INTRODUCING: ポルシェデザイン クロノグラフ 1 ユーティリティ — HODINKEE限定モデル
HODINKEEは、時代を超えて愛されるアイコンに深い敬意を抱いている。伝説的なポルシェと精緻な時計に共通するのは、徹底した実用性と妥協のない造形へのこだわりだ。
ポルシェデザインとのコラボレーション3部作。その第1章では、クロノグラフ 1のデザインのルーツを探った。今回は、ポルシェデザインを代表する時計のひとつを支える機械的な心臓部に焦点を当てた。20年にわたって生産が途絶えていたムーブメントの機能を受け継ぎ、センターミニッツクロノグラフが復活する。
「ポルシェデザイン クロノグラフ 1 ユーティリティ — HODINKEE限定モデル」は、長年愛されてきたポルシェデザインのミリタリークロノグラフをこれまでで最も忠実に現代へよみがえらせたモデルだ。4年以上にわたる研究開発を経て完成したこの時計には、ポルシェデザインがあらゆる判断の指針とする理念 ──目的、簡潔さ、明快さ、そして何よりも実用性── が息づいている。
その背景: アイコンになる前のひとつの計器
フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ
フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは、ポルシェ911を通じて、妥協のない、ひと目でそれとわかるデザイン言語を確立した。1972年、彼は「形態は機能に従う(Form Follows Function)」という信念を礎に、ポルシェデザインを立ち上げる。
最初に手がけた時計、クロノグラフ 1が目指したのは、ポルシェのダッシュボードのような高い視認性を腕時計に取り入れること。こうして世界初のマットブラッククロノグラフが生まれた。時計の設計にも自動車開発と同じ厳密さを持ち込み、すべての要素に明確な役割を与えた。
1970年代後半、複数の空軍や海軍部隊がポルシェデザインに直接依頼を寄せた。求められたのは、過酷な任務に耐え、どんな状況でも読み取りやすく、現場で整備できるクロノグラフ 1だった。そうして誕生したのが、伝説的なポルシェデザイン ミリタリークロノグラフである。今回のコラボレーションで私たちが手本としたのも、この時計だ。
視認性、耐久性、信頼性を重んじる姿勢は、1970年代のクロノグラフ 1 ミリタリーを形作った。そして約50年を経た今、私たちが立ち返ったのも同じ基準だった。この時計を軍務の歴史に根差したミリタリーウォッチとして捉えるのではなく、“ユーティリティ”という考え方そのものを体現する時計として作り上げた。ユーティリティとは、見た目のための演出ではない。時計をデザインする理由そのものなのだ。
目指す姿を模索するなかで、私たちは初期のクロノグラフ 1 ミリタリーが備えていた軍用仕様のダイヤルレイアウトを復活させたいと考えた。そのために必要だったのが、当時のムーブメント、すなわちレマニア 5100の構造と機能を取り戻すことだった。
伝説のムーブメント: 手が届かなくなっていた、その機構
1970年代初頭、自動巻きクロノグラフムーブメントの選択肢は限られていた。そのひとつが、現在では高く評価されるレマニア 5100だ。ルーペで眺めるためのムーブメントではなく、航空や軍事用途で想定される負荷に耐え、確実に機能することを目指して設計された。機能の配置から機械的な構成に至るまで、過酷な環境でも正確に時を刻むための工夫が凝らされている。
飾り気のない、頼もしい実用機。見せるための仕上げではなく、機能を追求したムーブメントだ。それでいて、構想と構造の両面で、当時としては驚くほど先進的だった。
レマニア 5100
