我々の日常はすっかり様変わりしてしまった。家族や仲間との会食を楽しむことも、美しい風景を求めて旅に出かけることも、今はまだ以前と同じようにはいかない。かつての当たり前は、非日常となってしまった。
しかし、家にいながらであっても、特別な体験を楽しむことはできるはずだ。視点を変えれば、方法はいろいろとあるだろう。たとえば、天体観測。見慣れた都会の夜空であっても、天体望遠鏡を覗いた向こう側に広がる世界は、美しく神秘的で、壮大な宇宙のロマンを感じさせてくれるに違いない。そして時計好きにとって、自宅での天体観測が時間という概念を生み出した先人たちの叡智に思いを馳せ、改めて敬意を抱く特別な体験になるかもしれない。
特別な体験は、日常のなかに。
2021年1月、新しい彗星が発見された。発見した天文学者のグレゴリー・レオナードにちなみ、レオナード彗星と命名されたこの彗星は、2022年1月3日に太陽に最接近すると言われている。その少し前の11月頃から小型の天体望遠鏡でも観測可能となり、12月14日頃には地球から最も明るく見えるらしい。
彗星は大きく分けると、太陽を焦点の一つとして楕円軌道を描いて周期的に回帰する周期彗星、そして放物線軌道や双曲線軌道を持つ非周期彗星がある。レオナード彗星は後者だ。太陽系を一度だけ横切り、再び帰ってくることはない。悠久の彼方から姿を現し、徐々に我々が住む地球に近づきながら、再び悠久の彼方へと姿を消していくレオナード彗星。一期一会の感動や、惜別のセンチメンタリズムを味わわせてくれることになるだろう。
そんな一度しか味わえない体験を、宇宙をテーマにした時計とともに刻めば、それは日常のなかであっても特別なものとなるはずだ。無限に広がる宇宙と、自分の腕に巻かれた時計という小宇宙が繋がる感覚とはどんなものか。確かめてみたくはないだろうか?
70周年を祝う、1度きりの特別な限定モデルたち
2021年に誕生70周年を迎えたオリエントスターから、広大かつ深淵な宇宙に点在する星雲をインスピレーションソースとする記念モデルが登場した。クラシックセミスケルトンからはペア使いできる40.4mmと30.5mmサイズの2モデル、そしてこだわりを詰め込んだメカニカルムーンフェイズとモダンスケルトンの全4タイプだ。
70周年という特別なタイミングで届けられる記念限定モデルも、レオナード彗星と同じく、一度しか出会えない貴重な存在だ。彗星を追って天体望遠鏡を覗きこみ、宇宙と繋がろうとするときにも、気分を高めてくれることだろう。
クラシックセミスケルトンは、わずかに膨らんだボンベダイヤル、ボックスシェイプの風防ガラス、そして視認性の高いスペード針を採用するなど、クラシックなディテールを持つ。同時にダイヤカットで縁を鏡面に仕上げることでテンプの動きを際立たせたオープンハートデザインがモダンな印象を与えている。加えて、手に取りやすいプライスも同コレクションの特徴だ。
その70周年記念モデルは、40.4mm、30.5mmモデルともに深く艶のあるネイビーブルーにラメをちりばめたダイヤルを採用し、宇宙空間に浮かぶ星雲を表現した。ダイヤルカラーに合わせ、ブルーのカーフストラップをセット。40.4mmモデルでは、12時位置にパワーリザーブインジケーターを搭載。30.5mmモデルでは、エレガントなピンクゴールドカラーのベゼルがあしらわれている。パートナーと世界観をシェアできるペア仕様だ。
続いて、モダンスケルトン 70周年記念モデル。
ダイヤルを大胆にカットしたコンテンポラリーな雰囲気を持つオープンワークダイヤルモデルをベースに、トーンを微妙に変えたパーツを重ねて明るいグリーンから濃いめのグリーンへ、さらにネイビーへとグラデーションを描く特徴的なダイヤルを実現。さらにラメ加工を施すことで、宇宙空間に浮かぶ無数の星をイメージさせる。12時位置のローマ数字インデックスやオリエントスターのロゴマーク、さらに時・分針とスモールセコンド秒針をゴールドカラーとすることで輝く星を表現した。ダイヤルとの統一感にも配慮して、合わせたのはネイビーのカーフストラップだ。
