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宿すのはモータースポーツへの憧憬、エディフィスが描き出すクルマとの時間

エディフィスは2025年、初の“機械式カシオ”となる「EFK-100」を発表した。エントリープライスでありながら、確かな外装品質を備えた機械式時計として同作が反響を得たことを受け、今年新たに「EFK-200」が登場する。スパルタンなスポーツカーを想起させたEFK-100に対してEFK-200がまとうのは、ラグジュアリーなGT(グランツーリスモ)のような余裕と上質さだ。この新作は、エディフィスというブランドにどのような地平を開くのか。 #PR

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エディフィスは2000年に、高機能なスポーティ・メタルアナログウォッチのブランドとして誕生した。当時より掲げているコンセプトは、“Speed & Intelligence”。クロノグラフ、すなわちストップウォッチ機能を備えた時計を起点に、電波ソーラーやスマートフォンリンクといったカシオならではのエレクトロニクス技術を取り込みながら、スピードを測り時間を制御するための実用性と、精密さに裏打ちされたスポーティな意匠を磨いてきた。その歩みは、文字どおり“スピードを測る”進化の歴史であった。

 こうした性格は、モータースポーツへの熱量が高い欧州や東南アジアなどの市場で早くから受け入れられた。日本国内での認知はむしろ後を追うように広がってきたという点にも、エディフィスというブランドの特異な輪郭がある。機能性とスポーティな造形によって育まれてきたこのブランドが、2025年に初めて機械式モデル「EFK-100」を送り出したことは、カシオにとっても象徴的な出来事だった。クォーツのように電池や回路によって正確さを支えるのではなく、ゼンマイ、歯車、テンプといった機械部品の連なりで時を刻む時計を、あえてエディフィスから世に問うたのである。

 そして2026年、同じく機械式ムーブメントを搭載する「EFK-200」が5種類のバリエーションで発表された。機械式時計という新たな領域に踏み出したエディフィスは、いまやカシオが腕時計の表現をどこまで広げられるかを示す、重要な試金石になりつつある。

 その背景にあるのが、エディフィスとモータースポーツとの長い関係だ。2000年代以降、エディフィスはトロロッソやレッドブル・レーシング、ホンダ・レーシングやHRC、さらにトヨタ・レーシングと、F1やWEC(世界耐久選手権)などの世界的なレースカテゴリーで戦うチームと関係を築いてきた。それに伴いシーンとのつながりを強烈に示したモデルも数多く世に送り出しており、例えば2019年に発表した「EQB-1000HRS-1AJR」では、F1エンジンの吸排気バルブにも用いられるチタンアルミナイドにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施してベゼルに使用するなど、レースの現場で得た素材や設計思想を時計に落とし込んできた。

EQB-1000HRS-1AJR

 レース現場との接点は、チームのみに留まらない。プロドライバーとして長年エディフィスのアンバサダーを務めているのが、スーパーGT300クラスで3度の総合タイトルを手にし、D1グランプリの初代チャンピオンでもある谷口信輝選手だ。谷口選手にとって、時計は単なる装身具ではない。レースでは0.1秒、あるいは0.001秒を削るために走る一方で、サーキットでの1日は走行、ミーティング、イベント、チームとの確認まで、すべてが細かい時間管理のもとに進んでいく。

 「時間が重要なのは、コース上だけではありません。サーキットでは1日の行動がドライバーだけでなくそれぞれのスタッフまで細かく決められていて、それを押すことなく、きっちり進めていかなければならない。だから正確に時間を示し、すぐに確認できる時計はとても大切なんです」

 モータースポーツとは、ラップタイムだけでなく、その前後にある準備や判断まで含めて、時間と向き合う世界である。だからこそエディフィスの“Speed & Intelligence”というコンセプトは、谷口選手のようなプロドライバーにとっても、自然に受け入れられるものなのだ。

谷口信輝。1971年広島県生まれ。ストリートやドリフトで腕を磨き、D1 GRAND PRIXをはじめ、SUPER GT、スーパー耐久など幅広いカテゴリーで活躍するレーシングドライバー。数々のタイトルを獲得し、2015年よりカシオEDIFICEのアンバサダーとしても活動している。

