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クイック解説
日本の伝統的な美しさを時計に映し出す、セイコー プレザージュのクラシックシリーズ。その新作として、「富岡シルク」の美しさから着想を得た限定モデル1種と、レギュラーモデル3種が発表された。
本作の背景にあるのは、世界遺産に登録されている富岡製糸場、および群馬県富岡市で受け継がれてきた養蚕・製糸の文化。そして、その特徴的なダイヤルの開発に深く関わった富岡シルク推進機構(2021年設立)である。同機構は、富岡産の繭を100%使用する富岡シルクの普及を通じ、地域の養蚕技術とシルク文化を次世代へ継承することを目的とした組織で、富岡製糸場内での製糸事業の復活も見据え、繭の生産から絹製品の開発、製造、販売までを地域内でつなぐ活動を進めている。
日本の美意識を発信するセイコー プレザージュのコンセプト、そして純国産シルクの灯を守り、世代を超えて受け継がれてきた技と人々の想いを次代へつなぐべく活動する富岡シルク推進機構が共鳴したことから、今回の限定モデルが実現した。セイコー プレザージュでは、同機構とともに新たなダイヤルパターンを開発。そのダイヤルを載せたモデルの売上の一部を同機構へ寄付し、富岡地域の蚕糸絹業を守り継ぐ取り組みを支援する。つまり本作は、富岡シルクをデザイン上のモチーフとして扱うだけでなく、地域産業と文化の継承に還元するプロジェクトでもある。
ぐんま細(ほそ)を用いた絹糸と絹布。Photo courtesy: Seiko
本作最大の見どころは、きめ細かな絹布が描く滑らかなドレープと、光を受けて移ろうその独特の“つや”を表現した新たな型打ちダイヤルだ。限定モデルのダイヤルでは、希少な最高級の蚕品種「ぐんま細(ほそ)」の高級感のある光沢と白さを再現するために型打ちパターンの上にパール調の塗装を施した。光の変化によってきらめき、洗練された印象を宿す。ストラップには、富岡製糸場のレンガ造りの外観からインスピレーションを得たダークブラウンのレザーを使用した。ピンクゴールドカラーのケースと組み合わせることで、クラシックな趣をまとう。
富岡シルク推進機構 限定モデル(HCC010J)
なお、日本国内で販売される限定モデルの裏ぶたには、富岡シルク推進機構のロゴマークとシリアルナンバーがマーキングされる。さらに、ぐんま細で仕立てられたポケットチーフが付属する。
白練(HCC001J)
合わせて発表されたレギュラーモデルも限定仕様と同じく、新しい型打ちパターンダイヤルを採用する。そしてシルクそのものが持つ色彩、そして着物に採用される自然を表現した染め色をもとに、セイコーが独自の解釈を加えて3つのダイヤルに仕上げた。
若竹色(HCC002J)
白練(HCC001J)は、絹糸を精練することで生まれる混じりけのない美しい白を表現。若竹色(HCC002J)は、着物の染め色として親しまれてきたみずみずしく明るい緑を、桜色(HCC003J)は、古くから親しまれてきた桜の花びらのような淡いピンクをそれぞれ表現している。白練と若竹色のモデルにはSSブレスレットを、桜色のモデルには桜の幹をモチーフとしたダークブラウンのレザーストラップを組み合わせた。
桜色(HCC003J)
いずれもケースは直径38mm、厚さ12.9mm。デュアルカーブサファイアガラスと丸みを帯びたダイヤルを備え、柔らかな曲面で構成されたケースは10気圧防水を確保する。そんなケースの内部に収まるのは、約72時間のパワーリザーブを備える自動巻きのCal.6R51だ。発売は2026年7月10日(金)を予定しており、取り扱いは全国のセイコーグローバルブランドコアショップのみとなる。価格は、富岡シルク推進機構 限定モデルが14万8500円、レギュラーモデルのブレスレット仕様が13万2000円、カーフストラップ仕様が12万9800円(すべて税込)。限定モデルは国内限定500本(裏蓋の仕様が異なる海外限定は2000本)となる。
Photo courtesy: Seiko
ファースト・インプレッション
富岡シルク推進機構 限定モデルの発表当日、筆者は世界遺産・富岡製糸場を訪れていた。この日は、セイコーウオッチと富岡シルク推進機構による寄附受納式が富岡製糸場で行われ、継続的な支援についても発表された。筆者はそこで初めて本作を目にした。会場にはセイコー プレザージュの商品企画担当者も出席しており、本作を手がけた関係者の声を直接聞く機会を得た。
寄附贈呈式が執り行われた、富岡製糸場の国宝「西置繭所」多目的ホール。
プレザージュでは、これまでも有田焼や琺瑯、漆など、日本各地の伝統工芸や素材をモチーフとしたモデルを手がけてきたが、その延長で富岡シルクの上品な輝きと地域に受け継がれてきた伝統に着目。富岡シルク推進機構へ時計の商品化を提案したことから本プロジェクトが始まったという。
商品化における最大の課題は、富岡シルクが光の加減によって繊細に表情を変える様子を、金属製のダイヤルで再現すること。セイコーが蓄積してきたダイヤルの表面加工や金属加工の技術を活用して新たなダイヤル表現を開発し、流れるようにうねるパターンによって、シルクの光沢や柔らかな質感、上品さを表現したという。
このシルクの美しさを表現したダイヤルは、セイコー側だけで開発が進められたものだったのだろうか?
