trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Bring a Loupe キューブ風のパテック フィリップ、ヴァン クリーフ&アーペルのサイン入りロレックス、本物のヴィンテージカルティエ タンク L.C.など

今週のHODINKEEのWhat's Selling Where(どこで何が売られているか)コラムでは、多くの注目モデルを紹介する。

ADVERTISEMENT

Happy Bring A Loupe! HODINKEEとUBSが共催したUBS House Of Craft NYCで忙しいスケジュールをこなしたために1週間のお休みをいただいていたが、無事再開することができた。時間が空いてしまった以上に、先週のインターネット上の時計のラインナップにはやや物足りなさを感じた。今週はeBayやディーラー、さらには“Everything But The House”という遺品整理オークションサイトまで、素晴らしい時計が満載だ。shopgoodwill.comには4194本もの時計が販売されているのをご存じだろうか? まあ残念ながら今週のまとめには1本も選ばれていないが、しっかりチェックした。

 前回、つまり2週間前の結果を振り返ると、ある熱心なコレクターがオリンピッククラブ由来のC.L.ギナーンの懐中時計を3950ドル(日本円で約60万円)以下というベストオファーで手に入れていた。価格に対してとても価値のある時計だ。写真のクオリティがあまりよくなかったホイヤー カレラ Ref.2447Nは、最終的に8501.99ドル(日本円で約125万円)で売却された。見せ方に難があっても、時計の品質が相場を決めるということだ。最後に、親切なリマインダーとしてお伝えしておくと、ジャン=ルー・クレティエン(Jean-Loup Chrétien)氏のオメガ スピードマスターは現在もRRオークションで入札が続いており、記事掲載時点での価格は2万7121ドル(日本円で約405万円)。オークションは10月24日木曜日、午後7時(アメリカ東部標準時)に終了予定だ。

 今週も盛りだくさんだから、さっそく今週のピックアップを見ていこう!

カルティエ パリ タンク ルイ カルティエ、1969年製
A vintage Cartier Tank LC

 最近、タンク ルイ カルティエ(タンク L.C.)について深く掘り下げた記事を執筆した。近々公開予定なので楽しみにして欲しいが、これまで“ありふれた”ものとしか見ていなかったこの時計に対する、新たな感謝の念が生まれた。タンク L.C.が、ルイ・カルティエによってデザインされた3番目のタンクだということを知っていただろうか? このデザインがあまりにも象徴的で、多くの人が“タンク”と呼んでしまい、その誕生が1917年だと誤解している。しかし実際には、カルティエ自身が2017年にタンク L.C.の100周年記念コレクションを発表しているように、実際はタンク ノルマルが1917年のもので、タンク L.C.は1922年に登場したのである。

 さて、ヴィンテージのタンク L.C.について言えば、1972年のカルティエ統合がひとつの大きな境界線となる。この年以前、カルティエ パリで販売された時計はエドモンド・ジャガー(Edmond Jaeger)とのパートナーシップにより製造されており、見た目もその精緻な職人技も際立っていた。ケースやデプロワイヤントクラスプには“EJ”の刻印があり、これらのタンクは後年のモデルに比べてはるかに希少だ。たとえば、1960年から1969年のあいだにカルティエ パリで生産された時計は、すべてのモデルを合わせても年間で約1100本しかつくられていなかった。この希少性だけでなく、1972年に登場したルイ カルティエコレクションのタンクと比較しても、EJ製の時計はダイヤルの質感からカルティエのブロック体ロゴ、手打ちの刻印まで、あらゆる面で独特の魅力を放っている。

A vintage Cartier Tank LC

 この個体は1969年製で、非防塵・非防水の時計としてはとてもいい状態だ。魅力にあふれている一方で、これら初期のカルティエのダイヤルはとくに経年劣化しやすい。この時計もダイヤル下部に少し剥がれや変色が見られるが、全体的には素晴らしい見た目を保っている。ケースも良好な状態で、深くはっきりとした刻印が残っている。コレクターの多くにとって、この刻印が失われたり過剰に磨かれてしまうと、その時計はほとんど買う価値がなくなる。

 この出品者、ケヴィン・オデール(Instagramでは@theydid)が、この統合前のカルティエ タンク L.C.を1万8500ドル(日本円で約280万円)で販売している。Pushers.ioで詳細を確認するか、直接Instagramで彼にメッセージを送ってみて欲しい

ロレックス エクスプローラーII Ref.16570 ヴァン クリーフ&アーペルサイン、1995年製
A Van Cleef & Arpels Signed Rolex

 ポーラー エクスプローラーIIはHODINKEEにとって目新しい存在ではない(これは同僚のジェームズ・ステイシー向けの内容だろう)。ダイヤルにリテーラーのサインが入る“コサイン”も珍しくないが、この特定の組み合わせがこれまでHODINKEEで取り上げられたことはないと断言できる。なぜなら、このヴァン クリーフ&アーペルのサインが入ったエクスプローラーIIは市場で唯一知られている存在だからだ。16570のようなモデルにコサインが入るとダイヤルが雑然としてしまうと考えるコレクターもいるだろうが、自分はそうは思わない。むしろリテーラーのサインには目がないんだ、すまない!