 では、なぜその次の一手が機械式時計だったのか。そこには、エディフィスがモータースポーツの周辺に広がるクルマ好きの感性を、どのように捉え直したかという問いがある。


なぜカシオ初の機械式時計は、エディフィスから登場したのか

2025年に発表されたカシオ初の機械式時計、EFK-100。

カシオがエディフィス EFK-100をもって、これまであえて手がけてこなかった機械式時計を世に問うた理由はどこにあったのか。商品企画を担当した高谷知尚氏は、企画の出発点が「カシオとして機械式時計をつくる」ことではなかったと強調する。

 「まずあったのは、エディフィスをレーシングの文脈だけでなく、クルマを所有し、走らせ、眺め、手をかける時間まで含めたライフスタイルへ広げていくという課題意識でした。従来のエディフィスは、スポーティな造形や差し色、機能性を前面に出してきましたが、クルマ好きの方々の嗜好は、必ずしもレースやスピードだけに収まりません。上質なクルマを相棒として慈しむ感性もある。その領域に、エディフィスがまだ十分には応えきれていないのではないかと考えました」

 その時点で、機械式時計は唯一の条件ではなかった。外装やデザインをより上質な方向へ寄せながら、従来どおりクォーツやソーラー駆動の時計として仕立てる選択肢もあったという。しかし高谷氏は、手間のかかる機械を理解し、個体差やメンテナンスも含めて愛着を深めていくクルマ好きの感性を見つめたとき、機械式時計こそが最も自然な答えになると考えた。

 「当初から機械式ありきではありませんでした。カシオらしいクォーツやソーラーのままでも、ライフスタイル性を高めることはできたと思います。ただ、クルマを単なる移動手段ではなく、手をかけながら共に過ごす相棒として捉える方々に向き合うなら、機械式の情緒性や所有する喜びは非常に相性がいい。そこに、エディフィスが挑む理由があると感じました」

 もちろん、カシオはクォーツ、デジタル、ソーラー、電波、Bluetoothといった電子技術に強みを持つメーカーである。社内の評価基準も長くクォーツを前提として築かれてきた。機械式時計には精度や個体差に固有の考え方があり、従来の基準をそのまま適用することはできない。前例のない試みに対して、疑問視する声があったのも当然だった。しかし、カシオには社員の挑戦を後押しする風土もある。G-SHOCKの生みの親である伊部菊雄氏が、かつて「落としても壊れない時計」という一行の企画書から前例のない腕時計を生み出したことは、その象徴的な物語だ。エディフィスの機械式モデルもまた、一見すればなぜカシオがという問いを招きながら、挑戦をいとわないという意味ではきわめてカシオらしい企画であった。

 高谷氏は、後発であることを冷静に受け止めたうえで、勝ち筋を外装に定めた。

 「機械式時計としては後発ですし、当初から自社ムーブメントを用意できるわけではありません。だからこそ、ケース、ブレスレット、文字盤、素材、仕上げ、装着感といった、手に取った瞬間に品質を感じていただける部分で勝負すべきだと考えました。カシオ、そしてエディフィスが積み重ねてきた外装の知見を生かせる領域でもあります」

 つまりカシオ初の機械式時計は、エディフィスがクルマ好きのライフスタイルへ歩み寄った結果として生まれたのだ。そしてその必然性を支えたのが、カシオの挑戦を許す文化と、エディフィスが磨いてきた外装表現だった。


EFK-200 外装で映し出す、クルマへの憧憬

“外装で価値を示す”という姿勢は、EFK-200でさらに鮮明になる。ベゼルは一見すると丸形に映るが、実際にはクッション型をベースに、四隅をCNC切削で削り出したものだ。サテン仕上げを基調としつつ、切削面には鏡面仕上げを施すことで、角度によって光の表情が変化する。スポーティな輪郭のなかにドレッシーな陰影を宿すこの造形は、EFK-200が単なるレーシングウォッチではなく、GT(グランツーリスモ)的な上質さを志向するモデルであることを端的に示している。

 ブレスレットにも同じ姿勢が貫かれる。3連風に見せるためだけの擬似的な造形ではなく、H字型のリンク、いわゆるHコマを実際に組み合わせた構造とし、可動域の広い構造と細かめのピッチによって腕馴染みを高めている。さらに中ゴマのエッジには鏡面を入れ、ベゼルの鏡面と呼応させることで、全体の質感に統一をもたらした。バックルには削り出し構造のミルドクラスプを採用し、プッシュ部分の押し心地にまで配慮する。こうした細部の積み重ねこそ、外装で勝負するというEFKシリーズの意思表示である。

