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Bring a Loupe カルティエ ロンドン タンク L.C.、ロジャー・スミス シリーズ2 オープンダイヤル、エディ・バウアーのサインが入ったファーブル・ルーバなど

今回の“What's Selling Where(どこで何が売られているか)”コラムも、多種多様な注目アイテムを集めた。

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Bring A Loupeへようこそ! ヴィンテージウォッチ界は、2週間後に迫った11月のジュネーブ・オークションを心待ちにしている。しかし、それまでのあいだはeBayやShopGoodwill.com、そして英国の小規模なオークションハウスで厳選したBring A Loupeのピックで乗り切ろう。

 前回のBring A Loupeコラムの結果報告をしよう。個別出品されていた2本はそれぞれ新たな持ち主が決まり、ヴァン クリーフサイン入りのロレックス エクスプローラーIIと、買収前のカルティエ パリ タンク L.C.が新たな腕元に収まったようだ。新オーナーにはおめでとうと言いたい。ティファニーサインのモバードはEverything But The Houseにて2650ドル(日本円で約41万円)の価格で売れ、パテック フィリップのRef.1485はLoupeThisで1万1220ドル(日本円で約170万円)に到達した。そしてティファニー モバードの新オーナーからは昨日リストショットをもらったところだ。この時計もいい家に収まって何よりである。また数週間前までさかのぼるが、ジャン=ルー・クレティエン(Jean-Loup Chrétien)氏のオメガ スピードマスターもRRオークションにて10万6409ドル(日本円で約1630万円)で落札された。

 それでは、今週のピックアップに移ろう!

カルティエ ロンドン タンク L.C. エクストラフラット、1973年製
A Cartier Tank LC for London

 2週連続で、同コラムの冒頭に素晴らしいヴィンテージカルティエ タンク L.C.を取り上げることに対して、謝罪するつもりはない。この流れは市場が決めるものであり、私の力でどうにかなるものではないのだから。今回も非常に興味深いタンク L.C.のバリエーションが、イギリスのFellowsオークションに出品されている。実のところ、これまでに見たことのないモデルだ。ヴィンテージのカルティエに詳しい方なら、1960年代から1970年代初頭にかけてロンドンでつくられた時計が、どれほどユニークかを知っているだろう。第2次世界大戦後、ジャン=ジャック・カルティエ(Jean-Jacques Cartier)が父親の跡を継いでカルティエ ロンドンを運営するようになり、1960年代初頭には、パリで製造された時計を輸入し続けるのではなく、ロンドンで腕時計の製造を開始することを決断した。これらの時計はひとつひとつが手作業でつくられ、デザインもまた60年代ロンドンの“躍動の時代”らしい独特のスタイルを備えている。

 話を簡単にまとめると、カルティエは1972年に再統合を果たしている。先週のタンク L.C.に触れた際に言及した“買収前のカルティエ”とは、この1972年の再統合を指している。ここが重要な点で、今回注目している時計にはロンドンのホールマークが刻印されており、1973年の製造であることを示している。そこで私は思わず、“おや、これは妙だな”と感じた。しかし掲載されている写真やFellowsチームから提供された別の写真を確認する限り、この時計は問題なさそうだ。外観もホールマークも正しく見える。

A Cartier London Tank LC

 さらに興味深いのは、このタンク L.C.のケース構造である。ケースサイドや裏蓋にネジが見当たらないため、タンク L.C. エクストラ・プラ(フランス語で超薄型を意味する)のこのケーススタイルは非常に珍しく、コレクターのあいだでは“隠れネジ”ケースとして知られるようになった。

 製造年に若干の謎が残るものの、このタンク L.C.のコンディションはきわめて堅固だ。状態のよさに加え、シリアルナンバーと一致するロンドンホールマークの入ったデプロワイヤントクラスプ、そして“大きめ”な23mm×30mmのケースサイズを考えると、このオークションは順調に成立すると思われる。すでに事前入札が入っており、当初のエスティメートである2000ポンド~3000ポンド(日本円で約39万~60万円)ははるかに上回った。

Hallmarks on a Cartier London Tank LC

 この1973年製カルティエ ロンドン タンク L.C.は、10月31日(木)の午前5時(米国東部時間)に開催されるFellowsウォッチオークションのロット29として出品される。記事執筆時点での入札額は1万5500ポンド(日本円で約310万円)に達している。

ロジャー・W・スミス シリーズ2 オープンダイヤル 00番、2010年代製
A Roger Smith Series 2 Open Dial

 今週のピックをまとめている時点では、正直なところ、楽しいけれど控えめな価格帯のラインナップだと感じていた。しかし、そこに突如としてロジャー・スミス(Roger Smith)氏の時計が現れたのだ。先月取り上げたフィリップ・デュフォー(Philippe Dufour)のデュアリティ(ちなみにまだ販売中)と同様に、Bring a Loupeがネット上で販売中の“ベストな”時計を特集するコーナーである以上、どうしてもこの時計を紹介しなければならない。腕を捻られた気分だが、ロジャー・スミスのシリーズ2について数段書かざるを得ないようだ。なんともうれしい悲鳴である!