 特に今回のように、リテーラーのサインがシンプルに仕上がっている場合は一層魅力的だ。ピアジェといった時計に見られる“ヴァン クリーフ&アーペル”のフルネームの刻印だと、少々やりすぎだろう。しかし短縮された“V.C. & A.”という表記はよく考えられており、ダイヤルの6時位置にある“superlative chronometer officially certified”の文字と絶妙に重なり合い、さらに12時位置にある通常の3行のテキストとのバランスが完璧だ。

A Van Cleef & Arpels Signed Rolex

 コンディションはほぼ完璧で、多少の使用感はあるものの過剰にポリッシュされたような問題は見当たらない。もちろん、コサインダイヤルは、そのサインを裏付ける書類が揃っているとより価値が高くなる。この時計はその点でも申し分なく、ロレックスの書類にヴァン クリーフのスタンプが押されており、ブレスレットのクラスプにも“VCA”の刻印が入っている。

 この時計を出品しているのは、マイアミのメンタウォッチ(Menta Watches)のアダムとジョーダンで、ヴァン クリーフのスタンプが入ったエクスプローラーIIを7万5000ドル(日本円で約1125万円)で販売している。詳細はこちらから。

パテック フィリップ ステンレススティール製Ref.1485、1943年製
A Patek 1485

 みんながステンレススティール(SS)のスクエア型パテックについて話しているって聞いたよ! キュビタスの話をしてSEOのチャンスを狙っているわけではなくて、Ref.1485が個人的にお気に入りのヴィンテージパテックのひとつだから紹介しているのだ。それにあまり注目されていないモデルでもある。ちなみに、キュビタスのデザインがパテック フィリップの歴史のどこから来ているのか気になる人がいるなら、Ref.3854Ref.3770 “ノーチリプス(Nautellipse)”、そしてもちろん最近のSSノーチラスからもインスピレーションを感じられる。さて、話を1485に戻そう。この時計がなぜこんなに好きなのかを語ろうではないか。

 私のモバードへの愛が伝わっているかは分からないが(モバード好きの皆さん、このまま読み進めてほしい)、ミドーやケースメーカーのフランソワ・ボーゲル(François Borgel)、もし本物の時計マニアならトーバート(Taubert)という名前にも心引かれてしまうだろう。多くのボーゲル製ケースは、パテックのRef.565やモバードのサブシー クロノグラフのケースのように、丸形でデカゴン(10角形)のねじ込み式ケースバックを特徴としている。この初期の特許取得済みの防水ケースバック設計(CH 130942)は伝説的だが、ラウンド以外のケースには適さない。そこでボーゲルは、防水ケースの革新者として、四角形や長方形のケース向けにまったく別の設計(CH 207378)の特許を取得した。この設計がパテックのRef.1485に使用されているボーゲル製ケースだ。簡単に言えば、ケースは裏蓋とベゼルのふたつの主要なパーツで構成されており、3つのロック機構の金属片をケースサイドにスライドさせてはめ込むことで、すべてをしっかりと締め付ける。さらに厚めのパッキンを使用し、防水性を確保している。

A Patek 1485

 ボーゲルのデザインは興味深いが、今までにボーゲルケースの時計をいくつも見てきて、2024年に実際につける時計としてはあまりうまくいかないものも多かった。しかしこのRef.1485は本当にうまく機能している。サイズは横26mm、縦35mmで小さなスクロール風のラグがついており、自分にとってはスリムなヴィンテージのスクエアウォッチとして理想的なサイズだ。ダイヤルデザインはクラシックなパテックのスタイルで、3時、9時、12時位置にはアプライドのアラビア数字が使われており、そのほかの時間帯に配されたシンプルなロングバーインデックスにも強く引かれる。

 自分が数えた限りでは、Ref.1485がこれまでに市場に出たのは18本だ。それにもかかわらず長いあいだ、本当に長いあいだ、価格は10万から12万ドル(日本円で約1500万~1800万円)の範囲で停滞していた。というのもいい個体を探し続けていたからだ。残念ながら、昨年の5月のジュネーブ・オークションシーズンで、2本(ひとつは良好な状態、もうひとつは素晴らしい状態のもの)がそれぞれ3万3597ドル(日本円で約505万円)と4万2032ドル(日本円で約630万円)で落札された。今回出品されるこの時計は、高値更新後に市場に登場する初めてのものであり、1485の市場がさらに盛り上がるかどうかを試す興味深い機会となるだろう。

A Patek 1485 on wrist

パテック Ref.1485を私の7.25インチ(約18.4cm)の手首に装着。

 オークションを主催しているルーペ・ディス(Loupe This)はロサンゼルスにあり、この記事公開時点での現在の入札価格は5000ドル(日本円で約75万円)だ。パテック 1485のオークションは、10月23日水曜日、東部時間の午後12時4分に終了する予定だ。詳細はこちらから。

