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Eternal Style ブレゲ クラシック 7235&7225 時を経て磨かれる普遍の美とスタイル

2025年、創業250周年という重要な節目を迎えたブレゲは、そのアニバーサリーに際し、4月から世界各地でメゾンのさまざまなヘリテージにスポットを当てた記念モデルを発表している。10月にブレゲ ブティック銀座で披露されたふたつの新たな記念モデルでは、初代ブレゲが製作した傑作にオマージュが捧げられた。

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250周年を祝うふたつの新たなクラシック

初代が発明、あるいは革新したさまざまな複雑機構を現代のブレゲは受け継いでいる。しかし4月にパリ・ヴァンドーム広場の本店ブティックでお披露目された250周年記念モデルの初作は、意外にも最もシンプルな単針時計、クラシック スースクリプション 2025であった。モチーフとなったのは、販売価格の4分の1を前金で受け取る予約支払い制(スースクリプション)を考案し、フランス革命で痛手を負った工房の立て直しに際して販売した、時針だけの懐中時計である。グレゴリー・キスリングCEOは、「最もシンプルな機構で記念モデルの幕開けを飾ることで、皆さんを驚かせたかった」と、発表時に語った。さらに同モデルは新開発した独自の18金であるブレゲゴールドをケースに初採用。通常のピンクゴールド(PG)にパラジウムを加えることで生まれた柔らかな色味は、18世紀当時の懐中時計を規範としたという。

 その後、発表された記念モデルの連作は、どれもブレゲゴールド製である。スースクリプションに続いて5月に上海で披露されたのは、ケースの外側にむき出しになった時針に触れて時間を知る触覚時計、モントレ・ア・タクトに範を取ったトラディションの新装、トラディション 7035であった。以降、本来あるべき姿で復活を果たしたタイプ XX 2075(6月/ニューヨーク)、メゾン初のフライング・トゥールビヨンとなるクラシック トゥールビヨン シデラル 7255(6月/ジュネーブ)、2層構造のダイヤルにブレゲが特許を出願した新しい発光エナメルを用いたマリーン オーラ・ムンディ 5555(9月/ロンドン)、そしてムーンフェイズモデル、時・分表示のみのシンプルな仕様と、スタイルの異なるふたつのレーヌ・ドゥ・ナープル 99358925(10月/ソウル)など、次々と異なるメゾンのヘリテージにまつわる記念モデルをリリースした。そして10月、日本のブレゲ ブティック銀座で新たにクラシック 72357225が、お披露目となった。やはり、いずれもブレゲゴールド製のダイヤルを備えており、初代が製作した懐中時計のなかでも、特に傑作と称賛されるモデルをそれぞれモチーフとしている。7235はNo.5、7225はNo.1176がそのインスピレーションソースである。

ブレゲ No.5(1794年)

ブレゲ No.1176(1809年)

 初代ブレゲは1786年、手彫りギヨシェを初めてダイヤルに応用した。その8年後の1794年3月14日に販売されたNo.5は、初期の傑作だ。パワーリザーブインジケーターとムーンフェイズ、スモールセコンドを配したアシンメトリーなダイヤルは、当時極めて斬新であった。さらに各インダイヤルを異なるギヨシェパターンで視覚的に切り分けることで、視認性の向上を試みた最初期の作品でもある。クォーターリピーターが備わり、自動巻き機構“ペルペチュエル”のローターはプラチナ製。広くは認知されていないが、プラチナの比重の高さに着目し、初めて時計に用いたのは初代ブレゲである。

 初代ブレゲが生涯を通じて製作したトゥールビヨンは35作あるが、No.1176は、そのなかの5作目にあたる。それに定量装置であるフュゼ・チェーン機構を組み合わせ、一層の高精度化を図っていた。さらに初代が発明したなかで、トゥールビヨンよりも実例が少ないナチュラル脱進機を採用したきわめて希少な作品であることも忘れてはならない。さらに付け加えるなら、ダイヤルにはふたつのスモールセコンドが配されていたが、そのうち右側のスモールセコンドは、必要に応じてスタート/ストップの操作が可能な計測機能を備えていたという。


クラシック 7235

 No.5モチーフのダイヤルは、ブレゲにおけるスタイルの象徴としてショーメ傘下にあった1980年代から腕時計に用いられてきた。その初作であるRef.3130を生み出したのは、ブレゲ再興の立役者となった時計師ダニエル・ロートだ。彼はパワーリザーブインジケーターとムーンフェイズはそのままにし、6時位置のスモールセコンドをポインターデイトに置き換えたオフセンター式ローターの薄型自動巻きとしてNo.5を再構築した。それは現行のクラシック 7137にも受け継がれている。

