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クイック解説
近年のグランドセイコーは、かつてに比べて限定モデルの展開を抑える傾向にあります。その一方で、伊勢丹新宿店をはじめとする有力販売店、百貨店などとの限定モデルは継続的に発表されており、個人的にも毎年楽しみにしているシリーズのひとつです。単なるカラーバリエーションではなく、その土地ならではの風景や文化をダイヤルデザインへ巧みに落とし込んでいることが多く、グランドセイコーの販売店限定モデルならではの魅力を感じさせます。
そんななか、2026年の伊勢丹新宿店限定モデルとして登場したのがSBGE317です。2025年モデルのSBGA515が夕暮れどきの新宿の空を表現した1本だったのに対し、本作は新宿という街そのものに着目したモデルに仕上げられています。
デザインモチーフとなったのは、新宿の街を覆う鮮やかな空と、林立する高層ビル群の直線的な窓格子です。ライトブルーのダイヤルには規則的なパターンが施され、都会的な景観を抽象的に表現しています。光の当たり方によって異なる表情を見せるダイヤルは、ガラス張りの高層ビルに映り込む空の色や、刻々と変化する都市の景観を思わせます。
ベースとなるのは、グランドセイコーのスポーツコレクションに属するスプリングドライブGMTモデル。ステンレススティール製ケースは直径40.5mm、厚さ14.7mmで、ベゼルには傷に強いジルコニア・セラミックスを採用しています。4時位置に配されたねじ込み式リューズとスクリューバック構造により20気圧防水を実現しており、スポーツコレクションらしい高い実用性も備えています。
内部にはスプリングドライブGMTムーブメントCal.9R66を搭載。ぜんまいを動力源としながら、水晶振動子とICによって高精度を実現するグランドセイコー独自の機構です。機械式時計のビート運針とも、クォーツ時計のステップ運針とも異なる音もなく滑らかなスイープ運針は、スプリングドライブならではの魅力と言えるでしょう。
また、異なる都市の時刻を同時に把握できるGMT機能は、国内外から多くの人々が行き交う新宿という街のイメージともどこか重なって見えます。パワーリザーブは約72時間(約3日間)で、実用性の面でも申し分ありません。
裏返すと、中央にブランドの象徴である「獅子の紋章」が刻印されたソリッドケースバックを確認できます。さらに“LIMITED EDITION”と“1 OF 60”の文字が刻まれており、特別なタイムピースであることを示しています。
ザラツ研磨が施されたケースは、エッジを際立たせながら力強い立体感を生み出している。
堅牢なソリッドケースバックで、「獅子の紋章」とともに、“LIMITED EDITION”の文字が刻印されている。
限定本数は60本。価格は97万9000円(税込)で、2026年11月7日(土)に発売を予定しています。販売に先立ち、7月15日(水)から21日(火)まで伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージで開催される「The Spirit of Japanese Craftsmanship」にて先行予約が実施される予定です。
ファースト・インプレッション
最初にプレスリリースを受け取ってレンダリング画像を見たとき、僕が真っ先に思い浮かべたのは2022年の銀座限定モデル「SBGH297」でした。スカイブルーのダイヤルに銀座の街並みを表現したあのモデルと、どこか共通する雰囲気があるように感じたのです。
ところが、実際に時計を手に取ってみると印象は大きく異なりました。SBGH297は、スカイブルーダイヤルの上に銀座の地図を思わせるグリッドパターンが描かれたモデルでしたが、その質感はどちらかというとマット寄り。一方、本作のダイヤルは光沢感のあるメタリックな仕上げが特徴で、より奥行き感を感じさせます。パターンも都市の地図というよりは、高層ビルの窓ガラスが整然と並ぶファサードを思わせる幾何学的なもので、光を受けるたびに異なる表情を見せてくれます。
ダイヤルカラーはいわゆるアイスブルーと呼びたくなるような色味です。爽やかなブルーで腕元に心地よく収まり、どこか都会的で洗練された印象を受けます。そこに光沢感のあるブラックのセラミックスベゼルを組み合わせることで全体の印象が引き締められ、赤いGMT針と秒針が絶妙なアクセントになっています。
