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Tissot PRC 100 Solar 先進技術の根底に宿る、スイス時計の精神

2025年、次世代の技術であるライトマスター ソーラー テクノロジーにより大きな話題を呼んだティソ PRC 100 ソーラー。小径の34mmや新色も登場したことで、今あらためて注目を浴びている。一方で、スイスの国民的時計でもあるティソは彼の地ではどのような視線を向けられているのか? スイス在住の時計ジャーナリストによる考察も交えて、その現在地を探る。 #PR

ティソ PRC 100 ソーラーでブランドは、新開発のライトマスター ソーラー テクノロジーを採用した。従来のソーラー技術ではソーラーセルを文字盤の下に積層していたのに対し、それを風防のサファイアクリスタルに圧着することで、文字盤を透過させることなく、素材やカラー、デザインに自由をもたらす画期的な技術だ。初登場時の39mmに加えて11月には日本でも34mmのケースのラインナップを揃え、年明けの新作ではイエローゴールドコンビなどさらに多彩なバリエーションを拡充。スイス発祥の新たなソーラーウォッチとしてコレクションを構築しつつある。

 ちなみに、モデル名の“PRC”は、Precise(精密)、Robust(堅牢)、Classic(クラシック)に由来する。そのデザインの源流は、1980年代にPR 100として発売された12角形ベゼルを採用する特徴的なモデルにまで遡る。それは多角的に光を美しく反射することで光そのものを捉える象徴的な12角形ベゼル、そして当時のモデルから着想を得たアイコニックなケースデザインからも、さりげなくヘリテージを想起させる。2005年にもPRC 100として同デザインは踏襲されているが、本作はさらなる現代性を備え、時代を超えるアイデンティティを橋渡しする時計となっている。ちなみに2021年にリバイバルし、今やブランドを代表するPRXは、1978年に初代が誕生し、当時主流のラグジュアリースポーツのスタイルから一体型ブレスレットを装備した。“X”は10気圧防水を意味する。これに対し、よりベーシックデザインを取り入れたのがPR 100であり、PRCの“Classic=クラシック”も古典というよりは、PRコレクションにおけるPRXとの対になる位置づけになる。

 腕時計におけるソーラー技術は、1976年に日本のシチズンがアナログ式時計で世界初の光発電を実用化したことで知られる。定期的なバッテリー交換を必要としない次世代技術であり、とくに日本ブランドにおいて技術革新が進んだ。だがスイスの時計ブランドもこれに手をこまねいていたわけではない。ティソが初めてソーラー技術を導入したのが、2014年に発表したティソ T-タッチ コネクト ソーラーだ。これを端緒に、集積した技術とノウハウをライトマスター ソーラー テクノロジーに結集した。その最大の特徴は、ハニカム構造のアモルファス・ソーラーセル(非結晶シリコンを用いた薄膜型の太陽電池)をサファイアガラスの下にラミネート技術で圧着することにある。これにより、ソーラーウォッチは文字盤の下で発電するというこれまでの常識を打ち破ったのだ。

 サファイアクリスタルに圧着したソーラーセルは、画像のように極端に拡大しなければハニカムのパターンをほとんど確認できないだろう。風防自体の厚みも通常とほぼ変わらず、34mmの小径モデルでも受光性能に大きな差はない。そして何よりもそのメリットは、文字盤表現の自由度にある。ソーラーセルを透過性の高い樹脂で覆う従来の構造とは異なり、メタルや天然素材、さらにカラーやその濃淡、ギヨシェなど装飾への制約もない。これによって伝統的な文字盤の様式を損なうことなく、先進の実用機能を享受できる。視点を変えれば、スイス時計の基軸となる仕様を変えることのない革新的な技術だからこそ、ティソは満を持してライトマスター ソーラー テクノロジーを搭載したといえるのではないか。そこからは1853年に創立し、スイスの国民的時計として親しまれているティソ本来の姿が浮かび上がってくるのである。


