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Hands-On ショパール L.U.C タイム トラベラー ワンを実機レビュー

過小評価されているものの、ブランドが驚くべき完成度で仕上げたトラベラーウォッチを詳しく見てみよう。


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Photos by TanTan Wang

ショパールは今年のWatches & Wondersで、L.U.C 1860に新たなカラーダイヤルを追加しただけで、大きな存在感を放っていた。ときに展示会の主役となるのは、新しい機械的イノベーションではなく、すでに完成度の高い時計をさらに洗練させることなのかもしれない。とはいえ、今年このブランドから発表されたもうひとつの素晴らしいリリースについても触れないわけにはいかない。こちらも実質的には新しいカラーバリエーションであり、250本限定だが、あまり注目されていない気がする。セラミックチタンにカーキグリーンのダイヤルを備えたショパール L.U.C タイム トラベラー ワン Ref.168574-3013は、2016年にタイム トラベラー ワンが最初に発表されてから10年を記念するものだ。実際にはワールドタイマーの全体的なデザインは変わっていないが、ブランドはこのモデルにさまざまな色や金属を使用することをためらわず、この1モデルの多彩なバリエーション展開につながっている。

LUC Chopard Time Traveler One Khaki Soldier
LUC Chopard Time Traveler One Khaki Side Case
LUC Chopard Time Traveler One Khaki Ring Macro

 この新作はマットグレー、グリーン、イエローを組み合わせたカラーリングによって、ショパールのL.U.Cコレクションのなかでもひときわ異彩を放っている。現行のL.U.Cで唯一トラベルコンプリケーションを備えたモデルであり、その控えめでやや無骨な外観は、ほかのL.U.Cに多く見られるポリッシュ仕上げを主体としたドレッシーなモデルとは対照的だ。その工業的な雰囲気を生み出しているのは、42mm×12.09mmのケースとふたつのリューズに採用されたセラミック加工グレード5チタンだ。ケース全体には、サンドブラストによるマットなダークグレー仕上げが施されている。2時位置のリューズはローカルタイムと日付を調整し、4時位置のリューズはダイヤル外周の都市ディスクを操作する。ところで、“セラミック加工チタン”とは何か疑問に思う人もいるだろう。簡単に言えば、特殊なチタン合金を高温で焼成することで、ケース表面そのものから自然にセラミック層を形成する技術であり、あとからコーティングを施すものではない。この製法については以前の記事でも詳しく紹介したが、ショパールにとってこれは独特な美意識を実現するための特別な素材であり、ブランドはそれを控えめに使用している。防水性能は50mだ。

 そのケースに組み合わされるのは、カーキグリーンを基調とした情報量の多いダイヤルだ。ワールドタイム表示のため、同心円状にさまざまな情報が配置されている。順番に見ていこう。一番外側のリングには、回転するディスク上に24都市すべてが表示され、明るい黄色の矢印は、夏時間が適用される都市を示している。都市リングの内側には24時間ディスクがあり、昼夜を示すためにブラックとオフホワイトで視覚的に区切られている。このディスクは時・分針と連動しており、24時間ディスクの12時位置に示される時刻がローカルタイムと一致する。現在地の都市は、4時位置のリューズを使って12時位置に合わせる。そのさらに内側には、スネイル仕上げを施したカーキカラーのミニッツトラックが広がり、分目盛りはホワイトでプリントされている。インデックスはプリントと夜光塗料を組み合わせた仕様で、12時、3時、6時、9時位置にはアラビア数字が配されている。最も内側のリングはポインターデイト表示で、短い黄色の矢印針が月を通してリングを一周する。ダイヤル中央には“L.U. CHOPARD”と“Chronometer”の文字がプリントされており、搭載ムーブメントがCOSC認定を受けていることを示している。ダイヤル側で最も気に入っているのは針のデザインで、ショパール独自のドーフィン針は、このマットグレーの仕上げによく映える。

LUC Chopard Time Traveler One Khaki Dial Macro

 確かにダイヤルはきわめて情報量が多く、42mmというケースサイズに対して時分針がやや短く感じられるのも事実だ。初めて手に取る人であれば、時針が日付リング内側の数字を指しているように見え、「なぜ27時を指しているのだろう?」と一瞬戸惑うかもしれない。もちろん27時など存在しないと気づけば、その見方にも慣れるだろう。日付表示のないワールドタイマーのほうが全体的に見やすいかもしれないが、何重にも重なったリングには独特の魅力があり、不思議と何度も見返したくなる。実際、この時計を数分眺めているうちに、時刻を読み取ること自体はまったく苦にならなくなった。というのも、目は自然と膨大な情報を意識しなくなり、インデックスの形状を手掛かりに時・分針へ集中するようになるからだ。これが設計者の意図だったのかどうかはわからないが、これだけ多くの情報をダイヤルに盛り込んだ結果として生まれた興味深い効果である。

