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クイック解説
ブルガリが、独立時計師ヴィアネイ・ハルター氏とのコラボレーションによる限定モデル、オクト フィニッシモ ヴィアネイ・ハルターを発表した。これはオクト フィニッシモの八角形ケースと薄型ムーブメントをベースに、ハルター氏の作品でおなじみの複数表示や立体的な構造を組み合わせたモデルだ。なおブルガリにとって、オクト フィニッシモのムーブメントを独立時計師との協業に用いるのは今回が初めてとなる。
ケース径は40.5mm、厚さは9.7mm。内部には、Cal.BVL138をベースに専用モジュールを組み合わせた自動巻きのCal.BVF200を搭載。ムーブメント厚は5.49mmで、マイクロローターと約60時間のパワーリザーブを備える。時・分・秒、GMT、日付、デイ/ナイト表示は、4つのポートホール(編注;英語で舷窓を意味する言葉。ハルター氏の時計では、釘に似たリベットで縁取られた独立した円形の表示部を指し、代表作アンティコアでは永久カレンダーの情報を4つに分けて配置している)に分けてレイアウトされた。
4つのポートホールを囲むベゼルはそれぞれ異なる仕上げを持ち、ケースの表面には、ポリッシュで仕上げられたリベットが配される。オパラインホワイトの表示部、ブルーの針、赤い秒針もハルター氏の作品を思わせるディテールだ。この限定モデルは、チタン製30本とピンクゴールド製15本の2仕様で用意される。
ファースト・インプレッション
最初に画像を見たとき、意外な組み合わせだと感じた。ハルター氏の特徴的なレトロフューチャー的な意匠と、オクト フィニッシモの幾何学的なケースが、ひとつの時計に組み合わされているからだ。チタン仕様ではオクト フィニッシモの幾何学性が前に出る一方、ピンクゴールド仕様ではアンティコアの雰囲気が強く見える。
4つの表示部を囲むベゼルはそれぞれ異なる仕上げを持ち、ケース正面には複数の段差が生まれている。仕様によって目に入る要素が変わるのだ。少なくとも、これはスペックシートだけで語り切れる時計ではないと感じた。
私の感想はこの程度にしておこう。今回は、このモデルの開発に携わったブルガリ オルロジュリーのブルガリ プロダクト クリエイション エグゼクティブ ディレクター、ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏とヴィアネイ・ハルター氏に直接話を聞く機会を得た。コラボレーションの始まりから、4つの表示を備えながらケース厚を9.7mmに抑えた設計まで、両氏の言葉からひも解いていく。
アンティコアへの思いから始まったコラボレーション
ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏(左)とヴィアネイ・ハルター氏(右)。
今回のコラボレーションは、最初から具体的な製品を用意して始まったわけではない。ハルター氏によれば、ブルガリの関係者との交流を重ねるなかで、独立時計師とともに時計をつくるというアイデアが自然に生まれたという。スティリアーニ氏も、過去にMB&Fとの2回のコラボレーションのあと、次はオクト フィニッシモのムーブメントを起点に、時計師とのコラボレーションを試みたいと考えていた。
ヴィアネイ・ハルター アンティコア。Courtesy of Vianne Halter
そのとき、スティリアーニ氏の頭にあったのがアンティコアだった。彼は若いころにこの時計を見て、それまでの時計に対する見方が変わったと話す。ハルター氏のアトリエを訪ねた際には、時計そのものよりも、飛行機の翼やSF、コミックのドローイングを前に、互いの創造性や関心について語り合った。その後、ハルター氏がブルガリのサン・ピエールの製造拠点を訪れ、時計師たちと話し、テーブルを囲んでスケッチを描いたという。完成までには3年を要している。
今作のスケッチ。
スティリアーニ氏はハルター氏に、“アンティコアのようなオクトをつくりたい”と伝えたという。ハルター氏はほかの方向も考えていたが、最終的にはその提案を受け入れた。スティリアーニ氏が目指したのは、アンティコアの要素をそのままオクト フィニッシモに移植することではなかった。アンティコアのように見えるオクト、オクトのように見えるアンティコアをつくることだった。