僕は普段から時計だけでなく街や建築の写真を撮ることも好きなのですが、このダイヤルを眺めていると、以前カメラを手に新宿を歩きながら撮影した高層ビル群の風景が自然と頭に浮かびました。本作は新宿という都市の景観を単純に図案化したり直接的に表現するのではなく、グランドセイコー独自の完成によって美しく抽象化しているように感じます。
新宿(筆者撮影)。
新宿(筆者撮影)。
グランドセイコーというと、質感豊かな型打ちダイヤルが注目されることが多いブランドです。もちろん僕自身もそうしたダイヤルは大好きですが、本作を見て改めて感じたのは、印字やパターンによる表現にもまた異なる魅力があるということでした。
型打ちによって自然の情景を描き出すのではなく、幾何学的なパターンと色彩によって都市の景観を表現する。そんなアプローチもまた、グランドセイコーのダイヤルデザインの奥深さを感じさせます。
実際に着けてみると、スポーティな外観が実にクールです。ブラックベゼルによってスポーツウォッチらしい力強さを主張する一方で、アイスブルーダイヤルが洗練された軽快さを演出しています。ケース径40.5mmというサイズも絶妙で、存在感はしっかりありながら決して大き過ぎず、日常使いしやすいバランスにまとまっています。
本作は、新宿という巨大都市の景観を独自の視点で解釈したモデルとして興味深い存在です。高層ビル群の窓格子を思わせるダイヤルパターン、空を映し込んだようなアイスブルー、そして都市の夜を思わせるブラックベゼル。そうした要素が重なった文字盤の上を、スプリングドライブの秒針が音もなく滑るように進んでいく様子を眺めていると、忙しなく動き続ける街のなかで、時間だけが静かに流れているように感じられました。
<グランドセイコー>The Spirit of Japanese Craftsmanship
本作をいち早く体験できる機会として、7月15日(水)から21日(火)まで伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージで<グランドセイコー>The Spirit of Japanese Craftsmanshipが開催されます。
会場ではSBGE317の展示に加え、イサム・ノグチの光の彫刻《AKARI》を用いたインスタレーションや、グランドセイコーの精密機構を構成するパーツ展示、さらにダイヤルのモチーフとなった自然の光を体感できる展示などが予定されています。時計そのものだけでなく、グランドセイコーが大切にする日本のクラフトマンシップや美意識に触れられる機会となりそうです。
<グランドセイコー>The Spirit of Japanese Craftsmanship
■期間: 2026年7月15日(水)~7月21日(火)
■場所: 伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージ
基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: スポーツコレクション 伊勢丹新宿店 2026 限定モデル(Sport Collection Isetan Shinjuku 2026 Limited Edition)
型番: SBGE317
直径: 40.5mm
厚さ: 14.7mm
ラグ・トゥ・ラグ(全長): 48.7mm
ケース素材: ステンレススティール(ベゼルはセラミックス)
文字盤色: アイスブルー
インデックス: アプライド
夜光: あり、針・インデックス
防水性能: 日常生活用強化防水(20気圧)
ストラップ/ブレスレット: スティール製ブレスレット
ムーブメント情報
キャリバー: 9R66
機構: 時・分・秒、日付、GMT
パワーリザーブ: 最大巻上時約72時間(約3日間)
巻き上げ方式: スプリングドライブ、自動巻(手巻つき)
石数: 30
クロノメーター認定: なし、平均月差±15秒(日差±1秒相当)
価格 & 発売時期
価格: 97万9000円(税込)
発売時期: 2026年11月7日(土)
限定: 60本
追加情報: ※2026年7月15日(水)~7月21日(火)伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージで 実施される「<グランドセイコー>The Spirit of Japanese Craftsmanship」にて先行予約開始予定
Photographs by Masaharu Wada
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