trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag
In Partnership

No Pause. Just Progress GMW-BZ5000で行われた継承と進化

“5000”の型番を掲げるフルメタルG-SHOCKに、7年ぶりのニューモデルとしてGMW-BZ5000が登場した。AIを用いたジェネレーティブデザインは、ブランド伝統のオリジンに何をもたらしたのだろうか。 #PR

1983年の初代DW-5000Cに始まり、フルメタル仕様のGMW-B5000、チタン合金を駆使した最上位ラインのMRG-B5000、さらには復刻モデルDW-5000Rへと、G-SHOCKは40年以上にわたり“5000”という品番の系譜を紡ぎ続けてきた。その流れを受けて、2025年の11月に登場したのがGMW-BZ5000である。フルメタル仕様のG-SHOCKとしては、2018年のGMW-B5000以来じつに8年ぶりのニューモデルである一方で、AIを活用したジェネレーティブデザインを採り入れたモデルとしては3作目に位置づけられる。この新たなアプローチによるデザイン系譜に属する1作目は、G-SHOCK誕生40周年を記念した実験的プロジェクトから生まれ、後にオークションピースとなったG-D001であり、2作目が、メタルと樹脂による独自のフレーム構造と積層カーボンパーツを与えられた、2025年6月発売のMTG-B4000である。

(左)2018年登場のGMW-B5000D-1JF、(右)AIをデザインに使用した新作のGMW-BZ5000D-1JF。

レギュラーモデルとして初めてAIをデザインに活用したMTG-B4000-1AJF

 「今回のGMW-BZ5000のコンセプトは、ひと言で言えば、5000のデザインをAIの活用とMIP(メモリ・イン・ピクセル)液晶によって次の世代へ押し進めること。GMW-B5000の開発時は、5000のデザインをフルメタルで高い完成度にまとめ上げることに重点を置いており、MTG-B4000のときは、従来の発想に囚われない耐衝撃構造への新しい挑戦を重視していました。GMW-BZ5000ではその両者の流れを汲みながら、さらにソーラー駆動でフルドット表示を成立させるという、内部モジュールの開発をもうひとつの柱としています」と、プロダクトマネージャーとして商品企画を牽引した小島一泰氏は熱を込めて語る。

 AIを活用したレギュラーモデルの1作目となったMTG-B4000は、“構造の進化”をコンセプトに、メタルと樹脂といった異素材の融合によって次なる耐衝撃構造を生み出すという、シリーズにおける必然的な課題に真正面から取り組んだモデルである。そこにAIデザインによる構造解析や荷重シミュレーションを組み込むことで、従来の延長線上にはないフレーム構造を導き出した点に、このモデルならではのAI活用の意義があったのだ。これに対してGMW-BZ5000は、そうした構造面での知見とフルドット表示という表示技術を、5000のスクエアケースという原点のフォーマットに統合してみせたモデルである。スポーツモデルではないレギュラーラインの5000として、プロポーションやフェイスデザインといった“5000らしさ”を崩すことなく、ケース構造の刷新と新しい表示デバイスの搭載を両立させること。そのうえで、ソーラー駆動によって日常使いに十分な実用性を確保すること。クラシックな外観を継承しながら、保守と革新という相反する要請を一体のプロダクトとして結実させた“攻めの5000”の姿勢が、GMW-BZ5000に託された役割であった。

 市販モデルとしては2作目となるジェネレーティブデザインの狙いと、その結果として期待した効果は、本作にどのように表れているのだろうか。その外装から見ていきたい。

 「5000らしい縦横の比率やシルエットは、いわば黄金比としてすでに決まっています。そのため変更を加えるにあたり、緩衝機構そのものを物理的に見直すところから着手しました。これまでのGMW-B5000では、横から眺めるとベゼルのメタル部分が鍛造ステンレススティールのセンターケースに覆いかぶさっています。これが内部の緩衝パーツとともに、サイドからの衝撃を受け止める役割をするわけです。GMW-BZ5000では、両パーツのあいだに位置する特殊な樹脂、エンジニアリングプラスチックによる緩衝パーツの形状を変更し、ケース両サイドにパネル状の部位を設けました。センターケースとの噛み合わせ部に隙間を設け、そこにこのパーツの挟み込み部分を備えることで、ケースサイドまで内部の緩衝パーツがまんべんなくカバーする構造としました。結果として、ベゼルパーツの形状を見直す余地が出てきたのです。これが、バイカラーを強調したデザインが生まれるきっかけになりました」

複雑な形状のベゼルパーツ、センターケースのあいだには、樹脂製の緩衝パーツが収まる極薄のポケットが設けられている。

 5000のデザインにメスを入れた耐衝撃構造はしかし、従来以上に鍛造による製造工程を複雑にした。これまで覆われていたベゼルパーツとセンターケースの噛み合わせ部分が、表出することになったからだ。G-SHOCKに求められる高い加工・組立精度を満たしながらこの変更を製品に落とし込むまでに、どれほどの苦労があったのか。小島氏曰く、工法や工程の面でも改善を重ねる必要があったという。

