四角と丸、極薄と複雑機構、硬質と装着感などオクト フィニッシモは多くのアンビバレントから成立している。だがそこには無限の可能性を秘め、それこそが魅力であるに違いない。この、オクト フィニッシモ スケルトンがその証左だ。機械式時計の原点である手巻き式を搭載し、2017年に発表された。文字盤を覆い尽くすのは緻密に組み込まれたパーツであり、伝統的なスケルトン仕様に注がれた優雅な装飾とは異なる。それは極薄を支える最先端のウォッチメイキングであり、通常は文字盤に隠された圧倒的な技術力を誇示するのだ。シンプルと精緻。ここにもアンビバレントは現れる。
そんなオクトの奥深さを知るひとりが、国内屈指の時計専門店カミネの社長である上根 亨さんだ。「ムーブメントのサイズや厚みに妥協して、スタイリングやサイズを変えるのではなく、自ら厳しい戒律を定めて最薄を極めていきました。これが一流品の本当の姿だとあらためて感じましたね」その価値は機械式の伝統とともに次世代に継承される。「毎年のように違うファンクションを開発しながらも、姿形を変えずに世界記録を樹立し続ける。そんな時計はこれまでありませんでした。時代のトレンドに合わせて場当たり的に新作を出すのではなく、きちっとしたコンセプトに則った時計作りという潮流をブルガリが作ったのではないでしょうか」。
オクト フィニッシモ スケルトン Ref.102714 286万円(税込) 極薄という世界観の端緒となった手巻き式をスケルトンで仕上げた。搭載するCal.BVL128SKは、65時間の残量表示を新たに設けた。チタン、自動巻き、ケース径40mm、30m防水、アリゲーターストラップ。
Photos:Kazumi Kurigami(CAMEL)[Hero Image]、Tetsuya Niikura(SIGNO)[watch] Words:Mitsuru Shibata