trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On Apple Watch Series 10とUltra 2ブラックを実機レビュー(動画解説付き)

さらに、この先10年のApple Watchにも思いを巡らせてみよう。

Play

Video Editor: Joe Wyatt

今年でApple Watchは10年を迎える。2014年にAppleは初代Apple Watchを発表しており、HODINKEEのワン・アンド・オンリー、ベン・クライマーが取材に訪れている。客観的に見てゴツいデザインが多いスマートウォッチのなかで、Apple WatchはAppleらしく、ほかとは一線を画す存在として当時も際立っていた。先日、AppleはApple Watch Series 10を発表。私たちは現地でそのお披露目イベントを取材した。

series 10 alu and titanium

 先週の基調講演 “It's Glowtime” 以来、私は新しいApple Watch Series 10とUltra 2の新色を数日間体験してみた。本記事の動画では新モデルの重要なポイントをいくつか紹介しているが、記事ではもう少し細かく掘り下げていく。


Apple Watch Series 10

 今年、AppleはSeries 10のケースデザインを一新したと発表した。丸みを帯びた長方形のシルエットはそのままに角がわずかに丸くなり、デジタル・クラウン(リューズ)が小型化、縦横比が変わった。

 これらのアップデートにより、Apple Watchは手首の上でより大きく感じられるようになった。もちろん、サイズが45mmから46mmに大きくなったのだからこれは当然のことだ。1mmの差は大した違いではないと思われるかもしれないが、新しいアスペクト比と相まってよりスクエア感が強くなったのは明らかだ。またSeries 10の厚さは9.7mmで、これまでのApple Watchのなかで最も薄い。ケースが薄くなったこともその視覚的効果を強調しているが、これは決して悪い意味ではない。私の手首に装着した感触では手首の上に置かれた小石のようではなく、実際の時計ケースに最も近い感覚になっていると思う。

series 10 wrist shot

ギヨシェ彫りへのオマージュ

 このアップデートによるもうひとつの大きな改善点は、Apple Watch史上最大のディスプレイだ。1度に多くのテキストが画面に収まるようになり、Apple Watchを手にしてから初めて私はこのディスプレイでメールを読めることに気がついた。Appleはまた新しい 広視野角OLEDディスプレイを搭載しており、斜めから見たときのディスプレイの明るさは私の古いSeries 7と比べても際立っている。実用面では、特にコーヒーカップなどを手にしたまま時計を直接顔に向けることができないシチュエーションで(膝を冷たいコーヒーで濡らさないよう)、通知を読みやすく感じた。このふたつのアップグレードは驚くようなものではないが、まさに正常進化と言えるだろう。

series 10 wrist shot

新しいリフレクション文字盤の “常時オン”モードでは、秒針が付くようになった。

 常時オンモードの更新は、1分に1回から1秒に1回になった。また、ギヨシェ彫り(伝統的な時計製造へのオマージュは続く)がモデルの“リフレクション”と題されたまったく新しい文字盤では、表示が常時オンモードになると秒針が動き続ける。これは小さなアップデートだが、Apple Watchの文字盤が技術的にはほとんどクォーツウォッチと同じことができるという一線をついに超えたことを示している。

alu series 10
case side alu
caseback alu

 エントリーモデルのアルミニウムは新しいジェットブラックの仕上げが目を引く。この仕上げはiPhone 7で1度登場したものの、それ以来今に至るまでまったく日の目を見てこなかった。エントリーモデルのアルミニウム製Apple Watchが全面ポリッシュ仕上げになったのは今回が初めてのことで、実際に手に取ると驚くほど美しい。ディスプレイと風防は完全にケースに溶け込んでいるがごとく、実にクールな錯覚を引き起こす。Appleはケースを徹底的に研磨し、アルミニウムを陽極酸化処理したのち、ケースに完全に浸透する黒い塗料を使用することでこの仕上げを実現している(PVDのような従来のコーティング手法ではない)。ケースは密閉され、Apple Watchでは見たことのないような深みのある漆黒が再現されており、旧型のDLCスティールモデルでさえもブラックのコーティングが施されたどの時計より滑らかな手触りを実現している。