5100の特徴は、クロノグラフの積算ミニッツをインダイヤルではなく、時・分針と同じ軸に取り付けられた中央の針で表示することだ。ダイヤル上の小さな違いに思えるかもしれないが、実際に使ってみると、その差は大きい。センタークロノグラフ分針なら、ダイヤルをひと目見るだけで経過時間がわかる。3時や9時位置の小さな積算計を見比べたり、ダイヤルの3分の1ほどの大きさしかないインダイヤルを基準に計算したりする必要はない。クロノグラフの経過時間を表示する方式として、今なお最も速く、直感的に読み取れる方法のひとつだろう。5100は、この発想を前提に一から設計された、時計製造の歴史においても数少ないムーブメントのひとつである。
この機能は、1970年代から80年代にかけて、この時計を使用した空軍や海軍の部隊にとって、とりわけ重要だった。燃料消費、目標地点での滞在時間、減圧停止── 任務では、分単位の時間がものをいう。センタークロノグラフ分針なら、計算することなく、ひと目で経過時間を読み取れる。レマニア 5100は、過酷な環境で使用した人々のあいだで、驚くほど頑丈で信頼性の高いムーブメントとして知られていた。今日、5100は商機を狙ってではなく、明確な仕様に応えるために設計された点が評価され、コレクターのあいだで独特の地位を占めている。
ただ、コレクターにはひとつ問題があった。この機構を備えた現代の時計を手に入れることができなかったのだ。自動巻きクロノグラフであり、センタークロノグラフ分針と秒針、スモールセコンド、12時間積算計、12時位置の24時間表示(AM/PM表示)を備える── 5100を特徴付けていたこの機能は、2022年まで特許によって保護されていた。特許が失効すると、ポルシェデザインはすぐに開発に着手した。
INTRODUCING: WERK 01.340
F.A.ポルシェの哲学を受け継ぎ、ポルシェデザインが目指したのは、ムーブメントをそのまま再現することではない。中核となる機能を保ちながら、ブランドの現代的なデザインとエンジニアリングの知見を生かし、性能を高めることだった。
WERK 01.340:COSC認定 / 60時間パワーリザーブ / クロノグラフ分針の瞬時送り / クイックセットデイト
「ポルシェデザイン クロノグラフ 1 ユーティリティ — HODINKEE限定モデル」には、新開発のWERK 01.340が搭載される。4年にわたる研究開発を経て、レマニア 5100の伝説的な機能を現代によみがえらせ、クロノグラフ 1にセンターミニッツクロノグラフを取り戻した。
これは、時計製造の歴史において高く評価されてきたクロノグラフムーブメントの単純な復刻ではない。レマニア 5100の機能を再構築する試みとして、2026年時点で最もオリジナルに近づいたものだ。しかも、オリジナルを上回る精度と信頼性を備えるよう設計されている。
歴史的な構造を備えた、現代のムーブメント
WERK 01.340の開発を通じて、一貫して重視されたのは信頼性だった。正確に読み取れること、強い衝撃や温度変化、水圧にさらされても安定して動くこと。これらを設計の指針とし、最終的には完成度を測る基準とした。
このムーブメントは、センタークロノグラフ秒針、センタークロノグラフ分針、6時位置の12時間積算計によって、最大12時間の経過時間を計測する。クロノグラフの表示には、ひと目で識別できる赤を採用。アウターリングには、タキメータースケールに代えて12時間目盛りを採用している。
経過時間をより正確に読み取れるようにするため、ポルシェデザインはオリジナルの構造にふたつの改良を加えた。ひとつ目は、センタークロノグラフ分針を、同軸上に重なる針の最下層に配置したこと。ダイヤルと針の距離を縮めることで視差の影響を抑え、経過時間をすばやく、正確に読み取れるようにしている。
ふたつ目は、クロノグラフの分積算機構を改良し、1分ごとに針が瞬時に進むようにしたことだ。これにより、経過時間をより正確に把握できる。深みのあるブラックに仕上げ、先端を赤く色分けした針も、視認性を高めている。
本作は、クロノグラフ機能に加え、12時位置に24時間表示のインダイヤルを備える。従来のクロノグラフ 1では分積算計が置かれている位置だ。この表示は時・分針と連動し、現在時刻が午前か午後かをひと目で示す。かつてのミリタリーウォッチにも備わっていた機能である。
