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Bring A Loupeへようこそ! 今週は、先週の特別な内容に比べてよりスタンダードな構成となっている。前回はジュネーブで開催された4つの主要オークションハウスで出品された多岐にわたる時計をプレビューしたが、今回はeBayや小規模なローカルオークションハウス、そしてウェブ上のさまざまな場所から選りすぐりの時計を紹介する。主要オークションという観戦型の楽しみを愛する方々にとって朗報だが、先週末の結果を振り返る記事を近日中にお届けする予定だ。また12月初めに開催されるニューヨークオークションのプレビューをお届けする次回のBALも魅力的な内容になるだろう。
その前に、数週間前の“スタンダード”な内容だった前回のBring A Loupeについて、その結果を振り返ってみよう。RAF(英国空軍)の由来を持つロレックス エクスプローラー Ref.6610は、手数料を除いた落札価格が1万4600ポンド(日本円で約280万円)に達し、このリファレンスとしてはかなり強気な価格で落札された。またLoupeThisで紹介したロレックス ゼファーは5225ドル(日本円で約80万円)で落札。また販売中のなかだとオーデマ ピゲの“ジーザー”がマイク・ヌーヴォーにより予約済みとなり、1970年代製ミドルサイズのカルティエ サントレはMentaWatches.comで売却済みだ。実はジュネーブ滞在中にそのカルティエを目にする機会があり、購入者はその買い物に非常に満足している様子だった。
それでは、今週のピックアップに移ろう!
ゼニス エル・プリメロ Ref.A384 トロピカルダイヤル、1970年製
これら初期のゼニス エル・プリメロのリファレンスは、その歴史的な重要性を考慮すると、ここ数年の価格は非常に魅力的だと感じている。1960年代に開発され、1969年に発表されたムーブメントのなかで初の自動巻きクロノグラフをめぐる競争の結果生まれたものとして、エル・プリメロキャリバーは最も美しいデザインと技術的先進性を備えていた。ゼニスは単に自動巻きクロノグラフムーブメントをつくり上げただけでなく、3万6000振動/時というハイビートの特性を加えることでさらに完成度を高めた。私は初めてエル・プリメロを目にしたときから、その魅力に心を奪われてきた。ヴィンテージクロノグラフのキャリバーを思い浮かべると、手巻きではロンジンの13ZN、自動巻きではエル・プリメロがまず頭に浮かぶ。それらこそがアイコンと呼ぶにふさわしい存在だ。
技術的に優れ、時計史において重要なムーブメントにはあまり興味がない? それも全然問題ない。この初期のエル・プリメロは、ケースバックを開けなくてもただ単純に美しい時計だ。私は素晴らしいヴィンテージウォッチを見るとき、どの時代にデザインされ、製造されたのかがひと目でわかることを大切にしている。だからこそギルトダイヤルのロレックスのプロフェッショナルモデルが大好きなのだ。たしかに、ロレックス全体のデザインは100年近くほとんど変わっていないが、ギルトダイヤルを持つモデルなら、それが1950年代や1960年代に製造されたことが手に取るように感じられる。エル・プリメロの最初のシリーズ、A381から始まり、A384を含むこれらのリファレンスもまた、明らかに1970年代の時代性をまといながらも同時に時代を超越した魅力を持っている。これこそが絶妙なバランスであり、このモデルはそれを見事に成し遂げている。
A384は通常、ホワイトダイヤルにブラックのサブレジスターを持つパンダダイヤルクロノグラフとして知られている。しかしご覧のとおり、A384の一部のダイヤルは経年変化によって美しいトロピカルブラウンへと変化することがある。この時計がもともとどのような姿だったのか知りたいなら、現行モデルであるA384 リバイバルを見るとよいだろう。そこではコントラストがはっきりした、白地に黒のデザインが再現されている。このカラー変化は塗料の配合に何かしらの要因があったと考えられる。同じような変化を見せる個体が多いため、すべてが同じように太陽の下で焼けたのだと信じることはできない。しかし、これらのトロピカルダイヤルを持つA384は決して一般的なものではない。ゼニスが1970年代初頭にこのモデルを製造したのは、全体でわずか2600本のみなのだ。
