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Photos by Mark Kauzlarich
ジャガー・ルクルトの新しいデュオメトル・クロノグラフ・ムーンのようなプレスリリースを目にすると、本能的にル・サンティエまでハイキングをして、“ただの良質なスティール製のレベルソをくれ、私たちが欲しいのはレベルソだけだ!”と叫びたくなる。だが深呼吸をして、レベルソを何度かひっくり返して不安を和らげ、ジャガー・ルクルトに対してただシンプルで美しくデザインされた時計だけを要求すると、偉大な歴史的時計メーカーのひとつを誤解していることを思い出す。
JLCは2007年に最初のデュオメトルを発表。その際、独立したツインバレルとゼンマイがそれぞれ計時と機能を駆動し、それらを単一のキャリバーと脱進機に統合するという革新的なアイデアを披露した。これはコンプリケーション、特にクロノグラフを備えた時計を悩ませる問題(コンプリケーションは動力を消費し、精度とパワーリザーブを低下させる)への解決策である。JLCは、2007年にこのデュオメトルのアイデアをクロノグラフに初めて採用し、以降トゥールビヨン、ムーンフェイズ、さらにはソヌリにも同技術を採用している。
2024年、ジャガー・ルクルトはクロノグラフ、ムーンフェイズ、デイナイト表示、そしてクロノグラフ作動時に作動する6時位置のフライングセコンド(秒針駆動)を組み合わせ、6分の1秒の精度を実現した。デュオメトル・クロノグラフ・ムーンには、内外ともに多くの要素が盛り込まれている。JLCはオパライン文字盤のRGバージョン(税込1161万6000円)とコッパー文字盤のプラチナバージョン(税込1425万6000円)を用意した。
まずはムーブメントについて説明しよう。搭載されるCal.391は、前世代のデュオメトルキャリバーをベースにしたものだ。ひとつのリューズを介してツインバレルが巻きあがるのだが、一方向に回すとひとつのバレルが、もう一方の方向に回すともうひとつのバレルが巻き上がり、巻き過ぎを防ぐためのラチェットシステムが作動する。JLCのデュオメトルムーブメントはもともと、ニッケルシルバー(一般的にはジャーマンシルバーと呼ばれている)で作られていた。これは銅を含む合金で、経年変化とともに温かみのある光沢を放つ。それだけでなく加工が困難であるため、ランゲのようなブランドが使うと愛好家は熱狂するのだ。ただ残念なことに、JLCは今回の新Cal.391でニッケルシルバーの使用を中止した。
それでも、この新ムーブメントは印象的かつ複雑な技術的偉業である。ダイヤルは同じように複雑に見えるが、かなり直感的に時刻がわかる。左側には時間が表示され、サブダイヤルの中央には新しいデイナイト表示がある。右側にはクロノグラフの機能を備え、12時間積算計と60分積算計、ムーンフェイズがある。クロノグラフ秒針は文字盤を横切り、2時位置のモノプッシャーで操作される。さらに6時位置のフライングセコンドは、クロノグラフを作動させるとすぐに速く動き、各バレルのふたつのパワーリザーブインジケーターのあいだに配置される。
JLCはケースを作り直し、サイズは42.5mm径×14.2mm厚になった。大きいが、つけられないほどではない。JLCによると、1800年に製造された古いサヴォネット懐中時計からインスピレーションを得たという。サヴォネット(Savonette)とはフランス語で、手のひらに収まる丸みを帯びた小さな円盤状の石鹸のことである(次にホリデイ・イン エクスプレスに宿泊するときにこれを試してみて!)。
ケース表面はポリッシュ、サテン、ブラスト仕上げが混在している。最も注目すべきは、ラグがミドルケースと一体化されているのではなく、溶接されていることだ。これは現在では多くのメーカーが採用していない、旧式のケース構造である。グラスボックスクリスタルは薄いベゼルにシームレスに統合され、ダイヤルも風貌の形状に合わせてカーブしている。
新しいケースは、特に大きく複雑な時計の場合でも手首にしっかりとフィット。ラグは手首に沿うようにカーブし、文字盤と風防の形状にマッチする。また作り直されたケースは以前ほど厚みを感じさせないため、手首につけたときの厚みが少なく感じられる。
デュオメトル・クロノグラフ・ムーンはPGケースとオパライン文字盤、またはコッパーサーモン文字盤のプラチナケースで展開(両者では針の処理も異なる)。プラチナバージョンは特に際立っているが、もちろんプレミアムも伴う。手首にはずっしりと感じられるが特段重量があるわけではなく、アリゲーターストラップでも快適に着用できる。ピンバックルで提供されるが、この手の時計はデプロワイヤントがふさわしいような気がする。
新しいデュオメトル・クロノグラフ・ムーンとともに、JLCは既存のCal.381を使用したカンティエーム・ルネールの新しいスティールバージョンも発表した。これはSS製として初のデュオメトルであり、クロノグラフ・ムーンと同様に、アップデートされたデュオメトルケースを採用している。最新のデュオメトルほど複雑ではないが、クロノグラフを作動させて6時位置のフドロワイヤント秒針が動き出せば、忘れてしまうのも無理はない。この記事の冒頭で書いた私のように、JLCのような時計メーカーであっても、シンプルなSSを求める人たちへの平和の象徴のように感じられる。価格は655万6000円(税込)だ。
最後に、ジャガー・ルクルトは限定モデルのデュオメトル・ヘリオトゥールビヨン・パーペチュアルもリリースした。デュオメトルの最新ラインナップのスーパーカーであり、パーペチュアルカレンダーと3軸で回転するトゥールビヨンを装備している。新しい手巻きCal.388はビッグデイトを特徴とし、部分的にオープンワークしたダイヤルで回転するトゥールビヨンを示している。この技術的に巨大な時計の複雑さと相対的な装着性を見て、デュオメトルラインナップ全体だけでなく、JLCが時計製造に対して持続的に取り組む姿勢も改めて評価するようになった。価格は43万8000ドル(日本円で約6788万3000円)で、世界限定20本だ。
けれど、私はやはりジャガー・ルクルトのレベルソとポラリスが欲しいのだ。ただジャガー・ルクルトは、ウォッチメイキングのスケールを押し広げ続ける数少ないグループブランドのひとつでもある。私が好きなJLCの時計は、伝統と高級時計製造のバランスが取れているものだ(昨年のレベルソ・クロノグラフのようなもの)。デュオメトルは明らかに高級時計に偏っているが、JLCの技術的なウォッチメイキングを追求し続ける姿勢は印象的だ。
詳しくは、ジャガー・ルクルトの公式ウェブサイトでデュオメトルをご覧ください。