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Hands-On ハイム・ウォッチ・カンパニーのアナムを実機レビュー

独自設計のモジュールを搭載した本作は、2500ドル(日本円で約40万円)未満で完全なカレンダー機能を実現した魅力的な1本だ。

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Photos by TanTan Wang

シカゴを拠点とするマイクロブランド、ハイム・ウォッチ・カンパニーは2025年に創立5周年を迎え、アナム(Annum)という魅力的な新作を発表した。私がこの時計を初めて見たのは昨年秋、ニューヨーク市で開催されたワインドアップ ウォッチ フェアでだった。そこでブランド創設者のM. ザキール・ミア(M. Zakir Miah)氏がプロトタイプを持参しており、すぐに私の目を引いた。イベントの来場者は、昨年私がレビューしたワールドタイマービアヘロなどの過去の作品とともに、アナムをいち早く見ることができた。その初披露から製品化までのあいだに、アナムはケースデザインをわずかに見直し、ダイヤルにも細かな改良が施された。最終版のアナムは、価格帯をはるかに超える魅力的なコンプリートカレンダーウォッチであり、ハイム・ウォッチ・カンパニーがビアへロで成し遂げたこと、つまり価格帯を超える創造性と、抜群の装着性を備えた複雑機構の解釈を継承している。

Haim Annum Fumee Soldier Shot
Haim Annum Fumee Case Side
Haim Annum Fumee Buckle

 アナムには3種類のダイヤルバリエーションがある。“ダークコバルト”と“ストーンホワイト”は、中央にCNC加工によるギヨシェ装飾を施した凹型セクションを持つソリッドカラーダイヤルで、外側のダイヤルリングにはアプライドインデックスが配置されている。しかし今回の実機レビューで、迷うことなく半透明の“フュメ”ダイヤルを選んだ。遠目に見ると、このフュメダイヤルはスモーク仕上げを施したPVC製ダイヤル越しにモジュールが透けて見えるため、往年のスケルトン仕様パーペチュアルカレンダーを思わせる。プリントされたインダイヤルのリングとミニッツトラックはホワイトとブルーのコントラストが特徴的で、ムーンフェイズの開口部にはホワイトの縁取りが施されている。半透明ダイヤルゆえに立体感という点では多少控えめになるものの、その代わり、内部の機械式カレンダーモジュールをじっくり鑑賞できるという魅力がある。このモジュールについてはのちほど詳しく触れたい。リーフ型の時分針はケースと同じスティールカラーでまとめられ、カレンダー表示用の各針には、いずれも熱処理によるブルースティール仕上げが施されている。

 そう、その名が“アナム”であり、多くの人が年次カレンダーやパーペチュアルカレンダーを連想するようなダイヤルレイアウトを採用しているにもかかわらず、このモデルはムーンフェイズ付きコンプリートカレンダーである。左右対称に配置された4つの表示から、日付、曜日、月、そして6時位置のムーンフェイズまで、必要な情報をひと目で読み取ることができる。一方で、2149ドル99セント(日本円で約33万8000円)という価格を実現するための大きなトレードオフもある。それは31日未満の月では、月末にケース側面の凹型コレクタープッシャーを使って日付を手動で修正する必要があるということだ。本作にはプッシャー操作用の専用ツールも付属するが、この手の時計に付属するツールは、特に旅行中などにはなくしてしまいがちだ。私の場合は、つまようじで代用することが多い。

Haim Annum Fumee Case Side
Haim Annum Fumee Moonphase Macro
Haim Annum Fumee Wrist Shot Cross-Armed

 実際のところ、普段使いで覚えておく必要があるのは右下のプッシャーだけだ。このプッシャーは日付を調整するもので、アナムを1年中動かし続けているとすれば、1年のうち計5回、2月末に加え、4月、6月、9月、11月の月末に使用することになる。一方、しばらく着用せず止まった状態から時刻合わせをする場合は、ケース右上のプッシャーで月表示を、右下のプッシャーで日付を調整する。左上のプッシャーは曜日、左下のプッシャーはムーンフェイズの調整を担当する。また多くのカレンダー機構と同様に、日付調整を避けるべき時間帯があり、ブランドによると午後9時から午前1時のあいだとのことだ。迷った場合は、まず時刻を6時30分あたりに合わせてから各プッシャーで調整するのが安全だ。

