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クイック解説
日本が世界に誇る伝統文化のなかでも、盆栽はひときわ独特の世界観を持つ。自然の情景を小さな鉢のなかに見立て、何世代にもわたって手入れを重ね、その姿を育んでいくこの芸術は、時間の経過そのものを愛でるという点で、機械式時計と深く通じ合うものがある。今回、日本の美意識を独自のダイヤル表現によって発信し続けているセイコー プレザージュがコラボレーションのパートナーとして選んだのは、まさにその盆栽を通じて日本の伝統と美意識を再定義し、世界へ斬たな価値を提示し続けているTRADMAN’S BONSAI(トラッドマンズ ボンサイ)である。
両者の共鳴によって誕生した本作HCC011Jは、盆栽を代表する樹種である黒松が月に照らし出される情景から着想を得ている。38mm径のステンレススティール(SS)ケースにはイエローゴールド色のメッキが施され、夜の闇に浮かび上がる月の輝きを表現している。
特筆すべきは、新たに開発された躍動感あふれるダイヤルの型打ち模様だ。中心からS字を描くようにうねるパターンは、厳しい自然を生き抜く松の力強い枝ぶりや、亀裂の入った樹皮を、荒々しくも温かみのあるラインで立体的に再現している。そこに古来より吉色とされる伝統色・松葉色から着想を得た深緑のグラデーションが重なることで、ダイヤルに力強い生命感をもたらしている。
ムーブメントには、約72時間のロングパワーリザーブを誇る自動巻きのCal.6R51を搭載。サファイアクリスタル製のケースバックには、ゴールドでTRADMAN'S BONSAIのロゴが堂々とプリントされている。また、イエローゴールド色のメッキの7連ブレスレットに加え、黒松の樹皮のように力強い型押し模様の入った(僕の目には、ロシアンカーフのようにも見えた)付け替え用のブラック牛皮革ストラップも付属する。そしてそれらは、調湿性や防虫性に優れ、古くから重用されてきた特製の桐箱に収められており、パッケージ全体をとおしてコラボレーションの世界観が徹底されている。
セイコー プレザージュ クラシックシリーズ TRADMAN'S BONSAI 限定モデル HCC011Jは2026年9月5日(土)に17万6000円(税込)で発売予定だ。セイコーの取扱店に加え、丸の内にあるTRADMAN'S BONSAIの路面店やオンラインショップでも販売される。
ファースト・インプレッション
時計における“和”の表現は非常にデリケートで、ともすれば表層的な和風テイストに留まってしまう難しさを孕んでいる。しかしTRADMAN'S BONSAI 限定モデルをひと目見て感じたのは、松葉というテーマの力強さと、日常の装いに寄り添うエレガンスとの見事なバランシングである。本作は盆栽の姿を直接的な絵柄としてダイヤルに描くのではなく、松の樹皮や枝ぶりを思わせる“質感”と、月明かりに照らされる“色彩”のみで情景を抽象化し、あくまでセイコー プレザージュという枠組みのなかに美しく落とし込んでいる。思えばセイコー プレザージュはこれまでも、富岡製糸場の純国産シルクの光沢を型打ちで表現したり、無釉の技法で素焼きの風合いを再現した有田焼ダイヤルを発表するなど、日本の美意識を繊細なアプローチでダイヤル上に映し出してきた。プレザージュが培ってきたデザイン哲学が今回のテーマと深く合致したからこそ、これほどまでに説得力のあるプロダクトが生まれたのだろう。
深緑の松葉色は、光の当たる角度によって鮮やかな緑から漆黒へと表情を変え、新開発の型打ち模様と相まってまるで本物の盆栽を鑑賞しているかのような有機的な美しさを感じさせる。端に向かってゆるくカーブするダイヤルに落とされた陰影は、そこに鏡面仕上げのゴールド針とインデックスが乗ることで、月の輝きを表現しつつ詩情ある佇まいを描き出している。
そして、こうしたコンテンポラリーな和の意匠は、時計に落とし込まれたクラシカルなディテールとの調和を見せている。ダイヤルの存在感を受け止める端正なコインエッジベゼルと、柔らかな曲面を描くデュアルカーブサファイアガラスの組み合わせ。細やかなベゼルの刻みによる柔らかな光の反射と、風防がもたらす立体感の強調が相まって、時計全体にアンティークウォッチを思わせる静かな品格と温かみを与えている。イエローゴールドのカラーと深緑という重厚でノーブルな色彩の組み合わせもこれらの要素と響き合い、手元によりいっそうのノスタルジーをもたらすのだ。
モダンなアート盆栽のアプローチと、伝統的な時計製造の文法。本作では一見相反するそれらの要素が、38mmという絶妙なサイズ感のなかで見事に融合している。本作が単なる和のモチーフを落とし込んだ時計に終わっていないのは、情景を抽象化したテクスチャとクラシカルなディテールの組み合わせが、長く愛するに値する完成度の高いデザインとして着地しているからだろう。この国の伝統文化をそれぞれの領域で解釈する両者のアプローチが交差したこの限定モデルは、手元で静かに日本の美意識を感じさせてくれるはずだ。
基本情報
ブランド: セイコー プレザージュ(Seiko Presage)
モデル名: クラシックシリーズ TRADMAN'S BONSAI 限定モデル
型番:HCC011J
直径: 38mm
厚さ: 12.9mm
ケース素材: イエローゴールド色のメッキが施されたSS
文字盤色: 深緑
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 日常生活用強化防水(10気圧)
ストラップ/ブレスレット:イエローゴールド色のメッキが施されたSS製多連ブレスレット、付け替え用牛皮革ストラップ付き
ムーブメント情報
キャリバー: 6R51
機構: 時・分表示、センターセコンド
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き付き)
振動数: 2万1600振動/時
石数: 24石
追加情報:日差+25秒~-15秒(気温5℃~35℃において腕に着けた場合)
価格 & 発売時期
価格: 17万6000円(税込)
発売時期: 2026年9月5日(土)
限定: 国内限定600本
詳細は、こちらをクリック。
Photographs by Masaharu Wada, Yusuke Mutagami
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