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Hands-On ローラン・フェリエ スポーツ トラベラーを実機レビュー

ローラン・フェリエが発表した最新の一体型ブレスレットを取り上げ、市場におけるその位置づけについて考察する。

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Photos by Mark Kauzlarich

Watches & Wondersで見られなかったことを残念に思った時計が3本ある。とはいえ正直に言うと、今年はWatches & Wondersで発表された新作をひとつも見ていないのだが、個人的には、そのなかでも特に興味を惹かれた3本が、ヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズ・デュアルタイム・カーディナルポイント、パルミジャーニ・フルリエ トンダ PF クロノグラフ ミステリューズ、そして今回紹介するローラン・フェリエのスポーツ トラベラーだった。

 私はローラン・フェリエというブランドがとても好きだ。しかし振り返ってみると、2023年に発売されたエントリーモデルのスポーツ オートについて、少し厳しく評価しすぎたのではないかと思うことがある。理論上は好みの時計だったのだが、実際に触れてみると、ブレスレットのフィット感や精度、ケースの厚み、そして価格についていくつか小さな不満があった。だが実際にこの時計を所有している知人も何人かいて、時が経つにつれて、私の見方も少しずつ変わってきた。とはいえ以前のレビューを読み返してみると、あのときの評価は正しかったのか、それとも細かな点を気にしすぎていたのか疑問に思う。今年発売されたスポーツ トラベラーは、私が最も好きな機能のひとつであるトラベルタイム/GMT機能と、今どきの素材ともいえる軽量チタンを組み合わせたモデルだ。また本作によって、時計に対する私の見方を改めて見直す機会にもなった。市場がさらに競争の激しいものとなり、消費者が価格に対してより敏感になった今だからこそ、なおさらだ。

Laurent Ferrier Sport Traveller

 まずはスペックから見て、そのあとで感想に移ろう。グレード5チタン製のケースは直径42mm×厚さ13.3mmで、防水性能は100mだ。オリジナルのスポーツ オートと比べて、幅はわずか0.5mm、厚さは0.6mmしか大きくなっていない。同じムーブメントに、追加の機構を組み込めたことからも、このムーブメント設計の優秀さがうかがえる。ブレスレットもチタン製で、バタフライ式のデプロワイヤントバックルを組み合わせる。のちほど改めて触れたいが、価格は6万1000スイスフラン(約1100万円)だ。

 ダイヤルは粒状感のあるオパーリン仕上げの“スレートグレー”で、個人的にはスポーツ オートのブルーよりも断然好みだ。セクター型のクロスヘアが配されたダイヤルには、プリントされたミニッツトラックとドロップ型の18Kホワイトゴールド製インデックスがあり、そこにはティールとグリーンに発光するスーパールミノバが塗布されている。アセガイ(投げ槍)型の針はローラン・フェリエのトレードマークであり、蓄光塗料も塗布されている。また、この時計は独特なスモールセコンドを備えている(スポーツウォッチとしては珍しい)。

Laurent Ferrier Sport Traveller

 時計愛好家にスポーツシリーズについて尋ねれば、デザイン上最も意見が分かれるのは、間違いなく日付表示窓だろう。好きな人もいれば、嫌いな人もいる。ところが今度は、議論の種がふたつになった。オリジナルのスポーツ オートの傾斜した日付表示窓は、ローラン・フェリエ氏自身が(フランソワ・トリスコーニ氏、そしてローラン・フェリエの共同創設者フランソワ・セルヴァナン氏と共に)1979年のル・マン24時間レースで総合3位を獲得したポルシェ 935Tのボンネットスクープから着想を得ている。どちらの意見に立つにせよ、これが意図的なデザインであることは否定できない。私は実のところ、このデザインが好きだ。

Laurent Ferrier Sport Traveller
Laurent Ferrier Sport Traveller

 同様に、ローラン・フェリエのトラベルタイムウォッチの24時間表示窓を邪魔だと感じる人もいる。だが、私はいつもそれをアイコニックなデザインだと思っている。私が時計を知るよりずっと前の話ではあるが、明らかにHodinkeeはそれを気に入っていたからこそ、ムーブメントの種類は違えど、このブランドと初期のリミテッドエディションを発売したのだろう。しかし、機能は同じだ。何らかの理由(おそらく日付表示窓との区別のため)で、ローラン・フェリエはディスク用の表示窓を広げ、ホームタイムが何時に切り替わるのかがわかるようにした。

