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Hands-On レッセンス Type 11を実機レビュー

ブランド初の自社設計による完全統合型ムーブメントを搭載したモデルは、クラシックなデザインにいくつかの魅力的な改良を加えている。

Photos by TanTan Wang

今年のWatches and Wondersで発表されたレッセンス Type 11は、一見するとこれまでのレッセンスのモデルと大きく変わらないように見えるかもしれない。しかしそれこそが狙いだ。コレクションのなかでも独自の個性を備えながら、Type 11はブランドのビジュアル言語をそのままに、その中身を一新している。最大の変更点はムーブメントにある。これまではETA製ベースムーブメントに独自のオービタルコンベックスシステム(Orbital Convex System)を組み合わせたものを搭載していたが、本作ではブランド初となる自社設計の完全統合型ムーブメントを採用している。

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Ressence Type 11 Main Shot
Ressence Type 11 Case Side
Ressence Type 11 Standing

 まずはType 11の外装から見ていこう。グレード5チタン製のケースは直径41mm×厚さ11mmで、近年のレッセンスが進めてきたコンパクトなケースサイズへの流れを受け継ぎながら、ある意味ではType 9の発展形とも言える仕上がりとなっている。全面ポリッシュ仕上げのケースはほぼトノー型ともいえるフォルムを採用し、ラグ・トゥ・ラグは45mmと短めである一方で、ラグが下向きになっていないため、ケースは手首でかなりの存在感を放つ。またType 11はベゼルがないため、ダイヤルと風防が41mmの直径の端まで広がっている。Type 1Type 3のようなモデルに独特の未来的な外観を与えてきたのは、このようなシームレスな視覚効果であり、本作でもラグとよく調和している。防水性能は30mに向上している(同ブランドの非ダイバーズモデルに一般的な“防滴”仕様から向上している)。

 ダイヤルには、レッセンスの代名詞とも言えるサテライトディスプレイを採用。3つの回転するサブダイヤルに、時表示、スモールセコンド、パワーリザーブインジケーターが配置され、分針はダイヤル外周のトラックを指し示す。私が最も気に入っている新要素は、レッセンスならではのアプローチによる60時間パワーリザーブインジケーターだ。これは針の代わりに、小さなカラーセラミック製ボールベアリングがパワーリザーブの残量を表示する。パワーリザーブがゼロの場合、黄色のボールは目盛りの始点に位置し、トラックの残りの部分は黒いセラミックボールで埋め尽くされ、時計の巻き上げが必要であることを示す。しかしパワーリザーブが徐々に増加するにつれて、黄色のボールが目盛り上を進み、その背後にあるホワイトセラミックボールが現れてパワーリザーブが満たされていることを表示する。

Ressence Type 11 Emptying Power Reserve

パワーリザーブが徐々に満たされていく様子。

Ressence Type 11 Power Reserve Full

パワーリザーブが満たされた状態。

Ressence Type 11 Side on table

 このパワーリザーブの表示形式は今回が初採用となるものの、その着想自体は2020年発表のType 1 Squared Xにまでさかのぼる。同モデルでは、小さなセラミックボールによる色の変化で24時間の経過を表現する“Time By Color”システムが採用されていた。そのアイデアは哲学的な遊び心に重きを置いたものとも言えたが、パワーリザーブインジケーターへ応用した今回は、より実用的な機能として昇華されている。この時計を手巻きしてボールが目盛り上を進んでいく様子を見るのは実に楽しい。すでに可動部品でぎっしり詰まったダイヤルのなかで、表示の下に隠れた黒と白の部分に、いったいどれほどの数のボールベアリングが必要なのかを考えるとまるで魔法のようだ。

 このボールベアリングを用いた表示機構は、今後のレッセンスのモデルにも展開されていくのではないかと私は見ている。その第一歩となるのが、ブランド初の自社設計キャリバー、Cal.RW-01に組み込まれたこのパワーリザーブ機構だ。もっとも“自社設計”とは、ムーブメントがベルギーで製造・組み立てされていることを意味するわけではない。あくまでも創業者ブノワ・ミンティエンスとそのチームが、ムーブメントの設計とスタイリングを100%手がけたという意味だ。完全統合型キャリバーの採用は、従来のROCSモジュールの下にETA 2892を組み合わせていたことを指摘してきた人々(私としては、その指摘は理解できるものの、不当だと私は思っている)への明確な回答でもあるだろう。そして実際、この新キャリバーには歓迎すべき改良が見られる。

RW-01 Front

自社設計のCal.RW-01。

RW-01 Back

新ムーブメントのCal.RW-01。images courtesy of Ressence

 まず挙げられるのは、パワーリザーブが従来の約36時間から60時間へと向上したことだ。新たなパワーリザーブインジケーターは、これまで曜日表示用だったインダイヤルに代わって搭載されているが、レッセンスのオーナーである私に言わせれば、曜日表示は設定に手間がかかるうえ、実用性もそれほど高くなかった。さらにレッセンスによれば、オービタルシステムにはチタン製ボールベアリングが採用され、表示機構を操作した際の感触も向上しているという。Type 11を試した限りでは、従来のモジュール構成と比べて表示全体の動きがやや安定したように感じられたが、その違いは劇的なものではなかった。

Ressence Type 11 Caseback

 しかしRW-01の最大の改良点は、従来モデルに見られた“巻き上げゾーン”がなくなったことだ。これまではケースバックを使ってゼンマイを巻き上げる際、回転させると抵抗が強くなる位置を探し、その限られた範囲でケースバックを前後に動かして巻き上げる必要があった。だがRW-01ではその仕組みが改められ、ケースバックを時計回りに回し続けるだけで連続して巻き上げられるようになった。もちろんRW-01にはローターも備わっており、自動巻きにも対応している。

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 RW-01の独特な左右対称のムーブメント構造は、上半分には三角形を描くようにふたつの香箱が配置され、下部中央にはテンプが配置されて3つの円形要素が並ぶ特徴的なデザインとなっている。しかしその構造の大半はケースバックに覆われており、動作するテンプを覗ける小さな開口部だけが設けられている。その代わり、ケースバックには折りたたみ式のハンドルが備えられており、これを引き出すことで時刻合わせや手巻き操作が格段にしやすくなっている。私としては、このハンドルなしにレッセンスを作るべきではないと強く感じている。

Ressence Type 11 Wristshot

 新ムーブメント Cal.RW-01は確かにブランドにとって歓迎すべき変化ではあるものの、価格も上昇している。Type 1が高すぎると感じた人にとって、Type 11は検討するまでもないだろう。通常のType 1が約2万5000ドル(日本円で約400万円)で販売されているのに対し、Type 11の価格は3万1400ドル(日本円で約500万円)と大幅に引き上げられている。だが、その一方で、価格差に見合うだけの大幅な変更が盛り込まれていることも確かだ。独自開発のRW-01のスペックは向上し、パワーリザーブの表示形式もほかに類を見ないユニークなものとなった。さらに新しい統合型ムーブメントによって、ケースはよりコンパクトにまとまり、私のような細い手首にもフィットする。ある意味でType 11は、これまでで最もレッセンスらしいレッセンスと言えるモデルだ。ブランドならではの個性を損なうことなく、遊び心と数々の改良を見事に融合させている。

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