなポイントである。
ベスカーの質感について、宮原氏は「きれいに磨き切られたミラー仕上げの美しい金属という印象はなく、どちらかというと無骨で鈍く光りつつ重厚感のある金属」と捉えていた。本機ではそのイメージを、デュラテクトDLCのブラックと、チタニウムの色味を生かしたデュラテクトチタンカーバイドのシルバーによるツートンカラーで表現している。
ベスカーらしさをどこまで見せるか
このモデルでまず目に入るのが、文字盤とブレスレットの中駒に入った縞模様である。ベスカーを表現するうえで、この模様の扱いは重要だった。
「模様については、ベスカー独特のあの縞模様をどの程度の細かさ、大胆さでブレスレットと文字盤に描いていくのかが、こだわった点でもあり、難しかった点でもあります。ベスカー模様が細かすぎると存在感が薄れてしまいますし、大胆に大きく入れると、ただの波模様や縞模様のように見えてしまいます。デザイナーに縮尺のパターンをいくつも作ってもらい、検証して仕上げました」
文字盤では、インクジェットを何層も重ねることで奥行きを出し、そこに金属パーツを組み合わせている。
「文字盤のベスカー模様についても、縮尺だけでなく、シチズンの文字盤印刷技術を何層も重ねることで奥行きを出しつつ表現しました。そこへ金属パーツを大胆に配置し、質感が楽しめるブラックダイヤルにできたと感じています」。クロノグラフらしい情報量を持ちながらも、ベスカー模様が背景として効いており、通常モデルとは違う表情になっている。
また『スター・ウォーズ』要素の出し方も、かなり抑えている。「今回、キャラクターウォッチとするつもりは、企画立ち上げ当初からありませんでした。目指したのは『マンダロリアン』、つまり『スター・ウォーズ』の世界に入り込み、その世界で手に入れたベスカー製のアイテムを身に着ける感覚です」
その考え方は、デザインにも表れている。着用時に見える明確なモチーフは、リューズに刻まれたミソソー(マンダロリアンの象徴として刻まれる伝説の獣)のスカルマーク。一方で、裏蓋にはディン・ジャリンのヘルメットが刻印されている。「腕時計の外観としてはキャラクター感を出さず、着用時に見える部分としては、唯一リューズにミソソーのスカルの紋章を刻印しました。この構成が結果的に、日常使いを可能として、大人な佇まいも併せ持つ腕時計になっています」
機能面でも、作品との接点がある。本作は日中欧米の標準電波受信に対応し、ダイレクトフライトによって海外の現地時刻にすばやく合わせることができる。宮原氏は、この実用性を『マンダロリアン』らしい旅のイメージと重ねている。「作中のマンドー(ディン・ジャリンの通称)がグローグー(マンドーと行動をともにする小さなキャラクター)を連れて宇宙を旅するように、この時計を相棒として色んな場所に連れて行ってもらえたらうれしいです」
2021年に登場した、シチズンコレクション。『スター・ウォーズ』の人気キャラクターをデザインモチーフにしたアナデジテンプ限定モデルだ。
シチズンはこれまでも、スター・ウォーズの世界観を取り入れたモデルを多く展開してきた。ダース・ベイダーやR2-D2、C-3PO、ボバ・フェット、ミレニアム・ファルコン、デス・スターなど、キャラクターやビークルをモチーフにしたモデルには、ひと目でこの映画由来だとわかる楽しさがある。
その流れのなかで見ると、今回のSTAR WARS “The Mandalorian” Beskar Modelは少し違って見える。前面に出ているのはキャラクターではなく、劇中に登場する架空の合金、ベスカーだ。
だからこそ本機は、コラボウォッチでありながら、日常使いしやすい。リューズや裏蓋には『マンダロリアン』由来の要素があるが、時計全体で主役になっているのは、ベスカーを思わせる縞模様と、ブラック×シルバーの外装表現である。キャラクターを大きく見せるのではなく、素材と加工で作品らしさを伝える。その控えめな見せ方が、AT8385-55Eをアテッサらしいスター・ウォーズモデルにしている。これまでのコラボモデルの延長線上にありながら、キャラクターウォッチとは別の距離感で楽しめる1本だと思う。映画『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』は5月22日(金)公開。時計で表現されたベスカーらしさが、スクリーンではどう見えるのか、劇場でマンドーのアーマーに注目して欲しい。
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