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優れたテーラーには必ず自らの“ハウススタイル”、あるいはそれに準じるスタイルがあるものだ。ナポリ仕立ても、英国仕立ても、サックスーツも何でもできるというテーラーは、たいていどれも中途半端になりがちである。自らのスタイルを軸にしながら、そのバリエーションを展開していくことこそ、適切な守備範囲を持ち、質の高い仕事を生み出すテーラーの条件だと言える。その意味で、アーモリーが新たに立ち上げたハウスブランドであるテンポラル・ワークス(Temporal Works)のハウススタイルは、「現代版パテック フィリップ Ref.565」と表現できるだろう。そしてもしRef.565とハミルトンのカーキ フィールドウォッチのあいだに子どもが生まれたとしたら、その姿はきっとテンポラル・ワークスの新作シリーズ A “ランブラー”のようなものになるだろう。
ブランドは昨年11月、記念すべき第1弾モデルとして、ブラックまたはブルーのシリーズ A “セクター”と、ザラツ研磨を施したステンレススティール(SS)製ケースを備えたシリーズ A “フォーチュン・レッド”を発表した。昨年秋、発売前にチョー氏と会った際、彼はポケットから1本の時計を取り出して見せてくれた。「おっ、Ref.565だ」と私が思わず口にしたのを覚えている。なぜかはわからないが、忙しさに紛れて記事にする機会を逃してしまった。とはいえ正直に言えば、そのモデルに比べて、ビーズブラスト仕上げのSS製モノブロックケースを採用した今回の新作“ランブラー”のほうがはるかに魅力的に感じられたのだ。
テンポラル・ワークス シリーズ A “セクター”。
これまでの565とは一線を画す、斬新なデザインの565には、何か特別な魅力があるのかもしれません。セクターダイヤル(特にレッドモデルを除けば)は、パテック フィリップが黒以外の色や、このようなセクターダイヤルをあえて採用しなかったとしても、パテック フィリップが実際にこうしたモデルを作っていても不思議ではないと思わせる。歴史に根付いたデザイン言語に頼る余地は限られていますが、それでも、市場に出回っている他のモデルを模倣することなく、以前のモデルはフルラン・マリなどのブランドと見事に調和していました。
新しいダイヤルは“ブラックセサミ”と“レッドビーン”の2色展開で、マット塗装の真鍮製だ。程よい段差のある美しい質感で、白いミニッツマーカーとアラビア数字が配された外周のスネイル仕上げのトラックがその魅力をさらに引き立てている。それらはすべて時・分針と同じ夜光塗料が施されている。また針はパイロットウォッチを思わせるデザインだが、6分割された放射状のセクターダイヤルから受ける印象は、パイロットウォッチでもクラシカルなセクターダイヤルでもない。むしろ私が思い浮かべるのは、ユニマティックに通じるミニマルな美しさだ。
全体的に見て、本作はかなり控えめな印象のため、実機レビューも簡潔にまとめよう。パテック フィリップ Ref.565と同様、特に緩やかな傾斜と滑らかなラインが特徴のケースは、デザイン面で大きく手を加えられる部分はほとんどない。ケースサイズは直径37mm、ラグ・トゥ・ラグ45mm、厚さ10mmと従来どおりだが、ビーズブラスト仕上げを施した316Lステンレススティール製のケースとなったことで、これまでより個性が際立ち、ダイヤルとの調和も高まっている。ケースバックも同様にシンプルで、ブランドロゴとモットー、そして50m防水を示す刻印が入る。ケースバックからは、リューズがケースバンドに美しく収まっている様子もよくわかる。
ケース内部には手巻き式ムーブメントであるセリタ SW210-1 b D4 が搭載されており、振動数は2万8800振動/時、パワーリザーブは42時間だ。精度は日差±20秒と、私の好みからするとやや物足りないものの、このムーブメントの標準的な精度だ。ムーブメントについて言えば、これは主力キャリバーであり、ほかの時計にも広く採用されている。まず思い浮かぶのはアンオーダイン モデル1で、私が最後に確認した時点では小売価格は約2670ドル(日本円で約42万円)だった。しかしその点では、モデル1はエナメルダイヤルからかなりの価値を得ていると言える。
付加価値という点では、“ブラックセサミ”ダイヤルにはオリーブのキャンバスストラップが、“レッドビーン”ダイヤルには柔らかなグレーのアルカンターラストラップとNATOストラップが付属する。テンポラル・ワークスは、スタイブ(Staib)製のビーズブラスト仕上げを施したメッシュブレスレットも提供している。3サイズ展開で、リンクの増減により18mmまで調整可能となっており、価格は250ドル(日本円で約3万9000円)だ。さらにオレンジのキャンバスストラップも選択できる。私が試着したブレスレット(ミディアムサイズ)は、下側のリンクが1コマ分足りなかったものの、それ以外は私の7.25インチ(約18.4cm)の手首にも十分フィットするサイズ感だったと思う。
実際に腕に着けてみると、私がとりわけ気に入ったのは“レッドビーン”だった。レッドトーンは前作に比べてかなり落ち着き、テクスチャーのあるケースとの組み合わせによって、市場にあるほかの時計とは一線を画す、実に個性的な印象に仕上がっている。
ブラックは予想どおり、最も実用的な1本だ。私がアーモリーのニューヨークでのローンチパーティーを訪れたときには、時計を撮影するつもりもなければ、結果的にサファリテイストになった服装を意識して選んだわけでもなかった。それでも、その装いはこの時計と驚くほど完璧にマッチしていた。シリーズ A “ランブラー”の価格は2500ドル(日本円で約39万4000円)。正直に言えば、スペックを考えるとやや高めに感じられるかもしれない。というのも、このミニマルなデザイン言語が、無意識のうちにもう少し手ごろな価格帯を想起させてしまう可能性もあるだろう。それでもドレッシーなヘリテージとタフな雰囲気を兼ね備えた時計として、現在の市場では唯一無二の存在であり、人々の視線を集めることは間違いないだろう。
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