 文字盤の作り込みも、この価格帯では注目に値する。ブラックを基調としたふたつのモデルで採用されたフォージドカーボン、すなわち短く切断した炭素繊維を樹脂とともに圧縮成形し、ひとつひとつ異なる模様を生む同素材の表情は、レーシングの直接的な記号に寄りすぎることなく、軽量かつ高剛性な素材への憧れを静かに伝える。一方ブルー、レッド、ゴールド/ブラウンのモデルでは、電気鋳造、いわゆる電鋳によって立体的なテクスチャーをつくり、その上からグラデーション塗装を施し、さらに厚めのグロスを重ねて研磨を施している。電鋳とは、型に金属を電気的に析出させることで微細な凹凸や奥行きを表現する技法であり、平面的な印刷とは異なる質量感を文字盤に与える技法だ。エディフィスのプライスレンジで使用されるのは珍しいが、ブランドはベースとなる文字盤を用意し、そこに電鋳で作成したテクスチャーを乗せることで実現した。

 なお、狙いどおりのグラデーションと平滑な艶を両立するのは容易ではない。仕上がりが基準に達しないものは、再び工程へ戻さざるを得ない。それでも高谷氏は、この手間こそがEFK-200の説得力になると語る。

 「この価格帯でここまで外装に手を入れることは簡単ではありません。私自身、前職では卸営業の現場で、ユーザーがどのような部分に品質を感じるのかを見てきました。だからこそ、質量感のある造形、エッジの処理、文字盤の奥行きは妥協したくなかった。結果として、狙いどおりの水準に仕上げることができたと感じています」

 結果としてEFK-100とEFK-110は、“価格を超えたクオリティ”を評価された。EFK-200はその外装思想を受け継ぎながら、よりドレススポーツ寄り、よりラグジュアリー寄りの方向へ歩を進めている。ここでいうGTとは、単に速いクルマではない。グランツーリスモ、すなわち長距離を高速かつ快適に移動するための高性能車の系譜であり、速度と余裕、性能と快適性を同時に成立させる文化を指す。EFK-200はスーパーカーのような強烈な記号性ではなく、腕の上で静かに存在感を増していくGT的な成熟を目指した時計なのだ。

 高谷氏は、エディフィスの“Speed & Intelligence”についても、従来とは異なる角度から捉え直す。

 「“速さ”だけがスピードではありません。ラグジュアリーなクルマの車内で、ゆったりと移動する時間にも、その人の速度感がある。EFK-200では、スパルタンなスポーツカーというより、上質なGTのような時間を表現したかったのです。クルマ好きのための時計コレクションという軸は、決してぶれていません」

 レースのコンペティションに直結する計測機能だけが、エディフィスのすべてではない。ブレスレットの心地よい可動、面取りが生む光の走り、目線を引き込む文字盤の奥行き、そして機械式時計ならではの鼓動。そこには、クルマとともに過ごす時間を、より上質に、より個人的なものとして味わうための表現がある。

 EFK-200は、EFK-100が示した機械式エディフィスの可能性をより落ち着いた質感と日常性を備えたスポーティな外装へと広げるモデルである。EFK-100がカーボンやフォージドカーボンの質感によってスポーツカー的な軽快さを打ち出していたのに対し、EFK-200ではケースやブレスレット、文字盤の仕上げを通じて、少し大人びた表情が与えられている。カシオが機械式時計を手がけることの意外性は、今なおこのシリーズの大きな入口である。ただしEFK-200を見ると、その魅力は“電子技術の会社が作った機械式”という話題性だけにとどまらない。エディフィスはクルマへの憧憬を手首の上に宿すというブランドの持ち味を生かしながら、機械式というフォーマットのなかで自らの表現を少しずつ具体化し始めている。EFK-200はその方向性を過度に誇張することなく、しかし確かに一歩先へと進めたモデルといえるだろう。


エディフィス EFK-200 コレクションギャラリー

Photographs:Tetsuya Niikura Styled:​Eiji Ishikawa(TRS) Words:Kazuhiro Nanyo