そして、メカニカルムーンフェイズ 70周年記念限定モデルは、星雲をテーマとした今秋のアニバーサリーモデルにおけるハイライトだ。上位機種に相応しく、日差+15~-5秒の高精度ムーブメント Cal.F7M62を搭載。6時位置のムーンフェイズ表示が、より宇宙や夜空との親和性を高める。グリーンからネイビーへとグラデーションを描くマザー・オブ・パール(MOP)ダイヤルは星雲のイメージを優雅に浮かび上がらせ、オリエントスターのロゴや針に取り入れたアクセントのゴールドカラーは、輝く星を思わせる。MOPダイヤルは天然素材の1点もので、ひとつとして同じものはない。これがほかとは異なる特別感を本作に与えている。また、ブルーのワニ革ストラップもワンランク上の雰囲気を醸し出すポイントだ。12時位置には50時間表示のパワーリザーブインジケーター、6時位置のムーンフェイズには重ねてポインターデイトを搭載しており、実用性が高い点にも注目したい。
かけがえのない、今という時間に思いを込めて
この秋に登場する70周年記念限定モデルに先駆けて、3月にオリエントスターのフラッグシップとして新たに発表されたスケルトン。同モデルでは、前述した星雲をデザインソースとした一連のコレクションとは異なり、宇宙をコンセプトとしてムーブメントを小宇宙に見立て、特別なパーツ形状やカラーを採用した。このことが示すように、冒頭で紹介したレオナード彗星は本作をデザインする上で重要なインスピレーションの源となっている。
既存モデル同様、本作も70時間のパワーリザーブを持つCal.F8B63を搭載する。このムーブメントは同コレクションの根幹を成す機械で、微細加工技術MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によって成形精度が向上した完全自社開発・製造によるシリコン製ガンギ車を使用。このガンギ車は、特許を取得したバネ性を持つ独⾃形状と特殊加⼯によって割れにくいという特徴を持つ。これによりセッティングの際に接着剤を使用する必要がなく、一般的なシリコン製ガンギ車よりも優れた耐久性を実現し、実用時計としての信頼性を高めた。同時に、審美性の高さも兼ね備えている点も注目すべき特徴と言えよう。天の川銀河系をイメージした美しいブルーの渦巻き状に成形され、針やダイヤルパーツの一部も、ガンギ車に合わせて宇宙空間を連想させる深いブルーで統一。ガンギ車の鮮やかなブルーは精密な半導体製造技術における温度管理技術を活用することで実現したものだ。また、プレートやブリッジには手の込んだ繊細な仕上げを、フランジ部分には型打ち+横筋目仕上げを施した。通常モデルでは白地のロゴパーツもムーブメントのシルバーカラーに合わせて色味のバランスを取り、12時位置には輝く星をイメージした2個のダイヤモンドがセットされている。
美しい装飾で仕上げたシルバーのムーブメントと、ネイビーブルーで統⼀したカラーリングが従来のスケルトンモデルよりもモダンでスタイリッシュな印象を与え、全体的に若々しい雰囲気が漂う。
オリエントスターは今から70年前に、デザインの美しさ、製品クオリティの高さ、そして優れた精度と機能を備えた、“輝ける星”となる実用的な機械式時計を作りたいという思いからスタートした。
“輝ける星”とは何か? それは豪奢な時計を求めるような限られた人たちのためではなく、時計を実用の道具として求める一般的な人たちのライフスタイルに寄り添い、ときに生活の道標として、またあるときには心を癒す存在として、見上げる夜空にいつも輝く星のような時計でありたいという思いを表したものだ。
そのスピリットは今もブランドに脈々と受け継がれ、それを体現した製品を世に送り出し続けている。70周年のアニバーサリーとして発表された各モデルは、星雲や宇宙をモチーフとしたデザインを採用することで、ブランド誕生当時に掲げた思いをわかりやすく表現した。
時計を手に取る人々に寄り添う、当たり前の存在となるために、オリエントスターはデザインやクオリティ、そして精度と機能を今も磨き続ける。オリエントスターという輝ける星が、一期一会の感動をもたらし、未来を照らす一筋の光明となることを願って。
70周年記念限定モデル ギャラリー
Photos:Tetsuya Niikura(SIGNO) Styling: Eiji Ishikawa(TRS) Hair&Make:Ken Yoshimura Model:Hideki Asahina(donna) Words:Yasushi Matsuami Photo of shooting star by Matt_Gibson/Getty Images