 指紋は目立つが、コーティングされたブラック仕上げよりも拭き取りやすいと感じた。ジェットブラックのiPhone 7は光の加減で微細な傷が目立ちやすかったが、この時計が使い込まれていくなかでどのように変化するのかが気になるところだ。Appleがジェットブラック仕上げを復活させたということは、工程にいくつか改良を加えているに違いないと思う。さらに、ジェットブラックはiPhoneよりも腕時計に向いていると感じる。日常的な摩耗や損傷にさらされる頻度がiPhoneよりも少ないからだ。これはこれまでで1番気に入っているApple Watchの仕上げかもしれない。この仕上げのおかげで、最も低価格のApple Watch Series 10すらもより洗練された印象を受ける。

workout screen
caseback

ケースバックも本体と同じ素材になった。以前は心拍センサー周りはセラミック製だった。

case side

リューズを囲む象徴的な赤いリングは消えた。

 プレミアムモデルにおいて、Appleはケース素材をSSからグレード5のチタンに変更した。多くの時計メーカーが、グレード5のチタンについて加工も仕上げも(ましてや完全に磨き上げるのは)はるかに厄介な素材だと宣伝していることを考えると、これはかなり大変なことだ。確かに税込10万9800円という価格帯でこれを実現するには、スイスのケースメーカーをはるかに凌ぐ生産量を誇るAppleの量産能力が大いに貢献していることだろう。チタン製のSeries 10ではナチュラル、ゴールド、スレートの3色が展開され、いずれもPVDコーティングが施されている。実際に使用してみているが、この記事を執筆している私の手首に巻かれたナチュラルカラーの仕上げが気に入っている。旧型のノンコートのポリッシュ仕上げのSSよりも少し色が濃く、より繊細でエレガントな質感が加わっていると思う。SS製に比べて20%軽量化されたことは注目に値するが、それでもアルミニウム製よりしっかりとした重みを感じる。

mesh bracelet

業界で最もソフトなメッシュを採用して早10年を数える(しかもSS製)。

 さて、リリース後に多くの関心が寄せられたブレスレットについて少し説明しておこう。Appleはミラネーゼループとリンクブレスレットの両方に3つの新色を用意しているが、素材はSSのままだ。SS製ブレスレットはチタンカラーに合わせてPVDコーティングが施されているが、完璧な一体感に定評があるブランドとしては不自然だ。スイスの時計メーカーがチタン製ケースにSS製ブレスレットを組み合わせるというのは、確かに考えにくい。

 ミラネーゼループを実際に身につけて考えてみると、いくつかの理由が思い浮かぶ。まずは機械加工。もし両方のブレスレットを試す機会を得たなら、おそらくメッシュが現代の時計のなかで最もソフトで繊細なブレスレットであること、そしてリンクブレスレットには賞賛に値するほどのエンジニアリングが投入されていることに同意するだろう(工具を使わずにリンクの調節ができるなど、非常に時代を先取りしていた)。このふたつをチタンで実現するのは、価格を少しでもリーズナブルに保つ前提のうえではとても困難だと思われる。加えてチタンはSSとは異なり非磁性体である。つまりAppleはメッシュの無段階調節可能なマグネットクラスプを廃止しなければならない。そうなると、幅広い手首に対応するエレガントな代替策を講じるのは難しいだろう。

The new water depth sensor on the Series 10 is suitable for snorkeling.

Series 10に搭載された新しい水深センサーはシュノーケリングに適している。

 WatchOS 11のソフトウェア機能が続々と追加された一方で、Series 10にはより高速な急速充電や水深・水温センサーなど、ハードウェア面でもいくつかの改良が加えられた。ヘルスケア分野で今年追加された最大の機能のひとつは睡眠時無呼吸症候群の検出だが、これは一部の旧モデルでも利用できる。睡眠時無呼吸症候群の検出には30日分の呼吸障害データ(内蔵の加速度センサーを使って呼吸パターンの中断を検出する新しい指標が組み込まれている)が必要だが、私はすでにiPhoneのヘルスアプリで呼吸障害データがポップアップ表示されるのを確認できている。

H Radio Apple Watch

 私がSeries 10を装着して毎日便利だと感じているのは、時計のスピーカーから直接オーディオを再生できる新機能だ。一見大したことではないように思えるが、料理をしていたり洗濯物をたたんでいたりするときに、携帯電話を置いたままPodcastを流せるのが気に入った。Apple Watchの使い道を日々広げ続けてくれる便利な追加機能だ。