外観は素晴らしく、状態もほぼ完璧だ。ユニークな形状のケースは、当時の仕上げと鋭いエッジがしっかり残っており、こうした要素は常に注目するポイントだ。文字盤はもちろん見事で、夜光のパティーナも全体にわたっていて素晴らしい。さらに特筆すべきはゼニスの刻印が入ったゲイ・フレアー社製のラダーブレスレットが付属している点である。このブレスレットには正しい“ZKM”(ブレスレットがゼニス用に製造されたことを示す識別コード)エンドリンクが備わっており、これは別途購入しようとしても非常に入手が困難なアクセサリーである。
この時計を販売しているのはドイツのShuck The Oysterのアーサー氏であり、価格は1万6500ユーロ(日本円で約267万円)だ。詳細はこちらから。
ジョージ・クルーニーのオメガ シーマスター アクアテラ 150M レッドゴールド仕様 ブレスレット付き
親切なBring A Loupe読者からの情報で、ハリウッドのトップスターであるジョージ・クルーニー(George Clooney)氏が着用したモダンオメガがeBayでオークションに出品されているという奇妙な話を聞いた。当初は少し警戒したものの、出品リストを確認するとすぐにその懸念は払拭された。この時計はHomes For Our Troops, Inc.という慈善団体を支援するために出品されていたのだった。この団体は、9.11以降に重傷を負った退役軍人のために、特別に設計されたカスタム住宅を全国で建設し、寄贈する活動を通じて彼らの人生再建を支援している。
これは素晴らしい目的のためのオークションであり、正直なところ、リード写真がとても楽しませてくれた。ジョージ・クルーニー氏のセルフィーによるリストショットをHODINKEEで取り上げる機会はそう多くはないが、今日はその貴重なチャンスを逃さない。時計は、Ref.231.50.42.21.06.002のアクアテラ 150Mで、サイズは41.5mm。レッドゴールド仕様で、オメガ純正のレッドゴールド製ブレスレットが付属している。もともとの小売価格は3万9000ドル(日本円で約600万円)だったモデルだ。
Homes For Our Troopsは、このハリウッドスター由来のオメガをeBayでオークションに出品。終了日時は東部時間の11月21日(木)午後1時39分だ。記事執筆時点で入札額は1万8200ドル(日本円で約280万円)に達している。詳細はこちらから。
ブシュロン タンク イエローゴールド オメガ製キャリバー搭載、1960年代製
正直に言うと、私はヴィンテージブシュロンに特別な愛着を持っている。以前にもHODINKEEで詳しく取り上げたことがあるが、この時計の文脈で簡単に振り返ると、ブシュロンは1940年代から1960年代にかけてパリで腕時計を製造しており、その完成度は隣人であるカルティエに匹敵していた。デザインはやや異なるものの、ブシュロンは貴金属を多用し、全体的に“メタリック”かつワントーンなルックを好む傾向があったのに対し、カルティエは鮮やかな白い文字盤と大胆な黒のダイヤルプリントで知られている。製造品質や手づくりの魅力に関して言えば、当時のカルティエ(特にEJ、エドモンド・ジャガー製ケース)と同等の水準だが、市場ではほとんど評価されていないのが現状だ。
この時計は、ロンドンのメイフェアにある小規模なオークションハウスを通じて販売されているものだが、注目した理由はこの時代のブシュロンの代表的なモデルであるリフレやカレといった“人気モデル”ではない点にある。実際、インターネット上で販売されているほとんどのブシュロンをチェックしているが、これとまったく同じモデルにはまだ出合ったことがない。一見するとタンクに似た長方形のオーソドックスな形状に見えるが、この時計は実際には非常に珍しいのだ。ヴィンテージのブシュロンで、裏蓋が未研磨の状態、手彫りの刻印がはっきりと見える場合は即座に手に入れたいと思う。裏蓋にオメガのロゴがあることから、この時計がブシュロン製ケースにオメガ製ムーブメントを搭載していることがわかる。当時の高価格帯モデルでは、この組み合わせが一般的であった。