 「鍛造ステンレスで箱やブロックを作ることと比べると、緩衝パーツ用のポケットやディンプルを加工で設けることは確かに容易ではありません。鍛造が複雑になるほど、歩留まりも悪くなります。本作のベゼルとセンターケースの組み合わせで外形を作るというチャレンジは、当然ですが形状の複雑化につながりました。特に5000の特徴である4隅のリブ(凹凸)部分は串歯状に噛み合っています。しかし、たとえばGMW-BZ5000Dを正面から見てみると、黒いセンターケースが輪郭として覗くことでシルエットが強調されているのが分かると思います。これは質感の向上にもつながっており、ベゼルパーツがサイドをスカート状に覆う従来の構造では出せないものでした。今回AIをデザインに使用するにあたっては、このポイントを生かしつつ、歩留まりの低下を少しでも抑えることを目的としました」

(上)GMW-BZ5000D-1JF、(下)GMW-B5000D-1JF。

 作業としては、G-SHOCKの開発で蓄積してきた耐衝撃に関するデータをAIに入力し、解析することの繰り返しだったという。かつてであれば何度も試作機を作っては落とし、壊しては作り直していたプロセスを、応力シミュレーションのなかでテストすることで大幅に短縮。その時間をデザインのリファインに充てることができたのだ。「仕様要件や耐衝撃の基準は、元々カシオの社内で独自に定めたものです。ですから発想としては、耐衝撃性そのものをいたずらに引き上げるのではなく、従来の基準をきちんと満たしたうえで、よりスマートに、デザイナーや設計者が考えるだけでは到達しにくい知見をデータベースから抽出して生かしていこうという考え方でした。落下データや応力分布などは、たっぷり蓄積がありますから」

 AIによるシミュレーションを重ねることで、バイカラーデザインは少しずつ完成度を高めていった。ケースバックはより薄く、ラグもさらに装着性を高めるための微調整が可能になった。たとえばスクリューバックの爪の形状にしても、治具からトルクを受け止めるのにどのくらいの面積や幅が要るのかなど、細部にもAIからフィードバックされた知見を参照したという。

 「実は5000のラグ受けの3本脚構造は何種類か存在しています。GMW-BZ5000では相当に議論したところでした。角度にして5°違うだけでガラリと印象が変わって5000らしさが薄れてしまうほど、シビアな部分ですから。ブレスレットバンドへの繋がりはもちろん、これらをつなぐビスとの兼ね合いもあって設計要件がさまざまに重なるところなんです。新しいセンターケースに合うようにカスタマイズしているので、見た目はDW系に近いですが、完全互換品となってはいません」

フロントのビスは飾りではなく、ベゼルパーツ、センターパーツを繋ぎ止める役割を担う。

メタルケースバックの外周には肉抜きが施された。

 また、ベゼル上面からブレスレットバンドを留める機能ビスをケース上部に採用したことも、GMW-BZ5000の大きな特徴だ。従来のGMW-B5000では、デザインとしてディンプルの凹みが設けられていた箇所である。しかしベゼル上面の薄型化が実現したことで、プラス/マイナスの溝がなく、質感高い仕上げを施したビスを用いることができるようになった。さらに裏側は逆ネジとすることで緩みにくくしている。結果として、正面から見たときの美観や質感もいっそうの向上を見せた。

 そして外装と同じく、GMW-BZ5000を完全なニューモデルたらしめているのが、先に触れた新開発のMIP液晶である。高精細かつ強い太陽光の下でも高い視認性を誇るこの液晶は、これまでスポーツモデルであるG-SQUADに主に採用されてきた。しかし伝統的な7セグメントのデジタル表示と比べると、より先進的な印象を与える見た目ゆえに、クラシックなフォルムを持つ5000に使用すると違和感を覚えるG-SHOCKファンもいるかもしれない。これらの要素を馴染ませるために、どのような点に注意を払ったのだろうか。

 「MIP化、フルドット化するうえでの、デジタルとしての基本的な部分ですね。まず上段と時刻表示のサイズ比率は、ユーザーインターフェイスとして5000で従来から詰めてきたものを踏襲しています。同型番としての画面デザインを守りつつ、フォントを読みやすくするなど一新した形です。表示はデジタルにとってもっとも大事な部分ですから、MIPならではの判読性は生かしつつ、既存のファンの方にも手に取ってもらえるような調整を加えました」

