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クイック解説
山形カシオのハイエンドモデル専用ラインにて製造されているMR-G。“大人のためのG-SHOCK”を目指し、1996年の初代モデル(MRG-100)以降、カシオにおける高級機としての美観を求めて飽くなき進化を続けてきた。細かな磨きを叶えるためのケースの細分化、先進素材の積極的な採用など、繰り返しのアップデートの結果、現在ではそのほとんどにおいて樹脂製モデルの10倍を超えるプライシングがなされている。しかし、そういったMR-Gの情熱と取り組みを理解し、価値を見出しているファンは少なくない。
2022年のMRG-B5000も、発売からすぐに高い反響を得た。それまでMR-Gにおいて高級機の表現とされてきたアナログモデルではなく、G-SHOCK初号機を忠実に踏襲したデジタル表示の時計であったにもかかわらず、特に高級時計を嗜好する層に手に取られていたという。もちろん、象徴的なモデルのMR-G化というストーリーも魅力的だ。だが、ORIGINのフォルムをMR-Gの文脈で再現したいというカシオの熱意(と美観)に心を掴まれた人も多かったはずだ。
そしてそれから2年。現在のG-SHOCKにおいて5000系と並ぶアイコンとなっている2100系が、この6月にいよいよMRG-B2100BとしてMR-G化を果たす。
2100系において特徴的な八角系のベゼルには、MRG-B5000に同じく、ステンレスの2倍以上の硬度とプラチナと同等の輝きを持つ日本発のコバルト合金“コバリオン”を採用。64チタン製のケースは細かなビスも含めて27に細分化されており、これによって今作においても細部への緻密な研磨を行えるようになっている。また、MRG-B5000独自の要素であったマルチガードストラクチャー(ケースの4隅にあるT字バーと板バネからなるパーツだ)も、MRG-B2100Bに組み込まれた。耐衝撃性を高めるとともに、オリジナル2100系のフォルムの再現にもつながっている。その他のチタン合金と比較して加工性に優れるDAT55によるバンドのディンプル(窪み)部が、別体パーツとなっているのもMRG-B5000と同様だ。外装においては総じて、MRG-B5000で使用された技術や構造を踏襲しながら、2100系のデザインをMR-G的に進化させたものとなっている。
その一方で、ダイヤルにおいては、MR-G化にあたって今作ならではのアレンジが加えられた。まず目につくのは、立体的に波打つ文字盤だろう。金具を使わずに木材を組み合わせる日本特有の建築技法「木組」に着想を得たという文字盤には格子状に穴が開けられており、その下にあるソーラーセルに光が当たる仕組みになっている。また、4時位置にあった液晶窓は取り払われ、完全アナログ表示となった。それに伴って3時側には従来の2100系には見られなかったリューズが設けられ、よりアナログウォッチらしい外観に仕上がっている。
時刻表示こそアナログながら、G-SHOCKの他機種同様にBluetooth接続によるスマホ連携(自動時刻修正、時計ステータス表示、タイム&プレイス、携帯電話探索機能が使用可能)もしっかり押さえている。また、20気圧の防水性能に加えてJIS1種の耐磁性能も装備。上記のマルチガードストラクチャーとベゼルとケースのあいだに緩衝体を挟み込む構造により、耐久性の面でも抜かりない。今回カラーはブラックのみで、価格は税込64万9000円となっている。
ファースト・インプレッション
2022年のMRG-B5000がORIGINのデザインに忠実であったのに対し、MRG-B2100Bではそのルーツに対してダイヤル周りに大きなアレンジが加えられたのはなぜか。それは、2100系が他のシリーズと比べてシンプルなダイヤルを持つアナログ・デジタルモデルであったことが理由として大きいように思う。MR-Gのほかのモデル、例えばMRG-B2000シリーズなどと比較すると、同じくアナログ表示を主体とするモデルながらサブダイヤルの数などダイヤル上の要素に大きな差があることがわかる。ソーラーセルの受光率を上げるべく、そのまま半透過のダイヤルに置き換えるだけでは、コバリオンのベゼルやチタンケースの輝きに負けてしまう。そのような試行錯誤の末に、メタリックな質感が際立つ木組ダイヤルという結論に行きついたのではないかと思う。4時位置の液晶窓が消えたのがこのダイヤルの採用のためなのか、それともアナログウォッチであることを追求したためなのかはわからないが、結果として高級アナログウォッチらしいすっきりとしたルックスを獲得するに至っている。
なお、3時側にリューズが付いたことで2100系のシンメトリーなフォルムには若干の変化が出ている。しかし、リューズが配置されたことによって直感的な操作が可能になった点は歓迎すべきだし、完全にアナログ表示へと移行したこともあって、この位置にリューズがあることに違和感もない(2020年のGWF-A1000フロッグマンにリューズが付いたときは少し戸惑ったが、時間が経つにつれてアナログの顔にはこの方がバランスがいいと思えるようになった)。なお、一般的にはリューズを組み込むとケースの厚みが増すと言われている。しかし、2100系はそもそもがG-SHOCKのなかでスリムさを特徴的とするシリーズであり、リューズのスペースを捻出するために、内部モジュールへの衝撃を緩和するクラッドガード構造を小型化している。厚みは13.6mmに抑えられ(オリジナルの厚さは11.8mm)、耐衝撃性を備えたアナログ表示のMR-Gとしては比較的薄く仕上がっている。
ただひとつ、(これは好みの問題だが)ケースからバンドにかけてはMRG-B5000Dでそうだったようにサテン仕上げのものも見てみたいと思った。日本的な空気を持つ重厚なアナログダイヤルに対し、表面の光沢の主張が少々強いように感じられたのだ。しかしそれを措いても、ダイヤルに大きく変更を加えたのは英断だと僕は思う。今作では、2100系のアナログウォッチとしての側面の深化と、MR-Gで定番化してきている伝統工芸モチーフの採用がうまく噛み合っている。アイコニックなモデルをただそのまま再現するのではなく、いかにMR-Gのブランドに見合ったものにできるか? という課題に真摯に取り組んだ結果、設計とデザインにおいて素晴らしい相乗効果が生まれているのだ。
基本情報
ブランド: G-SHOCK
型番: MRG-B2100B-1AJR
直径: 44.4mm
厚さ: 13.6mm
ケース素材: 64チタン(ケース、裏蓋、ボタン、リューズ)、DAT55(ブレス)、コバリオン(ベゼル)
文字盤色: ブラック
夜光: LEDライト
防水性能: 20気圧防水
ストラップ/ブレスレット: タイトロック機能付きワンプッシュ三つ折れ式バックルを備えたチタン製バンド
追加情報: タフソーラー、マルチバンド6、スマートフォン連動による時刻修正、耐衝撃構造、耐磁性能
価格 & 発売時期
価格: 64万9000円(税込)
発売時期: 2024年6月発売予定
限定: なし
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