 ケースバックには、セラミック加工チタン製ケースにスモークサファイアクリスタルを組み合わせたシースルーバックを採用しており、その奥にはCOSC認定を受けたクロノメーター仕様のL.U.C 01.05-Lを(ある程度)眺めることができる。ムーブメントはフルローター式の自動巻きで、ワールドタイム機構を備え、パワーリザーブは60時間、振動数は毎時2万8,800振動(4Hz)だ。ストライプ仕上げや美しい面取りなど、ムーブメント自体の装飾は見応えがあり、着色されたケースバック越しでもその仕上げの良さは十分伝わってくる。しかしこれまで数多くのマイクロローター式ムーブメント Cal.96を見てきたせいか、L.U.Cのフルロータームーブメントには、どうしても同じような特別感を覚えない。さらに私が最も気になったのは、このスモーク仕上げのシースルーバックだ。ケースとの統一感を重視したかった意図は理解できるものの、中途半端にムーブメントを見せるくらいなら、全面クリアサファイアか、あるいはソリッドバックのどちらかに振り切ってほしかった。またこのL.U.C タイム トラベラーは10年前の登場以来、ジュネーブ・シールを取得しておらず、L.U.Cコレクションのなかでも、エントリーモデルの3針時計と並ぶ数少ないジュネーブ・シール非取得モデルとなっている。

LUC Chopard Time Traveler One Khaki Wristshot with Crossed Arms
LUC Chopard Time Traveler One Khaki Caseback
LUC Chopard Time Traveler One Khaki Crown Macro

 気になる点をいくつか挙げたものの、このタイムトラベラーは手首に着けた時の魅力が格別で、特にマットな質感と工業的な美学が、計器盤を思わせる情報表示と見事に調和していると思う。控えめすぎるほど控えめだが、エレガントでドレッシーな時計作りで知られるブランドが、このように少し定石を外したモデルを作るのが私はとても好きだ。スペックだけを見るとケース径42mmは大ぶりに思えるが、短めのラグ、同心円状のリングが多数配置された複雑なダイヤル、そして超軽量のチタンケースにラバーストラップを組み合わせたことで、装着感はきわめて良好だった。いつか所有してみたいと思える1本であり、手首サイズが6.5インチ(約16.5cm)の私でもためらうことなく着けられる。

 もちろん、旅行向けのスポーティなワールドタイマーには、他ブランドにも魅力的な選択肢が数多く存在する。比較の基準として挙げるなら、このショパール L.U.C タイムトラベラー ワンの価格は287万1000円(税込)だ。この価格は、ジャガー・ルクルトのポラリス ジオグラフィーク(税込299万2000円)とほぼ同水準だ。スティール製ケースを採用したこのモデルは、ダイヤルの視認性ではタイムトラベラーを大きく上回る一方、真のワールドタイマーのように世界中の都市の時刻をひと目で読み取れる機能は備えていない。この価格帯で比較するなら、時計好きにとってはショパールのセラミック加工チタンという素材の魅力が1歩リードすると感じるが、ブランド認知度に加え、100m防水という実用性ではジャガー・ルクルトに分がある。また、タイムトラベラー ワンの約半額で購入できるオメガのシーマスター アクアテラ ワールドタイマーも有力な候補だ。防水性能(150m)とサイズ(直径43mm×厚さ14.1mm)の両方を向上させつつ、レーザー加工で描かれた地球のモチーフが印象的で、都市リングや日付表示を備えながらも、ダイヤル全体の視認性はより優れている。

JLC Geographic Photo

ジャガー・ルクルト ポラリス ジオグラフィーク。Photo by Mark Kauzlarich

Omega Aqua Terra Worldtimer

オメガのシーマスター アクアテラ ワールドタイマー。Photo by Jon Bues

Nomos Worldtime Nightnavigation

昨年発売されたノモスの限定モデル、クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー ナイトナビゲーション。

 最後に紹介するのはノモスのクラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマーで、価格は90万8600円(税込)だ。典型的なノモスのドレスウォッチとショパールを比較するのは、リンゴとオレンジを比較するようなものかもしれないが、この時計を比較対象に含めることにはある程度の妥当性があると思う。スポーティで100m防水のワールドタイマー(ノモスには日付表示はない)だが、クラブ・スポーツの最大の欠点は、リング上の都市の時刻を把握するために少し頭のなかで計算する必要があるということだ(ダイヤルの+または-マークを自分の住んでいる都市と比較する)。タイム トラベラー ワンはこれのほぼ4倍の価格なので、旅行中に着用する時計を探しているだけなら、クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマーで十分に満足できるかもしれない。

LUC Chopard Time Traveler One Khaki Pocket Shot

 こうした競合モデルと比べても、ショパール L.U.C タイム トラベラー ワンは依然として独自の存在感を放っている。セラミック加工チタンと、情報量が豊富な“マキシマリスト”とも言えるダイヤルデザインの組み合わせはほかにはない魅力だ。L.U.Cコレクションらしいエレガントさという点では他モデルに一歩譲るかもしれないが、その代わりにゆったりとした着け心地の良さが魅力で、複雑機構そのものにも完璧にマッチしている。ハイとローを絶妙に織り交ぜた1本であり、ブランドのフルリエ工房による優れた時計製造が、旅先でも手首の上で静かに存在感を示してくれる。そして、それこそがトラベルウォッチにとって最も重要な点なのかもしれない。

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