 対してクラシック 7235では、ポインターデイトではなくNo.5と同じスモールセコンドへと原点回帰した。そしてそのインダイヤルをわずかに右にオフセットすることで、アシンメトリーなダイヤルデザインを一層強調している。

 そしてオリジナルダイヤルに見られたシルバーのワントーンを、ブレゲゴールドとして再解釈。さらにシテ島とサン-ルイ島(フランス・パリの中心部を流れるセーヌ川の中州の島。ともにパリ発祥の地とも称される)をモチーフとして新たに考案した、ケ・ド・ロルロージュ模様のギヨシェ彫りを施した。それもメインダイヤルは線状、インダイヤルは円状として視覚的に切り分けたのは、No.5にならったものだ。さらにミニッツインデックス外周のギヨシェも、これまでのローレットに似たピケ・ルレヴェ(別名ソウテ・ピケ)からケ・ド・ロルロージュの円状パターンに置き換えられ、華やかさを増している。また手彫りによるムーンフェイズの月の意匠もNo.5から継承されている。この月もブレゲゴールド製である。

クラシック 7235
Ref.7235BH/02/9V6 世界限定250本。1094万5000円(税込)
18Kブレゲゴールドケース、レザーストラップ(18Kブレゲゴールド製ピンバックル)。ケース径39mm、厚さ9.9mm。3気圧防水。自動巻き(Cal.502.3.DRL)

 ケースとダイヤルを同素材製とし、仕上げの違いでトーン・オン・トーンを織り成した様子は、実に見事だ。そのケースサイドの装飾も、既存のフルーテッドからダイヤルと同じケ・ド・ロルロージュ模様に置き換えられている。

 搭載する新型Cal.502.3.DRLも、見応え十分である。ベースとなったのは、オフセット式ローターをRef.3130から受け継いだ薄型自動巻き。ムーブメントの厚さは、わずか3.95mmである。そのブリッジ全面には、初代が生きた時代に作成された工房界隈を詳細に描いた“テュルゴー”と呼ばれる地図が、ハンドエングレービングで再現されている。

 クラシック 7235は、随所に高度な工芸技術を行きわたらせた懐中時計No.5と共にメゾンの原点であり、初代ブレゲが自身の工房を設立したケ・ド・ロルロージュの地にもオマージュを捧げた。


クラシック 7225

 初代ブレゲは、シンメトリーな端正さも好んだ。No.1176のダイヤルは、それを象徴するひとつである。同時に時と分の各針の長さが極端に異なる斬新さを併せ持ったこのデザインは、トゥールビヨンとフュゼ・チェーン機構による高精度を強調するためであったのかもしれない。これらふたつの機構を、現在のブレゲは腕時計で実現している。しかしNo.1176のダイヤルをモチーフとしたクラシック 7225は、キスリングCEOが「21世紀のトゥールビヨン」だと胸を張るマグネティック・ピボットでさらなる高精度化を図った。

 これはテンプの軸受けを既存の穴石と受石という構成ではなく、平らな人工ルビーと強力なマイクロ磁石に置き換えた、2010年にブレゲが特許取得した大発明である。天真(テンプの軸)には、鉄を多く含み磁気帯びしやすいスティール系合金を採用。また、マイクロ磁石はダイヤル側を大きくしている。ふたつの磁石の磁力差によって電磁誘導が生じ、天真が磁化。そして軸受け用のふたつの磁石と天真は、それぞれの磁束密度が安定するように磁場を形成する。時計の姿勢が変わって天真が傾き、磁束密度が乱れると、レンツの法則によって変化を妨げる方向に誘導電流が生じるため、常に軸先は軸受けの中心に保持される。時計に振動が加わっても、天真は瞬時に軸受けの中心に復元され、自動的に調整されるというきわめて優れた動的安定化システムなのである。

 つまり、テンプは姿勢差の影響を受けないということだ。また天真の先端は、常により磁力が強いダイヤル側だけに接し、まるでぶらさがっているような状態になっており、振動時の摩擦が限りなく低減されている。これにより20振動/秒、つまり7万2000振動/時という超ハイビートがかなえられた。さらに巻き方向を180°変えて設置したシリコン製のダブルヘアスプリングを採用し、振動時の偏心も解消している。これらが総合的に作用することでクラシック 7225は、日差±1秒という驚異的な精度を実現した。加えて時計が強い衝撃を受け、天真が大きくずれた場合でもレンツの法則は働き、軸受けの中心に引き戻される。マグネティック・ピボットは耐衝撃性能も格段に向上させるのだ。