 ハイム・ウォッチ・カンパニーのいくつかのリリースと同様に、アナムは直径38mm、ラグ・トゥ・ラグ45mmと驚くほどコンパクトだ。厚さ12mmなので、スペック上では必ずしも薄い時計には見えないかもしれないが、実際に着用してみると数字ほどの厚みは感じさせない。実寸以上にミドルケースがスリムに見えるのは、ケース径が小さいことも貢献しているが、ダブルステップのベゼル、小型のねじ込み式ケースバック、そのほかいくつかの要素によるものだ。価格を考えれば、スティール製ケースの仕上げも充実しており、ポリッシュ仕上げと縦方向のサテン仕上げが、光を受けて美しいコントラストを生み出している。なかでも私が気に入ったのは、現代的に再解釈されたコルヌ・ド・ヴァッシュ風ラグの造形で、装着感の良さにも大きく貢献している。

Haim Annum Fumee Movement Shot
Haim Annum Lifestyle Standing Up
Haim Annum Movement Macro

 ケース内部には、ブランド独自仕様の機械式ムーブメント Cal.HWC-02が搭載されており、日差±10秒に調整されている。このコンプリートカレンダーの価値は、何よりもこのムーブメントの完成度にある。ベースとなる時刻表示専用ムーブメントにはミヨタ9000シリーズを採用し、その上に創業者のミア氏が独自開発したカレンダーモジュールを組み合わせ、アナムの機械式ムーブメントを完成させた。ビアへロでシンプルなGMTムーブメントを用いてワールドタイム機構を実現したように、このような創意工夫こそが、私がこのブランドに惹かれ続ける最大の理由だ。そしてスモーク加工を施したフュメダイヤルは、ダイヤル下のモジュールを際立たせる素晴らしい方法であるため、今回のモデルに最適だと考えている。ミア氏によれば、このモジュールの着想源となったのは、すでに生産終了となっているETA 2890-9のパーペチュアルカレンダームーブメントだった。当初はそのムーブメントを調達して本格的な永久カレンダーを製作する計画だったが、ニューオールドストックとして見つかったのはわずか5個ほどで、その多くが問題を抱えていたという。そこで「それなら自分で作ってしまおう」という発想から誕生したのが、このアナムなのだ。

 HWC-02の仕上げも興味深く、シースルーバック越しに視覚的な見どころが数多く見られる。プレートのストライプは工業的な印象だが、この価格帯としては十分に見栄えが良い。しかし手彫りのテンプ受けを意識した装飾は、実際の仕上がりを見ると少々野心的すぎた印象も受ける。また本作には興味深いローターが採用されており、透明なディスクにゴールドカラーのウェイトをねじ留めすることで、ペリフェラルローターのように見せる工夫が施されている。時計好きが楽しめる、細かな遊び心が随所に盛り込まれている。

Haim Annum Fumee Wrist Shot In Pocket

 アナムは、手首に載せた瞬間に真価を発揮する時計だ。ほかに言いようがないが、とにかく腕に載せたときの見映えが素晴らしい。複雑機構を備えたヴィンテージのカレンダーウォッチへの素晴らしいオマージュでありながら、独自性のあるデザインと現代的なエッセンスも兼ね備えている。さまざまな手首サイズへのフィット感は素晴らしく、もちろんルーペで比較すれば何倍も高価な時計には勝てないだろうが(当然だが)、2500ドル(日本円で約40万円)以下のマイクロブランド市場において、まさに絶妙なポジションにあると言えるだろう。

 しかし多くのマイクロブランドの時計とは異なり、アナムは年間を通じて何度かプッシャーによる日付調整が必要となるため、時計コレクションを始めたばかりの人にはお勧めし難い。それでも本作が魅力的なのは、価格重視になりがちなマイクロブランドの世界と、価格重視のマイクロブランドらしい提案と、この価格帯では驚くほど本格的な機械式カレンダー機構とのあいだを、見事につないでいる点にある。いつの日か、ミア氏がゼロから設計したパーペチュアルカレンダーモジュール(あるいは真の年次カレンダー)を生み出す日が来るかもしれない。それまでは、このアナムで十分満足できそうだ。