このブシュロンは、11月26日(火)午前7時(米国東部標準時)に開催されるNoonans Mayfair Jewellery, Watches, Silver and Objects of Vertuオークションのロット481として出品される。エスティメートは600ポンド~800ポンド(日本円で約12万~15万5000円)だ。詳細はこちらから。
ホイヤー オータヴィア Ref.73463 “シフェールカラーズ”、1970年代製
今週初め、タグ・ホイヤーの2024 コレクターズサミットに参加した。近々ヴィンテージホイヤーの写真をたっぷり含んだ記事を公開する予定だ。今回のBring A Loupeのピックにその影響があるか? もちろん。そしてこれが注目を集めにくいながらも、優れたヴィンテージホイヤーの一例であることも確かだ。
Ref.73463 オータヴィアは、初期の自動巻きCal.11を搭載したオータヴィアと同じトノー型ケースを採用しつつ、手巻きムーブメントを搭載している。そのため、Ref.1163 “シフェール”と同じ外観を持ちながら、価格は半分以下という魅力的な選択肢だ。本物のシフェールオータヴィアは伝説的なモデルで、その名前は1969年にこの時計を着用したスイスのレーシングドライバー、ジョー・シフェール(Jo Siffert)に由来している。だがその歴史的価値にはプレミアムが付いている。一方Ref.73463は、同じダイヤルデザインとケースを持ちながら、手巻きのムーブメントを毎朝巻き上げる楽しみも味わえる。これを楽しまない人がいるだろうか?
ロンドンのオークションハウスで販売されるこの個体は全体的にクリーンな外観で、ケースも良好な状態を保っており、文字盤と針の夜光部分に均一なパティーナが見られる。ただし分針にわずかな黒点があるが、時計全体の魅力を損なうほどのものではない。
これはLyon & Turnbullのロンドンウォッチオークションのロット79として出品。オークションは11月21日(木)午前9時(米国東部標準時)に開催され、エスティメートは4000ポンド~6000ポンド(日本円で約77万~116万円)である。詳細はこちらから。
ファーブル・ルーバ BMWモデル、1980年代製
はっきり言ってこのモデルについてはあまり詳しくなく、これまで見たことがない。ましてや文字盤にBMWのロゴが付いているものとなると初めてだ。もし1980年代のファーブル・ルーバに詳しい方がいれば、このモデルがなぜよくないのか、逆に価値があるのかについてぜひコメントで教えて欲しい。私自身の目で見る限りでは、この時計には好感を持っている。文字盤のプリントは正しいように見え、BMWロゴも1980年代当時にブランドが使用していたバージョンで間違いないようだ。
時計自体はとても興味深い特徴を備えている。ケースは半クッション型、半楕円形というユニークな形状で、文字盤には波状のサテン仕上げが施されており、ETA製ムーブメントを搭載している。セラーによるとこのファーブル・ルーバは“スイス人コレクターの遺品から発見された新古品のロットの一部”とされ、その主張には一定の信憑性がある。裏蓋には引き出しなどで擦れたような細かな傷がいくつか見られるが、付属のオリジナルストラップは未使用のようだ。700ドル(日本円で約11万円)未満で手に入る楽しさとしてはなかなか魅力的だろう。
スイスのAstiegan Watchesが、このBMWとのダブルネームファーブル・ルーバを689ドル(日本円で約10万5000円)で販売している。詳細はこちらから。
購入注意: モバード M95 クロノグラフ “ティファニー & Co.”モデル、1950年代製
この時計は昨年、文字盤にモバードのサインが入った状態で販売されていたものだ。しかし今回市場に再登場した際には文字盤からモバードのサインが消え、その代わりに明らかに現代的すぎる“ティファニー & Co.”のロゴが追加されていた。購入は絶対に避けるべきだ。