クラシック 7225
Ref.7225BH/0H/9V6 1261万7000円(税込)
18Kブレゲゴールドケース、レザーストラップ(18Kブレゲゴールド製ピンバックル)。ケース径41mm、厚さ10.7mm。3気圧防水。手巻き(Cal.74SC)

 ブレゲが他社に先駆けたシリコン製ヒゲゼンマイと脱進機が、元来は機械式時計の大敵であった磁力を味方につけた。そのガンギ車には、創業年の“1775”と250周年を迎えた“2025”の数字がデザインされているが、これはその回転時にアニメーションを生み出すための仕掛けだ。7万2000振動/時(20振動/秒)で動く回転部は、1秒に20コマの画像を表示することになるが、これによって“1775”と“2025”のふたつの数字が滑らかに交互に表示される。これはひとつの画像から次の画像へと滑らかに連続して変化する“モーフィング”の仕組みを用いたもので、ブレゲでは初の試みとなる。

 またNo.1176のダイヤルをシンメトリーな構成とするふたつのスモールセコンドの右側には、任意にスタート・ストップできる仕組みが備わっていた。これはクロノグラフの前身となる初代が1820年に発明した二重秒針付き観測用クロノメーターからの引用であった。クラシック 7225は、この機構を別の仕組みで受け継いでいる。ケース左サイドのスライダーを操作すると、10時位置側の秒針がゼロリセット(フライバック)するのだ。そしてスライダーから指を離すと運針し始める。スモールセコンドの小さなインダイヤルの下に、垂直クラッチとハートカムが備わる中間車、リセットハンマーを組み込むことで、二重秒針付き観測用クロノメーターのヘリテージをクラシック 7225へと継承したのである。

 ブレゲゴールド製のダイヤルの色味も、No.1176に似ている。そこには7235と同じケ・ド・ロルロージュ模様のギヨシェ彫りが広がり、ムーブメントのブリッジの装飾も7235と同じだ。しかしふたつの香箱のあいだには、見慣れぬ“B”を象ったマークが刻印されている。これは、新たに制定した自社品質保証基準“ブレゲ・シール”合格の証しである。メゾン伝統の装飾仕上げが行き届き、精度、防水性といった性能も基準値をクリアしていることが、この刻印で約束される。今後、ほかのモデルにもブレゲ・シールは適用され、近い将来、全モデルの取得を目指すという。250周年を迎えたブレゲは、自らに高いハードルを課し、さらなる高品質化に挑む。


スタイルメーカーとしてのブレゲ

 ブレゲ公式サイトのアイコン(ファビコン)は、10時8分を指すブレゲ針を象っている。創業から8年後の1783年に考案されたオリジナルデザインの針は、細い胴でダイヤルを隠さず、先端近くのリングで位置が把握しやすい。まだ機能美という概念すらなかった242年も前に、アブラアン-ルイ・ブレゲは、時間を知るという機能を優先して針をデザインしたのである。またギヨシェ彫りは、まずは金属製ダイヤルの反射を抑えるために導入され、のちに前述したようにインダイヤルの模様を変えることで視覚的に切り分けることにも用いられた。これもまた、時計の見やすさを求めた結果だった。

 初代ブレゲは、視認性に着目し、それをデザインに落とし込んだ最初の時計師、すなわちモダニストであった。No.5とNo.1176のダイヤルデザインを現代に持ち込んでも、いささかも古びれた印象を与えないことからも、それは明らかである。視認性を追求した初代のデザインは当時の最先端であり、機能美の先駆けであった。モダンデザイン論において、機能美とは普遍の美であると説かれる。機能美は、装飾的な流行のデザインとは異なり“必然”から生まれたものであり、無駄がなくまさにシンプルであり、時代に左右されない普遍性を備えるということである。人が機能美に魅力を感じるのは、ただ見た目が整っているからではない。視覚だけにとどまらず、人間の感覚に訴え、心に深く染み入るからこそ、長く愛されるのである。ゆえにブレゲ針やギヨシェ彫り、ブレゲ数字といった初代のデザインは、のちの多くの時計ブランドにも影響を与え、もちろん現代のブレゲにも受け継がれている。

 時計機構の進化を2世紀進めたと称賛される希代の天才時計師は、同時に美的センスも極めて優れたスタイルメーカーとして、時計のディテールまで含めて自らのスタイルを発信した原初的存在でもあった。250周年を迎えた現代のブレゲは、そのヘリテージを大切に守りながら、これから先も新たなスタイルの創出にも挑み続ける。

Words:Norio Takagi Photos:Yuji Kawata Styled:Eiji Ishikawa(TRS) Hair&Make:Tomokazu Akutsu