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Bring a Loupe フランスメイドのジャガー・ルクルト、フライング・トゥールビヨンにダブルネームが入ったエル・プリメロ

今回のHODINKEEコラムは、eBayに頼れないなかでもバリエーション豊かな4本の時計をピックアップした。

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Bring A Loupeへようこそ! まずは悪い知らせがある。先日、私の個人eBayアカウントがハッキングされてしまった。掘り出し物満載のウォッチリストには一時的にアクセスできなくなり、数年間かけて作り上げた完璧な検索保存リストが無駄になってしまったのだ。これがコラムにどう影響するかというと、今週はeBayなしで進めることになる。ただし心配はいらない。eBayのカスタマーサービスが迅速かつ丁寧に対応してくれており、アカウントの復旧に向けて動いてくれている。そのうえでなお、今回のために多彩なコレクションを完成させるための4つのピックを用意している。

 11月の結果を振り返ると、Watches of Knightsbridgeではネオヴィンテーのジブランパンが7000ポンド(日本円で約19万8000円)で落札された。掘り出し物だったのかもしれない。ブレゲライクなパテックの懐中時計は2万798ドル(日本円で約320万円)、ロサンゼルス・ドジャースのロゴ入りルシアン・ピカールは305ドル(日本円で約4万7000円)で、いずれもeBayで落札された。そして最後に、日本市場限定の大塚ローテック 6号はLoupe Thisで1万340ドル(日本円で約160万円)で落札された。同じ時計がフィリップス香港で6万366ドル(日本円で約929万円)の値を付けたことを考えると、これは比較的お買い得だったと言えるだろう。

 それでは本題に入ろう……今週の逸品はこちらだ!

ジャガー・ルクルト “タンク ガルベ” ピンクゴールド製 1950年代
JLC watch

 2023年10月、HODINKEEで公開したブシュロンに関するこちらの記事をご覧になった方であれば、アレクサンドル・トリッツ(Alexandre Tritz)氏の名前を耳にしたことがあるだろう。彼はヴィンテージウォッチの知識が豊富なストラップ職人で、Instagramでは“The Boucheron Guy”として知られている(アカウント名:@thewatcham)。私が最初に彼のアカウントをフォローしたのは、彼がミッドセンチュリーのブシュロン好きであることを知ったのが理由だ。しかしその後、彼の持つ洗練されたヴィンテージドレスウォッチに対するセンスに気づき、完全に魅了された。ここ数年、彼は自身のコレクションのために時計を売買してきたが、最近このニッチな分野で“ディーラー”として活動を始めた。彼の新しいアカウント(@galbegallery)では、このジャガー・ルクルト製“タンク ガルベ”のようなミッドセンチュリーのフランス製時計を中心に取り扱っている。

 通常、時計の紹介にあたり売り手について先に話すことは少ないが、今回は特別だ。トリッツ氏という人物を理解することが、この時計の価値を知るうえでは重要だからだ。彼の持つ“目”は非常に確かであり、フレンチウォッチに関する知識は世界でもトップクラスだ。実際、彼が販売する時計を購入しなくともそのリストは読むだけで学びの多い内容となっている。

JLC watch

 “EJ”の刻印からわかるように、このジャガー・ルクルトはエドモンド・ジャガー(Edmond Jaeger)の工房でパリにて製造されたものである。この時期、同工房はカルティエ・パリの時計も手がけており、この時計にはその影響が見て取れる。ケースの構造はインナーケースと“ケースバック”をアウターケースやベゼル、風防に固定するために両サイドに2本のネジを用いるというものだ。このデザインは当時のカルティエ時計とよく似ており、1950年代のスイス製ジャガー・ルクルトの標準的なスナップバックケースとは異なる特徴を持つ。ではなぜこれが重要なのか。コレクターが夢中になる“リシュモン買収前”の時計の魅力が、このエドモンド・ジャガーの工房で作られた手仕事のケースにあるからだ。この時計はブランド名こそ異なるが、同じ職人技の魅力を楽しむことができる。そして、ジャガーとルクルトが1937年に提携を開始したことを考えると、この時計は“初期の”ジャガー・ルクルトといえる。

JLC watch

 ジュネーブに拠点を置く販売者、アレクサンドル・トリッツ(@galbegallery)氏が販売するこのフランス製ジャガー・ルクルトの価格は4900ユーロ(日本円で約78万円)。詳細は以下から確認してほしい。

ロンジン “スクールウォッチ” デテント式フライング・トゥールビヨン搭載 1920年代
A Longines pocket watch

 私は重要な懐中時計について、あまり深く理解していない(そして正直なところ愛着も薄い)ことを隠すつもりはない。しかしこのBring A Loupeのコラムで2週連続で懐中時計を取り上げていることからもわかるように、私がリストを自分の好みだけで選んでいるとは思わないで欲しい。懐中時計に興味が薄いというのは半ば冗談で、特別な時計であれば、その価値を理解できる。このロンジンこそ、まさにその特別な時計のひとつだ。

 一見するとこの時計は“戦時期”に製造された直径68mmのロンジン製懐中時計である。ロンジンの抜粋記録によれば、その情報に間違いはない。1925年6月、この時計はブダペストの代理店であるHerpy Arnoldに請求書が送られた(文字盤に記されたリテイラーの署名がその証拠だ)。Cal.24.99を搭載したこの時計において、まず目を引くのはその素晴らしい保存状態である。白いエナメル文字盤には目立ったひび割れがなく、見事な艶を保っている。この時計が所有者によって大切に扱われてきたことは明らかだ。

