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テキサス州の実業家がリバティメディアと、オースティンにあるF1レース場、サーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)の運営会社に対し、F1アメリカGP会場で高級腕時計を狙う犯罪グループから観客を守る措置を怠ったとして訴訟を起こした。
オースティンで開催されたF1レースで、ギャングに盗まれたとされるリシャール・ミル。Photo courtesy of Nicholas Saady, plaintiff's lawyer
ディーン・ウィットロック(Dean Whitlock)氏は2025年10月に開催されたF1レースで、自身の所有するリシャール・ミル RM 65-01 オートマティック スプリットセコンド クロノグラフ “レブロン・ジェームズ”が窃盗団によって手首から強奪されたと主張している。テキサス州トラビス郡地方裁判所に提出された訴状によると、この窃盗事件は、同じ窃盗団によって別のレース観戦者のリシャール・ミルが盗まれた翌日に発生したという。
リバティメディアコーポレーションが運営するF1の広報担当者はコメントを控え、サーキット・オブ・ジ・アメリカズLLCの広報担当者も取材に応じなかった。訴訟では“20万ドル超100万ドル以下(日本円で約3200万~1億6000万円)”の損害賠償が求められており、2次流通市場価格に基づいた問題の時計の交換費用は約75万ドル(日本円で約1億2000万円)とされている。なお、両社は現時点で訴訟に対する正式な回答を行っていない。
この事件は、一部地域で高級腕時計を標的とした窃盗が増加していることを浮き彫りにしている。また数十万人が集まる公共イベントで50万ドル(日本円で約8000万円)を超える価値の時計を身に着けている場合、誰が個人の安全を守る責任を負うのかという疑問も提起している。
サーキット・オブ・ジ・アメリカズ。
ウィットロック氏の弁護士、ニコラス・サーディ(Nicholas Saady)氏によると、依頼人はリシャール・ミルの招待客としてイベントに出席し、VIP向けのパドッククラブに座っていた。定価約44万ドル(日本円で約7000万円)のこの時計は2025年10月19日午後、ウィットロック氏が会場を出た際に盗まれた。
テキサス州の裁判所に提出された訴状によると、「原告は群衆に押し流されながら、ある男性が叫ぶ声を聞いたが、何を言っているのかは聞き取れなかった。その直後、レッドブル・レーシングのシャツとフェラーリの帽子を身に着けた集団が原告を押した。その後、女性が原告の目の前で倒れ、原告は混乱した群衆のなかで女性が怪我をするのではないかと心配し、彼女を助け起こそうとした。しかし原告が女性を助け起こそうとしたところ、女性が原告の腕をつかんで動きを封じ、その際に集団のほかのメンバーが原告の手首から時計を奪い取り、群衆のなかに消えた」という。
訴状ではさらに、その前日の2025年10月18日にも、別の観戦客が同じ手口を用いる窃盗グループによってリシャール・ミルの時計を盗まれていたと主張している。この被害者は事件をCOTAの警備担当者に報告し、警察にも被害届を提出していたため、「COTAとF1はこの犯行について明確な通知を受けていた」と訴状は主張している。
リシャール・ミル RM 65-01 オートマティック スプリットセコンド クロノグラフ “レブロン・ジェームズ”。
ウィットロックの弁護士であるサーディ氏は「この事件を特異で強力なものにしているのは、前日にまったく同じブランドの時計を狙った強盗事件が発生していたことです」とインタビューで語った。またウィットロック氏は窃盗グループに時計を盗まれ、自身も打撲や擦り傷を負った一方で、目の前で転倒した女性を取り押さえた。そして同氏はこの女性が犯行グループの一員だったと主張している。訴状によると、強盗事件発生から警備員が到着するまでに30分もかかったという。女性は暴行と窃盗の罪で起訴されたが、腕時計はまだ見つかっていない。
襲撃直後、ある男性がウィットロック氏に近づき、襲撃前に叫んでいたのは自分だと告げた。その男性は、レッドブル・レーシングのシャツとフェラーリの帽子を身に着けた集団を見て、前日に自分のリシャール・ミルを盗んだ犯人たちだと気づいたため、警告しようとして叫んでいたと説明した。
訴訟では、F1、リバティメディア、そしてCOTAが、高級時計の所有者を標的とした犯罪組織が混雑した会場で活動していることを把握していたにもかかわらず、来場者に対して警告を行わなかったと主張している。
リシャール・ミル RM 65-01 オートマティック スプリットセコンド クロノグラフ “レブロン・ジェームズ”。
訴状ではさらに、F1やF1関連イベントで発生した別のリシャール・ミル盗難事件にも言及している。そのなかにはマイアミGPでの盗難事件や、フロリダ州で元NFL選手のジェイソン・ピエール・ポール(Jason Pierre-Paul)氏がリシャール・ミルを盗まれた事件も含まれる。リシャール・ミルはF1と深い関係を築いており、F1を代表するスクーデリア・フェラーリとマクラーレンのスポンサーも務めているが、同ブランドは本件についてコメントを控えた。
この訴訟には関与していない弁護士で時計愛好家のグレゴリー・ウィルツ(Gregory Wirtz)氏は、時計コミュニティの多くの人々は群衆のなかでもリシャール・ミルを見分けることができ、それは窃盗犯も同様だっただろうと述べている。さらに「ウィットロック氏対COTA訴訟の訴状に記載された内容が事実であると仮定すれば、被告側は、自らのイベントにおいてリシャール・ミルの時計を標的とした犯罪行為が発生していたことについて、具体的な通知を受けていたことになります。その事実に加え、犯行手口がほぼ同一であり、発生時期や場所も近接していたことを考慮すると、原告は自身に対する襲撃が予見可能だったことを立証できる可能性があります」と述べている。
ウィットロック氏は保険金請求も行っているが、弁護士のサーディ氏によると、時計の交換費用全額を補償する保険はないという。訴訟の進展や被告側の回答があり次第、続報をお届けする予定だ。
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