曜日・日付表示はそのままに、日付の早送り調整にも対応。曜日表示は英語とドイツ語の2言語に対応する。パワーリザーブも60時間以上に延長し、日常使いでの利便性を高めた。さらにWERK 01.340は、COSCのクロノメーター認定を取得している。
ロマンティックに語られることなど想定されていなかったムーブメントに、これほど心を引かれるのは不思議なことかもしれない。だが、だからこそ復活させる価値がある。ロマンよりも堅牢性を重んじることが、もともとの目的だった。耐久性を追求して生まれた機能を現代のムーブメントに組み込む以上、設計の根底にある条件は今も変わらない。ゼンマイを巻けば動くというだけでなく、実際の着用に伴う負荷に耐えなければならないのだ。
仕様から手首へ: デザインについて
この時計のデザインは、内部のムーブメントと同じ考え方に基づいている。着用者の役に立たないものは加えず、すでに機能しているものは取り除かない。視認性、耐久性、整備のしやすさを優先したフィールドウォッチの簡潔な仕様に立ち返った。
新作クロノグラフ 1 ユーティリティは、直径40.8mmのビーズブラスト仕上げのチタンケースを採用。コーティングを施さず、柔らかなグレーの色調に仕上げた。優れた耐久性と軽さを備えるチタンは、実用性を重んじるこの時計にふさわしい素材だ。ポルシェデザイン初期のチタンクロノグラフに敬意を表すとともに、クロノグラフ 1の着想源となった911の軽量設計思想も受け継いでいる。
堅牢で実用的なケースバックには、往年のPDロゴや文字、限定番号を刻印した。さらに「WERK 01.340」と「CENTRAL STOP MINUTE」の表記を加え、この時計を可能にした独自の技術を示している。
ダイヤルは初期モデルと同じく、計器としての役割を優先したプロポーションを採用。「UTILITY」の表記にも当時の書体を用いた。
細部に目を向けると、オリジナルモデルのなかにはトリチウム夜光を示す小さな文字をダイヤルに配したものがある。この時計では、その発想をケース素材の表示に応用し、当時の書体で控えめに「Ti」と記した。ケースとブレスレットにチタンを使用していることを示すものだ。
曜日・日付表示窓の下には「PORSCHE DESIGN for HODINKEE」の文字を配した。オルフィナ製のオリジナルモデルの一部が、ダイヤルに販売店の名を記していたことに着想を得ている。
曜日表示は英語とドイツ語の2言語に対応し、ポルシェデザインとのパートナーシップをささやかに示した。アウターリングにはタキメータースケールではなく、オリジナルモデルの多くに見られる12時間目盛りを採用。走行速度ではなく、経過時間を計測するための時計であることを表している。さらに100m(330フィート)の防水性能を備える。
計時機器があらゆる状況で機能するためには、精度や視認性だけでなく、装着時の快適さも欠かせない。本モデルには、ケースと同じビーズブラスト仕上げを施した幅22mmのチタンブレスレットと、ポルシェデザインの往年のミリタリーウォッチにも用いられたクラシックなレザーストラップが付属する。
レザーストラップには、ポルシェ車の内装に使われるオリジナルレザーを採用。実用性を重視したこの時計によく似合う。チタン製のフォールディングクラスプにも、往年のポルシェデザインのロゴをあしらった。リリースボタンとレザーストラップの切り欠きを利用するクイックチェンジシステムにより、付属のチタンブレスレットへもすばやく交換できる。
販売について
「クロノグラフ 1 ユーティリティ — HODINKEE限定モデル」は、スイス・グレンヘンにあるポルシェデザインの自社時計工房で、ひとつひとつ手作業で組み立てられる。ここでは技術者と時計師が肩を並べて製造に取り組んでいる。
生産本数は世界限定350本で、最初の100本は、HODINKEEとパートナーであるWatches of Switzerlandを通じて販売中。価格は9650米ドル(日本円で約150万円)だ。
詳細はこちらから。