Ultra 2に新色ブラックが登場
Ultra 2

DLCコーティングを施したブラックのApple Watch Ultra 2。

ultra 2 side
ultra 2 crown side

 この1週間で私が扱うことができた最後の時計は、“新”Ultra 2だ。今年のUltra 2に内部アップデートはなく、DLCコーティングによる新しいブラックモデルが追加されたのみである。DLCとPVDの違いについて復習が必要な方は、このふたつの用語について私が詳しく解説した記事をぜひお読みいただきたい。この新しい仕上げは実際に手に取ると非常にマットなダークグレーに見え、その下にあるチタンの質感が感じられる。

 Appleは今年、Ultra 2用にチタン製のミラネーゼメッシュブレスレットも発表しており、より堅牢なデザインで、ダブルプッシュ式のパラシュート式クラスプを特徴としている。このブレスレットもよりデリケートなSS製のブレスレットと同様に非常に精巧に作られており、堅牢でありながら手首に装着した際の感触は非常にスムーズだ。DLCはAppleにとって珍しいものではないので、Ultraからこの色がまだ展開されていなかったことはかなり驚きだ。しかし(内面的な)改善がないにもかかわらずこのアップデートは非常に素晴らしく、おそらくUltra 2の購入を迷っていた多くの人々を引きつけるだろう。Ultra 2を数日間使用したが、実はこれが初めてUltraを装着した体験だった。49mm径のケースは私の小さな手首には絶対につけられないと思っていたが、考えが変わった。確かにケースは大きいが、旅行中でも街中でも快適につけられ、今では本気でコレクションに加えることを検討している。


まとめ

 今年はApple Watchの10周年を記念して大幅に異なるフォルムの新作が発表されると多くの人が期待していたが、実際はそうならなかった。代わりに私たちは、より派生的なモデルの登場を目撃したことになる。誤解を恐れずに言うなら、これらの変更はウォッチを前世代とは明らかに異なるものにしたが、これらは市場の成熟を象徴するものだと感じる。数年前、Apple Watchは世界的ベストセラーとなった。それから10年経った今では、Apple Watchは時計なのかという根本的な疑問が浮かんでくる。

jet black wristshot

 私たちが10年間Apple Watchを取材してきた経験に基づけば結論を急ぐことができると思うが、私に言わせればその問いに対する答えは明確にイエスだ。時計愛好家のサイトで目にする批判の多くは、Apple Watchを無機質なデジタルデバイスだと評している。しかし2014年当時、Apple Watchは機械式時計の歴史にインスピレーションを受けながら、21世紀向けに再構築された最初のスマートウォッチだった。

 ミニッツリピーターのチャイムにインスパイアされた通知音やサファイアクリスタル風防、そして“デジタル・クラウン”など、Apple Watchは常に機械式時計に敬意を表してきたように思う。今年のギヨシェ模様にインスパイアされた新しい“リフレクション”文字盤や、1秒に1回更新される常時オンディスプレイなど、Appleは単なる技術革新だけでなく現実のウォッチメイキングに基づく美的・機能的な判断を取り入れている。

jet black

 私はApple Watchを、フィリップ・デュフォーのシンプリシティのような職人技の結晶として称賛すべきだとは思わない。しかし80年代のセイコーのテレビウォッチに夢中になれるなら、なぜApple Watchに対して同じように夢中になれないのだろうか。毎年議論される基本的な定義に立ち返ると、Apple Watchは確かに時計だと言えるだろう。Appleも同じように考えているようだ。今年の基調講演でApple COOのジェフ・ウィリアムズ(Jeff Williams)がSeries 10について「これはまさにウォッチメイキングのマイルストーンだ」と語ったのが印象的だった。テクノロジーやエンジニアリングのマイルストーンではなく、ウォッチメイキングのマイルストーンだと明言したのだ。これは彼らがApple Watchを時計の文脈でどのように捉えているかを明確に示していると思う。

 同時にApple Watchは、多くの人々、特に若い世代が再び手首に何かをつけるきっかけとして素晴らしい成果を上げたというのが私(そしてその他多くの人々)の長年の持論である。ベン・クライマーが最初のApple Watchを報道して以来、HODINKEEの記事を通じて多くの人々がApple Watchを知り、そして機械式時計製造の素晴らしい世界に引き込まれてきたのを見てきた。これはゼロサムゲームではなく、両者が共存できるものだと私は信じている。