 機能についての説明を飛ばしてしまったが、仕組みはいたってシンプルだ。リューズで24時間表示ディスクによるホームタイムと日付を設定し、そのあとは10時位置のプッシャーでメインの時針を進め、8時位置のプッシャーで逆戻しする。いずれも時計の計時を止めることなく操作できる。先ほども触れたように、ローラン・フェリエはこの機能を以前から採用しているが、パテック フィリップにとっても機能面で象徴的な存在だ。1959年に初めて特許が取得され、同年にRef.2597に採用された“Heures Sautante(ジャンピングアワー)機構”は、ルイ・コティエが1953年に試作した機構を応用したものだった。ローラン・フェリエが独自のバージョンを発表したのは、それから半世紀以上を経た2013年のことだ。

Laurent Ferrier Sport Traveller

 機能面ではきわめて洗練された機構であり、実際、トラベルウォッチとしては、僕がもっとも好きな方式だ。だが新しいスポーツ トラベラーに搭載されるムーブメントは、2013年に発表されたモデルのものとはいくつか大きく異なる。クラシック トラベラーシリーズに採用されているLF230系ムーブメントは2万1600振動/時で駆動し、何より重要なのはナチュラル脱進機を備えていることだ。だから、ローラン・フェリエのラインナップから(ブランドの象徴ともいえる)ナチュラル脱進機を搭載していないモデルをあえて選ぶのは惜しいと考えることもできるし、私自身も以前そう書いたことがある。ところが、スポーツ トラベラーのLF275.01は残念ながらレバー脱進機を採用している。しかしスポーツウォッチであることを考えれば、より堅牢な脱進機を採用するのは理にかなっている。

 プラチナ製マイクロローターを備えた自動巻きムーブメントは、(スポーティーさを強調するように)振動数を2万8800振動/時へと高め、72時間という十分なパワーリザーブを確保している。それに加えて、ムーブメントには、ルテニウム処理とスポーティな水平方向のサテン仕上げが施されている。私はこの型破りなアプローチが気に入っている。美しい面取りが施されているのも良い点だ(しかし内角がないのは残念だ。とはいえ近年、内角は安易な評価基準になりがちで、仕上げを深く批判的に評価する必要性を忘れさせる原因になっている)。ロマン・ゴーティエのコンティニュアムと同様に、これは伝統的でなくても美しく見えるものがあることを証明している。

Laurent Ferrier Sport Traveller
Laurent Ferrier Sport Traveller
Laurent Ferrier Sport Traveller

 厚みは常に気になるわけではないが、横から見たときのシルエットを見ると、なぜ時折それを感じたのかがわかる。個人的には、ケースの収まり方によるところが大きいのではないかと思う。写真からもわかるように、グレード5チタン製ケースはサテン仕上げとポリッシュ仕上げが絶妙に組み合わされ、とても美しく仕上げられている。一方で、ミドルケースは薄く、ダイヤル側とケースバック側はややドーム状に膨らんでいる。またラグもそれほど下向きに傾斜していないため、腕に着けると少し浮いて見える。

Laurent Ferrier Sport Traveller
Laurent Ferrier Sport Traveller
Laurent Ferrier Sport Traveller

 確かなことは言えないが、ローラン・フェリエはブレスレットにも少し手を加えたように思える。最初のレビューでは、コマ同士の公差は、もう少し詰めてもよかったのではないかと書いた。もしかすると、今回は実際に改善されているのかもしれない。あるいは、ブレスレットそのものにそう思わされていたのかもしれない。装着感は驚くほど快適なのだが、コマとコマのあいだに斜めのエッジがより多く設けられている。ロイヤル オークやチャペック アンタークティックほど建築的な印象ではなく、ジュビリーブレスレットをより角張ったデザインに仕立てたようにも見える。しかしこちらは5列ではなく3列のコマ構成だ。

Laurent Ferrier Sport Traveller
Laurent Ferrier Sport Traveller
Laurent Ferrier Sport Traveller

 全体として、スポーツ トラベラーはきわめて着け心地の良い時計だ。ブランドから1週間以上借りることができたのだが、そのあいだ、ほとんど毎日のように身に着けていた。存在感が控えめなので、これほど高価な時計を着けていることを自分でも忘れてしまうほどだった。もっとも、それは素材によるところが大きいのだろう。

Laurent Ferrier Sport Traveller

 横から見ると、時計は手首に少し突き出ているように見えるが、決して大きすぎるわけではない。重量も100g強に収まっているため、手首が重く感じることもないだろう。しかし、価格はそうはいかない。6万1000スイスフラン(約1100万円)という価格設定を考えると、スポーツ トラベラーには少し考えさせられるところがあると思う。またローラン・フェリエの時計を購入しようと考えている人であれば、競合となる時計についても当然意識しているはずだ。