ハルター氏は普段、ムーブメントとケースを同時に設計する。とはいえ、彼の時計づくりも完全な白紙から始まるわけではない。経験や知識、ケースの形状といった前提があるのだ。今回はオクト フィニッシモのケースとムーブメントがすでに存在していた。そのため、自由に新しい時計をつくるのではなく、与えられた土台のなかで、自分の機械的なアイデアをどのように展開するかが出発点になった。
この考え方は、ハリー・ウィンストンのオーパス3にも通じる。ハルター氏は、自分の時計をハリー・ウィンストンの世界に合わせていく必要があった経験を振り返り、今回も同じように、他者の世界観に自分のデザインを適応させたと説明する。彼にとってコラボレーションとは、自分の設計を相手の条件に合わせて変えることであり、自分ひとりでは得られない視点を取り入れる機会でもある。
4つの表示部をどう薄型ケースに組み込んだのか
4つの表示部と複数のベゼルを備えながら、ケース厚は9.7mmに収められた。ハルター氏が最初に挙げた課題は、表示のためのモジュールをできるだけ薄くすることだった。表示すべき情報を整理したうえで、内部に無駄な空間を残さず、オクト フィニッシモの薄さを損なわないように構成していったという。
スティリアーニ氏が難しかったと振り返るのは、ケースの外装である。4つの風防、サイズの異なるベゼル、手作業で仕上げたリベットは、従来のオクト フィニッシモにはなかった要素だ。ケース厚が増すことを許容してでもリベットを残すのか、という検討もあったが、ハルター氏らしさを成立させるためには必要だった。見た目だけハルター氏の時計に近づけても、ブルガリらしい仕上げやディテールが伴わなければ意味がない。スティリアーニ氏は、この部分で妥協しなかったと話している。
薄さを成立させたのは、単に部品を薄く重ねたからだけではない。ベゼルや表示部を複数の層に分け、正面を複数の層に分節することで、時計全体の厚みを視覚的に分散させている。ハルター氏が表面を何度も分断したと説明するように、オクト フィニッシモの正面に立体感を加えながらも、手首に乗せたときにはオクト フィニッシモらしい薄さを感じられるよう設計したのである。
完成した時計について、ハルター氏はオクト フィニッシモとアンティコアというふたつの個性が、互いを消すことなく同じ時計に収まったことに驚いたと話す。スティリアーニ氏にとって重要だったのも、どちらか一方を残すことではなく、八角形のケースと4つの表示部をひとつの構成にまとめることだった。今回のモデルは、ふたつのデザイン言語を融合させただけでなく、既存の薄型ムーブメントをどこまで拡張できるかを試したコラボレーションでもあるのだ。
基本情報
ブランド: ブルガリ(Bvlgari)
モデル名: オクト フィニッシモ ヴィアネイ・ハルター 限定モデル(Octo Finissimo Vianney Halter Limited Edition)
型番: 104356(チタン)/104355(ピンクゴールド)
直径: 40.5mm
厚さ: 9.7mm(ベースのベゼルまでは7.7mm)
ケース素材: チタン/ピンクゴールド
文字盤: オパライン加工されたロジウムプレート製の4つの表示部
インデックス: アラビア数字
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: サンドブラスト加工チタン製ブレスレット(一体型フォールディングバックル)/ブラウンアリゲーターストラップ、ピンクゴールド製ピンバックル
ムーブメント情報
キャリバー: BVF200(BVL138ベース)
機能: 時・分・秒表示、GMT、日付表示、デイ/ナイト表示
直径: 36.6mm
厚さ: 5.49mm
パワーリザーブ: 約60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時(3Hz)
追加情報: プラチナ製マイクロローターにヴィアネイ・ハルター氏の名前を刻印
価格 & 発売時期
価格: 要問い合わせ
限定: あり、チタン製は世界限定30本、ピンクゴールド製は世界限定15本
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