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我々が知っていること
Watches & Wonders以降、“Watch Instagram”をチェックしているなら、今回のビッグローンチを目にしたことだろう。ウェイ・コー氏と時計業界関係者のギヨーム・テトゥ(Guillaume Tetu)氏が手掛ける新ブランド、レガーレ(Legare/ラテン語で“遺す、受け継がせる”を意味する)は今年の大規模な時計見本市開催中から、潜在顧客や一部のプレス関係者に向けて、長期間にわたるソフトローンチを展開してきた。しかし、同ブランド初の時計となるチャプター1 AGP インバーテッド(Chapter 1 AGP Inverted)は8月18日に正式に発表されたばかりだ。これまで情報を探しても記事が見つからなかったのは、そのためだ。
本作はふたつの異なる仕様で展開される。そして私はすぐにそのインスピレーション源(そして名前の由来)となったモデルに目を奪われた。そうした背景から、本作は時計史に精通し、インディペンデントウォッチメイキングを愛する筋金入りの時計愛好家に向けた1本と言えるだろう。
1932年、当時17歳だったアルベール・ギュスターヴ・ピゲ(Albert-Gustave Piguet)は、ヴァレ・ド・ジュー時計学校で、1932年から1934年にかけて彼以外にわずか5人しか挑まなかった時計製作上の課題に取り組んだ。それは、ふたつの大型スプリット・バイメタルテンプの歩度をディファレンシャル機構によって平均化する懐中時計の製作だった。この6本の懐中時計は、時計製造の世界に大きな影響を与えた存在であると同時に、コレクターから熱望される希少な時計でもある。そのうちのひとつは、フィリップ・デュフォーのデュアリティの着想源となった。そして、それ以上に大きな影響を残したのがピゲ自身である。のちにレマニアに在籍し、Cal.2310の開発にも携わった人物だ。そして今、彼のダブルテンプを備えた時計がレガーレによって再び蘇ったのだ。
本作のムーブメントは、ピゲの懐中時計に搭載されているものに酷似しており、大きく弧を描くテンプ受けを備えたふたつの大型テンプ、中央にディファレンシャル機構(現在はスモールセコンドに接続)、そして香箱を支えるウィッシュボーン型ブリッジを備えている。そしてムーブメント全体を反転させることで、表側から輪列の動きをすべて眺められる構造とした。ムーブメントをコンパクトに収めるため、斜め方向に配置したレバー脱進機を採用している。フローティング構造のサファイアダイヤルには分目盛と秒目盛がプリントされ、アプライドインデックスにはローマ数字と四角錐型のインデックスが組み合わされている。その下に広がるムーブメントには2種類の仕上げが用意され、より伝統的な“エレガント”は、ジュネーブストライプを施した無処理のジャーマンシルバー、一方“ダース”はマットなブラックロジウム仕上げとなっている。
優れた仕上げと美しいデザインといった魅力に加え、おそらく最も印象的なのはサイズと価格だろう。ケースはグレード5チタン製で、サイズは直径37.5mm×厚さ9.95mmとコンパクト。防水性能は50mだ。ダブルテンプを備えたムーブメントは2万1600振動/時で、手巻き式、パワーリザーブは少なくとも50時間を備えている。針には鏡面仕上げを施した、炎焼きによるブルースティールを採用。ケースはきわめてモダンで角張ったデザインとなっており、高く盛り上がったケースサイド、段差を設けたベゼル、そしてシャープでドロップ型のラグを備え、随所に面取りが施されている。
ブランドの開発と創造過程を曖昧にするのではなく、レガーレはサプライヤーについても明確にしている。サプライヤーはすべてスイス国内にあり、ヌーシャテルから約100km圏内に位置している。レガーレのコンセプトは、各チャプターを忘れ去られた時計製造のアイデアから始め、それが現代まで受け継がれていたらどのように進化していたかを想像することにある。創業者たちがムーブメントやサプライヤーについて深い知識を持っていることは明らかだが、もちろん、ムーブメントを彼ら自身が設計したわけではない(それを期待するのは少々無理があるだろう)。
