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Bring a Loupe パテック フィリップ ベータ、モバードのクロノプラン、ハミルトン 6B ”マーク11”、そしてゼニス タイムコマンド

今市場に出ている掘り出し物のヴィンテージウォッチをお届けしよう。

先週の結果を振り返ろう。紹介した4本のうち落札されたのは、Tropical Watchが出品した強烈なパープルダイヤルを備えたロレックス サブマリーナーと、モバード ポリプランだった。一方で、パテック フィリップ Ref.3970オメガ スピードマスター 145.022BAはいずれもまだ購入可能だ。皆さん、ひとまず深呼吸を。オークションシーズンは本番を迎え、あちこちで狂騒的な落札結果が飛び交っていた。だからこそ、ここで少し肩の力を抜いて、もう落ち着いた価格帯の時計を一緒に見てみよう。

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番外編
pocket watch

 最近、なぜか偶然にも、妙に懐中時計が気になって仕方ない、なんてことはないだろうか。“公式懐中時計の帝王”であるマークほどではないにせよ、私は昔から懐中時計が好きで、毎週のようにここで紹介したい衝動と戦ってきた。だが、もう我慢はしない。今週はまず、製造から約200年を経たとは思えないほど、ほとんど不公平なくらい美しい無銘のジャンピングアワーの懐中時計をご紹介する。もしそれで心が動かないなら、トーマス・エンゲルのトゥールビヨンを手に入れるという、比較的珍しいチャンスもある(トーマス・エンゲルという名前を聞いたことがない方は、調べる前に心の準備をしておいてください。エンゲル教授と比べれば、私たちは皆、情けないほど凡庸な存在ですから。編注;現在オークションは終了しており、102万ユーロ/1億9000万円で落札)。

 さらに言えば、1795年製の時報・クォーターリピーターが搭載されたゴールド製のブレゲ懐中時計を、私たち一般人が購入できてしまうという事実自体、どこか理不尽ですらある。「そんなものは博物館にあるべきだ!」と、まるでハリソン・フォードが唸るように言いたくなる。それでも、ここでは実際に手に入れることができる。もっとも、もしあなたが依然として手首で時間を確認するという固定観念から逃れられないなら、こちらにはレーシングダイヤルを備えたオメガ スピードマスターもある。確かにショールームに並ぶようなコンディションとは言い難い。だが、十分に珍しいモデルであることを考えれば、一見の価値はある。


ヴィンテージのモバード クロノプラン Ref 11765
movado

 最初にこのモバード クロノプランを見つけたとき、私はかなり興奮した。内側の回転ベゼルで時間を、外側の回転ベゼルで分を計測するという、実に奇妙で魅力的な時計だからだ。昔から漠然と気に入っていたし、その機構は少し大げさにも思える一方で、実際にはかなりエレガントでもある(少なくとも、同じ機能を実現するために3時と6時の位置にインダイヤルを配置するよりも、決して見劣りしないだろう)。

 ただ、その個体は再塗装(リダン)されていた。残念だ。見た目の悪いリダンではないが、やはりリダンはリダンだ(編注;現在オークションは終了しており、2700ユーロ/日本円で約49万円で落札)。

ところが、The Time Curatorの素晴らしいスタッフたちが、このきわめて状態の良い個体を提供してくれたおかげで、事態は好転した。使い込まれたような経年変化が見られ、手直しがほとんどされておらず、安心感のある仕上がりだ。ケースにはキズがあり、ダイヤルにはいくつかのシミがある。ありのままの姿であり、それが良いのだ。

 ヴィンテージのクロノプランが登場したのは今からほぼ100年前。サイズはわずか34mmしかなく、その上ダブルベゼル構造のせいで、ダイヤルは実寸以上に小さく見える。しかしこの時計を買う理由は、パネライとミリ単位で張り合うためではない。そして正直なところ、あなたが生まれるずっと前に、計測用に作られた時計を身に着ける感覚を追体験するために買うわけでもないだろう。君がこれを買う理由は、私たち全員が(手首やそのほかの場所に)時計を買うのと同じだ。それが、自分らしさを確立するための欠けていたピースになるかどうかを確認するためだ(あるいは、それは私だけかもしれないが)。クロノプランの価格は1万4000ユーロ(日本円で約250万円)だ。

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パテック フィリップ ベータ21
patek

 この時計にはどこかちょっとおどけたところがある。そして、まさにそこが魅力でもある。

 ベータ21を搭載する時計について興味深いのは、スイスがクォーツムーブメントという存在を、いかに真剣かつ本気で受け止めていたかという点だ。もちろん、それ自体は驚くべきことではない。クォーツは当時、スイス時計産業そのものを脅かす存在だったため、スイスが総力を挙げて独自技術の開発に挑んだのは当然とも言える。それでも振り返ってみると、やはり衝撃的であり、60年前のウォッチメイキングの世界がいかに現在と異なっていたかを思い起こさせる。たとえば、1960年に登場したブローバ アキュトロンは発売当時、ロレックスのサブマリーナーとほぼ同価格帯に設定されていたのである。