A Longines pocket watch

 この保存状態が維持された理由のひとつには、熟練の時計職人が所有していたことがあるだろう。オークションカタログの記述によれば、ロンジンのヘリテージ部門が確認したところ、この懐中時計は1920年代後半から1930年代初頭にかけてドイツの時計職人見習いによって改良されたものであるという。スプリングデテント脱進機を備えたフライング・トゥールビヨンに改造されている。

 デテント脱進機(クロノメーター脱進機とも呼ばれる)は、非常に高い精度を誇る脱進機だ。この技術は18世紀後半に生まれ、20世紀半ばまでマリンクロノメーターやクロノメーター規格の懐中時計における“最高級”の脱進機として採用されてきた。ただしデテント脱進機は極めて繊細で、スイスレバー脱進機に比べて破損しやすい。そのため、熟練の時計職人だけが採用できる難易度の高い技術とされてきた。

A Longines pocket watch
A Longines pocket watch

 一般的にこのようなデテント脱進機を備えたトゥールビヨン懐中時計は、有望な若手時計職人が最初に取り組むプロジェクトとされている。例えばF.P. ジュルヌ氏の最初の時計もデテント式フライング・トゥールビヨンであり、完成までに5年を要した。このロンジンもまた、1920年代ドイツの有望な若手時計職人が初めて手がけたプロジェクトであったと考えられている。この推論は、トゥールビヨンの設計が11月初めにサザビーズで8万6400スイスフラン(日本円で約1490万円)で落札されたほかのドイツ製スクールウォッチに類似していることから導き出されたものだ。

 このロンジンによる“スクールウォッチ”は、IconeekのTimeless & Iconic Timepieces VIIオークションに出品された(ロット番号は31)。オークションは12月6日(金)午前9時(東部標準時)に開始され、2万~4万スイスフラン(日本円で約345万~690万円)のエスティメートが出されていたものの流れてしまった。詳細情報はこちら

モバード デイトロン HS 360 ゼニスとのダブルネーム入り 1970年代
A Movado HS 360

 1969年にモバードとゼニスが合併し、ラ・ショー・ド・フォンに拠点を置くひとつの会社となった。その数カ月後にモンディアを買収し、“MZM(モバード・ゼニス・モンディア)”が誕生。この合併後に作られた時計はヴィンテージモバードを愛する私にとって非常に興味深い存在ばかりであるが、3社間でムーブメントや部品を共有していたことは特筆すべき事項だろう。この時期のモデルでは、文字盤に“HS 360”と刻まれたモバード銘のエル・プリメロを見ることができる。だが実際には同時代のゼニスモデルとほぼ同一であり、見た目も性能もゼニスの特徴が色濃く反映されている。それでもこの時計には特有の魅力がある。

A Movado HS 360

 特に興味深いのは、モバードとゼニスのダブルネームが入った文字盤である。この時計はモバードのブランド名が刻まれたゼニスのエル・プリメロといったところで、さらにゼニスの名前も共に記されている特別なモデルだ。1970年代のスタイルが随所に見られる18金ソリッドゴールドのクロノグラフで、信頼できる販売者から1万ドル(日本円で約154万円)未満で出品されていたのだ。これだけの条件が揃えば文句はない。

 この時計を出品したのは、ドイツのShuck The Oysterのアーサー(Arthur)氏である。モバード×ゼニスのクロノグラフは6800ユーロ(日本円で約109万円)で販売されている。詳細はこちらからご確認いただきたい。

ホイヤー カレラ Ref.2447 NST 1970年代製
A Heuer 2447 NST

 この時計を取り上げるにあたり、WhatsAppの“Heuer Heritage(ホイヤー ヘリテージ)”チャットグループの友人たちに先に謝っておきたい。予想外の場所で素晴らしいヴィンテージホイヤーが出品される際、その情報を秘密にしておきたい気持ちは理解している。しかし、私にはBring A Loupeの熱心な読者に応える義務がある。デテント機能付きトゥールビヨン懐中時計についての長話に付き合ってくれる大切な読者だ。

 手巻き式カレラのなかでも、Ref.2447 NSTは逆パンダ文字盤を特徴とする究極の“スタンダード”モデルだ。その希少性は、製造期間が短かったことに起因していると考えられる。このモデルの多くは1970年または1969年に製造されており、手巻き式カレラが“クロノマチック”カレラに置き換わる直前の時期に属している。また、白いタキメーター文字とレジスターが文字盤に美しいコントラストを生み出し、視覚的な魅力をさらに高めている。カレラのコレクターにとって、これ以上のモデルはないだろう。

A Heuer 2447 NST

 この時計はイギリスのチェシャー州にある小さなオークションハウスから市場に放たれた。コンディションは非常に良好で、ケースはシャープかつラグの端にきれいなラインが残っている。文字盤は全体的に優れており、3時と9時を除いてすべてのマーカーに夜光塗料が完璧に残っている。アワーマーカーがない場合、これらが最初に消えることが多いが、この時計ではしっかりと維持されている。新しい風防と白いテンションリングが必要で、点検も必要と思われるが、全体の価値を損なうものではない。さらに製品箱と証明書類のような付属品までそろっている。

A Heuer 2447 NST

 このホイヤー カレラは、Adam Partridge Auctioneers & Valuersによってマクルズフィールドで開催されるThree Day Sale of Jewellery, Silver, Watches & Boutiqueにロット1810として出品された。オークションは12月4日(水)から6日(金)までの午前5時(米国東部標準時)に開催。5000ポンド〜8000ポンド(日本円で約97万円〜155万円)に対し、8800ポンド(日本円で約171万円)でハンマーが振り下ろされた。詳細はこちらをチェックして欲しい。