プレスリリースにはアイデアの着想と製造工程の各段階への関与に加えて、開発、調達、最終組み立て、品質管理については、ラ・ショー・ド・フォンのGLS2Fが統括していると明記されている。ムーブメントはPURTEC、ケースとバックルはUM2が製造し、仕上げはポリサージュ・デ・フランシュ・モンターニュ(Polissage des Franches-Montagnes)が担当している。ダイヤルはFABRIKA、サファイア製パーツはSEBAL、針はWAEBER HMSが手掛けている。
誰が作ったのかはともかく、本作は実に素晴らしい。インディペンデントウォッチメイキングの愛好家が求める要素が、ほぼすべて詰め込まれており、まだ実物を手に取って見たわけではないが、写真からもその歴史的背景に見合うだけの仕上げが施されていることが伝わってくる。そう考えると、価格には少し驚かされた。どちらの仕様も25本限定で、価格は8万1944スイスフラン(日本円で約1600万円)。個人的には、これだけの内容を考えれば、かなり納得感のある価格に感じる。
我々の考え
数年前に「ブランドにもっと活用して欲しいムーブメントをふたつ挙げてほしい」と聞かれていたなら、私が上位に挙げたであろうふたつが、今やどちらも実現している。まずひとつは、ウルバン・ヤーゲンセンの再始動とともに登場したルモントワールを備えたUJ-1のトゥールビヨンだ。デレク・プラットが考案した、ルモントワールをトゥールビヨンケージ内に組み込むオリジナルの設計を採用したもの(Luca Sopranaによるアレンジもかなり良かった)だ。そして今回、アルベール・ギュスターヴ・ピゲのアプローチも再び蘇った(フィリップ・デュフォーがデュアリティをわずか10本で終了して以来だ)が、今回はおそらくオリジナルにもっとも近いかたちで復活したと言える。もし技術図面を入手できるなら、今回のレガーレとデュフォーのデュアリティを並べて、ディファレンシャル機構を備えたダブルテンプという技術的課題に対して、それぞれがどれほど似た、あるいは異なる方法で取り組んでいるのかを比較してみるのは面白そうだ(さらにほかの例とも比較できるかもしれない)。とはいえこの2本は、オリジナルのアプローチにもっとも近い例に思える。
本作は、F.P.ジュルヌのクロノメーター・レゾナンスとは全く異なるコンセプトだ。ジュルヌのレゾナンスでは、ふたつのテンプを近接して配置し、互いに同期するよう厳密に調整する必要がある。一方、本作ではふたつのテンプは完全に独立しており、その歩度をディファレンシャル機構によって平均化している(こうした方式自体は、これまでにも別のかたちで用いられてきた)。写真を見る限り、仕上げもかなり美しい。こうした類似の時計では、凝った機構ゆえに時刻が読みにくいものも多いが、これは時間もしっかりと読み取れそうだ。情報量がやや多いことを考えても、もし自分が購入するなら“エレガント”を選ぶだろう。チーム、とりわけコー氏は時計に精通しており、当然ながら、コレクターの琴線に触れるものを作る術を心得ている。だが、もうひとつ重要な点がある。コー氏はGPHGの審査委員長を務めているため、レガーレの時計をGPHGには出品しないと明言している。
基本情報
ブランド: レガーレ(Legare)
モデル名: チャプター1 AGP インバーテッド(Chapter 1 AGP Inverted)
型番: LC1-AGP01-A Inverted Ti5(エレガント)、LC1-AGP01-B Inverted Ti5(ダース)
直径: 37.5mm
厚さ: 9.95mm
ケース素材: グレード5チタン
文字盤色: オープンダイヤル。ジュネーブストライプを施した無処理のジャーマンシルバー、またはマットブラックロジウム仕上げ
インデックス: サファイアディスクに分・秒目盛をプリント、アプライドインデックス
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ストラップは20mmから16mmにテーパーがかっており、グレード5チタン製のバックルが付いている
ムーブメント情報
キャリバー: LC1-AGP01-A/LC1-AGP01-B
機能: 時・分表示、スモールセコンド、ダブルテンプとディファレンシャル機構
パワーリザーブ: 50時間以上
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 34
クロノメーター認定: なし
価格&発売時期
価格: 税抜きで8万1944スイスフラン(日本円で約1600万円)
発売: ブランド公式サイトにて発売中
限定: あり、各仕様25本限定
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