ADVERTISEMENT
我々が知っていること
シカゴを拠点とするマイクロブランド、ハイム・ウォッチ・カンパニー(Haim Watch Company)は2020年からひっそりと時計をつくり続けており、昨年、同社初のワールドタイマービアヘロ(Viajero)を発表した。このモデルは空(Air)、陸(Land)、水(Water)という要素にちなんだ3色のカラーバリエーションで展開され、価格を1000ドル(日本円で約15万円)以下に抑えつつ、意外性のあるユニークな要素を備えた時計としてソーシャルメディア上で注目を集めた。実のところ、昨年までこのブランドの存在を知らなかったが、オンライン上での好意的な評価に興味を引かれた。そしてハイム・ウォッチ・カンパニーの創業者M. ザキール・ミア(M. Zakir Miah、姓を逆から読むと…まあ、察しがつくだろう)氏から、新たな限定ビアヘロのプロトタイプを数日間試す機会をもらえないかと連絡を受けた。実物を手にするいい機会だと思い、その申し出を快諾した。
ステンレススティール製のケースは直径38.5mm、厚さ12mm、ラグ・トゥ・ラグは45.5mmと、時計愛好家にとって理想的なサイズ感に収まっている。ケースの仕上げは主にポリッシュ仕上げで、非常に薄いベゼルには小さなリング状のヘアライン仕上げが施されている。ミア氏によれば、これらはすべて手仕上げとのことだ。ミドルケースは丸みを帯びており、コルヌ・ドゥ・ヴァッシュスタイルのラグと一体化することで、ケース全体により精巧な印象を与えている。そのためCNCミルで単純に削り出されたような工業的な雰囲気はなく、よりクラシカルで上品な仕上がりとなっている。
ダイヤルは、ケースの厚みに対して意外なほど奥行きを感じさせる。その主な理由は、傾斜のついたワールドタイム表示のインナーリングにある。そしてこの50本限定のモデルにおける最大の特徴が、ベゼル上の各都市名がそれぞれの現地語で表記されている点だ。ハイム・ウォッチ・カンパニーの本拠地であるシカゴは赤字で印字されている。西半球のタイムゾーンは共通のアルファベットを使用しているため、それほど大きな違いは感じられないかもしれない。しかし、東半球の都市を見てみると、漢字やそのほかの文字体系を用いる言語が多く登場し、地域ごとの表記に明確な違いがあることがよくわかる。
このインナーリングはケース左側の10時位置にあるリューズで調整可能だ。そしてインナーリングとダイヤル本体のあいだには、もうひとつのリングが配置されている。ただし、これは厳密にはリングではなく周囲に印字が施された透明ディスクであり、いわばミステリーダイヤルの針のような仕組みになっている。この透明ディスクには24時間表示スケールが印刷されており、通常の3時位置のリューズを第1段階まで引き出すことで調整可能だ。これはセイコーのCal.NH34Aを搭載した一般的なGMTウォッチのGMT針と同じような操作で設定できる。ミア氏は、回転式のワールドタイマーリングとリューズを追加することで、通常のコーラーGMTウォッチをワールドタイマー機能を備えたものへと変えた。その仕組みはきわめてシンプルでありながら、実に巧妙である。
ビアヘロのデザインのなかで最も目を引く要素は中央のダイヤルだ。ここには世界地図が3Dレリーフで型押しされ、その上にプリントがあしらわれている。実物を見ると控えめな仕上がりだが、時計を傾けるとその立体感がはっきりと浮かび上がる。この限定モデルでは、ダイヤルがモノクローム仕上げとなっており、通常モデルのような色の変化がないため、3Dレリーフの立体感がやや抑えられた印象を受ける。分度器のような形状の針は焼き入れによってブルースティールに仕上げられており、アプライドのブルーインデックスと美しく調和している。
時計を裏返すと、セイコー製キャリバーは目を引くローターによってほとんど隠れている。工業的な仕上げのムーブメントを、オープンケースバックでどのように魅力的に見せるかの好例といえるだろう。このキャリバーは約41時間のパワーリザーブを備え、50mの防水性能を確保。ストラップにはデラグス(Delugs)製のダークグレークロコダイルストラップが採用されており、ハイムとデラグス両ブランド名が裏面に刻印されている。
ハイム・ウォッチ・カンパニー ビアヘロ グローバル シチズンの販売価格は949.99ドル(日本円で約14万円)で、50本限定となっている。
我々の考え
ビアヘロを手首に装着した瞬間に感じたのは、この時計が時計愛好家の嗜好にしっかりと寄り添ったデザインだということだった。手首になじみやすいユニバーサルなケースサイズ、短めのラグ・トゥ・ラグ、そして興味をそそるディテールが巧みに組み合わされている。1000ドル(日本円で約15万円)以下の価格帯にしては驚くほど複雑な構造を持ち、数日間着用しているあいだに次々と新しいディテールや特徴に気づくことができた。特に手仕上げのケースは、同価格帯の時計にありがちなエッジの鋭い機械加工的な印象を和らげ、よりエレガントな雰囲気をもたらしている。
細部の仕上げにはいくつか妥協点も見られる。たとえばローターの仕上げや24時間ディスクの印字など、もう少しシャープであれば理想的だと感じた。ただミア氏によれば、このプロトタイプには最終製品では見られない、仕上げのわずかな欠陥があるとのことだった。実際に、通常生産モデルであるランド(グリーンカラー)も送ってもらい比較したところ、これらの問題は解消されていたことを確認できた。
この限定モデルは、通常のビアヘロよりも高い価格設定になっている。スタンダードモデルのビアヘロは799ドル(日本円で約12万円)で販売されているが、“グローバル シチズン”ビアヘロはプラス150ドル(日本円で約2万円)のプレミアムが加わり、949.99ドル(日本円で約14万円)となっている。この価格差はいくつかの特別な要素によるものだ。具体的には焼き入れによるブルースティール針、デラグス製のクロコダイルストラップ、そして50本限定という小ロット生産ではスケールメリットを得にくい、新設計のベゼルが挙げられる。
この限定版ビアヘロは、依然としてバリュー・プロポジション(価格に見合う価値がある時計)と言えるのか? それについては1000ドル以下に収まっているという一点において、まだそう言えると思う。確かに、いたって普通なNH34を搭載しており、私はこのムーブメントを採用した高価格帯の時計には批判的な立場を取ってきた。ただ市場を見渡しても、これに匹敵するような魅力的な代替モデルはほとんど存在しない。むしろ、このグローバル シチズンの価格設定によって、通常モデルのビアヘロがさらにお買い得に見えてくるほどだ。また一部の人は50本限定という決定を惜しむかもしれないが、ハイム・ウォッチ・カンパニーはもともと大規模な生産を行うブランドではない。この限定モデルは、今後のさらなるバリエーション展開を模索するための試金石としての役割を果たしているのだろう。
基本情報
ブランド: ハイム・ウォッチ・カンパニー(Haim Watch Company)
モデル名: ビアヘロ “グローバル・シチズン”(Viajero "Global Citizen")
直径: 38.5mm×45.5mm
厚さ: 12mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: グレー
インデックス: アプライド
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: デラグス製クロコダイルストラップ
ムーブメント情報
キャリバー: セイコー製NH34A
機能: 時・分表示、センターセコンド、ワールドタイム
パワーリザーブ: 約41時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 24
価格 & 発売時期
価格: 949.99ドル(日本円で約14万円)
発売時期: 発売中(発売から6~8週間で納品)
限定: あり、世界限定50本
詳しくはこちらをご覧ください。