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時計の価値が、そこに刻まれた記憶によって決まるのだとすれば、私のロレックス サブマリーナーはプライスレスだ。
時計を集め始めてまだ数年だったころ、私は40歳の誕生日を記念して、デイト表示を持たないサブマリーナー、Ref.14060Mを購入した。その時計は販売店のショーケースの奥で埃をかぶっていた。スティール製のロレックスのスポーツウォッチにウェイティングリストが当たり前となった今では、まず考えられないことだ。
その2年ほど前にスキューバダイビングを始めていた私は、この時計を水中でも使うつもりでいた。だが、その後どれほど多くの冒険をともにすることになるのか、そのときは知る由もなかった。
大切なのは時計そのものではなく
それを着けて何をするかだ
– ジェイソン・ヒートン時計を集めるようになって以来、これはずっと私の信条であり続けている。そして、ダイバーズウォッチを専門とするジャーナリストとして、私は実際に時計を腕に着け、さまざまなことを経験してきた。
レビュー用の時計を借りていないとき、自分の時計のなかから何を選ぶのかとよく聞かれる。私には探検に携えていったものや、特別な日に着けてきたものなど、思い入れの深い時計が何本かある。だが、これから忘れがたい記憶が生まれそうなとき、私が手に取るのはいつもこのロレックス サブマリーナーだ。
ケースバックに刻まれた40歳の誕生日の日付は、この時計の物語、そして私の腕の上で続いてきた旅の始まりにすぎない。結局のところ、誕生日を迎えること自体は、それほど大した冒険でも、何かを成し遂げた証しでもない。だから、2010年4月15日という日付はあくまで出発点だ。ケースに増えていった傷のひとつひとつが、その後の時間を刻む目盛りとなっている。
その時間軸には、氷河に覆われた標高約4000mのレーニア山への登頂(2013年)、ニュージーランドのミルフォード・トラックでのハイキング(2014年)、沈没したHMSハーミーズへのダイビング(2019年)、そしてサンフランシスコ湾のレガッタでセールを揚げた経験(2014年)が刻まれている。
最後の冒険で、この時計には今も残る最も大きな傷がついた。そしてそれは、おそらく最も記憶に残っている傷でもある。
ヨットのフォアデッキで、私は必死にメインセールのハリヤードを引いていた。そのとき、手首がワイヤーステイに引っかかった。その刹那にベゼルが時計からもぎ取れ、海へ落ちてしまったものと思った。
ところがレースを終えると、クルーのひとりがポケットに手を入れ、そこからベゼルを取り出した。私はラチェットスプリングがないまま、ベゼルを元の位置にはめ戻した。こうして両方向に回転するようになったベゼルは、それ以来、あの出来事と劇的な冒険を思い出させるものとなった。
あの日、私はロレックスを失くしていてもおかしくなかった。レーニア山の斜面を、ピッケルをまたぐようにしてグリセードで滑り下りていた最中にクラスプが開いたときも、ダイビングの準備中にボートのデッキで腕から外れたときも同じだ。
この16年間、私のお守りであり、記憶を預かってきたサブマリーナーを失ったら、悲しいだろうか? おそらく、悲しいだろう。
しかし、失うかもしれないというリスクも、危険を承知でこの時計を使い続けるという信条もまた、人生そのものを象徴している。いくらかのリスクを冒し、自ら世界へ踏み出さなければ、人生をかけがえのないものにしてくれる記憶は生まれない。この時計は、そのことを私に思い出させてくれるのだ。
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