現地のジャーナリストはティソ PRC 100 ソーラーをどう受け止めるのか

HODINKEE シニアビジネスエディター アンディ・ホフマン(Andy Hoffman)。過去にはブルームバーグ・ニュースやグローブ・アンド・メール紙で活躍し、スイスの時計業界をはじめとした幅広い分野に深い知見を持つ。

ブランドロゴにスイスクロスを掲げるティソは、スイスの国民的時計とも称される。日本では多彩なカテゴリーを揃えるエントリーブランドの印象が強いが、その実相はどのようなものか。ティソ PRC 100 ソーラーでブランドが行ったことを明らかにするべく、HODINIKEEでも活躍しているジュネーブ在住の時計ジャーナリスト、アンディ・ホフマンに話を聞いた。まずは、スイスにおけるティソのブランドとしての位置づけとは?

 「そういう意味でティソは、特有のポジションを持つブランドですね。たとえばスイス人にとっては、卒業や就職といった人生の記念すべき節目に手にする最初の正統な国産時計であったりします。端正なデザインで、実用に優れるプロダクトを輩出し続けている。スイス時計というとハイブランドやマニアックな技術、装飾に関心が集まりがちですが、決してそれだけではありません。この地には根付いているのは、純粋に良い時計を追い求める文化です。とくにティソは、求めやすい価格帯で品質が高いことをしっかり訴求しています。ヘリテージについても他ブランドが過去の再現に注力するのに対し、あくまでも現代的に解釈したスタイルで若い世代の関心に応えつつ、啓蒙を行っています。そして価格だけでなく、流通網も幅広く、認知度が高い点にも注目したいですね」

 確かにスイスでは時計専門店やアウトドアショップに時計が並び、ユングフラウの最高地点の観光スポットからチューリッヒの高級ブランド街にまでブティックを構える。

 「もちろん価格帯の違いはありますが、ティソは最高級のブランドの横に並んでも遜色がないと考えています。それはスイス人のみならず、ヨーロッパの人が誇りを持って着けられるスイスの時計だからでしょう。常にイノベーションを発揮し、必要とされるテクノロジーを確実に導入し、デザインを含めて時計を進歩させている。ヘリテージや歴史に寄りかかりすぎずも根はしっかりと張っており、新しいことへの恐れもありません。それが同価格帯の他ブランドとは異なる、ティソならではの強みではないでしょうか」

ティソの本社がある、ル・ロックル。1600年ごろから続く、時計産業の街である。

 ティソへの理解を深めることは、スイス人の気質を知ることにつながるのだろうか。その問いかけにアンディは「難しい質問ですね」と笑いながら答えた。

 「スイス人というのは、倫理観や堅実さとともに、有用性を非常に重視するように思いますね。そこから生まれる自国の産業の秀逸性を深く理解し、誇りに思っています。一方で、スイスにおける特許の申請数というのはヨーロッパでは1、2を争うものです。伝統が根強いと思われがちですが、この事実はスイスの産業が新しいことにも常に挑戦し続けてきたことの証左です。この地で数百年続く時計産業を支えるのは飽くなきチャレンジ精神であり、それが現在の地位を築き上げてきた。ティソは、そうしたスイス人のアイデンティティに見事にフィットしている、まさに本流のブランドなのです」

 そのような性格を持ちながらも、最新テクノロジーを高品質のスイスメイドで、しかも求めやすい価格で提供するということに使命感を持っているのではないか、ともいう。

 「例えばソーラー技術もそうです。欧州の若い世代は環境問題に対する意識が大変高く、クォーツの使い捨てバッテリーに対しても抵抗感があるようです。これに対して、ハイエンドのソーラーウォッチを提供することで次世代を担う若者の関心事にも応えることができる。さらにライトマスター ソーラー テクノロジーでは、金属文字盤が象徴するようにクラシックなスタイルを守り、ソーラー技術を全面に押し出すことなく取り入れています。PRCへの搭載もその一環であり、そこにはティソが自分たちに求められている立ち位置や果たすべき役割を十分に理解し、イノベーションを進める自負が感じられるのです」