 HODINKEE読者ならばロジャー・スミスという名はなじみ深いはずだ。彼は故ジョージ・ダニエルズ(George Daniels)博士の弟子であり、現代を代表する優れた時計職人のひとりとして広く認識されている。スミス氏は過去20年以上をマン島でのウォッチメイキングに費やし、ダニエルズが情熱を注いで開発したコーアクシャル脱進機を改良した。ロジャー・スミスのシリーズ2 オープンダイヤルは2008年に発表され、初期モデルが顧客に納品されたのは2010年とされる。総生産数は10本にも満たず、非常にレアなモデルだ。この特別なシリーズ2 オープンダイヤルは、元Bring A Loupeのコラムニストであるエリック・ウィンド(Eric Wind)氏が手がけるWind Vintageにて提供。ナンバーは00番で、40mm径のプラチナケースに収められている。

Roger Smith Series 2 Open Dial movement

 興味深いことに、“プロトタイプ風”のシリーズ2 オープンダイヤルが市場に出たのは今回が初めてではない。昨年、香港のWristcheckが02番を販売しており、これには“R W Smith”のサインプレートが“文字盤”側にないなど、ユニークな特徴があった。またケースも40mmのホワイトゴールド製であった。このようなスミス氏の時計には、モデルごとにわずかな違いが見られる。こうした微妙な違いが見られるのは、すべての時計が伝統的な英国式の手作業で製造されているからこそであり、ある意味で当然のことと言える。

 Wristcheckで販売された02番の価格は115万ドル(当時の相場で約1億6160万円)からスタートした。あえて直接価格に触れるのは、相対的に今回のモデルが“お買い得”に見えるからだ。シリーズ2 オープンダイヤル唯一の公の取引は、2022年にフィリップス・ニューヨークで行われた09番で、40mmのプラチナケースが付いたものが結果84万700ドル(当時の相場で約1億1055万円)で落札された。また、現在ロンドンのA Collected Manでも1本が販売中で、モデルナンバーは不明だが、より標準的な仕様と考えられている。ACMの提示価格は64万5000ポンド(日本円で約1億2840万円)である。

 Wind Vintageで販売されているロジャー・スミス シリーズ2 オープンダイヤル 00番は59万9000ドル(日本円で約9190万円)で販売中。詳細はこちらから。

ジュベニア アーキテクト ギュブラン向けモデル、1960年代製
A Gubelin Juvenia

 ジュベニア アーキテクトは、ヴィンテージ界においてオッドボール(奇抜)な時計の代表格とされる一品である。シンプルな手巻きETAムーブメントを搭載した時刻表示のみの時計だが、デザイン面ではその常識を超えている。このユニークなタイムオンリーモデルは、1940年代から1960年代にかけてきわめて少量のみ生産された。こうしたデザインは、ときには大成功を収めるか、あるいはまったく人気が出ないかのどちらかだが、アーキテクトは後者の道をたどったようだ。そのため、プロトラクター(Protractor、分度器)やセクスタント(Sextant、六分儀)の名でも知られるこのモデルは、当時の売れ行きは低調だったものの、現在のヴィンテージ市場ではその希少性によりカルト的な人気を誇っている。

 同ブランドは、アリスモというドーナツ型のプレキシガラスクリスタルを備えた回転計算尺付きの時計など、独創的な腕時計デザインをつくり出すことにも長けていた。これにはジュベニアらしいユニークさが光っている。余談だが、ジョニー・デップ(Johnny Depp)氏は2008年、ジュベニア アーキテクトをつけてエスクァイアの表紙を飾った。一見、複雑そうに見えるアーキテクトだが、実は読み取りが容易だ。黒い三角形がついたプロトラクター針が時刻を示し、金色の矢印が分を、そして(適切な表現が見つからないが)赤い部分を持つもう一方の針が秒を追う仕組みだ。

A Gubelin Juvenia

 これまでにもジュベニア アーキテクトを見たことはあるが、ルツェルンを拠点とする、170年を超える歴史を持つリテーラー、ギュブランのサインが入ったものを見るのは初めてだ。ギュブランとそのサインが入った時計の大ファンとして、このひと工夫が、すでに魅力的な時計をさらに魅力的にしている(私にとっては)。6500ドル(日本円で約100万円)の使い道としては悪くない選択肢だ。少なくとも、同じ時計を身につけている人に出会うことはまずないだろう。

 “USA, United States”と記載されたeBayの出品者が、ギュブランのサイン入りジュベニア アーキテクトを即決価格6450ドル(日本円で約100万円)で出品。詳細はこちらから。