モバード クロノメーター Ref.41211 ティファニー用 14Kイエローゴールド、1955年製
A Movado signed by Tiffany

 Bring A Loupeのバトンを受け取って以来、毎回ピックをまとめる際に大きなジレンマを抱えている。“真に情熱を注げる時計”と“自分が買える範囲の時計”の交差点にある時計を選ぶかどうか、いつも悩んでしまうのだ。このティファニーのためのモバードに関しても、正直言って寝れないくらい悩んだ。コレクションに加えたいか? もちろんだ。入札するかもしれない? そのとおり。ただ最近、アバクロンビー&フィッチのサインが入ったSS製Ref.11211のモバードを購入したばかりであり、それはこの時計と本質的には同じものだ。それが理由で今回は誰かほかの人に譲ることにした。

 この時計を特別なものにしているのは、まずそのパーツである。この時計にはモバードのCal.431が搭載されており、これはブランドの自社製自動巻きのなかでも最高級のものだ。バンパー式ムーブメントから始まり、最終的にこのフルローターキャリバーに結実したのである。ケースはフランソワ・ボーゲルが手がけたもので、サイズは35.5mmとボーゲルがにしては大きめだ。ちなみに同時期のボーゲル製ケースを使用したタイムオンリーパテックは34.5mm(Ref.565)や35mm(Ref.2508 / 2509)である。パテックとの比較を続けよう。これらのパテックも含めて実際に手に取ってみると、このモバードのケースはラグが鋭角に下がり、手首に向かってカーブしているためよりスリムに感じる。

A Movado on wrist

7.25インチ(約18.4cm)の手首につけたモバード Ref.11211。

 次にダイヤルについてだが、これがまた興味深い。まずモバードのサインが入っていない点が特徴だ。これはティファニー向けのモバードではよく見られることである。そして正しい“西洋風”のティファニーのフォントが使われており、さらにクロノメーター表記もされている。特にダイヤル上部の“chronomètre”のラインは注目すべき点であり、これはモバードがこの時計をクロノメーター規格に調整したことを意味する。これは同ブランドの最高級時計にのみ行われる調整だ。たとえば、私が持っている同じモデルのアバクロンビー版にはこの表記もなく、これほどの調整もされていない。

 悔しいことに、このティファニーサイン入りモバードのコンディションは完璧だ。裏蓋に長く刻まれた文字から、この時計がB. F. ドラケンフェルド社(現在は廃業した美術用品会社)の社長スコット J. コートニー(Scott J Courtney)に贈られた記念品だということが分かる。こうしたほぼ完璧な状態の時計は、贈呈用時計としては意外とよくあることだ。受け取った人が、その時計の素晴らしさを理解せずほとんどつけなかったこともあれば、あまりにも高価すぎてつけることはないと思ったのかもしれない。いずれにせよ、これまでほぼ未使用の状態で残っている贈呈用時計を何度も目にしてきた。

A Movado signed by Tiffany

 このモバードはEverything But The Houseに出品されており、オークションは10月20日(日曜日)午後8時38分(アメリカ東部標準時)に終了予定だ。この記事が公開された時点で、入札価格は800ドル(日本円で約12万円)に達していた。詳細はこちらから。

2本のオーデマ ピゲがeBayに出品中、1960年代製
A Disco Volante AP

 今週最後の2本については、長々と語ることはないけれど、どちらも紹介する価値があるため、ここまで読み進めてくれた本当のBring A Loupeファンのためにひとつのセクションにまとめて紹介しておこう。

 まず紹介するのはRef.5093 “ディスコ・ヴォランテ”だ。このダイヤルは、私やネット上でこのリファレンスについて最も詳しい記事を書いたトニー・トライナでさえも、これまでに見たことがないほどユニークなものだ。とはいえこのダイヤルが“本物”ではないと言うわけではない。写真を見る限り、プリントは正確に見えるがこのリファレンスにこんな派手なサンバースト風のギヨシェ仕上げが施されたものは見たことがない。少しリスクはあるかもしれないが、ロイヤル オーク以前のAPの生産状況を考えると、ユニークピースもしくは少なくとも非常に希少なダイヤル仕上げがあっても驚かない。この時代のAPはまだ商業主義的ではなく、ひとつのリファレンスでも比較的少数の生産数で、ケースやダイヤルの仕上げにバリエーションがあることが多かったのだ。

 ニューヨークのeBay出品者が、このオーデマ ピゲ Ref.5093をストラップなしで出品。即決価格は8800ドル(日本円で約130万円)、もしくはベストオファーとなっている。詳細はこちらから。

An AP Tank

 もうひとつのヴィンテージAPは、同じ時代のタンクモデルだ。写真はあまりよくないが、私の目にはとても魅力的に映る。特に1950年代の“ブリックタンク”との類似性に引かれている。このモデルは少し異なっており、“ブリックタンク”に通常見られるスモールセコンドがなく、全体がクロスハッチ模様で仕上げられている。このようなわずかな工夫が、非常に効果的なのである。

 バーモント州バーリントンのeBay出品者が、このオーデマ ピゲのタンクモデルを即決7500ドル(日本円で約110万円)、もしくはベストオファーで出品している。詳細はこちらから。