商品企画担当者によると、開発にあたっては富岡シルク推進機構の関係者との綿密な打ち合わせが実施されたという。ダイヤルの試作品を繰り返し確認してもらい、細い絹糸を撚り合わせることで生まれる、一般的なシルクよりも強い輝きと独特の質感を備えた富岡シルクの上品な仕上がりを表現するため、フィードバックと承認を重ねながら、時間をかけて完成度を高めたことが明かされた。
そう、本作が採用する新しいダイヤルパターンは、単に富岡シルクを着想源とし、その名を借りたイメージだけのコラボレーションではない。その魅力を熟知するスペシャリストとの幾度もの確認作業を経て、質感表現を突き詰めた共同開発の賜物なのだ。
実際のダイヤルを見ると、まさにシルクのように光の加減で表情が移ろう様子が実によく再現されていた。そして、本作に日付表示が採用されていないことにもすぐに合点がいった。
一般的に、セイコー プレザージュのような手に取りやすい価格帯の時計では、多くのユーザーが必要とする機能として、日付表示を備えるのがセオリーだ。だが、もし本作に日付表示があったら、その独特のパターンを持つダイヤルの魅力は半減していたかもしれない。本作はあくまでもダイヤルの魅力を最大限に引き出すことに主眼が置かれているのだ。日付表示をあえて省いた判断は、英断だったと思う。
Photo courtesy: Seiko
Photo courtesy: Seiko
また、ケースサイズも見事だ。セイコー プレザージュには36mm径の小ぶりなモデルも一部に存在するが、その多くは40mm径だ。40mmのケース径でも、この新しいダイヤルパターンはもちろん魅力的なものとなったであろうが、クラシックシリーズの現行ラインナップでは初となる少し小ぶりな38mm径とすることで、ダイヤルの主張がほどよく抑えられているように感じられた。
一方華奢な腕に合わせれば十分な存在感があり、38mmというケース径は大きすぎず、小さすぎず、性別を問わず着用しやすい。富岡シルク独特の光沢感を忠実に表現した、完成度の高いダイヤルの魅力を幅広い層に届けるための、絶妙なサイズ選択といえるだろう。
基本情報
ブランド: セイコー プレザージュ(Seiko Presage)
モデル名: クラシックシリーズ
型番: HCC010J(富岡シルク推進機構 限定モデル)/HCC001J、HCC002J、HCC003J(レギュラーモデル)
直径: 38mm(ラグ・トゥ・ラグは43.8mm)
厚さ: 12.9mm
ケース素材: HCC010JはSS(ピンクゴールド色めっき)、HCC001J、HCC002J、HCC003JはSS
文字盤色: パール調のホワイト(HCC010J)、白練を表現したホワイト(HCC001J)、若竹色を表現した明るいグリーン(HCC002J)、桜色を表現した淡いピンク(HCC003J)
インデックス: アプライドバー
夜光: なし
防水性能: 日常生活用強化防水(10気圧)
ストラップ/ブレスレット: ワンプッシュ両開き方式クラスプ付きSSブレスレット、ないしは牛皮革ストラップ
追加情報: 限定モデルにはぐんま細で仕立てられたポケットチーフが付属
ムーブメント情報
キャリバー: 6R51
機能: 時・分表示、センターセコンド、秒針停止機能
直径: 27.4mm(外径)
厚さ: 4.6mm
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き(手巻き機能付き)
振動数: 2万1600振動/時
石数: 24
クロノメーター認定: なし
追加情報: 日差+25秒〜−15秒
価格&発売時期
価格: 富岡シルク推進機構 限定モデルは14万8500円、レギュラーモデルのブレスレット仕様は13万2000円、カーフストラップ仕様は12万9800円(すべて税込)
発売時期: 2026年7月10日(金)予定
限定: HCC010Jのみ国内限定500本(裏蓋の仕様が異なる海外限定は2000本)、ほかは通常コレクション
詳細は、セイコー プレザージュ公式サイト、もしくはクラシックシリーズ 特設ページをクリック。
特に表記のない写真はすべて、by Kyosuke Sato.
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