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とはいえ、この個体には多くの魅力がある(編注;現在オークションは終了しており、2万6750ドル/日本円で約420万円で落札)。まずきちんと動作していること、オリジナルのパテック フィリップ製ブレスレットが付属していることなどだ。18K製のケースには、この年代の時計なら当然と言える程度の使用感が見られるが、ダイヤルと針の状態はきわめて良好だ。ベータ21ムーブメントとその歴史についてさらに詳しく知りたければ、優れた情報源が数多く存在する。なかでもジェームズ・ダウリング(James Dowling)氏による解説は特に優れており、こちらから聴くことができる。このクォーツ式のパテック フィリップは17日に競売にかけられ、執筆時点の入札額は1万7000ドル(日本円で約270万円)となっている。


イギリス空軍用ハミルトン6B-9614045 “マーク11”
hamilton

 ハミルトン以上に重要なアメリカの時計メーカーを挙げるのは難しいでしょう。しかし、その重要性にもかかわらず、他ブランドに見られるような尊敬や、コレクターからの熱狂的な支持が得られているとは言い難い。正直なところ、ハミルトンのいくつかのモデルは、過小評価されている時計の筆頭候補だと思う。コストパフォーマンスという観点で見れば、Cal.992搭載のハミルトンほど時計史的に重要なモデルはほかに思い浮かばない。その実物は、わずか数百ドルで手に入るのだ。

 そして今回のハミルトンだ。すでにミリタリアに精通しているなら、軍への納入履歴について今さら説明する必要はないだろう。とはいえ、この個体の背景を深掘りしたいなら、綿密に調査された興味深い資料が存在する。ダイヤルを見ただけでも、(6時位置の上にある矢印から)これが軍用時計だとわかるし、裏蓋を見れば支給された時計であることが確認できる。興味深いことに、この特定のモデルはわずか1000本しか納入されていない(9614045という型番は、この時計がハック機能付きモデルであることを示している)。

hamilton

 同じ話を繰り返すようだが、アメリカの老舗時計メーカー製の官給時計を1000ドル前後で購入できてしまうのにはやはり驚かされる。しかも、おそらく実際にそうなるのだろう(編注;オークションは23日に終了しており、1600ユーロ/日本円で約30万円で落札)。36mmのシンプルなタイムオンリーウォッチで、状態は驚くほど良く、オリジナルのままの風合いを保っており、おそらく我々全員より長生きする。ここまで揃っていて、いったいこれ以上何を望めばいいのか、正直わからなくなるほどだ。

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ゼニス フューチャー タイムコマンド
zenith

 これは、史上初のアナログ・デジタルウォッチである(正確には“このモデル”が、という意味であって、おそらくこの個体そのものではないが)。この時計が開発・発表された当時、ゼニスはかなり厳しい状況に置かれていた。ブランドはゼニス ラジオ コーポレーションに買収された直後で、いくつかの証言によれば、新オーナーは自社の技術力を誇示したがっていたらしい(あるいはブランドシナジーを大々的にアピールしたかったのかもしれない)。そうして生まれたのが、このゼニス フューチャー タイムコマンドだ。

 繰り返すが、これは完全に奇抜な時計だ。「なぜLEDが点灯していないんだ?」と疑問に思うかもしれない。その答えは、この表示窓が、押されたボタンに応じて日付か秒を表示するように設計されているからだ。またこのモデルには、ゆっくりと回転するのではなく、1分ごとにカチッと進む分針や、楕円軌道を描いて回転するため速度が変化する(時間の始まりは遅く、その後速くなり、また遅くなる)時針も搭載されている。最後に、この時計の名前の由来は、ムーブメント内に受信機が組み込まれていること(シナジー!)にあり、これにより完璧な同期が可能となっている。

zenith

 気になるならぜひ自分でも深堀りしてみて欲しいのだが、この特定仕様のタイム コマンドは、フューチャーという名称で掲載されているのを見かけるものの、正式名称として確認は取れていない。また、基本的に動作品として市場に出てくること自体かなり珍しい。そしてこの個体はケースやブレスレットの状態が素晴らしく、さらにオリジナルのマニュアルまで付属する。普通なら単なるおまけ扱いになりそうなところだが、この時計の複雑さを考えると、むしろ必需品と言っていいだろう。執筆時点では入札はまだないが、この時計は19日から20日にかけて開催されるオークションに出品されている(編注;現在オークションは終了している)。