ファーブル・ルーバ ビバーク Ref.53203 エディ・バウアー、1960年代製
A Favre Lueba

 小売店のサインが入った珍しいヴィンテージウォッチという流れのまま、エディ・バウアー共作のファーブル・ルーバ ビバークに移ろう。そう、“アメリカのアウトドアレクリエーションブランドでシアトルに本社を構える”(Wikipediaより)あのエディ・バウアーだ。さらに言うと、かつてフォードとコラボして限定版のブロンコやエクスプローラーを出したブランドである。これまで探していたわけではないが、エディ・バウアーの名前が文字盤に刻まれたヴィンテージウォッチには出合ったことがない。この時計はとても珍しいものと考えられるため、誰かがわざわざ文字盤に名前を刻んでからGoodwillに寄付したとは考えにくい。

 ビバークは腕時計であり気象計測器でもあると言えるほどユニークな存在であり、1960年代の時計製造における風変わりな腕時計の先駆けであった。1962年に登場したこの時計は、世界で初めてアネロイド気圧計を搭載した腕時計であり、ある意味で4分間マイルや月面着陸と同じくらい画期的な、初の達成と見なされるだろう…真面目に言うと、この機能は当時の登山家にとって非常に役立つものだった。ビバークは彼らが山を登る際に抱えていた課題を解決したのである。当時のポケット型高度計は、氷点下の環境だととくに読み取りにくく操作も困難だったが、この時計はその機能をひと目で確認できるという利便性を提供した。この時計を愛用していた著名なユーザーには、イタリアの登山家ワルター・ボナッティ(グランド・ジョラス登頂時)や、南極探検で使用したフランス人探検家ポール=エミール・ヴィクトルがいる。

A Favre Leuba

 このビバークはShopGoodwill.comに出品されており、オークションは10月30日(水)の午後10時55分(米国東部時間)に終了する予定だ。記事が公開された時点で、入札額は1752ドル(日本円で約27万円)に達している。詳細についてはこちらをチェックして欲しい。また、この時計を出品したGoodwillはワシントン州のマウント・レーニア近郊に位置しており、その場所柄も考慮すると興味深い背景が加わる!

 追伸: このヴィンテージのオメガ シーマスター300を見てほしい。同じくShopGoodwill.comに出品されているものだが、かなりの汚れが付着している。少なくとも、販売前に時計をきれいにしているわけではないことが分かる!

ホイヤー オータヴィア ダッシュボードタイマーセット、1950年代製
A Heuer Autavia Dashboard Timer Set

 著名なヴィンテージホイヤーのエキスパートであり、Talking Watchesにも登場したジェフ・スタイン(Jeff Stein)氏が、ホイヤーに特化したリファレンスサイトをOnTheDash.comと名付けたのには理由がある。当然ながら、こうしたダッシュボード用タイマーがその理由だ。各時計ブランドは、マーケティングでさまざまな世界に結びつけようとするが、ホイヤーのモータースポーツとの関係は単なる宣伝ではなく、実際に深い歴史がある。ホイヤーとモータースポーツの結びつきは、特に1950年代のダッシュボードタイマーにまでさかのぼる。この時代のタイマーは、レーシングシーンでのホイヤーの存在を象徴する重要なアイテムだ。

 ホイヤーの腕時計は伝説的なドライバーたちによって身につけられなど目立つ存在であったが、ダッシュボードクロックもまたカルト的な人気を集めている。こうしたタイマーの製造は1930年代にまでさかのぼる。いずれのツールウォッチにも言えることだが、これらは実用性を重視してデザインされていた。視認性と使いやすさが最優先であり、そのために文字盤には多量の夜光塗料が使用され、加えて中央のリューズ・プッシャーには大きな溝が刻まれている。これにより、ドライビンググローブを装着したままでもグリップしやすくなっているのだ。

A Heuer Autavia Dashboard Timer Set

 ホイヤー オータヴィア タイマーは同社トップクラスのモデルで、12時間積算計クロノグラフ機能を備えていた。通常はオータヴィアと、ヘルブ(8日巻きムーブメントを搭載したクロック)やマスタータイムといったシンプルな時計を組み合わせたセットが多いのだが、今回のようにオータヴィアがふたつ揃ったセットは珍しい。オータヴィアがふたつあれば、2台の車を同時に計測することができる。そのため、このセットはダッシュボードに取り付けられていたものではなく、公式タイムキーパーのための装備であった可能性がある。私はタイムキーパーのクリップボードやテーブルに取り付けられていたのではないかと考えている。

 ノースカロライナ州シャーロットにいるeBay出品者が、ホイヤーのオータヴィア ダッシュボードタイマーセットをオークション形式で出品しており、開始価格は2750ドル(日本円で約43万円)である。確実に手に入れたい場合は、即決価格の3750ドル(日本円で約58万円)にて購入することも可能。詳細はこちらから。