Laurent Ferrier Sport Traveller

 おそらくおわかりいただけるだろうが、私はまだ少し葛藤している。市場の動向や読者の反応を読んだあと、極端に価格に無頓着な時期(具体的には、手の届かない時計であっても気軽に楽しんでしまう)から極端に価格に敏感になる時期を行き来してきた。この時計には、愛すべき要素がたくさんある。個性的なダイヤルデザイン、ムーブメントの上質な仕上げ、ブランドの歴史、そして何より、ローラン・フェリエらしさを感じさせる一体型ブレスレットウォッチに、ブランド独自のものとして昇華した機構を組み合わせていることだ。しかし魅力的な競合モデルが数多く存在するなかで、この時計の価格はかなり高額なため、その点に触れないわけにはいかないだろう。ここで紹介したデザインや機能が、ほかのどの時計よりも好きだという人もいるかもしれない。では少し趣向を変えて、遊び半分で市場にほかにどんな選択肢があるのかを見てみよう。


競合モデル

 市場には、優れたGMTウォッチもチタン製ウォッチも数多く存在する。その両方を兼ね備えながら、高級時計の価格帯に位置するモデルとなると、選択肢はかなり少なくなる。だがこの時計を着けているとき、私はトラベルタイムウォッチとチタンウォッチの両方を持っていることに気づいた。そこで、はかりを取り出していくつか比較してみた。そして、そこからさらに踏み込んでみることにした。

Laurent Ferrier Sport Traveller

 誰も同じような欲求を満たすために、6万1000スイスフラン(約1100万円)の独立系ブランドの時計とチューダー ペラゴスを比較検討することはない。しかしこの比較を見ると、クラス最高水準の価格帯に位置するローラン・フェリエ スポーツ トラベラーが、いくつかの項目で優れた強みを持っていることがわかる。ただし、まずは最も近い直接の競合製品から始めなければならない。


ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ・デュアルタイム・カーディナルポイント

 ここで明らかな競合となるのが、今年発表されたヴァシュロン・コンスタンタンのオーヴァーシーズ・デュアルタイム・カーディナルポイントだ。ローラン・フェリエにとっては不運なタイミングだが、比較するには絶好の機会と言えるだろう。2021年の登場以来、ヴァシュロン・コンスタンタンのエベレストモデルの別仕様を求める声は絶えなかった。そして5年を経て、ブランドはついにその期待に応えた。しかも価格は651万2000円(税込)と、ローラン・フェリエよりもかなり手ごろだ。

Vacheron Cardinal Points

 この時計はチタン製のケースを採用しており、サイズは縦横ともに少なくとも1mm小さくなっている(直径41mm×厚さ12.2mm)。150mの防水性能を備え、チタン製ブレスレットに加えて、ブルーとオレンジのラバーストラップ2本が付属し、いずれも工具不要で交換できる。ムーブメントは2万8800振動/時で駆動するが、パワーリザーブは60時間のみだ。もうひとつの違いは第2時間帯の表示方法だ。こちらは第2時針(ホームタイム)を示す時針が12時間で1周し、ホームタイムの午前/午後を示すAM/PM表示も備えている。これらの機能はすべてリューズで操作でき、12時間表示の時針であることを除けば、“フライヤー”GMTと同じような使い勝手だ。日付はケース側面のプッシャーで調整する。

 個人的には、GMTマスター Ⅱやローラン・フェリエと比べるとやや重厚感は否めない。だがチタン製ケース、工具不要で交換可能なブレスレット、そしてスポーツ トラベラーよりもはるかに手ごろな価格を考えると、これに勝つのはなかなか難しい。実際、今年発表された新作のなかでも最高傑作のひとつかもしれない。


パテック フィリップ アクアノート・トラベルタイム Ref.5164Gとノー​​チラス Ref.5990/1A

 ヴァシュロン・コンスタンタンはしばらくのあいだ入手困難になるだろうが、この2本の時計ほど入手できないわけではないだろう。パテック フィリップの経営陣は、こうした時計、つまり同ブランドで特に需要の高い2本のスポーティーなトラベルタイムウォッチ以外にも目を向けて欲しいと以前から公言している。とはいえ、スティール(SS)製のアクアノート・トラベルタイムが生産終了となった今、ローラン・フェリエと同じ価格帯でトラベルタイム機能を備えた時計と聞いて、私が真っ先に思い浮かべるのはこの2本なのだ。

