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グランドセイコーの公式協力のもと、ERGメディアが制作した大型写真集『GRAND SEIKO』。1960年の創業から現在に至るまでの歩みを、豊富なビジュアルで辿る一冊として刊行されました。木製のスリップケースに収められた26×36cmの大判ハードカバー、全320ページ・約2.9kgという堂々たる仕様は、プロダクトとして強い存在感を放っています。
ヒノキ材を用いたスリップケースには、ブティックの内装を想起させる台形パターンが施され、建築的な意匠が際立ちます。深いブルーのリネン装丁、和紙と光沢紙を使い分けたページ構成など、造本へのこだわりが伝わってきます。手に取った瞬間の印象はきわめて上質で、「本」というよりも、丁寧に設計されたオブジェに近い感覚を覚えました。
写真集の中身は、信州や雫石のスタジオ、周囲の自然環境、銀座並木通りや表参道、さらにはニューヨークのブティックまでを舞台に撮影された写真が大きな比重を占めます。森の静謐な光、工房の緊張感、外装のディテール。土地と自然、そして人の営みがどのように時計へと昇華されるのかが、200点を超える美しい写真の数々を通して提示されます。初期の機械式モデルから高精度クォーツ、そしてスプリングドライブへと至る技術的進化も、視覚的な流れの中で紹介されていました。
掲載されるテキスト(すべて英語)は基本的にヒストリーパートに集約されており、それ以外の章では文章は最小限に抑えられています。写真は美しく構成されていますが、情報を深く掘り下げるというよりも、世界観を体感させる方向に重心が置かれています。
ここで思い起こされるのが、かつて刊行された公式本『Japanese craftsmanship – Watchmaking the Grand Seiko Way』です。同書がブランドの歴史や思想、さらにはデザイナーの視点までを豊富なテキストで掘り下げた“読む”一冊だったのに対し、本書『GRAND SEIKO』は明確に“見る”ことに重きを置いた写真集的アプローチを採っています。
情報量という尺度で単純に比較すれば前者のほうが充実していると感じる読者もいるでしょう。しかし本書は、光や質感、空間の空気といった要素を通してブランドを感じさせる構成です。言葉で理解を深めるのではなく、視覚体験として世界観を味わう。両者は優劣ではなく、役割の異なる出版物と捉えるのが適切でしょう。
また、ERGによると「現行すべてのキャリバーとネイチャーダイヤルの包括的なビジュアル概要を収録」と説明があります。キャリバーについては画像と簡潔なスペックが掲載されていますが、リファレンスの網羅性という点ではカタログ的整理を期待するとやや印象が異なるかもしれません。本書は体系的なデータベースというよりも、ブランドの現在像を視覚的に提示することに主眼が置かれているように感じました。
コーヒーテーブルブックとしての華やかさは十分でありながら、単なる装飾品にとどまらない完成度を備えています。ブランドを知識として“知る”ための一冊があるとすれば、本書はグランドセイコーを“感じる”ための一冊です。
装丁の完成度と世界観の提示という点で高い水準に到達した写真集であり、既存の公式書籍とは異なる角度からブランドの魅力を楽しませてくれる存在と言えると思います。英語版のみですが、豊富な写真が中心となっているので、グランドセイコーファンならばきっと楽しめる一冊です。
価格は3万9600円(税込)で海外から日本への発送も対応しています(別途送料がかかる可能性があります)。国内では、蔦屋書店、銀座 蔦屋書店での販売を予定されています。また、販売に伴って、3月3日(火)~9日(月)の期間に代官山 蔦屋書店T-SITE 1階にてポップアップが開催される予定とのこと。
写真集『GRAND SEIKO』についての詳細は、ERGメディア公式サイトへ。
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