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先日のHands-Onで、僕は大好きなパテック フィリップ アクアノート トラベルタイム 5164Rについて書いた。あの5164Rに感じた高揚感から一転、別の取材のためのこの旅に集中しようと努めていた。そうこうしているうちに、飛行機に乗り、ジュネーブ上空に浮かぶ雲の間からまだ眠そうなオーデマ ピゲの故郷ル・ブラッシュがのぞいていた。目的は何かって? それは同社が発売した最新のセラミックモデルを直接見ることだ。ロイヤル オークの頂点ともいうべきモデルがその窓を開け放ち、その魂を見せてくれているかのような時計――ロイヤル オーク パーペチュアル・カレンダー・オープンワークである。
このブラックセラミックのロイヤル オークには、硬いセラミックに他のロイヤル オークと同レベルの仕上げが施されている。セラミックケースとブレスレットは、ミラーブラックとはっきりとしたダークグレーの中間のような印象だ。オーデマ ピゲのマンハッタンブティックの奥の部屋のように暗い場所では、本機のセラミックの表面はスムースでより黒く見える。そしてポリッシュ面はほんの少しの光にも反応するので、鏡面磨きされたステルス戦闘機さながらの雰囲気を放つ。
しかし、フラッシュライトのような光を当てると、表面はスムースに見えるものの、予想以上に光を乱反射して眩しい(いまだにブラックセラミックのロイヤル オークを外の太陽光の下で見たことがないが)。ここで写真をよく見てみよう。明るい照明の下では、セラミックのロイヤル オーク パーペチュアル・カレンダー・オープンワークはグレーブラックに見え、表面仕上げが大変美しい(セラミックの場合、大変な手間が掛かる工程だ)。
陽の当たらないところでは、サテン仕上げのテクスチャーによって更に暗くに見え、ポリッシュ面やケースの面取り部分、ブレスレットは黒インクのようである。これまで肉眼でも写真でも見たことがない色の時計で、明るい場所ではよりはっきりと細部が姿を現す。この光の反射効果はとても魅力的である。では次に文字盤を見てみよう。
詳細をお伝えすると、このオープンワークバージョンは、Ref. 26585CE.OO. 1225CE.01という型番だ。これは、995万円のRef. 26579CE. OO.1225CE.01ロイヤル オーク パーペチュアル・カレンダー(これもセラミックケース)と近しい番号だが、同じベースムーブメントに少しだけ違う仕上げ(それぞれムーブメントは、5135と5134)をしており、こちらは伝統的なスレートグレーのタペストリー文字盤(ロイヤル オークの基本デザインとして共通)を採用している。このロイヤル オーク パーペチュアル・カレンダー・オープンワークは、文字盤に透明なサファイアを採用しており、その下の自社製自動巻きパーペチュアルカレンダームーブメントがよく見えるようになっている。
仕上げも美しく、ケースの厚みは9.9mm。キャリバー5135の振動数は2.75Hzで40時間のパワーリザーブがあり、文字盤上で多くのカムとレバーが見えて動作するさまは“オープンワーク”という名に相応しい。それぞれのサブダイヤルの文字部分はスモークがかけられているため、予想以上に視認性は高い。さらにローズゴールドのアクセントが、セラミックケースとブレスレットの控えめなトーンにとてもよくマッチし、温かみを加えて良いコントラストとなっている。
緻密な見た目の文字盤には(12時から時計周りに)月とうるう年、日付、ムーンフェイズ、曜日など各種インダイヤルが配されており、ブランドロゴは6時に小さくセットされている。ケースのモダンな雰囲気と、深い青と紫色で美しい夜の星空を描いた伝統的な半透明のムーンフェイズとのコントラストも素晴らしいと感じた。一見すると、このセラミックケースのロイヤル オーク パーペチュアル・カレンダー・オープンワークは単に黒光りしたロイヤル オークだと思うかもしれないが、見る度に幾度となく驚きと喜びを与えてくれることだろう。
この時計を腕に着けると、すべてのロイヤル オークに共通する魅力が満載されていることに気付くが、もっと特別感があり、とても奇妙な感想を抱き始めた。僕はそれ程長い時間この時計を腕に着けていた訳ではないが、通常より大振りのケース(これは41mmで、個人的な好みは39mmだ)と高密度でありながら軽量で温かみのあるセラミックが、このロイヤル オークをこれまで僕が腕に着けてきた他の金属製の時計とは全く異なる着け心地にしているのは確かだった。
まとめると、他のよくできたセラミックウォッチと比較して、着け心地が段違いで、かつ高級感も違うのである。この両方を合わせ持っているのが、このロイヤル オーク パーペチュアル・カレンダー・オープンワークなのだ。
一見すると、このセラミックケースの
ロイヤル オーク パーペチュアル・
カレンダー・オープンワークは
単に黒光りしたロイヤル オークだと
思うかもしれないが、この先見る度に
幾度となく驚きと喜びを
与えてくれることだろう。
当然だが、本機は(ほとんどの特別なAP製品と同様)、直営店での店頭販売のみである。価格は時価で、13万スイスフラン、掲載時点で13万1600ドル(約1440万円)だ。他ブランドではこのセラミックのパーペチュアル・カレンダーと同レベルのものを作っておらず、あなたがこの時計を欲しければ、他の購入希望者との競争は大変激しいものになることは明らかだ。需要が供給可能数をはるかに超えるのは容易に想像できる。であるならば、他のメーカーが同じような機能の時計を同レベルの価格でぶつけてくることも想定されるだろう。また、既に市場にあるリシャール・ミルやいつもホットなパテック フィリップ ノーチラス パーペチュアル・カレンダー Ref.5740を代替オプションとして考えるのもアリだろう。
最後になるが、オーデマ ピゲの他の時計にも検討に値するたくさんの時計があることを忘れてはならない。ほとんど同等の機能(その上ゴールドを使用している)を持つソリッド・ローズゴールドのロイヤル オーク・カレンダー(Ref. 265740R.OO.12200R.02)の価格は995万円である。400万円節約になる。また、オーデマ ピゲは、ロイヤル オーク パーペチュアル・カレンダーウルトラシン(通称RD#2)は、14万スイスフラン(約1560万円)で、この時計も41mm径だ。もしセラミックとオープンワーク・ダイヤルでなくて良いのであれば、新しいウルトラシンの厚みはたったの6.3mmで、ここで紹介したセラミックのロイヤル オークに比べると(スポーツケースで、ブレスレットはプラチナであるにもかかわらず)そこまで注目されていない。
素晴らしいオープンワークのダイヤルにどれだけの価値があるか? 皆さんの答えを聞く前に回答するのは心苦しいが、オーデマ ピゲだけがスケルトンの高品質なQP(パーペチュアルカレンダー)を作っている訳ではないということを忘れないほうが良いだろう。
とどのつまり、この時計はロイヤル オークのDNAにハイエンドのコンプリケーションを、大変苦労して仕上げたセラミックケースに収め、ブレスレットを加えたものである。ダイヤル側から覗くムーブメントをこれ以上ない程に美しくカスタマイズし、その上に明るくて視認性の高いサファイヤガラスのダイヤルで蓋をしている。
どこをどう見ても、頭のてっぺんからつま先まですべてにおいて伝統的な装飾と現代の材料を寸分の違いもなくピッタリ合わせる神業を成し遂げている。これをスティーブン(・プルビレント)は、“彼らはユニコーンをまず作り、次に透明なユニコーンを作ったのだ”と比喩している。
詳細についてはオーデマ ピゲ公式サイトへ。