 ティソが開発したライトマスター ソーラー テクノロジーは、サファイアクリスタルに圧着したソーラーセルからベゼル内側に配したゼブラコネクターを経て、ムーブメントへと電力を供給。二次電池に蓄電後、その電力によってクォーツムーブメントの調速と駆動を行う。ETAによるムーブメント製造とニヴァロックス製のソーラーセルといったグループ内のリソースを活用し、自社で開発・生産している。

 研究開発は2022年に始まり、技術革新から厳格なテスト、デザインの改良といったプロセスを経た。とくに技術の根幹となるサファイアクリスタルは、直下にソーラーセルを直接組み込むため、衝撃・温度変化・湿度などの外的要因の影響を受けやすい。そのための検証テストを繰り返すとともに、ソーラーサファイアを構成する複数の層それぞれを綿密に設計することで、電気的・幾何学的・美観のすべてにおいて長期的な安定性を保証している。またソーラーセルの透明性を求め、複数のパターンの検討を重ねた。そしてエネルギー効率と目立ちにくさの理想的なバランスを実現し、性能と洗練された美しさを両立できる最適解としてハニカム構造が選ばれたのだ。

 独自のソーラー技術への取り組みは1999年に発表されたティソ T-タッチコレクションが先鞭をつけたことは言うまでもない。そしてソーラーの可能性を探るなかで、実用的な機能と美観の両立がPRC 100 ソーラーの肝となったのだ。文字盤表現の自由度は、新作の多彩なカラーバリエーションの追加でも発揮されている。

 厚みを抑えたケースもソーラー搭載を感じさせず、むしろデザインによって内在する光のモチーフをより強く主張する。全体は洗練された面の造形からなり、ポリッシュとサテンを組み合わせた仕上げで上質感を醸し出す。そしてH字型ブレスレットのリンクをはじめ、ファセット加工の12角形ベゼルや角張ったインデックスと針など、あらゆるディテールに「光を捉え、反射する」表現が施されている。これは、ソーラー機能の命とも言える太陽の輝きに着想を得たものだという。滑らかな曲線を描くラグは、そのあいだに描かれた緩やかな凹みのシェイプが有機的な印象を与える。シャープな面で構成したエッジィなPRXとは好対照な、まさにクラシックなデザインだ。

 ティソ T−タッチ コネクト ソーラーでは、スポーティなコネクテッドウォッチの多機能にソーラーパワーのパフォーマンスを組み合わせた。対するティソ PRC 100 ソーラーは、新開発のライトマスター ソーラー テクノロジーにより、普段使いに応える機能と審美性を両立する。それぞれのベクトルは異なれど、いずれもソーラー技術の可能性を開拓するものだ。そして技術革新に対する抵抗感やハードルも抑える。こうしたティソの先進機能の根底にはスイス時計の伝統と文化が息づき、揺らぐことのないブランドのアイデンティティを我々に示すのである。


スイス時計の本質を宿すソーラーウォッチ

「一般的なスイス人にとって、ティソは手に取りやすく、有用と革新性など彼らが求めているものを凝縮している時計です。本物がわかっている人が、誇りを持って身に着けたいと思うブランドでしょう」とアンディは言う。伝統に根差した職人技や装飾だけでなく、彼の語る有用と革新もまたスイス時計の本質であるのだ。だからこそティソは、国民的時計と称される。現在ブランドは、ソーラーテクノロジー専用の製造体制を構築し、将来のプロジェクトまでを見据えた生産体制を整えている。その嚆矢(こうし)がライトマスター ソーラー テクノロジーであり、搭載するPRC 100 ソーラーなのだ。どれだけ技術が進化し、新たな時代の扉を開いたとしてもそれはスイス時計の文脈から逸脱することにはつながらない。未来の技術を求めながらも、ティソは真摯に時を刻み続けるのだ。


ティソ PRC 100 ソーラーコレクションギャラリー

Photos:Tetsuya Niikura Styled:​Eiji Ishikawa(TRS) Words:Mitsuru Shibata