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Photos by TanTan Wang
昨年、米国を拠点とするインディペンデントブランド、ハヴィッド・ナガンのクラシック・ワンを取り上げた記事を覚えている方もいるかもしれない。同モデルはブランド初のラウンドケースモデルで、それまでのクッションケースのHNシリーズからの路線転換を示すものだった。しかし創業者のアーレン・バゼルカニアン(Aren Bazerkanian)氏は、ハヴィッド・ナガンの最新作HN02で、以前のモデルを特徴づけていたほぼスクエア型ともいえる独特のシルエットへと再び立ち返っている。
とはいえ、クラシック・ワンがクッションケース中心のコレクションで単なる一時的な例外だったというわけではない。むしろ新しいHN02には、クラシック・ワンがもたらした数々のデザイン上の進化が取り入れられていることは明らかであり、とりわけきわめて個性的な多層構造のダイヤルデザインやケースにその特徴が表れている。
グレード5チタン製のケースは、クッション型であることに変わりはないものの、より伝統的なラグ形状を採用したことで従来のHN00やHN01から大きく進化を遂げている。従来のケース形状も個性的ではあったが、よりクラシカルなラグによってHN02は全体的に落ち着いた印象になり、より控えめな装着感を実現するとともに、小ぶりな手首ではラグ・トゥ・ラグも短く感じられる。こうした伝統的なケース形状はダイヤルの華やかさを際立たせながらも、時計全体が過度に主張しすぎることを防いでおり、歓迎すべき変更だろう。HN02はまた、クラシック・ワンで採用されたコンパクトでドレスウォッチらしいプロポーションも受け継いでおり、ケース径は38mm、厚さはわずか9mmに抑えられている。
HN02にはふたつのバリエーションがあり、ひとつは標準的なチタン製ケース、もうひとつはダークなDLCコーティング仕上げのケースだ。DLCコーティングは、一般的なPVDコーティングより耐傷性に優れる一方で、着用中に指紋が付きやすいのは避けられない。これは私がコーティングケースをあまり好まない理由だ。だがオレンジカラーを選ぶのであれば、DLCコーティングケースが唯一の選択肢となる。
コーティングを施していないチタン製ケースにはブルーの“アジュール”ダイヤルが、DLCコーティングケースには鮮やかなオレンジの“エンバー”ダイヤルが組み合わされる。しかし、このダイヤルを単に色だけで語るのはその魅力を十分に伝えているとは言えない。ケースの内側には、多層的な視覚要素が凝縮されているからだ。最大の見どころは隆起した中央部分で、手作業によるエンジンターンで波状のギヨシェ模様が施され、その後、目的の色合いを得るためにガルバニック仕上げが施され、さらにグラン・フー エナメルの工程を経て仕上げられている。フランケエナメル(エンジンターン加工を施した上にガラス粉末を焼き付ける技法)ダイヤルこそが、HN02が1万8000ドル(日本円で約280万円)と、ブランド史上最高価格となる理由のひとつだ。
中央のエナメル部分は下側が切り欠かれ、スモールセコンド部分は興味深いデザインとなっている。下半分が金属で、上半分がエナメル部分で縁取られたインダイヤルは、透明ディスクに目盛りがプリントされ、さらにスネイル仕上げを施すことで視認性を向上させている。その背後には、アプライドとプリントによるミニッツトラックが配されたスモークサファイアディスクがあり、その外周を装飾的な金属製のリングが囲む。
バゼルカニアン氏によれば、製品版ではスモークサファイアはさらに濃い色味となり、金属製リングもさらに質感のある仕上げになるという。そのさらに奥のスモールセコンドの下とミニッツトラックの周囲には、ペルラージュ装飾が施されたメインプレートが露出している。私が特に気に入っているのは3時位置の切り欠きで、キーレスワークスをあえて見せることで、多層構造でありながらスケルトンではないダイヤルに機械式らしい遊び心を添えている。
ムーブメントをより詳しく見るには、時計を裏返すだけでよい。というのも、そこにはセリタのカスタムキャリバー部門、AMTが製造する専用設計の手巻きムーブメント Cal.AMT6600が姿を現すからだ。このムーブメントは先述のクラシック・ワンにも搭載されていたものだが、今回は一部をスケルトン化したうえで、コントラストの効いた仕上げが施されている。ブリッジ部分はマットなフロスト仕上げが施されているため、特にシャトンでは面取りの研磨が際立ち、メインプレートとブリッジのそのほかの部分にゴールドカラーのガルバニック仕上げが施されていることで、きわめて質感のある仕上がりになっている。純粋に美観という観点から見れば、この価格帯で目にしたムーブメント装飾のなかでも特に興味深い仕上げのひとつであり、何倍もの価格帯に属するオートオルロジュリーを思わせる趣を備えながらも、その表現には独自性が感じられる。スペックも現代的で、2万8800振動/時の振動数に加え、COSC認定も取得している。
実際に着用してみると、HN02はとても楽しい時計で、オフィスの多くの人が私が何を着けているのかすぐに尋ねてきた。スペックだけを見ると、この時計が視覚的に盛り込んでいる要素の多くは少々盛り込みすぎにも思えるかもしれない。しかしコンパクトなケースサイズと、より伝統的なラグデザインを採用したHN02には、その必要な節度がある。率直に言えば、これまでのハヴィッド・ナガンのデザインにはそれほど引かれてこなかった。単純に自分の好みではなかったのだ。しかしこのHN02は、初めて普段から身に着けたいと思えた。その理由の大半は、このよりドレッシーな雰囲気が私にとってあまり馴染みのない領域だからだ。だが1万8000ドル(日本円で約280万円)という価格は、その魅力を享受できる層を狭めてしまう。HN02のような時計は、コレクションに本当にユニークな1本を求める、最もオープンマインドなコレクターにこそ響く複雑な市場セグメントに属しているからだ。
ギヨシェ彫りとエナメル仕上げのダイヤルは確かに素晴らしい出来栄えだが、今後、ブランドがHN02をさらに控えめなデザインで展開してくれることを期待している。手作業によるダイヤル製造工程を減らせば、ダイヤルの手作業工程が減れば、価格も大きく抑えられるはずだからだ。私はこのシルエットをとても気に入っており、HN02は今後さまざまなバリエーションへ発展させていくプラットフォームとして大きな可能性を秘めていると感じる。とはいえ現時点では、このモデルはブランドのデザイン言語を洗練・進化させたものであり、きわめて着け心地の良い時計と言えるだろう。
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