Patek 5164

 ベビーブルーのアクアノート・トラベルタイム Ref.5164Gは、SS製モデルに代わって登場したモデルだ。これに伴い、パテック フィリップが公表する防水性能の表記にも変更があった。従来は120mとされていたが、現在は30m(またはそれ以上)と記載されている。私ならアクアノートは120m、ノーチラスは30mと見なす。どちらもローラン・フェリエと同じプッシャー式のトラベルタイム機構を採用しているが、ホームタイムは隠れた第2時針で表示する。アクアノートのケースサイズは直径40.8mm×厚さ10.2mm。希望小売価格は1166万円(税込)だが、ブレスレットは付属せず、代わりにケースにホワイトゴールドを採用している。貴金属ケースとブレスレット、どちらを選ぶのかは正直なところ難しい判断だ。一方、ムーブメントのパワーリザーブは45時間とかなり心もとない。この点はマイナス材料と言えるだろう。

Patek 5990

Photo courtesy Patek Philippe

 ノーチラス Ref.5990/1Aは、フライバック・クロノグラフに加えて、SS製ケースとブレスレットを備えながら、ローラン・フェリエよりわずかに高い1252万円(税込)という価格設定だ。ケースサイズは直径40.5mm×厚さ12.53mmで、パワーリザーブは55時間と、アクアノートよりわずかに大きく長い。どちらも、もはや“入手不能”と言っていいほど手に入りにくいモデルだが、(理論上は)競合モデルと言える。しかしどちらもムーブメントはかなり年季が入っている。もしそこを気にするのであれば、話はまた変わってくるだろう。


お手ごろ価格帯とそのほかのオプション

 ほかに思い浮かんだ選択肢は、いずれもかなり手ごろな価格帯のものだ(しかしすべてが簡単に入手できるわけではない)。デュアルタイムウォッチとしてまず思い浮かぶのは、ロレックス GMTマスター Ⅱ Ref.126710BLNRのようなモデルだろう(ペプシモデルは既に販売終了している)。178万900円(税込)という価格を考えれば、ローラン・フェリエを検討するような人なら、ロレックス GMTマスター Ⅱを買えるだけの購入力は十分に持っているだろう。

Rolex
Longines
Tudor

 ロレックスよりも、66万7700円(税込)のロンジン スピリット Zulu Time Titanium75万5700円(税込)のチューダー ペラゴス FXD GMTのような時計のほうが店頭で比較的容易に購入できる。どちらもロレックスとは違ってチタン製なので、比較対象としてはより適切だ。しかし、このような比較では見落とされているものが多い。ムーブメントの欄に“セリタ”と書かれているのを見て、それだけで価値を判断し、ケースの仕上げやダイヤルの作り込み、さらには搭載されているセリタ製ムーブメントのグレードや品質まで無視して、「この価格に見合う価値はない」と判断するようなものだ。まさか、そんな愚かなことをする人はいないだろう?

 これらを比較対象に加えたのは、実際に手に取ったことのある人がより多い時計だと思ったからだ。ロンジンやペラゴスは、フィット感や仕上げの面では比較にならない(もっともGMTマスター Ⅱはほぼ完璧だ)。両者に対して、ローラン・フェリエのほうが、明らかに工業製品的ではなく、ムーブメントの仕上げだけを見ても、その違いは明らかだ。とはいえ実際に着用したときの感覚が気になる人のために、最後に装着感についても比較してみたい。先ほど、手元にあった時計のいくつかをはかりに載せ始めたと書いた。そこからさらに踏み込み、ペラゴス 39をはじめ、かなり大量の時計の重量を調べてみた。

Weights chart

チャートに関する注記:

  • ローラン・フェリエ スポーツトラベラーは18.5cmの手首に合わせ、19コマのブレスレットを装着した状態で計測。
  • チューダー ペラゴス(オリジナル)は筆者の私物で、上記と同じサイズに調整し、12コマ(1コマあたり2g)で計測。
  • ロレックス GMTマスター Ⅱは筆者の私物で、上記と同じサイズに調整して計測。
  • ペラゴス FXD GMTは、付属のナイロンストラップとバックルを装着した状態で計測。リストのなかでブレスレットが装着されていない唯一のモデル。
  • ロンジンとパテックフィリップの重量は概算値。

 ローラン・フェリエ スポーツ トラベラーよりも軽量な時計は、(ブレスレットが付いていないチューダー FXD GMT を除外すると)スポーツ オートとロンジンだけであることがわかる。これは、ローラン・フェリエが充実したスペックと優れた装着感を両立しながら、競合モデルのどれとも異なるムーブメントの仕上げを実現するために、いかに力を注いだかを物語っている。とはいえ、それが競合モデルに対する価格差に見合うかどうかは、個人の判断になるだろう。私は今でも、スペックを考えるとスポーツ オートは少し割高に感じる。しかし実際に所有している人たちからは、着けていて本当に気に入っているという話を数多く聞いている。僕がそれに文句をつける理由もない。もし僕がその価格帯で時計を探していたなら、きっと喜んで着けていただろう。

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