MIP液晶周辺、G-SHOCKではお馴染みのレンガパターン部分がタフソーラーによる発電部となっている。

 そしてそれだけにとどまらず、あえてMIP液晶上で7セグメント表示を選択できるモードも搭載されている。その名も“クラシック・モード”といい、専用アプリ上で切り替えることができる。実は5000、5600には時代によって何種類か異なるフォントがあり、初代では直角に近く、2000年代になると少しずつ樽型に近づいた。GMW-BZ5000には、そのうち初代オリジナルに近い直線的なフォントデザインを採用したという。

 「MIPの表示に合う、可読性の高いものを選んだということでもあります。7セグメントのフォントはデジタル時計にとってレガシーといえるグラフィックで、実は元々手書きでデザインされていたんです。そのノウハウや技術は当社独自のものです。フルドットモデルの市販化はデジタルウォッチのメーカーとして長年のテーマであり悲願でしたが、より古典的な7セグメントフォントのディスプレイデザインを好むファンが一定数いることも把握していました。そこで雰囲気は多少異なりますが、長年のユーザーの方がどちらも選択できるよう採り入れたのです」

左がクラシック・モードによる7セグメント表示のGMW-BZ5000D-1JF、右が従来表示のGMW-B5000D-1JF。

 なお、クラシック・モードの説明中に小島氏は、「フルドットモデルの市販化」が「デジタルウォッチのメーカー」にとって「悲願」であったと口にしていた。なぜMIP液晶搭載によるフルドット表示が、カシオにとって悲願であったのか。小島氏はひと呼吸おいてから、次のように述べた。

 「カシオは1974年のカシオトロン誕生以降、デジタル時計を軸とした時計づくりを続けてきました。以降50年以上にわたって、耐衝撃構造の開発やELバックライトの搭載、タフソーラーの実装など、さまざまな技術革新を積み重ねてきたのですが、1990年代に携帯デバイスにフルドット液晶の採用が広まり始めると、『なぜカシオはG-SHOCK全般をフルドット化できないのか?』という疑問や要望がユーザーから寄せられるようになったのです。フルドット化は液晶表示の進化の過程で必ず通る技術ですから、そのような反応が生まれるのも当然だったと思います。ただ、当時は消費電力との兼ね合いから、まだメインのテクノロジーとして全面的に用いるには技術的なハードルが高い状況でした。当時のフルドット液晶は消費電力も多く、タフソーラーだけでまかなえる電力では安定した駆動が難しかったのです」

 デジタルウォッチの分野を牽引する企業として、歯がゆい思いもあったという。しかし今回、カシオは表示デバイスの駆動電圧・電流の調整を行い、消費電力に合わせた新しいMIPデバイスを開発することに成功した。そしてそこに、5000の新型にMIP液晶が採用された理由があったという。

 「今回のMIPは低消費電流タイプで、内部LSIの駆動も最適化し、タフソーラーだけでも確実に動作するよう仕立てています。こうして開発されたMIPデバイスをまずどの型番に使用するか。そう考えたときに、我々が持ちうるなかでもとりわけアイコニックで、革新を形にし続けてきた5000こそが適任ではないかという話に至ったのです。また、MIPをソーラーシステムで駆動する今回の構成は5000のバランスを崩さずに搭載するうえでも理にかなっていました」

GMW-BZ5000BD-1JF CASIO WATCH Partner Shop限定モデル

 外装やグラフィック表示といった目に見える部分にはG-SHOCKの歴史的なノウハウを詰めつつ、中身のデジタルムーブメントには、カシオがブランドの未来を見据えて投入したいわば技術的ブレイクスルーの集大成が凝縮されている。かくしてフルドット表示への挑戦という悲願と、AIを活用した革新的な外装という長足の進化が5000の型番に託され、GMW-BZ5000として実現された。今回のプロジェクトについて、小島氏は次のように振り返る。

 「これまでの5000の流れを守りながら耐衝撃構造もデザインも見直して、新しいものを作る。これだけ聞くと、やや矛盾した開発テーマに思えますね。しかしAIの知見を採り入れて構造解析をしてみると、これはという仮案が出てきた。デザイナーがそれを見て、こういう未来的なデザインが展開できるんじゃないかと発想をさらに飛躍させる。それを受けてエンジニアは、まったく新しい耐衝撃構造を精査する。その繰り返しにより、形状と設計要件が同時に進んでいったんです。また、試作機を作っては壊して、直してもう一度というシリアル開発ではなく、データベース軸でこれまでのノウハウを再利用したり、CADベースのCGを使ったりといった、水平分業型の製品開発で生まれたところもまた、GMW-BZ5000の新しいところかもしれません。これも、AIの採用によりもたらされた新たな視点と言えるでしょう」

 時代ごとにデジタルの最新の技術や知見を駆使し、足を止めず進化を続けること。カシオとG-SHOCKのスピリットは、プロダクトに表出しない目に見えない部分でも受け継がれているのだ。


G-SHOCK GMW-BZ5000 コレクションギャラリー

Photographs:Jun Udagawa Styled:​Eiji Ishikawa(TRS) Words:Kazuhiro Nanyo